東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:キメラテックパチスロ屋
まずは投稿が遅れてしまったことについて今一度謝りたいと思います。これからはしばらく時間が取れそうなので、積極的に書いていくつもりです。
それでは、本編をどうぞ。
進撃の花
暖かな風が花弁とともに私のほおを撫でる。
今は春。私が最も好きな季節である。
なんといっても春は桜や梅、そして団子など、私の好きなものが何かと多い。全体的にピンクのイメージだし、同じく、不本意ながらピンクファンキー頭の名で知られている私が親しみを覚えるのも仕方のないことなのだろう。
なのに。なのにだ……!
「どうしてこの季節にヒマワリが咲き狂ってんだよぉぉ!?」
美夜が管理する、我が家自慢の枯山水。
本来なら岩と砂の質素な雰囲気を通わせてくれるそこは、赤、青、黄、紫、白などなどの様々な色の花々によって侵略されてしまっていた。
「お、おかしいですね。例年通りならこんなことには……清音、舞花。貴方達、この庭に何か変なことしてないでしょうね?」
この異変に最初に気づいたのは美夜だ。いつも通り手入れをしようとして見に行ってみたら、既にこんなカオスな状況になっていたらしい。そして驚きで張り上げた声に私たち全員が縁側に赴き、こうして緊急の家族会議となってるわけだが。
「ちょ、誤解だよ美夜姉さん! いくら術式の実験だからといって姉さんの庭に手を出すほど命知らずじゃないって!」
「同感……美夜姉さん、怒ったら殺される」
「貴方達が私に抱いているイメージが気になりますが……どうやら今回ばかりは嘘じゃないようですね」
うーん、流石にうちの娘たちじゃないか。
情報を集めてみれば、どうやらこの現象はここだけでなく、幻想郷のいたるところで起きているらしい。
何もなかった場所に、一晩で大量に溢れた様々な季節の花。
おそらく私と同じように不審に思った全員が、この現象がなんなのかうっすらと理解しているだろう。
そう、これは紛れもなく『異変』であると。
なるほど、仮に犯人がいたとしても、この時期に異変を起こすのは合理的だ。
紫はまだ冬眠中だし、人間というのは何かと春になると気が緩みやすくなる。そこを狙って、なんの目的かは知らないがこんな異変を起こしたのだろう。
おまけに火神は現在ルーミアを連れて外の世界へ出張中だ。なんか、今現在外では戦争の真っ最中なのだとか。
ほんと、山に芝刈りに行く感覚で人殺しに行くなよなって話。
さてと、閑話休題。
実を言うと私、この異変を起こせそうなやつを一人知ってるのよね。ただ、性格が面倒くさいんで現状会いたくなかったわけだけど。
まあ居場所もなんとなくわかるし、ここは霊夢を待たずにささっと解決してくるか。というかあいつに可愛い霊夢を合わせたら、どんな傷物にされちゃうかわかったもんじゃない。
「そんなわけで、早速異変解決に行ってくるよ。みんなは留守番よろしくね」
「何が『そんなわけ』なんですか……。まあ、何か考えがあるのかもしれませんが、一応どこに行くのか聞いても?」
「——『太陽の畑』にだよ」
その名前を聞いた途端、美夜のみならず清音や舞花までもが露骨に嫌そうなな表情を浮かべた。
うわっ、あいつめっちゃ嫌われてるじゃん……。大方私がいなかった時に喧嘩でも吹っかけに来ていたのだろう。じゃなければうちの娘たちのこの表情に説明がつかない。
「まあ安心して。ちゃちゃっと首謀者ぶん殴って戻ってくるだけだから。それじゃあね」
それだけ言い残すと、私は自らの意思で飛翔し、白咲神社を離れて行く。
——しかし私は気づいていなかった。そのすぐ後に、紫の式である藍が来訪して来たことに。
♦︎
「楼夢様はいるか?」
「ああ、父さんなら今さっき異変解決に出向いて行きましたよ」
「ああ、遅かったか……。実はだな、この異変は……」
♦︎
空から見下ろした幻想郷の景色は格別だった。
統一性のない花たちが辺り一面を埋め尽くしており、ここまで混沌としていれば逆に美しく見えて来てしまう。できればしばらく止まって眺めていたいぐらいだ。
しかしそんな余興を異変は許してはくれないようだ。
ふと、前方の複数の影。
「……また妖精? いくら自然の力が活性化してるっていっても、これは多すぎでしょ……」
私の進路を塞ぐように現れたのは、可愛らしい羽を背中につけた幼女——つまりは妖精たちだった。
実は、私はもうすでに数十もの妖精たちと戦っている。その矢先にこれとなれば、正直面倒くさいと言う他ない。
おまけに妖精たちも強化されているようで、弾幕ごっこが素人に毛が生えた程度には強くなっているのがこれまた厄介だった。
「やっほー!」
「遊ぼー!」
「はぁ……氷華『フロストブロソム』」
きゃーきゃーと言う可愛らしい断末魔とともに、氷の薔薇の爆発に巻き込まれていく妖精たち。
うん、やっぱ妖精相手にはスペカ使った方が早いね。次からはこれを使っていこう。
「あやや、これは酷いことをしますねー。……って、あっぶなっ!?」
「……ちっ、一匹逃したか」
うっとおしく隣で飛んでいた虫めがけて刀を振るうも、それはすぐに回避されてしまう。
ちっ、無駄に素早い。さすがは天狗といったところか。
あたふたしながら持っていたカメラを点検する少女。
世間ではマスゴミと称される天狗、射命丸文だ。
「いきなり刀を振るわないでくださいよー。カメラが割れたらどうするんですか」
「いっそお前の頭蓋骨ごと割れたらいいのに」
「あやや、こりゃ辛辣ですねぇ……」
やれやれという風に肩をすくめる彼女に、また殺意のボルテージが上がる。
私が、いや幻想郷の住民のほとんどがこの駄天狗を嫌っているのには理由がある。
こいつは人の建物などに不法侵入しては写真をバシバシ撮り、それを証拠としてあることないこと自分の新聞に載せて幻想郷中に配る癖をしているのだ。
実際私や娘たちもこいつの被害に遭ったことがある。特に私に関しては、私の正体をさりげなく匂わせるように書いてるから趣味が悪い。問い詰めても『あくまで噂です』とか言ってしらばっくれることもあるから、その時はぶん殴ってやったよ。
そんな幻想郷三大不幸の象徴にランクインしそうなやつが目の前にいる。気が滅入ってしまうのも仕方のないことだろう。
「それで、今回はどんなデタラメを撮りにきたの?」
「デタラメではありません! これは予測です! 私は近々起こる恐ろしいことを、事前に皆さんにお伝えしているだけにすぎません!」
「駄目だこりゃ。話が通じないわ」
ああ。あの生真面目で出来る女というイメージだった文はどこに……。
「また酷い目に遭わされたい? て言ってもやめないんだろうねどうせ」
「ええ。危険を恐れてはジャーナリストなどやってはいられませんから」
「はぁ……。もういいよ。さっさと今回の要件を言って私の前から消え去って」
「それでこそ楼夢さんです。では許可が下りたので今から取材に入りたいと思いまーす」
そう言って、気色悪い笑みを浮かべる射命丸。
思わず殴りたい衝動に駆られそうになるけど、我慢我慢。
彼女はメモ帳を左手に、もう片方の手に握っていたボールペンをマイクのように私へ突き出してきながら質問してきた。
「ではズバリ! 今回の異変の首謀者は誰だと思いますか?」
うおっ、いきなり地雷来たぞ!?
ここで下手に答えれば、こいつの中で今回の異変の首謀者はソイツに決まってしまう。しかもご丁寧に誰の推測かわかるように絶妙にぼやかしながら付け足して。
これが話の通じるやつだったらまだいい。後日必死に謝罪しに行けば相手も許してくれるだろう。しかし今回の異変で最も首謀者候補として有力なのはあの
この腹黒天狗もそれがわかってるからこそ、こうして嫌がらせな質問をしてくるのだ。
「首謀者? そんなもの博麗の巫女にでも聞けばいいんじゃないの? 少なくともただの中級妖怪に話す内容じゃないと思うな」
「ですから、立場など関係なく、予測をですね……」
「そうだねぇ……。もしかしたら妖精のせいかもしれないね。力をつけた彼女たちが幻想郷中に花を咲かせた、ていうのが私の予想かな。これでいいでしょ?」
「はぁ……本音が聞きたかったんですけどねぇ。やっぱそう甘くはいきませんか。……まあいい、次です!」
まだ聞くのかよこいつ……。
ブツブツ文句を言いながらも、メモをしていく射命丸。私がネタ提供してる側なので、文句を言われる筋合いはない気がするんだけどな。
そしてあらかた書き終わると、再びペンのマイクを突きつけ、次の質問が飛んでくる。
「では、今あなたは何をしているのですか?」
お、まともそうな質問が来たな。
これなら普通に答えても大丈夫だろう。
「それは異変を解決するためだよ」
「なるほど。では次の記事の見出しは『博麗の巫女なんざ要らねえ! 異変解決は私一人で十分だ! 謎の妖怪少女現る!』に決定ですね!」
「全然大丈夫じゃなかった!? 」
「それでは、アリュー」
「ちょ、おい、ふざけんなよマジで!」
気がついた時にはすでに遅く、文は自慢のスピードでここから文字通り消え去っていた。
くそ、追いかけても捕まえてもいいけどそれじゃあ異変解決に時間がかかっちゃう。それじゃあ意味がない。
落ち着け私。あくまでも目的を忘れちゃいけない。
霊夢より先に首謀者の元にたどり着き、異変を解決する。そんでもって可愛い孫娘をあのキチガイから遠ざける。
悔しいが、それを成すためには文に構ってる暇じゃない。
結局、泣く泣く私は文の追跡を諦めることにした。
しかし同時にもう一つの目標が上がった。
——次会ったらぶっ殺す。
その思いを胸に抱いて、私は一人空を飛ぶのであった。
「お久しぶりです皆さん! 帰ってきました! 作者です!」
「誰もお前のことなんて知らねえよ。狂夢だ」
「というわけで、復帰早々新章スタートです。ブランクが空きすぎたせいか、少し文章力が落ちていると思われますが、それは今後で今一度鍛えていきたいと思うので、これからもどうぞよろしくお願いします」
「新章は花映塚か。作者はプレイしてないから詳しくは知らないんだっけか」
「はい。私が今まで書いた章から今後書く予定の章の中で、唯一プレイしてないのが花映塚なんですよね。だから今章は文字数が少なめになるかもしれませんね」
「まあせいぜい今のうちに花映塚の勉強でもしておくんだな」
「勉強が終わってもまた勉強……嫌なループですね……」