東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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本気モードのこまっちゃん

 

「ぐふっ……!?」

 

  被弾と同時に制限時間が切れ、スペカが消えていく。

  しかしそれでも、私が被弾したという過去は消えることはない。

 

  残りスペカ二枚、そして残機一個。

  オープニングヒットは小町に持っていかれてしまった。

 

  やられた。

  まさか船渡しの死神の距離を操る力を戦闘に使ってくるとは。いや、明らかに戦い慣れている小町にとっては、おそらくこれが本来の使い方なのだろう。

 

  だけど、不幸中の幸いで彼女の能力の適用範囲はある程度予測できる。

  おそらく彼女の能力は彼女自身か、彼女の弾幕にしか適用されない。

  なぜなら、もし私の弾幕ですら操れるのだったら最初のスペカの時に弾幕をわざわざ鎌で防ぐ必要がないからだ。

 

  小町はさらにスペカを一枚掲げ、それを宣言してくる。

  どうやら私が立て直さないうちに一気に叩き潰すつもりらしい。

 

「古雨『黄昏中有の旅の雨』!」

 

  小町はまず右手を地面へ向ける。するといつのまにか、彼女の手の中には最初持っていたあの大鎌が収まっていた。

  どうやら先ほどの言葉を訂正しよう。彼女はどうやら、物体の距離も操ることができるらしい。

 

  そしてその大鎌を大きく振るうと、辺りが霧に包まれ、空から弾幕の雨が降ってきた。

 

  くそ、また視界妨害系のスペカかよ!

  どうやら小町のはメディスンのと違って毒は含まれていないようだが、それでも厄介だな。

 

  ——破道の五十八『闐嵐(てんらん)

 

  持っていた刀を扇風機の羽根のように手前で回転させ、そこから竜巻を放つ。

  だが霧は一旦は晴れたのだが、数秒もしないうちに元どおりになってしまった。

  これで除去できないんだったら、霧の妨害は諦めるしかないか。

 

  すぐさま切り替え、上空からの弾幕を避け続ける。

  この弾幕は雨に似せてあるだけで、水は含んではいないようだ。だから刀で切っても対処できるのだけど、流石に数が数なのでやめておこう。幸い雨は一直線にしか落ちてこないから、避けるのは簡単だしね。

  だが、そこはさすが小町。追撃の手を休めてくれることはない。

 

  彼女は再び大鎌を振るい、今度は黄金色と銀色の弾幕を直接放ってきた。しかも、ご丁寧に能力付きで。

 

  急に目の前に瞬間移動してくる弾幕群。

  だけどこっちは百戦錬磨の大妖怪よ。一度見たものは二度と引っかからんわ。

  視界に弾幕が映るとほぼ同時に、それらが切り裂かれる。

  音速を超える私なら、あらかじめ覚悟しておけばこのように現れた瞬間に駆除することができる。それに今のでまたわかったのだけど、どうやら彼女の能力はあくまで距離を操るもので、弾幕が飛んでくる角度などを変える力はないらしい。

  つまり今後は彼女の能力が発動する前に弾幕の軌道を確認することができれば、さらに対処は容易になる、ということだ。

 

  飛んでくる全ての黄金色と銀色の弾幕を切り捨てた後、挑発するように小町に向けて笑みを浮かべてやる。

  『距離を操る程度の能力』、破れたり。ネタが割れれば案外呆気なかったね。

 

  そしてついでに、このスペカを終わらせる良い方法も思いついた。

  私は左手でスペカを持ち、それを投げ捨てて宣言する。

 

「雷竜符『ドラゴニックサンダーツリー』!」

 

 私と小町との間に、雷でできた巨大な大樹が出現する。そしてそこから伸びた枝がいくつもの雷竜となって、ジグザグの軌道を描きながら飛び出した。

 

  そしてそこで『形を操る程度の能力』を発動!

  狙いは今周りに漂っている霧。それらを圧縮させて水を作り出し、縄のようにして小町を縛り上げる。

 

「さーて、ここで小学生でも分かる簡単な質問。水に電流を流すとどうなるかな?」

「……さあ? どうなるんだい?」

「いやなんでわからないんだよ!? ……こほんっ、まあいい。答えは『水は電流をよく通す』だ」

 

  その言葉の後に、雷竜たちが周囲から伸びる水の縄へとぶつかる。そして導火線のようにその縄を伝って、縛られている小町へと噛み付いた。

 

「ぐがあああああああ!?」

「おっと。ちょっと刺激が強かったみたい」

 

  電流に身体中を焼かれ、普段はマイペースな彼女からは聞けないような凄惨な叫び声があがる。

  そしてスペカが終わったころには、小町は全身を黒く焦げさせて肩で息をしていた。

 

  ありゃりゃ。よく考えて見たらドラゴニックサンダーツリーが全弾命中したようなもんだからね。いくら威力を抑えていても、そりゃこうなるか。

 

「やって……くれるねぇ……楼夢……!」

「いやーごめんごめん。あんまりにもいい策思いついたから試して見たくなっちゃって。ま、これに懲りたら敵に簡単に支配(ジャック)されてしまうような攻撃はやめるべきだね」

 

  とはいえ、別段私に罪悪感はない。

  いくら知り合いと言っても、これは真剣勝負だ。利用できるものがあるならなんでも使うし、他人を不愉快にもさせる。しかしその程度で壊れる絆なら、それまでということさ。

 

  側から見れば小町はもう試合続行不能だ。だけどまあ、この時の彼女は今まで見たこともないくらいに目を見開き、凶暴な笑みを浮かべていた。

 

「いつつ……さっきはあまり動きたくないって言ってたけど、ここまでやられちゃ本気を出すしかないじゃないか!?」

「お前……そんな性格だったっけ?」

 

  あーあ、一体どこでやる気スイッチが入ってしまったのやら。

  雷に撃たれて頭がおかしくなったのか、小町の性格が豹変。あれはまるでバトルジャンキーの目だよ。火神とか幽香とかと同類の目。

 

「死価『プライス・オブ・ライフ』!」

 

  小町の最後のスペカが宣言された。

  大鎌を二度振るい、前方の空間をクロスに切り裂く。

  すると黄金色と銀色の弾幕同士でそれぞれ繋がれた巨大な鎖が二つ出現して、私の周りを囲った。

 

  ん? なんじゃこりゃ?

  そんなことを思う間も無く、鎖の両端が不規則に動き出す。

  例えるならば、尻尾部分にも頭を持った蛇だろうか。二つの頭はそれぞれ自分が行きたい方向に向かって自由に進もうとする。それにつられて胴体部分が鞭のようにしなり、予測不能な軌道を生み出す。

  そんな厄介な鎖が二つ。実に面倒くさいものだ。

 

  迫り来る鎖を横に飛んで避けようとする。

  だが運が悪かったのだろう。別の鎖が偶然同じ方向に曲がり、結果的に私は自ら鎖へ突っ込むような感じになってしまった。

 

「おおっ!?」

 

  とっさに体と鎖の間に刀を割り込ませ、被弾を避ける。

  だが衝撃を加えてしまったことで鎖はさらにしなり、その両端が巻きつくように私に迫った。

 

「げっ……めんどくさっ!?」

 

  とっさに上体反らし(スウェー)。イナバウアーとでもどこからか聞こえてきそうなほど背中が曲がる。

  その後は空気を能力で固めて、それを蹴ることで鎖の近くから脱出する。

 

  出し惜しみしてる場合じゃないねこりゃ。

  てことでラストスペル。最後の一枚を掲げ、高らかに宣言する。

 

「悪戯『狐火鬼火』!」

 

  私の周囲にいくつもの青い狐火と赤い鬼火が浮かぶ。

  そして刀を振り下ろすのを合図に、二種類の弾幕が同時に飛んでいった。

  だが、二つの弾幕には違いがある。

  まずは速度。狐火の方が鬼火よりも速いので、先に狐火が小町へ殺到する。

  次に軌道。鬼火は通常と同じようにまっすぐにしか進まないが、狐火は∞を描くようにしてユラユラと進む。大抵のやつならこの避けにくい軌道に困惑するんだけど……。

 

「ふっ、甘いね」

 

  小町に動揺はなかった。

  手に持つ鎌で次々と狐火を切り裂かれ、無へと帰らされていく。

 

  と、私ものんびりしてる暇はないかっ!

  スペカ発動中でも被弾したらそれで終了だ。せめて鬼火がたどり着くまでには生き延びなくちゃ。

  迫り来る二つの鎖を皮一つで避けながら、小町の方を見る。

 

  狐火と鬼火の最後の違い。それは鬼火の方には衝撃が加わると爆発する術式が仕掛けられていることだ。

  つまりは爆弾。そして武器を扱う彼女には一度だけ通じるであろう、初見殺し。

  だが一度で十分だ。彼女の残機は残り一つ。これさえ削れれば勝てる。

 

  満を持して、ようやく鬼火たちが小町の元に到着する。

  そして彼女は何も知らず、その危険物に刃を振り下ろす。

  途端に——閃光。

  近くにあった鬼火たちを巻き込んで、連鎖的に爆発が起きた。

 

  鬼火を切り裂いた時、最も真近にいた小町は絶対に避けることができない。そう、()()()()

 

 

「——ふぅー、危なかった。あたいの能力でなければ今ので終わってたね」

 

  煙の中から姿を現した小町に傷はなかった。

  『距離を操る程度の能力』。鬼火の色が狐火とは違うことに違和感を感じていた彼女はこれを使うことで、自身を瞬間移動させて爆発をやり過ごしたのだ。

 

  ——だ、け、ど。

 

「残念だったね小町。それすらも予想済みだよ」

 

  小町に向かって高速で突っ込んでいく。

  ルール上、相手に物理攻撃を加えることはできない。だが、今回に至ってそれはなんの障害にもならない。

  なんせ私の後ろには、二つの巨大な鎖が追尾してきているのだから。

 

  小町の目の前でさらに己を加速させ、彼女の背後へと回り込む。

  しかし弾幕は急には止まれない。結果的に、主人を襲うように二匹の蛇がこちらへと迫ってくる。

 

「ちっ、邪魔だよ!」

 

  だが流石にそこまで上手くはいかないらしい。

  どうやらあの鎖は小町の意思で操作できるようだった。彼女の命を受け、鎖の弾幕が頭上を通り過ぎていく。

 

  だけど、そのために私に目を離したね?

  それが敗因だ。

 

  私は両手から狐火と鬼火を同時に繰り出す。

  本来なら速度の違いから、別々で敵に向かうことになるこの弾幕。しかし私と小町との間は今一メートルぐらいしかない。

  するとどうなるか。

  なんと、狐火の真後ろに密着するように鬼火が進んでいくのだ。

 

  鎌を振るえば後ろの鬼火まで切り裂いてしまう。

  そう判断した小町は再び能力を発動しようとしたのだけど、させないよ?

  もうすでに私は他の鬼火と狐火で小町を囲っていたのだ。

  小町の能力は移動距離を操るだけであって空間移動ができるわけではない。だからこそ、このように彼女を囲ってしまえば能力は無効化できる。

 

「……やれやれ。これは完敗かねぇ……」

 

  観念したようで、小町はゆっくりと鎌を下げると、目を閉じた。

  そして。

  包囲してた全ての弾幕が彼女に命中し、大爆発を巻き起こした。

 




「ちょうどSAOを見終わった後にこれを書きました。●●●●ォォォォォォ!!(ネタバレ防止のために名前は伏せておきます。知りたかったら円盤買ってね)」

「まあ原作見たことあるから終わりはわかってたんだけどよ。雰囲気ぶち壊しのセリフになっちまうが、やっぱ今回ってちょっとシュールだよなぁ……。狂夢だ」


「シュールって……私は普通に感動したんですけどね」

「まあまあいいじゃねえか、人それぞれで。それよりも今期のアニメは何を見るつもりなんだ?」

「うーん、私大抵なろう系しか見ませんからねぇ。ワンパンマン は見ること決定してますが」

「なろう枠……あ(察し)」

「はぁ……四郎が誕生しなければいいんですけど」

「太郎、二郎をほとんど読破したやつが何言ってんだ。どうせ見るんだろ?」

「別に太郎はともかく二郎は中々見れるもんですよ。集まってくるの全員ロリだけど主人公は熟女好きで恋愛対象外ってところがギリギリのラインを保ってますし。あくまで13巻まで集めた私の個人的意見ですが」

「太郎は?」

「原作は二巻だけ。ウェブはうろ覚えですが昔全部読みました。四郎候補もです。正直言ってこれだけでもうお腹いっぱいです」

「あれ、三郎がさっきから出てきてないな」

「だってあれなろうじゃないんですもん。あのアニメ見た後で買いたくもないですし」

「……カルテットにでも今期は期待しておけ」

「はい、そうさせてもらいます……」

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