東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:キメラテックパチスロ屋
「ちょ、ちょっと待って! どうして楼夢が……?」
「紫、人にはやむを得ない状況というものがあってだね……」
むしろ私から聞きたいわ。どうしてこんな最悪な時期に来ちゃったんだよ!?
あれだよ? 霊夢だけならまだよかったんだよ。どうせこの後永琳と輝夜を倒してハッピーエンド。写真集も傷ついた永琳から霊夢が奪い取ると思うから、あとは懐に用意してある諭吉たちで交渉すれば一石二鳥で終わるはずだった。
でもねゆかりん、あなたが写真集を奪ったら意味がないのよ! 本来の姿を知らない霊夢からしたら『ただの知らない変態の写真集』で済むけど、お前が見たら『身内の変態事情を捉えた写真集』に早変わりしちゃうんだよ!
ハーッ、ハーッ、ハー……!
うし、餅つけ私。いや間違えた、落ち着け。
要するにここで勝てば問題ないんだ。いや、初めから霊夢とのリベンジに燃えてたから負ける気はなかったけどさ。これでまた負けられない理由ができたわけだ。
改めて状況を確認しつつ、不敵な笑みを浮かべておく。
うーん、2対1か……。おまけに
霊夢はいつも通りやる気満々なようだ。さすが『妖怪絶対殺すマン』のあだ名が弱小妖怪たちの間でつけられているだけはある。
一方の紫は消極的というか、あまり乗り気じゃないようだ。まあ彼女の気持ちもなんとなく察してあげられるんだけど。
「紫、半端な気持ちで戦うのならやめときな。そんな覚悟じゃ本気の私とやっても怪我するだけだよ」
「……そうね。あなたの言う通りだわ。どんな敵であれ、異変解決の邪魔をするのなら—–—–倒すまでよ」
おっ、私の発破が効いたのか、ようやくやる気になったようだ。
彼女は深呼吸をした後、私を睨みつけてくる。
うん、いい目だ。やっぱり戦うのなら、それでなくちゃ面白くない。
「紫、気をつけなさいよ。あいつは中級妖怪程度に見えて実際は—–—–」
「すごく強い、でしょ? 知ってるわよ。付き合いだけなら霊夢より長いんだから」
「……さっきから思ってたんだけど、あんたとあいつって友人か何かなの? 随分親しげにしてたようだけど」
「そんなところよ。さあ、そろそろ始まるわ。気を引き締めておきなさい」
あ、適当にはぐらかしたな紫。
とはいえ、霊夢が私と紫の関係を知っちゃったのはちょっと問題かな。普通中級妖怪と大妖怪最上位に接点なんて生まれるわけないし、また怪しまれちゃうかも。
まあそれは後回しにしとこう。今は目の前の戦いに集中だ。
「スペルカードは何枚にするの?」
「スペカは五、残機は三よ」
「ありゃ、随分と大盤振る舞いなことで」
「それだけこっちも本気ってことよ。今日も前回同様ぶちのめしてあげる」
「ふふ、私も負けっぱなしはやだからね。今日は本気で、やらせてもらうよ!」
私は舞姫を振るい、大量の弾幕をばらまく。
それが弾幕ごっこの始まりの合図だった。
霊夢たちは私の弾幕を完璧に躱しながら、反撃の弾幕を繰り出してくる。
ちっ……やっぱ二人はきついな。でも弱音を吐いてる場合じゃない。大口叩いた以上は勝たなきゃやっぱかっこ悪いし。
足に妖力を込めて地面を蹴る。そして爆発的に加速し、一番近くにいた霊夢に刀を振って—–—–直前に避けられてしまった。
「っ……あっぶないわね! 弾幕ごっこはスペル以外の近接攻撃は禁止よ!」
「わかってるって。霊夢の数ミリ前で斬撃を放つつもりだっただけだよ!」
「ちっ……相変わらずの化け物ね……!」
要は刀が相手に触れなければいいのだ。数ミリでわざと空振るなんて美夜にもできないだろうけど、私ならできる。
ルールにも違反してないので、霊夢はそれ以上言い返すことをやめたようだ。いや、喋る暇がなくなったのかな?
それにしてもよく避けるものだ。萃香が起こした異変以前の彼女ではこれでワンヒットはいただけたはずなのに。やっぱ私の近接格闘術講座が効いてるようだね。
「でもこれでおしま……いっ!?」
多重のフェイントをかけた上で霊夢を追い詰め、トドメを刺そうとした時に突如目の前で空間の歪みを感じ、とっさに飛び退く。
そして一拍遅れて、霊夢と私を遮るように隙間が開かれ、中から弾幕が飛び出して来た。
「タイミングは完璧だったのに。これも避けるのね……」
「いやー危ない危ない。霊夢に集中するあまり紫の存在を忘れてたよ」
言葉ではそう言ってるものの、紫はさほど驚いてるようには見えなかった。
まあ本来の私だったらスキマを突き破ってそのまま霊夢を斬ってるだろうし、それと比べちゃこんなリアクションになるのも頷けるけどね。
私が下がった隙を見て、霊夢も後方に飛び退いて距離を取ってくる。そしてふわりと宙に浮かぶと、紫共々遥か上空にまで飛んで行ってしまった。
あちゃー、嫌われちゃったか。まあ地上より空中の方が踏ん張りが利かず、接近戦がしにくくなるのも事実だし、それをわかってるからこそ、霊夢たちは上空に飛んで行ったのだろう。
いいでしょう。この私が剣術だけじゃないってこと、見せてあげる。
刀を鞘に納め、指をパチンと鳴らす。すると八つの魔法陣が私の周囲に展開された。
それらから空を覆い尽くすほどの大量の弾幕を放ちながら、私も上空に飛んで彼女らを追いかける。
しかし、やっぱり空中戦では霊夢たちの方が有利らしい。あれだけ撃ったのにも関わらず二人は弾幕を全て避けて、お返しとばかりにお札を放って来た。……しかもスキマで転送までさせて。
私の四方八方に複数のスキマが展開され、そこから追尾してくるお札—–—–ホーミングアミュレットと分裂するお札—–—–拡散アミュレットが数百単位で飛び出してくる。
視界が赤と青で埋め尽くされてしまうが、それは逆に言えばどこに撃ってもお札に当たるということ。別段ピンチにはなりはしない。
—–—–『イオナズン』。
巨大な光球を複数散らして、指を鳴らす。それが起爆の合図となり、辺り一帯の竹林をなぎ払うほどの大爆発が私の周囲で発生した。
これでお札は焼け落ちて全滅。しかしスキマだけはまだ健在していた。
ちょうどいいや、これも利用させてもらおう。
—–—–破道の六十三『
これまた巨大な雷のレーザーが手のひらから放たれ、私の目の前にあるスキマに吸い込まれていく。
スキマというのは空間と空間をつなげる裂け目。入口と出口は必ず存在しており、それらの立場が入れ替わることもある。
この場合、雷吼炮が入っていったのが入口、そして出口として繋がってる場所はもちろん—–—–紫たちのすぐそばだ。
「しまった! 霊夢、伏せなさいっ!」
「っ、くっ……!?」
スキマを閉じようにも、雷の速度では対応できるはずもなく。
間に合わないと一瞬で判断した紫が霊夢に飛びつき、無理やりその場を離脱させる。その直後に一つのスキマから光が溢れ、巨大なレーザーがそこから飛び出した。
それはそのまま真上へと進んでいき、竹の天蓋に大穴を空けると夜空へと消え去っていった。
「霊夢、好都合よ。あそこから竹林を脱出するわ!」
「ちょっと! さっきの謝罪はちゃんとしてもらうからね!」
さらに上昇して、天蓋にできた穴に向かっていく二人。スキマを使わないのは、その瞬間に起きてしまうタイムロスで私に撃ち落とされるのを考慮しているからだろう。
でも、わざわざ見逃してやるわけないでしょ? 広い空間に出られたら不利になるのはこっちなんだし、絶対に追いついてみせる。
しかしその意気込みも無駄になってしまったようだ。さらに加速するも、霊夢たちはもう竹の天蓋の外へと出てしまった。
仕方がないから、急いで私もそこに向かおうとすると、なんと天蓋に空いた穴からなにかが迫って来ているのが確認できた。
……まさか。
「廃線『ぶらり廃駅下車の旅』」
「電車ぁ!?」
おいちょ待てよコラ!
穴を通るどころか周りの竹天井を壊しながら落ちてくる文明と鉄の塊。
刀をおちおち抜いてる暇はない。しょうがないので両手に妖力を込めてそれを受け止めようとする。が、ご存知の通り私の筋肉はひ弱なわけで。勢いに逆らえず、どんどん私の体が電車に押されて下に降下していく。
そんな中、必死に【形を操る程度の能力】を発動。足元の空気を固めることで足場を作り出し、その上で踏ん張ってようやく電車が止まってくれた。
しかし安心したのも束の間。
電車に突如強烈な衝撃が走って、私もろとも地面に叩きつけられた。
バラバラになった鉄片に囲まれて倒れている中、わずかに霞む視界で上を見上げる。
そこには、紅白の装束を纏った美しい少女が空中でオーバーヘッドキックをした後のような体勢で固まっていた。
『陰陽飛鳥井』というスペカがある。巨大化させた陰陽玉を蹴りつけ、相手にシュートする。今回はスペカとしては発動しなかったものの、霊夢がやったのはこれと同じことだろう。
すなわち、電車を蹴った。
人間の限界まで強化された霊力込みの彼女の蹴りは凄まじい威力を持っている。電車一つを挟んで私をぶっ飛ばすくらいわけないだろうね。
いやはや、やられた。ナイスプレイ、ナイスコンビネーションと言わざるを得ない。
とにかく、これで被弾一だ。人数の差がある分、オープニングヒットをもらって流れをこちらペースにしたかったけど、こうなっちゃ仕方がない。
「響け『舞姫』」
呟きながら抜刀すると、刀身が変化して九つの穴と鈴を付けた儀式剣のようなものへとなる。
それを手に持ち、再び飛翔。今度は上りざまを狙うつもりはないらしい。先ほどよりも拡張された穴をやすやす通り抜けて、迷いの竹林の上空へと到達する。
そこはまるで星の海だった。
黒いキャンパスに小さくて色鮮やかな点と一つの黄金の玉が描かれている。それ以外は何もなかった。ただ静寂が広がるのみである。
そしてそんな幻想の海に二人は浮かんでいた。いや、待ち構えていたと言った方が正しいか。
「ふふ、やるねぇ。さすがは霊夢と紫だよ。今回ばかりは、ちょっと分が悪いと認めざるを得ないね」
「……楼夢。もう一度聞くわ。どうしてあなたが異変に、しかも首謀者側として参加しているの?」
「んなこたぁどうでもいいでしょ。何に参加しようが、誰と戦おうが私の勝手だし。まあ一言で言うと、それなりの報酬がもらえるから、かな」
そう、私の恥辱写真集の焼却というご褒美が!
そのためにこれだけ奮闘している私の気持ち、あ“な”た“に”は“わ”か“ら”な“い“で”しょ“う”ね“っ!?
「……そう。なら力ずくで聞き出してあげる!」
目に見える限りのありとあらゆる空間に線が引かれ、チャックのように開かれる。しかしその数は先ほどとは桁違いだ。数十どころか数百のスキマが空を埋め尽くす。
それらの中が光ったと思った次の瞬間、無数のレーザーが放たれた。
「幻巣『飛光虫ネスト』」
「くそ。どこぞの英雄王かよおのれはぁ!?」
障害物がなくなった分速度を出しやすくはなったけど、防いでくれるものがなくなってしまっているからプラマイゼロ。それに、いくら速く動けてもこんだけ撃たれりゃ直撃コースのものもあるわけで。
いくら一秒に十回ぐらい剣を振れるとしても、とても手が足りなかった。
「くそっ、こうなったらっ! 滅符—–—–『
私の背中に、身長をやすやすと超える大きさの炎と氷の翼が生えてくる。それで羽ばたいたことによって炎と氷の竜巻がそれぞれ発生し、レーザーを次々と呑み込んでいく。
それだけでは終わらない。レーザーを一掃した後、私は自らが炎氷の竜と化して、紫の方へ突っ込んでいった。
しかし彼女の姿は、竜と衝突する直前に消え去ってしまう。そして彼女がいたであろう場所を通り越した瞬間、私はなぜか身動きが取れなくなっていた。
「なに……っ!?」
「何回やったと思ってるのよ。あんたの手なんてお見通しよ」
そんな霊夢の声と、遠くで開かれたスキマから出てきた紫を見た時、悟った。
はめられた、と。
元々紫がいた場所にはなんらかの条件を満たすことで発動する結界が張られていたのだろう。そして私の突進をスキマで避けてからのトラップ発動。これで私の動きが一瞬止まってしまった。
その隙を突いて霊夢は私の両翼を結界でさらに拘束したのだ。現に私の翼は羽ばたくことすらできなくなっている。
「霊刃『森羅万象斬』!」
決断は一瞬だった。
スペカ宣言をし、巨大な斬撃で結界ごと拘束を叩き切る。そして飛び出して紫か霊夢、どっちかを攻撃しようとしたが、肝心なことをこの時私忘れていた。
そう、紫の飛光虫ネストはまだ終わっていないということに。
全方位を結界に囲まれ、スキマに囲まれ。
この檻は二重になっていたのだ。それに気づいたのは結界が壊れて、外の景色が見えてからで、もう遅い。
視界全てが光に包まれ、焼けるような痛みが全身に走った。
「ぐ……ご……っ!?」
いくら殺傷能力はないとはいえ、多くをまともに受ければ大ダメージとなる。美しい巫女服はところどころが焼け焦げており、その持ち主を最後の最後まで守ろうとしていたことが感じられる。
これで被弾二。もう後がない。
「つぅ……っ! 流石にまずいかも……」
「当然よ。いくらあんたが強いっていっても、こっちは幻想郷最高クラスの存在が二人もいるのよ? せめて誰か一人でも連れてくるべきだったわね」
「言ってくれるねぇ……」
別に、この状況に不満を抱いてるわけじゃないさ。この異変に参加したのも、フランを手放したのも全部私自身が決めたこと。そこに後悔があるわけじゃない。
でもね、それでも負けていいってことは絶対にないのよ。
剛を倒して以来、久方ぶりに天辺の見えない山が見えた気がした。ならば乗り越えたくなるのが妖怪の本能ってもんでしょ!
「ふふ……あははは!!」
狂ったように私は突如笑い出す。
霊夢はそれを奇怪なものを見るような目で見ているが、紫は私がこれから何をやろうとしているのか悟ったようだ。
「いいよ、見せてあげる。これが私楼夢の最後の切り札—–—–」
「霊夢、そこから離れなさいっ!?」
腰から二本目の刀—–—–妖桜を抜く。そして膨大な妖力を纏う二刀を打ち付け合い、舞姫の真の力を呼び起こした。
「ラストワード—–—–『
「ポケモンハートゴールド楽しいぃぃ! 思わず睡眠時間も削っちまうぜぇぇ! 作者です」
「テメェそのせいで投稿遅れたのか!? いい加減にしろ! 狂夢だ」
「んで、なんでまたポケモンを、しかも古いハートゴールドをやってるんだよ?」
「なんとなくです。アマゾンで偶然見つけて、気がついたらポチッとしていました」
「そういえばお前はガキのころにソウルシルバーをやってたんだっけか?」
「当時二百円でBO●KOFFに売ってしまった小学二年生の私を殴りたい」
「あれ最低で2000円程度するもんな。ちなみにホワイトとかブラックは格安で売られてることが多いから、もしやりたくなった人は中古ゲームショップへダッシュだ!」