東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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心に刻めよ

業火の罪状


by藤原妹紅


竹取物語 『完 』 そして童話の裏話 下

 

満月の光が降り注ぐ中、楼夢と火神は同時に『藤原邸』と堂々と書かれた屋敷の門の前へと到着する。門の奥からは激しい炎が次々と木製の建物に燃えており、まるで炎が一匹のデカイ炎の怪物のようにも見えた。

 

 

「うわぁ…これは酷い」

 

 

火神は門を通った後の景色を見てそう呟く。そこには今だ逃げ遅れた人々が炎に巻き込まれ、燃え尽きる光景があった。

 

ただ気になるのは炎で燃え尽きた死体に混じって血などが体から溢れている死体があったことだ。

つまり何者かがこの騒ぎに混じってこの者たちを殺したか、あるいはその犯人自身が屋敷に炎を放ったのかもしれない。

 

だが正直言うとこの死体たちを哀れむ気持ちが二人には沸かなかった。ただ火事の中で他の人に殺された人間がいて少し気になっただけ。ただそれだけだ。

 

 

「気をつけろ火神。この火事は何者かが意図的に仕組んだ可能性が高い」

 

「はいはい、分かってるよ。だけど楼夢よォ。別に俺らにゃ関係ねぇだろ?この騒ぎを収めたら賞金がもらえるってわけでもねぇしさ」

 

 

火神はそう燃えゆく屋敷を眺め、笑う。だが突如その屋敷の奥から爆発が起こり、周りの物を吹き飛ばす。

 

 

「さぁて、ようやく黒幕さんのご登場ですかァ」

 

「はぁ~もしここで何もなかったら帰ろうと思っていたのに。マジ空気読め」

 

 

そんなゆるい会話をしてると二人の前に一人の少女が姿を現す。

 

 

その少女は髪がまるで火神のように燃え尽きたような白髪をしていた。服はどこかの貴族が着てそうな着物を着ており、何よりも特徴的なのはその顔の奥に光る真紅の瞳だった。その目からは理性が感じられず、ただただ狂っているようだった。

 

だが楼夢はどこかでこの少女を見たような気がした。それが気の所為かは分からないが、彼女の雰囲気は楼夢が一度感じたことがあるものだった。

 

 

「おいそこの白髪チビ。随分と面白そうなことしてんじゃん。…俺も混ぜろよォ」

 

 

火神がナンパに近い言葉を言うが、白髪の少女はまるで聞こえていないかのようにそのまま二人にへと構える。それを見た火神の目の奥がギラリと光った。

 

 

「…どうやら聞こえてないみたいだ火神。まあ言っちゃえばこいつは今意識がない状態のようだ」

 

「ちっ、なんだよ、それじゃつまんねぇじゃねーか。…もういいお前にこいつを譲ってやるよ」

 

「全然嬉しくねーが、ここは素直に受け取っておこう」

 

 

楼夢は鞘から舞姫を抜き出すと、だらりとした体制で構える。直後、少女の体から炎が溢れ、まるで不死鳥のような翼を作り出す。

 

これを見た楼夢は若干驚きつつも、少女を警戒する。分析した結果、彼女から出ている炎はどうやら妖力を含んでおり、それは彼女が人間ではないことを指していた。

 

 

少女は素早く踏み込むとあっという間に楼夢の懐に辿り着く。そしてその炎に包まれた拳を振るうが、その時楼夢が霧のように消える。

 

 

「おらよっ!こっちだ!」

 

 

楼夢は少女の後ろに現れると、いつの間にか持っていた刀を鞘に収め、空いた拳に力を込める。

 

 

「喰らえ!『空拳』!」

 

 

楼夢は圧縮された風を拳に纏い、それを少女に叩きつける。瞬間、爆風と共に少女が吹き飛ばされる。

 

少女はそのまま近くの木に叩きつけられるが、まるで痛みを感じていないかのようにすぐに立ち上がる。

 

 

「成程な。今のお前は意識がないから痛みを感じない。つまりゾンビに近い状態だってわけだ。まあそんな体でよく動けるなと言っておいてやる」

 

 

それが少女に伝える最後の言葉とばかりに、楼夢は地面を蹴る。するとそこに小さな爆発が起こり、それを利用して一瞬で距離を詰める。

 

少女はとっさに楼夢に拳を放つが、それも弾かれ、逆にカウンターで楼夢の拳が彼女の腹に突き刺さる。

 

 

「これで……止めだっ!」

 

 

楼夢はそう言うと体を横に一回転させ、そのまま回し蹴りを少女の顔に放つ。

ゴキンッという鈍い音を出しながら少女は地面に叩きつけられ、動かなくなる。

 

 

「…あれじゃ多分首の骨が折れたな。いくら意識がなくても生きてはいないだろ」

 

 

楼夢はそう言うとこの場から立ち去ろうとする。だが次の瞬間楼夢の後ろから巨大な殺気が向けられた。

 

 

「なっ!?」

 

 

楼夢は驚き、急いで対処しようと思うが遅かった。楼夢の後ろから先程死んだはずの少女が現れ、抱きつくように楼夢の両手を拘束する。

 

 

「くそっ!はなしやがれ!」

 

 

楼夢は必死に抵抗するが、彼女の拘束を振り解く事ができない。

元々楼夢は純粋な腕力が低いため、腕などを拘束されると抜け出す事ができないのだ。

 

 

そんな中楼夢の頭の中に一つのデジャブ感が走る。敵を倒して油断した青年が、今度は逆にその敵に拘束されているこの姿。

 

 

(どっからどう見てもヤ●チャじゃねぇか!?)

 

 

楼夢がそんなことを考えると、少女から光が溢れる。楼夢は必死に脱出しようとするが、それも意味をなさない。

 

少女は眩しい光を体から放った後、爆発する。少女はガッチリと楼夢を掴んでいたので、楼夢も当然ダメージを受ける。

 

 

「ガ…ハァ……ッ」

 

 

楼夢は爆発でかなりのダメージを受ける。だがそれを成した少女は楼夢に抱き着いたまま息絶えており、通常なら楼夢の勝利になる。そう通常なら……。

 

 

楼夢は今だ抱き着いている少女の遺体を見てギョッとする。なぜなら先程確認したときには消えていた少女の瞳の光が、赤く光っていたからだ。

 

楼夢はそれを見て最悪の状況を想像する。だがそれは虚しくも少女の体から溢れる光と共に現実へと変わる。

 

直後、再び少女は爆発する。楼夢は爆発の中で少女が何者かを理解する。

 

 

(こいつ……輝夜たちと同じ『不老不死』かっ!?)

 

 

楼夢は相手のカラクリを理解するが、今それが分かってもなんの足しにもならない。

 

少女は爆発が収まると二度、三度と何度も爆発する。その度に楼夢の体は爆発に巻き込まれ、ボロボロになる。

 

 

「舐めてんじゃねえぞ、三下ァァァァァアアアッ!!!」

 

 

凄まじい叫び声と共に、膨大な妖力の衝撃波が辺りを襲う。少女はしがみついていて離れないが、楼夢は既に魔法の詠唱を唱えていた。

 

 

「『マホカンタ』!『イオナズン』!」

 

 

そんな声が響いた後、少女と楼夢の間にいくつもの光る球体が現れる。それと同時に楼夢は光の結界に覆われる。そして光る球体一つ一つが爆発し、大爆発を起こす。

 

少女と楼夢はその爆風で反対方向へと吹き飛ばされる。さらに楼夢はマホカンタで覆われていたため、楼夢に来る分の爆発は全て少女の方向に向けられており、お陰でこの爆発では楼夢は無傷だった。

 

だが先程までの爆発が効いており楼夢はしばらく少し苦しそうな表情になる。だがすぐに治療術を掛け、爆発でできた煙の中を見つめる。

 

そこには爆発で右腕などが吹き飛んだ少女がいた。だがその怪我もすぐに治る。楼夢はそんな彼女に話しかける。

 

 

「アハハハッ!さっきはよくもやりやがったな!お陰でほら!やべぇよ!最高にトンじまったよ、畜生がァァァァァアアッ!!!」

 

 

楼夢はそんな獣のような声を上げる。だが少女は一切怯まずに楼夢に突っ込んだ。

 

 

「甘ぇよ!縛道の六十三『鎖条鎖縛』!」

 

 

だが楼夢は霊力で作られた鎖で少女を縛り上げ、動きを封じる。

動きを封じられた彼女はそのまま地面に倒れる。そしてそこに楼夢が近づいてくる。

 

 

「さっきのやつでテメェが不老不死ってことが分かった。つまり殺しても全回復される。だけどな、俺としてもお前をぶち殺したい。という訳で、死ぬギリギリの攻撃をお前に与えてやる」

 

 

楼夢はそう言うと少女の首に手を当てる。そしてそのまま呟く。

 

 

「雷龍『ドラゴニックサンダー』」

 

 

瞬間、いくつもの光が彼女を貫いた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

現在、楼夢は火神と先程襲ってきた少女を連れて家に戻っていた。少女は楼夢の攻撃で気絶しており、今は楼夢のベッドに寝かされている。

 

楼夢と火神は居間に行くとそのままくつろぎだした。

 

 

「それにしても結構苦戦したな楼夢」

 

「しゃーねぇだろ。誰が事前に相手が自爆技を連発出来るって分かるんだよ。いくら俺でも不老不死は初めてなんだぞ」

 

「だが最初っから術を使ってたらもうちょっと楽に勝てたんじゃねぇか?」

 

「俺だってたまには拳で勝ちたいんだよ」

 

 

そんな会話をしていると、突然居間の扉が開く。見れば寝ていたはずの少女が扉を開いていた。

 

 

「……えっと…あの……」

 

「なんだ、幼女?」

 

「よっ、幼女!?」

 

 

少女は楼夢にそう言われると顔を赤くする。どうやら若干すねているようだ。

 

 

「?俺なんか悪いこと言ったか?」

 

「はぁ、てめぇは分かってねぇな……」

 

 

火神はそうため息混じりに呟く。だが楼夢には彼女が何故すねているのか分からなかった。

 

 

「まあいい。それよりもお前、名はなんだ?」

 

 

楼夢は話を逸らすため少女に名を聞く。だがその答えは予想を斜め上を行くものだった。

 

 

「……藤原妹紅」

 

「…ゑ!?」

 

「藤原妹紅。それが私の名前だよ、楼夢」

 

「……えっ、えぇぇぇぇええええ!?」

 

 

藤原妹紅。その名を聞いた途端楼夢は大きな声を出して驚く。

 

 

「もっ、妹紅って……俺が知ってる妹紅の髪は黒だぞ!?」

 

「本当だって!信じてよ!」

 

「…んじゃ、俺がお前に付けたあだ名は?」

 

「もっ、もこたんって、何言わせてるんだよ!?」

 

「おおっ!そのノリツッコミはもこたんだ!」

 

「もこたん言うな!」

 

 

楼夢はとりあえずこの少女が妹紅だと言うことに確信を抱いた。よく見れば髪型も顔も似ており、何よりも彼女の雰囲気が妹紅そのものだったのだ。

 

 

「でもなんでそんな髪になったんだ?こいつみたいに燃え尽きたってわけでもねぇだろ?」

 

「…俺はお前にこの髪が白髪な理由をまだ言ってないんだが?」

 

 

火神から静かなツッコミが入る。だが楼夢はそんなことは気にしないという雰囲気を出していた。

そんな中妹紅が口を開く。

 

 

「……分かった。話すよ、私の髪がこんなのになっちゃった理由」

 

 

しばらくして妹紅は語り出す。その真実は楼夢が想像していたものよりも残酷だった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

楼夢が月の兵を全滅させた頃、彼女ーー藤原妹紅は竹林へと走っていた。

 

理由は単純。彼女の父が輝夜を守るために大量の兵士と共に輝夜の屋敷に向かったていったからだ。

 

彼女は自分の屋敷内で突如竹林の方に現れた巨大な火柱を見て、無性に自分の父が心配になったのだ。

 

 

彼女は竹林の中に入るーーっと同時に血なまぐさい嫌な臭いが辺りにただよう。妹紅はそれに寒気を覚えながらも必死に竹林の中を走る。

 

夢中になって走っていたため、彼女は足元の何かにつまずき地面に転ぶ。そして自分がつまずいた何かを目撃する。

 

 

「ひっ……!?」

 

 

それは人間の腕だった。周りを見渡せば同じように腕、足、体、頭部……等々、様々な体の部位が大量の血に包まれながら辺りに落ちていた。

 

妹紅は顔を青ざめながら歩く。だが先程の光景を忘れられずその足取りはおぼつかない。

 

 

しばらく歩くと、少し開けた場所に出る。そこに広がるのはーー

 

 

 

 

 

ーー数え切れない程の死体が辺りを埋め尽くした光景だった。

 

 

「うっ、おえェェエッ!?」

 

 

妹紅はその光景にたまらず吐き出す。死体には所々に何かに撃ち抜かれたような風穴が空いていた。

腹部の中心に穴が空いた者、上半身と下半身が分かれている者、そして顔が消し飛んでいる者等……十代前半の妹紅には耐えれそうもない光景だった。

 

 

「はぁ、はぁ……そうだ、お父様は?」

 

 

妹紅がその考えに至った時、自然と考えるよりも先に体が動いていた。

 

妹紅の心の中に不安が渦巻く。もし自分の父が死んでいたら?そんな考えが浮かぶたびにそれを拒絶し、体を動かす。

 

死体が多くある方向へ進んで行くと、やがて大きな屋敷が妹紅の前に現れる。真夜中なので薄暗く、分かりにくいがそこは輝夜の屋敷だった。

 

妹紅は恐る恐る屋敷内に入り、その中を探索する。

 

 

「だっ、誰かいませんかー?」

 

 

そう屋敷内で問いながら、妹紅は暗い廊下を歩き、そこにある扉を一つ一つ開ける。どうやら屋敷の中には誰もいないようだ。

 

妹紅は最後に一番大きな扉を開ける。中には豪華な着物や置き物が飾られていた。どうやらここが輝夜の部屋のようだ。

 

輝夜の部屋を探索している内に、妹紅に黒い感情が出る。

 

 

(…そうだ。そもそも全部あいつが悪いんだ。あいつさえいなければお父様は……)

 

 

そこまで考えると、妹紅の思考は輝夜に復讐したいという思いで埋め尽くされた。

妹紅は乱雑に輝夜の部屋を漁る。すると部屋の床が少しズレているのに気がついた。

 

妹紅は部屋の床を思いっきり外す。するとその下から隠されていたかのように壺が現れる。妹紅はそれを手に取ると中身を確かめた。

どうやら中には液体のようなものが入っていた。

 

 

「…ん、壺に何か書かれているな……『不老不死の薬』!?これだ、これさえあれば……!ふふふ、覚悟しろよ、輝夜!」

 

 

妹紅の中には既に黒い感情しかなかった。妹紅は自分が不老不死になることでいつか輝夜に復讐しようと考えていたのだ。だがその甘い感情のせいで彼女は地獄を見ることになる。

 

 

「ぐ、がァァァァァァアアアアッ!!!」

 

 

不老不死の薬ーー蓬莱の薬を飲み干した後、妹紅に異変が生じる。妹紅にまるで体が燃えているかのような痛みが体中に奔る。

一言言うなら、それは伝えようのない程の生き地獄だった。

 

竹林にとある少女の叫び声が響く。何時間いや、何年経ったのだろうか。少なくとも妹紅にはまるで永遠のような時間に感じられた。

叫び過ぎて声が出なくなった頃、突然妹紅に奔っていた痛みが消え去る。

 

 

「あ…ぁぁ……」

 

 

妹紅はそのまま地面に倒れ込み、気絶する。

だがその前に彼女の視界には白くなった自分の髪が映っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「成程な……」

 

「その後屋敷に帰ったんだけど皆に追い出されてね……そっからさきはあまり覚えてない」

 

 

楼夢の中で全ての辻褄が合う。何故彼女の髪が変わっていたのかも、何故妹紅の屋敷が燃えていたのかも。

楼夢は苦笑いを浮かべている妹紅を見ると、目をしばらく瞑る。

 

 

「っで、お前はこれからどうするんだ?」

 

「……あまり考えていない」

 

「…しゃぁない。おい妹紅。もしこれからの宛がねえなら火神の弟子になったらどうだ?こいつだったらお前の暴走も止められるし、それを操ることもできるようになるかもしれない」

 

「なっ!?おい楼夢!俺はまだ許可してねぇぞ!」

 

「いいじゃねえか。見たところ妹紅にはかなりの才がある。成長すればきっと強くなるぜ?」

 

「…ちっ、面倒くせぇ」

 

「…あの、いいのか?私はもう人間じゃないし、化物なんだよ?」

 

 

妹紅は楼夢と火神にそう問う。すると楼夢が呆れたような顔をする。

 

 

「あのな。一応言っとくが俺も火神も妖怪だぞ?」

 

「えっ?」

 

「第一こいつの頭だって白髪じゃねぇか。今さら一人や二人増えたところで大差ねえよ」

 

「……ふふふ」

 

「ん、なんだ?」

 

「いや、なんでもないよ。それよりもこれからよろしくね、楼夢。そして師匠!」

 

 

こうして、火神に弟子ができたと同時に、童話も終わりを迎えた。

 

 

 

 

「という事で、明日から旅に出るぞ!」

 

「「えっ!?」」

 

 

 

 

Next phantasm……。

 





~~今日の狂夢『様』~~


「お久しぶりです、皆さん。中間テストで数学なんと91点!?過去最大記録を更新した作者です」

「だが他の教科は平均60点で残念な作者の飼い主。狂夢だ」


「とうとう平安京編終わりましたね」

「ああ。俺のキャラが一方通行になってたりしてるのも気になるが、最近やっぱり一方通行ネタ多くないか?」

「それはやっぱり私が一方通行大好きだからですよ」

「俺は木原君が好きだったな。やっぱりあの木原神拳はかっこいいと思う」

「あっ、それは同感ですね」

「まあ、そんなわけで次回から新章突入!?次回もキュルッと見に来いよ!」

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