東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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永夜抄はまだまだ続く

「ねー火神ぃ。本当に幻想郷にアイツがいるのー?」

「いる。俺の鼻が感じ取ったんだ。間違いねぇ」

「はぁ……楼夢だけならまだしも、なんで目的のやつと面識のない私まで……」

 

  人里の中を歩く人物が三人。逆立った灰色の髪を持つ男は左右に、髪の色は金と桃で違うが背丈が同じくらいの少女たちを連れ添っている。

  もちろん一人は私だ。そして他の二人は火神とルーミア。私の山に住み着いたツンデレカップルである。

 

  火神はフードのポケットに両手を突っ込み、肩で風を切りながらのしのしと道の中央を進んでいく。そのやや後ろを歩くルーミアは気だるげだ。彼女が言った通り、無関係なのにも関わらずに今回の件に引っ張り出されたことに不快感を感じているのだろう。

  しかし火神が自分の鼻についてさりげなく誇らしげにしていると、疑問が浮かんだのか私たちに問いかけて来た。

 

「ん? 火神の鼻って何か秘密があるの?」

「……あー、ルーミアって火神の種族がなんだかわかる?」

「悪魔じゃないの? ほら、よく二つ名でも呼ばれるし」

「……おい火神、お前自分のガールフレンドに自分の種族すら教えてないってマジかよ」

 

  マジかー。まさかとは思ってたけど、本当に知らなかったとは。自分の個人情報すら教えてないとは相変わらずのコミュ障だな。

  若干冷たい目線を私から感じ取ったそうで、火神は自然と私から顔を背ける。

 

「うっせぇ。普段は言いふらさねぇし、教えんの忘れてたんだよ」

「だとしても将来の伴侶に教えてないのは酷いもんだね。ほら、ルーミアもショックのあまり若干涙目になってる」

「うっ、うっ……そんな、酷いよぉ……」

「ウルセェ! 安っぽい演技してんじゃねぇよ!」

「「あ、バレた?」」

「バレバレだわボケナス!」

 

  お、さすが我らが伝説の大妖怪のツッコミ担当。今日もキレッキレだね。……いや、どうやら本当にキレてたらしい。幸いここが里の中ということで殴りかかっては来ないらしいが、今にも焼き狐にされそうな雰囲気だ。

  ちょっといじりすぎちゃったかな? 反省はしないけど。

 

  さて、そろそろ話を本題に戻そうか。

 

「火神の種族はフェンリルだよ」

「西洋の犬っころね。なるほど、だから鼻が効くと。でもその割には尻尾も獣耳も見当たらないんだけど」

「俺は元々こういうのなんだよ。だから群れでも捨てられた。まあ幸い、そいつらはその後皆殺しにしてはいるがな」

 

  クックック、と楽しげに笑う火神。

  ……ああ、初めて知った時は考えが至らなかったけど、よくよく考えてたらこいつが復讐対象を見逃すはずがないね。彼のご家族にはお愁傷様としか言いようがない。

 

  それにしても、気になるな。火神もフェンリルだというのなら私みたいに獣の形態があるはず。それについて聞いてみたところ。

 

「あるにはあるが、見ない方がいいぜ。耳も尻尾もない東京タワー並みの大きさの犬なんてホラーでしかねぇ」

 

  と、返って来た。

  ……うん、いくら伝説の大妖怪だからってサイズデカすぎじゃね? 正直未だに二メートル超えれない私はいったいなんなんだろう。いや、娘たちもこんなもんだから、きっとこれは妖狐全体の問題なのだ。……きっと。

 

「まあだいたい理屈はわかったわ。で、どこでその目的人物の匂いを感じ取ったの?」

「たしか寺子屋辺りにいた……ん、あれだ。あいつに間違いねぇ」

 

  指を差された方向を見てみる。そこには寺子屋の生徒たちに囲まれている綺麗でボンキュッボンな女性がいた。

  ……うん、あれ慧音だね。たしかに私も彼女の匂いを改めて意識してみると、よく知る相手の匂いがプンプンしてくる。前会った時は風呂上がりとかだったのかな?

 

「それでどうすんの? 言っとくけど堅物の慧音先生とクレイジーな火神じゃ絶対すれ違いが起こるわよ?」

「うーん……たしかに、礼儀知らずで身勝手な火神じゃ相性が悪いか……。しょうがない、ここは私が行ってやろう」

「おいお前らさりげなく俺をディスんのやめろや」

 

  なんのことだか? 無視無視ー。

  ササっと逃げるように慧音の元へ向かう。幸いなのか、さっきまでいた生徒たちは寺子屋内に戻ったようで、この近くには現在私たちしかいなくなっていた。

  そしてさりげなく笑顔で声をかけ、挨拶をする。

 

「ヤッホー慧音。お久しぶりだね」

「お前は……楼夢だったか。いやすまんな、まだ一回しか会ったことがないからすぐに浮かび上がらなかった。それにしてもお前、前は敬語だった気がするのだが」

「あー、あれはちょっとこっちに来たばっかで緊張してたの。素はこっちだからこれからはこれでよろしく」

 

  緊張していた、というのは間違いではない。いや正確に言えば怯えていた、だね。

  いやだってさ。話しかけようと思ってたらいきなりチルノが頭突きで死にかけてたんだよ? 普段は痛みなんてほぼ気にしない妖精が出してはいけない音程の唸り声を出してたから、すっかり萎縮してしまったんだっけ。

  まあそれも過去の話だ。今なら逃げる程度のことはできるようになってるだろうし、おそらくは大丈夫であろう。幸い慧音も理解してくれたのか、すぐにこの口調を受け入れてくれた。

 

「それで、私に何か用か?」

 

  うーん、勢いに任せて出て行ったはいいけど、なんて聞こうかな。

  一瞬だけ迷ったが、結局まずは外見だけ伝えて様子を見ることにする。

 

「ねえねえ、今人を探してるんだけどさ。長い白髪に赤い瞳の女の子って見覚えない? もんぺとか着てたらなおよしなんだけど」

「……いや、知らないな。すまんが他を当たってくれ」

 

  嘘だ。私が特徴を話した途端、一瞬だけど眉間にかなりシワが寄っていた。おそらく動揺した表情を隠そうとして力を込めていたのだろう。

 

  確信した。慧音はやつとなにかしらのつながりを持っている。そしてそれを容易に漏らさないように警戒しているということは、よほど親密な関係であるに違いない。

 

  しかしそれを指摘する前に、慧音は逃げるように私を追い越して進んでいく。

  そしてある程度歩いた地点で、無造作に突き出された足が彼女の進行方向を妨げた。

 

「……なにか? すまないが、道の邪魔だ」

「見え透いた嘘ついてんじゃねぇよ。顔に一瞬出たのが決め手だったが、そもそもテメェの服やらに今日も奴の匂いがついてる時点でテメェは黒星だったんだよ」

「……最終通告だ。そこをどけ。でないと痛い目をみるぞ」

 

  あ、まずい。火神にそんな喧嘩売るような言葉言っちゃったら—–—–。

 

「ハッハハハハっ! こりゃ傑作だ! たかが過去の歴史を見ることしかできない畜生、それも半端者風情が? この俺に喧嘩ァ売ってんだからよ!」

「……」

 

  目の前の脅威にようやく気付いたのか、無言で拳を構える慧音。でもその時にはもうすでに遅すぎた。なぜなら—–—–もうすでに慧音の顔に蹴りが飛んできているのだから。

 

「『底なし怨霊沼』ッ!」

「『森羅万象斬』ッ!」

 

  しかしギリギリのところで、攻撃は慧音に当たることはなかった。まずはルーミアが慧音の真下に出現させた影の中に下半身を引きずり込み、蹴りを外させる。そして後ろに控えていた私が火神の足に向かって青白い斬撃を放つことで、彼の蹴りを相殺したのだ。

 

  たった今自分が死にかけていたという事実に呆然とする慧音を沼から引きずり出し、隅の方へ投げ捨てる。あとは彼女が正気になって逃げてくれたらそれで成功だ。

 

「おい楼夢、ルーミア! テメェら裏切りやがったな!」

「落ち着けって! 今ここであいつの友だちかもしれないやつ殺したら逆効果でしょうが! そもそも居場所を聞き出すためにわざわざ声かけたんでしょ?」

「……ちっ。それもそうだ。ムカついた女だったから、危うく殺しちまうところだったぜ」

 

  クッソ、このクレイジー野郎め……。

  火神は私に今言われたことを理解して反省したのか、慧音を追い討ちするのはやめたようだ。露骨に舌打ちしながら邪魔にならないように、この場所を離れていく。

 

  さて、残ったのは私とルーミア、そして目を閉じて壁に寄りかかっている慧音だけとなった。

  どうやら気づかぬ間に気絶してしまっていて、逃げるに逃げれない状況になっていたようだ。現在はルーミアが優しく顔をペチペチ叩くことで起こそうとしている。

 

「そういえばさ。どうしてルーミアは慧音を助けたの? 普段だったら絶対に見捨ててたのに」

「……この人はチルノとかにとって必要な人なのよ。だから私が守っただけ。後、ここからは少し喋り方を幼くするわ」

「ん、うっ……?」

 

  お、話してたらなんとやらだ。

  意識を取り戻したのか、慧音は呻きながら徐々に目を開けようとする。しかし眠っていた脳が現状を理解した瞬間に、勢いよく起き上がり、声を荒げた。

 

「た、大変だ! 里にあんな化け物がいるなんて……すぐにみんなに知らせなくては!」

「はーい、慧音、落ち着こうね」

 

  そのままスッ飛んでいきそうな勢いで駆け出した慧音を止めるために、指を鳴らして術式を一つ。光の鎖がどこからか出現し、彼女の体に巻きつくことで拘束した。

 

「ぐ、これは……!?」

「だーかーらー、あれはもう去ったって。里にはいないよ」

 

  慧音は私の言葉で落ち着いたのか、目を一旦閉じる。あれはおそらく里内の妖力を感知しようとしているのだろう。

  でも残念、慧音ごときじゃ火神の隠蔽能力を看破するのは不可能だ。今やつはおそらくここからちょっと遠い場所で団子でも食っているのだろう。あれだけやらかしといて、太いやつである。

 

「……たしかに、脅威は去ったようだな。私を助けてくれてありがとう、楼夢にルーミア」

「気にすることはないのだー。慧音先生は親切だし、守らなくちゃなのだー」

「ふ、そうか……。私は教師思いのいい生徒を持ったようだ」

 

  なるほどね。どうやらルーミア(幼女)と慧音は生徒と先生の関係らしい。そりゃ慧音に死なれたら困るわけだよ。

 

  さて、火神がやらかしたことに一悶着ついたところで。

  私はもう一度慧音にやつの居場所を聞いてみることにする。

 

「ねえ慧音。もう一度聞くけど、赤い瞳と白い髪を持った女の子の居場所を教えて」

「……だめだ。さっきのやつがいる以上、私はお前を完全に信用するわけにはいかない」

「いや、さっきはただ接触の仕方を間違えただけであれでもいいやつ……いいやつ? ……そう、いいやつなんです! それにあいつも同じ髪や目を持ってることに、関係性があるとは思いませんか?」

「……たしかに、共通点はあった。まさか彼女の父親……いや、それは死んだという話だ。となれば、親戚か何かか?」

「そうです!それです!」

 

  完全な嘘っぱちである。

  そもそも火神は妖怪、あいつは元人間。種族が違う。

  しかしそんなことは話さねば気づかないようで、慧音はあっさりとそれを信じたようだ。なら仕方ないと言って、懇切丁寧に彼女の居場所を教えてくれた。

 

「あいつは今迷いの竹林に住んでいる。役に立つ情報はすまないがそれくらいしかない。なんせ自力じゃ私だって行ったことないのだからな。後はお前たちだけでどうにかしてくれ」

「ありがとう。助かったよ。じゃあね、慧音」

「ありがとなのだー」

 

  なんだ、灯台下暗しとはこのことか。竹林なら最近行ったばっかだし、永夜異変の時に巡り合わせが良ければ会えてたんだね。まあ火神とかはその時いなかったからまた来ることにはなっただろうけど。

 

  慧音が視界から消えた瞬間に明るい笑みを消して冷酷な表情を浮かべるルーミアを引き連れ、里を出て行く。外ではすでに火神が待っていたので、このまま目的地まで直行することになった。

 

 

  ♦︎

 

 

  そして竹林の中を進んでかれこれ数十分が経つ。

  忘れてましたわ、ここの特徴。傾斜やら霧やらのせいで絶望的に迷いやすいんだった。

 

「だぁぁぁぁぁ! 全く学習できてねぇぇぇぇ!」

「……どーすんのよこれ。一応脱出は簡単だけど、これじゃあ目的地にたどり着くのにどれだけ時間がかかることやら」

 

  唯一この竹林に行ったことがあるくせに対策なしで突き進んでしまった私を責めてか、ルーミアの冷たい視線が突き刺さる。

  あーそうですよ!? 悪いですか!? 私だって間違えることぐらいありますもん!

  ……もはや逆ギレである。

 

「俺に良い案がある」

「もうだいたい想像はつくけど言ってみ?」

「ここの竹全部燃やす」

「アホかいな!? お前以外の全部が燃え尽きるわ!」

 

  そもそも竹は燃えやすいうえに、下手に高温で炙ると中の空気が膨張して爆発を巻き起こしてしまう。それが何万回も連鎖して起これば……お察しの通りとなる。

 

  しかしそんなサイエンティックな話が火神に理解できるはずもなく、私のことを無視して手に炎を宿し始めた。ちょ、やめろ、やめろォォォ!

 

「縛道の九十九『禁』!」

「離せコラァ! 離せェ! 見渡す限りの竹、竹、竹! 頭がどうにかなっちまいそうだ!」

「もうすでになってるから安心しろって! ルーミアも死にたくなかったら手伝え!」

 

  地面に手を押し当てて術式を発動させる。すると二つの分厚くて黒いベルトのようなものが火神に絡みつき、次に現れた無数の釘が突き刺さって固定することで彼を拘束した。

  しかしそれでも悲しきかな。九十九番の鬼道でも火神を抑えるには力不足だったらしい。ブチブチと徐々にベルトが引きちぎれていく音を聞いて、慌ててルーミアに救助要請の声を張り上げた。

 

「もう、仕方ないわねっ!」

 

  ルーミアも能力を『闇を操る程度の能力』を発動する。幸いここは竹の天蓋で覆われており、彼女の力となり得る影がそこら中にある。周囲のそれらを操り、私が発生させたベルトに覆い被さるように、黒い鞭が火神を縛り上げる。

  しかしそれでも……。

 

「だぁぁぁぁっ!! しゃらくせぇ!」

「おいおいマジですか……あれでもダメなのかよ」

「言ってる場合じゃないでしょ!? さっさと退散するわよ!」

 

  一瞬光が火神の体から漏れたかと思うと、次の瞬間、それはとてつもない轟音へと変わった。

  おそらくは大規模な爆発が火神を中心に起きたのだろう。幸い爆発は私やルーミアの術式の拘束のおかげで最小限で済んだが、その代わりにそれらは全て消滅してしまっていた。そして残ったのは炎を体に纏う火神のみ。

 

  こりゃ本格的にまずいぞ! シャレにならん!

  このままの雰囲気じゃ火神が何もしなくても竹に火が燃え移り、爆発してしまいそうだ。そしてそうなったら悪夢の始まりである。

 

「ちょっと楼夢、アンタもあれと同格ならなんとかしなさいよ!」

「無茶言うな! 私が本気を出したら出したでここが消滅するわ!」

「じゃあどうすればいいのよ!?」

「そんなこと言われても……ん?」

 

  ふと、竹林の奥で動くなにかを私の目が捉えた。

  白い毛並み……うさ耳。そうか、あいつだ!

 

「おい火神! いい案があるから火を止めてくれ!」

「……あ? んなもんあるんだったらさっさとしろよ」

「わかってるって。そのためにはルーミア! あそこにいる野うさぎを拘束してここに持ってきて!」

「……なんだかよくわからないけど、わかったわよ」

 

  私の声が聞こえてしまったのか、うさぎはそこから逃げ出してしまう。でも問題ない。ルーミアは影を伝ってうさぎの近くに移動すると、それを拘束してすぐにこちらに引きづり渡してきた。

 

「ひぃぃぃぃっ!! なんで毎回毎回こんな役割なのぉ!? 今回なんもイタズラしてないのにぃ!」

「……おい、この腹を壊しそうなうるさい野うさぎはなんだ?」

 

  散々野うさぎって連呼してたけど、もちろん彼女は妖怪である。

  名は因幡てゐ。永遠亭の永琳の弟子であり、ここいらの兎のまとめ役だ。

  性格はイタズラ好きでズル賢い。故にこの竹林を定期的に見回っては、遭難者を罠にかけて遊んでいるのだとか。しかし今回はその竹林を歩き回っても迷わないマップ力が役に立つ。

 

「ヤッホー、てゐ。早速だけどさ、白い髪に赤い瞳の女の子がここにいるって聞いてるんだけど、案内してくれないかな?」

「へんっ。無理やりか弱い少女を誘拐するやつに誰が……」

「別に今日の晩飯が兎鍋になっても構わないのよ?」

「……はい。すんません。調子乗ってました」

 

  うん、比較的平和に交渉が終わったね。

  てゐの案内のおかげで火神の怒りも徐々に鎮火していってるようだ。これでもう竹林を焼き払うなんていう狂行に走ることもないだろう。

 

  てゐの案内は正確的だった。

  道無き道のはずなのに彼女は迷うことなく先頭を歩いていく。それどころか、途中に仕掛けてあった罠数十個を全て覚えている始末だ。よしんば彼女自身が仕掛けたものだとしても、いったいどういう暗記能力を持っているのやら。この竹林を迷わずに歩く秘訣を聞いてみたところ、一万年以上程度ここに住んでたら慣れるものらしい。

  ……おい幼女、お前何歳よ?

 

  そんな疑問があったけど、ようやく目的地にたどり着くことができたようだ。

  目の前にはえらく酷いボロッボロな木造の小屋がポツンと立っている。いや、あれじゃあ置かれてるって言われても違和感がない。

 

「それじゃあ私はもう行くからね! あばよ!」

 

  そう言い残して、てゐはまさに脱兎の如くこの場から去っていった。

  しかしそれを気にするものは誰もいない。みんな、この小屋の中にいる人物の気配に集中している。

 

  火神が先頭に立ち、扉らしきものの前まで歩いていく。そして—–—–。

 

「おらよぉっ!」

 

  —–—–豪快なヤクザキック! 会心の一撃! 扉は木片へと変化した!

  その時の轟音によって目覚めたのか、中から素っ頓狂な少女の声が聞こえてくる。

 

「うぉっ!? なんだ敵襲か!? 輝夜か!?」

「残念、全て外れだ」

 

  寝起きなのか、半目で定まらぬ視界のまま、声が聞こえた向きに向かって少女の拳が振るわれる。しかしそれは火神の左手によってあっけなく掴まれることになる。

  そこで気づいたようだ。今目の前にいる人物の正体に。

 

「げっ、し、師匠……っ!」

「よぉクソガキ。遊びに来たぜぇ!」

 

  戸惑いの表情を浮かべる少女に、挨拶がわりの炎の拳が打ち込まれた。

 

  そう、今全身を炎に包まれて死亡した少女。

  彼女こそが大妖怪、火神矢陽の一番弟子、藤原妹紅。私たちが探していた人物だった。





「タイトル通り、まだ永夜抄編は終わりませんよー。ああ、今年中にはこの小説も完結すると思っていたのに……。作者です」

「テメェが過去に妙なフラグを立てまくったせいじゃねぇか! 狂夢だ」


「さて、多分これが今年最後の投稿になると思います」

「本当にこの小説いつ終わるんだ……? 正直言って文字数だけでアクセス稼いでる気がするんだが」

「安心してください。私もうすうす気づいていたことです。でもまあ以前から言っている通り、エンディングまではちゃんと考えられていますので失踪の心配はないと思いますよ?」

「とはいえ、まだ永夜抄で足踏みしてんだろ? いくら最新の原作までやらないとしても長すぎるぜ」

「やっぱ原作キャラ登場させすぎたのが原因ですかね。ウキウキと初期時代を書いてた私をぶん殴りたいです」

「そのせいでストーリーに辻褄が合わなくなって今後の展開の修正を六、七回ぐらいしたんだっけか」

「昔は『長い方がいい』ってことで超古代から始めたわけですが、真面目に書いてみると馬鹿げてますね。スケールがデカくなると書いたストーリーも大雑把にしか覚えてられませんし、何よりキャラ管理が難しすぎる」

「まあ、来年からは今年よりかは活動しやすくなるだろうし、気張っていこうぜ」

「はい。来年も『東方蛇狐録』をよろしくお願いします!」

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