東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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一直線にしか進めない

路地裏通りを

俺は通る


by白咲楼夢


因果の鎖編
娘とヒーローと宴会と


 

 

風がヒュルヒュルと吹き、太陽が辺りを照らす中、都から離れた道に四つの人影が浮かんでいた。

人影は道をなぞるように歩き、やがてある場所で一旦止まる。

 

「お父さんお父さん!お腹減ったよ」

 

「地図ではもうすぐ着くはずだから、我慢して、清音」

 

「そう言えばお父さん。私たちは一体どこに向かっているのでしょうか?」

 

「うーん、着いてからのお楽しみという事で」

 

「…仕方無いですね。まあ、そろそろ到着ですから嫌でも分かるので問題ないです」

 

四つの人影はそんなよくある会話をしながら、再び道を歩き始める。

 

その人影の内の一人の瞳には、歩く度に徐々に近づいてくる村が見えていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ある一国の村の中に先程の四つの人影があった。人影は賑わう村を観光していた。そしてその中の一人が道を歩きながら口を開いた。

 

「ふぅ、やっと帰ってこれたな」

 

「お父さん、ここどこなの?」

 

そう連れていた人影の一人の腰まで伸ばした金色の髪を持った少女ーー清音は尋ねる。その鬼灯の瞳には今だ見たことのない物に興味津々で、放っておくとどこかへ行ってしまいそうな程興奮しているのが目に見えた。

 

「ここは諏訪国っていう俺の友人が住んでいる場所だ」

 

最初に口を開いた身長170cm程の大きさの青年ーー楼夢は答える。いや、青年と答えるべきなのか迷ってしまう。それもその筈、楼夢は化粧を施した踊り子などよりも美しい顔と、腰まで伸びた桃色の髪を持っていたからだ。

さらに着ている服は脇の部分がない黒い巫女服だったため、道行く人々はそれを見ると口々にどこかのお偉い巫女様だ、などと言いながら見惚れる。

だが少なくともそれは本人にとっては嬉しいことではなく、逆に不満が積もっていた。だがそれもいつものことだと割り切り、楼夢は再び周りに目を向ける。

 

「ちなみにここには何しに来たの?わざわざ火神さんと妹紅との旅まで断って」

 

次に黒い髪を持った少女ーー美夜が問う。その髪はポニーテールになっており、どことなく気品さを感じさせていた。瞳の色は姉妹同じの鬼灯である。

美夜は楼夢が友人との旅を断ってまでここに来た理由が分からなかった。

 

「ああ、それはちょっと仕事絡みでね、俺の友人は同業者だから一緒にいた方がいいんだ」

 

「あれ、お父さんって何かお仕事していました?てっきり無職だと思っていたのですが……」

 

「…中々心にくる言葉だな、舞花」

 

最後に銀の髪を持った少女ーー舞花はそのことに疑問を感じ、地味に楼夢の心を傷つけながら問う。髪は二つのリボンで結ばれており、瞳の色はやはり姉妹揃って鬼灯色だった。

 

楼夢は舞花の問いに落ち込むが、すぐに元通りになり、話す。

 

「酷ぇな…こう見えて俺も一応職業くらいはあるんだぞ?」

 

「「「うん、無職という職業がね!」」」

 

娘たち全員にツッコまれた楼夢は、目に涙を浮かべる。がそれを堪えて深くため息を吐く。

 

「ちくしょう!こうなったら俺が一応無職ではないという事を証明してやる!」

 

そう楼夢はやけくそになると、村の奥にある山の階段に向かって走っていった。

そしてそれを取り残された三人は追っていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

現在、楼夢たちは守矢神社へ行くための階段を登っていた。ゆっくり、ゆっくりと歩くが、それは娘たちに負荷をかけないという楼夢の気遣いであった。

 

 

一年前、平安京を旅立った時、楼夢は友人である火神と妹紅に一緒に旅をしようと声をかけられた。

だが楼夢はそれを断った。

 

理由の内の一つは、楼夢にはこれから娘たちを一人前の妖怪へと育てなければならなかったからだ。もちろんこれが全てという訳でもなく、用はもう一つある。その用のために訪れたのがここ守矢神社である。

 

「つ 、疲れたぁ……」

 

美夜はそう呟く。それも無理もないことなのかもしれない。元々娘たちはいくら妖怪でもまだ生後約一年なのだ。

 

そんな子どもたちにこんな大の大人でも歩いて数時間かかることで有名な守矢神社の階段を登らせるのはあまり気分に良いものではない。

 

楼夢は『妖狐状態』になるとその尻尾で娘たちを持ち上げ、そのまま階段を全力疾走した。

 

「うわぁ……速い!」

 

その速度に清音は思わずそう呟く。そしてそのまま速度はさらに上がっていく。

 

元々『妖狐状態』での速度はあまり速くないが、楼夢は余った尻尾の先を後ろに向けて、ロケットエンジンのように妖力を放つことで、直線的だが凄まじい速度で移動しているのだ。

これはあまり効率はよくないが、別にこの後何か戦いでも控えてるわけでもないので、気にしない。

 

「ほら、もうすぐで到着だ」

 

「ひ、ひぃぃぃ!?降ろしてくださーい!!」

 

「ほら、泣かないの舞花。というか最初っからこうしておけばよかったんじゃ……」

 

「美夜よ、人には触れてはいけない事があるのだ」

 

そうしていると、楼夢の視線の先に守矢と刻まれた鳥居が見えてくる。

 

 

このまま突っ切ろうとしたが、突如楼夢に複数の青白い弾幕が襲ってきた。

 

襲ってかかってくる弾幕を、右手を振るうことでかき消し、そのまま視線を攻撃してきた本人に向ける。

 

「…誰だ、テメェ……?」

 

思わず楼夢はそう問いかける。

 

「ふふふ、天が呼び地が呼び風が呼ぶ。守矢の巫女でありながら悪は絶対に許さない!正義の味方!東風谷凛(こちやりん)参上!」

 

攻撃してきた犯人である少女はそう自慢気に言いながら、戦隊ヒーローっぽいポーズを取る。どこぞのグレートサ●ヤマンかよお前は。

 

とりあえず少女は守矢の巫女服を着ていることから、守矢の巫女であることは確かだろう。特徴的な緑の髪も、どことなく早奈に似ている。

 

とりあえずわかったことは、非常に面倒くさい人間のようだ。だが流石に彼女を無視するほど楼夢は鬼畜ではない。

 

「おいそこの巫女。なぜ俺らを攻撃した?俺らは諏訪子たちと少し関わりがあるんだが?」

 

「嘘が下手ですね~。妖怪は悪!そんな悪と諏訪子様たちが仲良くするなど、断じてありません!悪はこの私が成敗して差し上げます!」

 

少女はそう高らかに言うと、大量の守矢印の御札を放つ。

 

「…ったく、あ~あ面倒くさぇ……。俺にこんなことさせてんじゃねぇ…よッ!!」

 

そんな怠けた声と共に、楼夢の周りに万を超える桜の花弁のような弾幕が現れる。そしてそれを、全方位に向けて放った。

 

桜の弾幕はまるで波のように御札を呑み込み、凛を襲う。が彼女はこれでも守矢の巫女なので、このままでは終わらない。

 

「発動しなさい、私の力!」

 

彼女がそう言うと彼女を覆うように青白い結界が貼られる。そしてそれに桜の波が当たると、呆気なく桜の波が弾き返された。

 

「うわぁ…めんどくさ……」

 

「どうですか!これが私の能力【跳ね返す程度の能力】です!これがある限り私は無敵!つまり貴方に勝ち目はもう万に一つもありません!」

 

彼女はそう高らかに宣言する。だが楼夢にはそれが滑稽に見えて仕方がなかった。

 

「…はぁ、哀れだな。マジ哀れ。確かにテメェの能力は中々だが別に知恵絞ればこういうやり方もあるんだぜ!」

 

楼夢はそう言うと桜の弾幕を一箇所に収束させ、それを一気に放つ。

 

放たれた桜の閃光を凛は先程と同じように結界を貼る。だが閃光にぶつかった時、なぜか閃光は跳ね返されず、そのまま凛を結界ごと押し出した。

 

いや、跳ね返されずと言うのは間違いだ。確かに彼女には今だに攻撃を跳ね返している感触があるのだが、閃光は変わらずさらに威力を上げているようにも見える。

 

 

そこで、凛は閃光を見つめる内にあることに気づき、驚愕する。

 

(これは…跳ね返されてもそれよりも速く復活している……!?)

 

「どうやら気づいたようだな。ま、要するに数の暴力さえあればこんなもんなんとでもできる。…さぁて、一つ賢くなったところで、フィナーレといこうか」

 

その言葉を合図に、閃光はさらに結界を押し始める。そしてその勢いに耐えきれず凛は波子流されるように、吹き飛ばされた。

 

それと同時に、結界が解除される。そして楼夢はそれを見つめると、拳に妖力を込めた。

 

「安全しな。死にゃしねぇ…。ま、その代わりかなり痛ぇけどな!『虚弾(バラ)』!」

 

込められた妖力が固められ、拳から発射される。それは虚閃(セロ)の二十倍の速度で凛に迫り、ドゴォォォオンという音と共に爆発した。

 

「汚ねぇ花火だ。……そんなことより、隠れてないで出てきたらどうだ?諏訪子、そして神奈子」

 

楼夢がそう一人で呟くと、近くの木々から二人の女性が現れた。

 

「相変わらずあんたは変わらないねぇ。そこがちょっと羨ましいよ」

 

「お前の隣に約一名数十年経っても何も変わってない奴がいるんだが?」

 

「わ、私だってあれからちょっとは背が高くなったんだよ!?……たぶん」

 

「そんなことより上がっていきな。用件は大体予想がつくよ」

 

「じゃあ遠慮なくお邪魔するぜ。それよりも巫女の方はいいのか?」

 

「うちの客に勝手に攻撃した罰だよ。しばらくは放っておくよ」

 

そう雑談しながら、楼夢は娘たちを連れて神社へと入っていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「さぁて、久しぶりだな、二人とも」

 

「それはさっきのでいいだろ?それよりも楼夢。その子たちは何?」

 

現在、楼夢たちは守矢神社の居間にいた。

金髪で小さい少女ーー諏訪子はそれぞれにお茶を注ぐ。

そして楼夢の前に座る人物ーー神奈子はニヤニヤしながらそう聞いてきた。

 

「ああ。こいつらは俺の娘たちだ」

 

キッパリと諏訪子と神奈子に向けて楼夢は断言する。

 

すると彼女たちはその返答に驚いて、ポカンとした表情になる。

 

何がそんな珍しいのだろう。現に諏訪子だって娘とか孫とかいるじゃないか。

 

「お、おう。そんなはっきり言うとは思わなかった……」

 

「別に隠しても意味ねえだろ?」

 

「相手は!?相手は誰なの!?」

 

 

諏訪子は顔を真っ赤に染めながら聞いてくる。

 

なんでそこで諏訪子の顔が赤くなるのだろう?

楼夢にとってはそれが最も疑問で仕方がなかった。

 

「別に誰でもねえよ。それよりもなんでそこでお前の顔が赤くなるんだ?」

 

「あら、もしかして諏訪子、楼夢が女とあんなことやこんなことをしているのを想像しちゃった?やっぱりまだまだ若いねえ…」

 

「うるさい!普通あんな女なんて興味すらないくせに女を無意識に口説く女たらし野郎が子どもなんて持ってたら想像するだろ!?」

 

「おいおい、結構酷い言いようだな……。まあいい。おい、この二人に自己紹介しろ」

 

「初めまして、私は白咲美夜よ。以後宜しく」

 

「私の名は白咲清音。宜しくね!」

 

「し、白咲舞花です…。宜しくお願いします」

 

娘たちは一通り自己紹介をした後、再び楼夢の後ろに戻って楼夢の尻尾で遊びだす。

 

「さて、今回ここに来たのは今月が神無月だからだ」

 

「成程ね。今だ一回も出雲大社での宴会に参加していないから今年こそはと。丁度いい、私たちも今日の夜行く予定だったのさ。よかったら一緒に行くかい?」

 

「ああ。迷惑じゃないなら」

 

「それじゃあ決まりだね!早速出発する準備に取り掛かるよ、神奈子!」

 

「はいはい、だからそう急かすなって……。ま、今年の宴会も楽しめそうだね」

 

神奈子はそう口を三日月のように歪めると、クスリと笑う。そして今日の宴会行くための準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

Next phantasm……。






~~今日の狂夢『様』~~


「今回から新章!そして学校でも学発の練習で忙しい!作者です」

「ロリっ娘って素晴らしい!今回で改めてそう感じた!狂夢だ」


「作者って学発何すんの?」

「劇部と音楽部に分かれてますが、私は音楽部ですね」

「へぇ、なんの楽器を使うんだ?」

「マラカスですよ」

「……」クスッ

「ちょっ今あんた何笑ってんだよ!?」

「さ、作者に似合いすぎだろ!?だってマラ『カス』なんだぜ!?アハハハハ!!」

「お前…後で覚えておけ……」

「という事で今回はここまで!次回もキュルッと見に来いよ!!」

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