東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:日差丸
霊夢たちと合流後、しばらく下降していくと地面が見えてきた。
ふわりと着地する。
「かー! やっと歩けるぜ! もうしばらく空飛ぶのはごめんだな」
「帰りも飛ぶのをお忘れなく」
「げっ、そうだった……。なんかボス倒したら地上までワープできる道具かなんかはないのかよ」
私の言葉にがっくりと肩を落とす魔理沙。
かれこれ一時間は落下していたからね。彼女のこの反応も仕方がない。かくいう私も、帰りは紫のスキマで良いかなとは思ってる。
もっとも、それを言ったら行きも送っていけよとか文句を言われそうなので黙ってはおくけど。
辺りを見渡すが、正面以外は壁で囲われていた。どうやらここは洞窟か何からしい。
魔理沙が人形とブレスレットから聞こえる声と会話しながら壁を調べ始めた。どうやらさっきの弾幕ごっこで私の斬撃をあの壁で防いだことを見られていたらしい。
だけどさすがここでのんびりしてる暇はないとさっきの戦いで危機感を持ったのか、壁の破片をポケットに突っ込み、こちらの後を急いで追ってきた。
しばらく進むと、奥に光が見えてきた。おそらくは出口だろう。地底の中に光があるのに疑問を持ったが、その答えは洞窟を出てからすぐにわかった。
視界いっぱいに飛び込んでくる光に思わず目をつむってしまう。
ゆっくりまぶたを開ける。そして広がった光景に、思わず感嘆の声を漏らした。
「……すごいね、こりゃ」
『ようこそ旧地獄へ。ここに元住んでいた者として歓迎するよ、霊夢、魔理沙、そして楼夢』
萃香の声が陰陽玉を通して聞こえてきた。
そこは夜の世界だった。ただし、何も見えない真っ暗闇なんかじゃない。足元も遠くの景色もはっきりと見える。まるで夜に大量の灯火をつけているかのようだった。
ここには当たり前だが太陽なんてものはない。なのに地底は明るい光に包まれていた。
その秘密は天蓋や壁に埋め込まれた鉱石だ。色は様々。だがそれら一つ一つが放つ妖しい光が、闇に溶け込んでまるで星のように世界を照らしている。
「こいつは……予想外だったぜ……」
「……たしかに、悪くはないわね」
地上では絶対に見られない妖しくも幻想的な光景に、私たちはすっかり足を止めて魅入ってしまっていた。
『悪いけど、観光は後にしてくれないかしら? いつここに妖怪が集まってくるのかもわからないんだから、さっさと進んでちょうだい』
陰陽玉から聞こえてきた紫の声に私たちはようやく見るのをやめることができた。
魔理沙がほおを膨らませて文句を言ってるけど、たしかにその通りだ。こんなところで立ち止まってたらいずれ大量の妖怪が集まってきてしまう。
少し遠くの方に街らしきものが見える。たぶんあそこに行けば何か分かるだろう。
私たちは見事な景色を振り切り、駆け足で歩を進めた。
♦︎
「パルパルパルパルパルパルパルパル……」
地底に降り立ってから十数分後。
どうしてこうなった。
目の前には橋の前に体育座りで座り込む少女が一人。
金髪に尖った長い耳。まるでおとぎ話のエルフのような外見をしている。ただ、その口から放たれるのは言葉ではなくもはや呪詛だ。
「そこの紅白、悩みなんてこれっぽっちも持ってなさそうで妬ましい……パルパル……」
「な、なによこいつ。なんかすごい面倒くさそうね」
「そこのピンク頭、髪が愉快な色で妬ましい……パルパル……」
「余計なお世話だよ! 謝れ、私の自慢のピンクヘアーに!」
「そこの金髪……」
「な、なんだぜ?」
「……パルパル」
「いやなんか言えよ!?」
この会話だけで私たち全員が察した。
あ、こいつ超面倒くさいやつだと。
『こいつは橋姫。一応橋を守る女神だね』
「けっ、こんなのが神なのかよ。世も末だな」
「それは同感ね。まったく、守谷の馬鹿たちといい、神ってのはほんとにロクなやつがいないわね」
「あのー、一応私も神なんですがぁ……」
「じゃああんたもロクでなしね」
「何という差別意識!?」
仮にも巫女が言っていいセリフじゃない。
しかしそれを言ったら殴られそうなので黙っておく。沈黙は金、雄弁は銀だ。
魔理沙が持っている人形から声が聞こえてくる。
『そいつを放っておくことはできないの?』
『うーん、無理じゃない? 一応は橋の守り神だから、無視することはできないと思うよ』
今度はブレスレットの方から声が聞こえてきた。
『じゃあ橋自体を無視して飛んでいったら?』
『それも無理だと思う。橋姫が守る橋を無視すると必ず何かしらの事故が起きて川に沈められるんだ』
『じゃあお手上げね』
うちのサポートたちの中じゃ頭脳枠に入っている二人がこれ以上何も思いつかないんだったら、考えるだけ無駄だろう。
ちなみに博麗神社に残ってるサポートたちの分類分けは、萃香は敵分析枠、紫、パチュリー 、アリスが頭脳枠だ。
えっ、ルーミアと火神? エキストラ枠ですが何か?
あんな頭のオツムが足りてないコンビに戦闘以外で何かを期待するのは酷というものだ。
『なんかすごい侮辱されたような気がするんだけど……』
「うるさいよエキストラ枠。脇役は脇役らしく黙ってなさい」
『やっぱ喧嘩売ってるでしょあなた!』
「事実を言ったまでですー」
『おい、うるせェぞテメエら。少しは黙っておけ』
「『普段一番うるさいお前に言われたかないわ!!』」
『……あっ?』
『……あ、しまったつい本音が……!』
『うし、ルーミア、表出ろや』
それっきり、二人が話しかけてくることはしばらくなかった。ただ、闇のリングからめっちゃ断末魔が聞こえてきた。
やはり馬鹿である。私のノリに乗せられてこうも簡単に引っかかるとは。
さてさて、そんなどうでもいいことをしてる間に誰が橋姫をやるのか決まったようだ。
お祓い棒とお札を手に持ちながら、霊夢が前に出る。
「霊夢か……まあいい選択なんじゃない?」
「ちぇっ、あんなナヨナヨしたやつ、私で十分なのに……」
『いいえ、あなたじゃ返り討ちにあう可能性の方が高いわ』
パチュリーのその言葉に魔理沙が眉を寄せる。
しかしそれを気にせず彼女は淡々と萃香から聞いたらしい橋姫の特徴を語った。
『見てわかる通り、橋姫は嫉妬心がとても強い神よ。同時に妖怪でもあるらしいけどね。それに関係して、能力も大半が精神に影響するものになるらしいわ』
「それと霊夢を出すのにはどんな関係があるんだ?」
『霊夢は我が強いから精神操作系の能力がかかりにくいと思うわ。それは楼夢にも言えたことね。でも魔理沙、あなたは少し脆いところがある。だからあれには勝てないってわけ』
「……わかったぜ」
おや、意外だ。あの魔理沙が大人しく引き下がるなんて。
聞いてみたところ、どうやらさっきの一戦がよっぽど堪えたらしい。ここでは油断したらすぐに死ぬと本能レベルで理解したのだとか。
まあ成長したってことだろう。
そこまで話して、霊夢の方に視線を戻す。
彼女が何か言ったらしく、橋姫が体育座りをやめて立ち上がっていた。そして両者はスペルカードを構える。
「博麗霊夢よ。よろしくは言わないわ」
「水橋パルスィ。……ああ、ああ、妬ましい……」
二人の弾幕ごっこが幕を開けた。
♦︎
通常弾幕の合戦から戦いが始まる。
さすが地底の妖怪というだけあって、ばら撒かれる弾幕はなかなかのものだ。
しかしそれでも、霊夢の方が二、三枚上手だ。
弾幕同士がぶつかり、相殺し合う中、ホーミングアミュレットがパルスィをかすめていく。そしてその頻度はだんだん多くなってきた。
「ちっ、撃ち合いじゃ分が悪いわね。妬ましいわっ」
「そのセリフ、一々癪にさわるわね。二度と言えないようにしてあげる」
「っ、妬符『グリーンアイドモンスター』!」
パルスィがスペカを宣言。巨大な緑色の弾幕が出現する。
それは霊夢を延々と追尾しながらその軌跡をなぞるように小さな弾幕をばらまいていく。まるで無限に長くなり続ける蛇のようだった。
しかし、霊夢を相手にするには物足りないスペカだ。彼女は曲がりなりにも博麗の巫女。今回の異変解決メンバーではもっとも弾幕ごっこが得意と断言できる。
そんな彼女が弾幕に追いつかれるはずがない。
まるで当たる気配のない霊夢にパルスィの顔に焦燥が浮かぶ。
それを見透かして、霊夢は隣に浮いている紫の陰陽玉の能力を使うことにした。
霊夢を敵の目から隠すようにスキマが出現する。
「……っ、消え……!?」
「こっちよ」
声をかけられ、パルスィは勢いよく振り返った。
そこには汗一つかいていない霊夢の姿が。
パルスィの頭の中に様々な疑問が浮かび上がる。だが、それを対処する時間はなかった。
なぜなら霊夢を追って緑色の蛇がパルスィに急接近してきたからだ。
霊夢は笑みを浮かべながら再びスキマに吸い込まれていく。
すると蛇の射線上に残ったのは?
パルスィはそれを考えることなく、必死に体を捻った。
蛇がパルスィの服をかすめて通り過ぎていく。
しかし無理に体を動かしたせいでバランスを崩してしまった。
そこを霊夢は見逃さない。
「宝具『陰陽鬼神玉』」
衛星のように霊夢の周囲を回っていた紫白の陰陽玉が巨大化していく。そしてそれがパルスィめがけて撃ち出された。
彼女にそれを避ける暇はなく、地面に落ちてそのまま陰陽玉に押しつぶされた。
『うわぁ……』
『与えた私が言うのもなんだけど……霊夢にスキマってもしかして一番マズイ組み合わせだった?』
「これ、いいわね。今後の異変でも是非使いたいわ」
『……うん、やっぱ禁止にしましょう。さすがにパワーバランスが崩れてしまうわ』
紫に却下され、霊夢は舌打ちをする。
今回霊夢に支給された陰陽玉は、魔理沙の人形やブレスレット、楼夢の指輪と比べても破格の性能を持っていた。
その能力は一時的にスキマを自由に操れるというもの。もちろん所詮はマジックアイテムなので長い距離は移動できなかったり、開けるスキマの面積が小さかったりするのだが、元の性能が凄すぎてデメリットにすらなっていなかった。
おまけに使う相手が霊夢だ。才能というのは恐ろしいもので、一、二回使用しただけで完璧にスキマを操ることに成功していた。
「案外簡単にいけそうね。この調子でさっさと片付けさせてもらうわ」
「地底のっ、妖怪を……っ、なめるなぁっ!」
よほど見下されているのに腹が立ったのか。
パルスィは見た目の可愛らしさなど吹き飛ばしてしまうほど凄まじい形相をしていた。その目は緑色の光を放ち、爛々と輝いている。
橋姫は鬼女とも呼ばれることがある。今の彼女は、まさにその名にピッタリだった。
立ち上がり、彼女は霊夢に向かって手のひらを掲げる。
だが、何も起こることはなかった。
「なっ……! 私の能力が効かない!?」
「予想通り精神操作系ね。嫉妬心を操るってとこかしら。でも残念。私はそんなのにかかるほどヤワじゃないのよ」
「ぐっ……人間がァ! 恨符『丑の刻参り七日目』ェ!!」
呪詛にも似た恐ろしい叫びをあげ、パルスィはスペカを投げ捨てる。
そして彼女を中心にいくつもの釘のような弾幕がばら撒かれ、あちこちの地面や壁に突き刺さった。
そしてそれらの釘から辺り一帯を埋め尽くすほどの弾幕が放たれる。
それでも霊夢に焦りはなかった。動き回るのをやめ、最小限の動きだけでグレイズしていく。
反撃に霊夢もお札を投げているのだが、大量の弾幕がパルスィを守るシェルターにもなっていてなかなか彼女まで届かない。
だったらと、霊夢は周囲を回る青白の陰陽玉から幽霊のように揺れ動く弾幕を放った。
それを見たパルスィが弾幕を操作し、彼女の周囲を覆うように壁を作り上げる。
しかし青白い鬼火のような弾幕は、なんと壁を
これが、萃香の陰陽玉の能力。弾幕をすり抜ける弾幕だ。
詳しい原理は霊夢も知らない。密度を操ってどうたらこうたらとは言っていたが、そもそも興味がなかったので全部聞き流していた。しかしその性能は見ての通り優秀だ。
周囲を保険として壁で覆っていたのが仇となった。狭いスペースの中では避けるのも難しく、鬼火はパルスィの服の端を次々と焦がしていく。
すり抜けるのなら無意味と、パルスィは弾幕の壁を解除し、霊夢を積極的に攻撃する作戦に移り出た。
しかし、それが実行されることはなかった。
視野が広がったその時、彼女の目に映ったのは、待ってましたとばかりにスペルカードを構える霊夢の姿だった。
「しまっ……!?」
「神霊『夢想封印』」
後悔先に立たず。
霊夢の周囲に七つのカラフルな巨大弾幕が浮かび上がる。
パルスィは弾幕の壁を戻そうとしたが、時すでに遅く。
弾幕が殺到し、パルスィもろとも大爆発を巻き起こした。
「どーもどーも。夏休みが終わってしまってグロッキーな作者です』
「そもそも平日でも基本食っちゃ寝なんだから大して変わらねえだろ。狂夢だ」
「なんかあっさりパルスィ戦終わったな。スペカも三枚使ってないし」
「いや、前回のヤマメ戦で楼夢さんが結構余裕で倒しちゃったじゃないですか。だからそれよりも強い霊夢さんが苦戦するのはどうなのかと思いまして」
「まあたしかにキャラのイメージは大事だけどよ……。そういえば霊夢の陰陽玉ってなんであんな性能にしたんだ? スキマはともかく、萃香の弾幕をすり抜ける弾幕はさっぱりわからねえぞ?」
「原作で萃香さんをサポートキャラにした時のショットが貫通弾なんですよ。もちろんそれ以外にも特殊能力に全アイテム回収、霊撃に当たった弾幕をホーミング弾にして返すというものがありますが、前者は小説では生かせず、後者は単純に強すぎますからね。だからこういう性能に落ち着きました」
「正直言っちまえば、今回の異変解決組の中でもこの二つのアイテムの性能は群を抜けてるよな」
「しかもそれらを同じキャラが持つという」
「しかもそのキャラがメンバーの中でもっとも強いという。もはや鬼に金棒どころの話じゃねぇな」
「ま、まだ魔理沙さんのマジックアイテムの説明が入ってませんから!」
「アリスとパチュリーなんて簡単に予想がつくんだが。どうせ「はいそこでカットォ! 次回もお楽しみに!」