東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:日差丸

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壊刀乱魔

 

 

 

 

「霧符『ガジングガーデン』!」

 

  メディスンは移動しながら小型の弾幕を大量にばらまいてくる。

  だが幸い、その密度は霊夢などと比べるとやはり数段下だ。これならこの体でもなんとか避けれる。そしてできる限り近づいて、弾幕を後一つ当ててやればそれでジ・エンドだ。

 

  ジグザグと急旋回を繰り返しながら前へ進んでいく。

 

  だが、順調なのはここまでだった。

 

  目の前に迫る弾幕を避けようとした時、どこからか突如発生した濃い紫色の霧が弾幕を覆い隠してしまったのだ。

  動揺した私のほおをその弾幕がかすめた。霧に覆われる前に、弾幕を避けようと体を動かしていたことが功を制したようだ。

 

  しかし紫色の霧の被害はまだ終わらない。

  弾幕を避けるのに集中していたため、私は霧を真正面から浴びてしまった。

  そして突如肺から走ってくる、激痛。

 

「まさかこれも……毒……!?」

「正解。そしてその状態でこれを避けれる?」

 

  メディスンの一言で周囲の霧がさらに密度を増していく。

  その中に弾幕が潜り込むことでそれらを隠し、敵に不意打ちを食らわせる。

  それがこのスペルカード『ガジングガーデン』の本領ということか。

 

  霧を吸い込んでしまい、苦しむ私にそれらは到底避け切れるものではなく——。

 

  ——毒が回復したころに、一つの弾幕が私の体に直撃した。

 

「ぐ……!」

 

  腹部に急な熱を感じる。が、逆に言えばそれだけだ。頑丈な鬼の体のおかげで痛みはさほど感じなかった。

  しかしそれはあくまでダメージがあまりなかったと言うだけの話。被弾してしまったことには変わりはないので、私の残機はこれで残り一つとなってしまった。

 

  くそ、この状況はかなり拙いぞ……! こうなるんだったら、相打ち覚悟で突っ込んでおけばよかった。

  しかし後悔先に立たず。つべこべ言っててもしょうがないので、このスペカが使えないという最悪な状況でやれることをやるしかない。

 

「毒符『憂鬱の毒』」

 

  とうとうメディスンの三枚目のカードが切られた。

  現れた弾幕は先ほどのガジングガーデンと少し似ている。

  違う点は先ほどよりも弾幕の量が多いことと、弧を描くように中型弾幕を放ってくるようになったことくらいか。あとは大して違いはないと思いたい。

  厄介なのは、パット見違いがないということであの毒の霧による妨害もあるということ。

  風の術式でも使えれば戦況は一気にひっくり返るのだが、あいにくと術式は何度も言う通り今は使えなくなっている。

  ああ、こんなことなら空拳を温存しておけばよかった……。

  本日二度目の後悔先に立たずである。

 

「ほらほら。霧は当たり判定はないから、遠慮なく突っ込んできてもいいのよ?」

「断固拒否させてもらう! そんな臭いものの中にわざわざ突っ込む趣味はないんでね!」

「……そう。ならお望み通り、弾幕の方でじわりじわりいたぶってあげる!」

 

  メディスンが声を張り上げるのに連動して、周囲の霧がより一層広範囲に広がっていく。

 くそ、中級妖怪のくせになんて量の毒を出してくるんだよ。これも異変の影響だとしたら、随分と面倒くさいな。

 

  私は毒霧も弾幕として認識しているので、必然的に避けるスペースはどんどん小さくなっていく。正直言ってかなりジリ貧だ。鬼の体のおかげで毒に耐性ができているみたいだけど、それでも無効化には至ってない。そして万が一毒を吸い込んで一瞬でも動きが止まったら、その瞬間に私の体は弾幕に呑まれてしまうだろう。

 

  いつもなら頼りになる舞い姫と妖桜(相棒たち)もこの時ばかりは無力だ。刀を抜いたところで鬼の筋力を未だに制御できていないので、簡単な剣術すら扱うことができないだろう。

 

  弾幕の一つが私の左腕を擦り、巫女袖を焼き尽くす。

  もはやここまでか……。

  そう観念し始めていた時、腰につけてある鞘から僅かな振動が走った気がした。

 

  初めは気のせいかと思った。しかしいつまで経っても止まない揺れに、私は観念して視線を落とす。

 

  動いていたのは妖桜の方だった。正確にはその中に宿っている早奈が刀を操っていたのだろうが。

 

  なんだ? 何かを伝えようとしている?

  彼女に話を聞くのは簡単だ。刀を抜いて、名を唱えることで早奈の魂を解き放ってあげればいい。

  しかしだ……。早奈が本当に私に利益のある話をくれるのか? いや、相手はあの腹黒女だよ? 何か企んでてもおかしくはない。

 

  そう深い思考へ陥っていきそうになった私の意識が、肩に弾幕が掠めていったことで現実へと引き戻される。

  そうだ。迷ってる時間なんてどこにもない。

  私は両腕を交差させ、二本の刀を勢いよく引き抜き、叫んだ。

 

「咲きて響け——『妖桜』、『舞姫』!」

 

  右手には桃色を、左手には紫色を。

  舞姫と妖桜。二つの妖魔刀が解放される。と、同時に黒い人魂が妖桜から放出され、私の周りをふわふわと漂い始める。

 

『ふぅ、やっと刀を抜いてくれましたか』

 

  脳内に直接女性の声が聞こえてくる。

  この声は黒い人魂——早奈の魂から発せられたものだ。

  相変わらず耳をくすぐるような妖艶な声だ。油断すれば魅力されてしまい、意識が持っていかれてしまいそう。

  まあ、これを飼いならしてるのは他でもない私なのだから、万が一にもそんなことは起きないのだけど。

 

(というか、別に刀抜いてなくても出て来れたはずじゃないの?)

『今回は刀を抜いてもらうことに意味があったんですよ。それがなきゃ、多分この状況を打破できそうにありませんし』

 

  この状況を打破? しかも刀で?

  何言ってるんだこいつは。私の剣術は今使えなくなってることぐらい知ってるでしょうに。

 

『はい。ですから、剣術を使わなければいいんですよ』

(だから何を……いや、その手があったか)

 

  剣術というのは技術、つまりは科学的理論の集大成だ。

  例えば刀一つで鉄を切ろうとする。もちろん、棒切れのように適当に振ったところで切れやしない。しかしここに誰かが、どのような体制からどのような角度でどれくらいの力を込めればよいと教え、それを実践できるようになれば、たやすく鉄は切れるようになる。

  このように、全ての理論が合わさった時に、誰にでもその現象を起こさせることができるのが剣術だ。

 

  しかし今の私はそんな細かい理論を使わなくても、適当に振るだけでたやすく鉄を切れるだろう。

  それはつまり、何も考えずに剣術と同等のことが行えるということとなる。

 

  まあ単純だが、それ故に熟練の剣士である私じゃ絶対に思いつかなかっただろう。技術というのは取り込めば取り込むほど頭が固くなっていくものだからね。私も例にもれなかったみたい。

 

  うん? まだわかりづらいって? じゃあ、ちょっと見せてあげようか。

 

「そいよっとっ!」

 

  私は今まで構えたこともないような適当なフォームで、刀をブゥン! とフルスイングする。

  それだけで目の前の空間が歪み、空気が切り裂かれた反動で巨大な鎌鼬(かまいたち)が出現してメディスンの毒の霧を分断した。

 

  そのあまりの威力に私もメディスンも目を見開く。

  一回一回刀を振るう必要があるので、弾幕のように数十個も用意できるわけじゃない。だから霊夢や魔理沙のような熟練者には通じないだろう。

  だが、それでもこれなら……。

 

「これは……いける!」

『でしょ? では私は狂夢さんのお世話に戻りますので、健闘を祈っていますね』

 

  それを最後に、黒い人魂は妖桜の中へと戻っていき、姿を消した。

  サンキュー早奈。久しぶりにお前を見直したよ。

  そんでもって……覚悟しろメディスン!

 

「くっ……そんなデカブツに当たってたまるか!」

 

  メディスンの毒の霧がより一層濃くなるけど……無意味だよ。

  私は鬼の腕力を利用して、両手の刀を同時に思いっきり振るった。

  それによって二つの鎌鼬が出現し、次々と霧を分断しては中にある弾幕ごと切り裂いていく。

 

  毒だろうと所詮は霧だ。広範囲にたやすく広げられる分、質量が全くと言っていいほどないのが仇となったね。

 

  ここを勝機と見て、一気に真っ直ぐに私はメディスンへ突っ込んでいく。

  毒も弾幕も、風の刃を止めることはできない。

  これでトドメだ。

  私は白紙のスペルカードに新たな絵を刻みつけると、それを巫女袖から投げ捨てて宣言した。

 

「鬼技——『壊刀乱魔』!」

 

  最後に、私はある程度メディスンには近づき、両手の刀をあらん限りの力を込めてめちゃくちゃに振り回した。

  乱れ飛ぶ数多の斬撃。

  撃ち墜とそうにも、避けようにも、メディスンにはそのどちらの選択肢も取ることができず——鮮血を撒き散らしながら、彼女の体が切り刻まれた。

 

  これによって、私の勝ちが決まった。

 

  メディスンは痛みによって気絶してしまったのか、まさしく糸の切れた人形のように体を重力に任せて落下していった。

  多分、死んではいないだろう。彼女も妖怪の端くれだ。そのうち元気になると思う。

 

  刀を納めたあと、自分の体を観察してみる。

 

  鬼神化はまだ治ってはいない。しかし好都合だ。今のうちにダッシュで太陽の畑まで強行突破してやる。

  強化された今の体なら障害物も関係なしに移動できるはず。つまりは最高速——マッハ数百で走っても大丈夫ということだ。

 

  最後にせめてもの誠意として鈴蘭畑を離れてから、私は大地を思いっきり蹴飛ばし、前へと進んだ。

  瞬間、暴風でもその場で発生したかのような衝撃波が、周囲の全てをなぎ倒す。

  そんでもって爆発的な加速力を得た私を止められる者はおらず、私の足が止まるのは太陽の畑の直前まで着いた時のことだった。






「最近金遣いが荒くなって困っています。受験が終わった影響が出たんですかねぇ。作者です」

「そんなはした金でよく金遣いが荒くなったと言えるもんだな。狂夢だ」


「なあ、なんか最近文字数少なくないか?」

「ああ、それはちょっと理由がありましてね」

「サボりか?」

「違いますよ! 人聞きの悪いなぁ。」

「いやだって今までの半分程度しか書いてないとなると手抜きを疑うほかないだろ」

「そう、それなんですよ。今まで私は平均8000から10000文字くらいの無駄に長い話を時間をかけて投稿していたんですよ。でも受験中に他の作家さんたちのを見ていると少ない文字数で短い間隔で投稿している人が多かったんです。なので私もそれを見習って、少ない文字数でやっていこうかなと思いました」

「じゃあ今回のメディスン戦も?」

「本来なら一話の予定でした。後編は特に弾幕ごっこ描写でちょっと文字数取るから、今の感じで区切って見たらとんでもない話数になりそうですね」

「まあ、話数だけがこの小説の取り柄だからな」

「それ言われるとつらいなぁ……」
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