東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:日差丸

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知らぬが仏

後悔先に立たず

知ろうが知まいが関係ない

いずれ知ってしまうのだから


by白咲楼夢


思いはいずれか災害にへと ~sadness letter~

 

 

「『神解』…だと…?」

 

俺は急激に神力が増幅した須佐之男に問う。

 

奴の妖魔刀『叢雲草薙(ムラクモクサナギ)』は身の丈をも超える巨大な和風の大剣ーー『羅閃叢雲草薙(ラセンムラクモクサナギ)』に姿を変えていた。

 

戸惑はないはずはない。こう見えて俺は妖魔刀のことは結構熟知していると思っている。

狂夢からもらった『安全安全妖魔刀取り扱い説明書』も既に中級編まで読み終えた。

 

なのに須佐之男は神解という聞いたこともない技で妖魔刀の形状を変化させ、あまつさえ先程の比ではない程の神力をその身に宿しているのだ。これで戸惑はなかったらそれはそれでおかしいだろう。

 

 

…待てよ。俺は狂夢の取説は中級編までしか読んでいない。

だがもしあの『神解』というものが上級編に書かれているものだとしたら…?

 

 

その考えに思考が至った時、俺の額から冷や汗がにじみ出る。

 

『取り扱い説明書』なんて可愛い言葉だが、あれは違う。あれには妖魔刀の長所、難点、特徴、歴史、攻略法などのあらゆる知識が詰まっているのだ。

 

それ故にもし上級編に書かれているようなものだとしたらそれだけであの技がどれほど強力かを表している。

中級編でさえ俺の『舞姫』が扇になるなどの稀にある妖魔刀の二段変化と、全ての妖魔刀に共通している特徴のまとめ編だったのだ。

 

これだけで強力なのに、さらにその上があるとか考えたくない。ていうかなんでそんな知識を狂夢が知ってるんだよ。明らかにあいつは頭のネジが二、三本外れている。

こういうのに限ってなんであんなに頭がいいんだろ?羨ましすぎる。

 

 

と現実逃避をするのをやめて、須佐之男を見る。するとまるでかかって来いと言うように視線をやる。

 

面白い。その喧嘩、まとめ買いだ。

 

「ナメやがってェッ、すぐに潰した空き缶にしてやるから大人しく待ってやがれッ!!」

 

それを合図とばかりに、俺は飛びかかる。

もちろん無策というわけではない。ちゃんと大剣を要注意しながら、突っ込む。

 

須佐之男は大剣を担ぐと

 

「おらァァァァァッ!!」

 

一閃。ただそれだけで空気が真っ二つに切り裂かれ、それが衝撃波となる。

 

それの先にあるのは一つの人影。楼夢は須佐之男の大剣の威力に気を取られ、それは既に回避不能の攻撃と化す。

 

刀を引き抜き、それを真正面に構える。

 

「ぐがァァァァ!!」

 

直後、爆発。あまりの威力に俺は目立った外傷はないもの、吹き飛ばされる。

 

「…ちぃ。ゴルフボールじゃねェんだからよ、んなポンポン人飛ばしてんじゃねえぞ!!」

 

俺は能力で空気を固め、それを足場として須佐之男の方に空中で方向転換する。その左手にはおびただしい程の霊力が集められていた。

 

「千手の涯・届かざる闇の御手・映らざる天の射手・光を落とす道・火種を煽る風・集いて惑うな我が指先を見よ」

 

そこまで言うと、楼夢の周りに無数の光の矢のような弾幕が浮かび上がる。

 

「光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔・弓引く彼方皎皎として消ゆ」

 

「なんだか知らねえが、先に潰させてもらう…」

 

 

「遅ぇ

 

 

ーー破道の九十一『千手皎天汰砲(せんじゅこうてんたいほう)』」

 

ズドドドドッ!! と無数の光矢がスパークした。

一直線に飛び出した光矢はスコールと化し、辺り一面の地面に須佐之男ごと穴を空けた。

 

そのあまりの威力に、光矢は一斉に爆発する。

轟音と共に、地面に巨大なクレーターを作り出した。

 

それを喰らえば、いくら神だろうと関係ない。

手応えはあった。クレーターができた辺りからは黙々と黒い煙が昇る。だが

 

「…轟神剣『羅砕極牙(ラサイキョクガ)』!!」

 

楼夢の顔が凍りつく。

黒い煙は声と共に吹き溢れた風にかき消され、残ったのは自分とーーいつの間にか目の前にいた須佐之男であった。

 

「うおォォォォォォッ!!」

 

雄叫びと共に、楼夢の体が大剣に叩きつけられた。

刃は右肩から腹辺りまで抉り、華麗な血しぶきが舞う。

 

「がァァァァァァァッ!!」

 

だがまだ終わらない。そのままの勢いでハンマーを振り回すように乱暴に大剣を何度も叩きつけた。

遠心力を利用したその攻撃に、何度も吹き飛ばされそうになるが、それを須佐之男は許さない。

打ち付けるように振るわれたその大剣は骨を砕く。

 

「止めだァァァァッ!!」

 

最後の突きが、楼夢の腹を貫く。

ブシャァァッ!! と辺りに鮮血が舞う。

 

 

自分はいよいよこの男に……

 

須佐之男は己の勝利を確信する。大剣で体中を打ち付け腹を貫いたのだ。これで戦える方がおかしいだろう。だからこそ

 

 

 

パキンッ!!という音が鳴り響く。見れば空中には鉄の欠片のような物が舞っていた。

 

「……なっ!?」

 

だからこそ、須佐之男は気づかなかった。目の前にいる男が既におかしいということに。

 

 

空中に散らばる鉄の欠片。それは須佐之男の『羅閃叢雲草薙』の欠片だった。

 

見れば大剣は何かに壊されかけており、ヒビが入っていた。

 

「『ハイテンション』……覚悟はできたか?」

 

その声と共にバギンッ!! と大剣がへし折られる。

 

大剣を折った物の正体ーーそれは楼夢の手だった。

彼はハイテンションで身体能力を五倍まで高め、羅閃叢雲草薙を掴み、へし折ったのだ。その証拠にその右手には大量の血が流れていた。

 

もちろんハイテンションだけでは『神解』の羅閃叢雲草薙はへし折れない。

楼夢はハイテンションの上にさらに妖力、霊力、神力をありったけ込めて身体能力強化を行ったのだ。

 

だが様々な力で別々の強化を行ったせいで体が耐えきれずあちこちに悲鳴を上げる。

だが結果的に楼夢の身体能力は通常の約八倍にまで跳ね上がった。

 

 

「お返しだ……『誓いの五封剣』!!」

 

俺は腹に刺さった大剣を砕いた後、舞姫を俺と同じように須佐之男の腹に突き刺す。

すると、周りから炎で作られた剣が五本表れ、須佐之男を中心にして突き刺さり、動きを封じる。

 

「が…あァ……ッ!!」

 

燃え上がる炎に体を貫かれながら、須佐之男は苦しげに唸り折れた大剣を構えようとする。

 

だが、その時彼が見たのは、自分の目の前で右拳に魔力を込める楼夢の姿だった。

 

 

「『魔導撃(まどうげき)』…ッ!!」

 

 

直後、拳から紫の魔力の光が溢れる。

 

そこから放たれたのは、巨大な紫の閃光。

それが奔るだけで地が崩れ、空間が歪んだ。

そしてその一撃は

 

 

「ぐがァァァァァァァァッ!!!」

 

 

殴りつけると同時に須佐之男を呑み込み、その先の物全てを貫いた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「んじゃ、世話になったな」

 

「また来いよ。次の次こそは勝ってやるからよ」

 

「やれる物なら…な」

 

ハハハハ、と須佐之男と俺は笑う。須佐之男は体中に包帯を巻き付けており、しばらくはまともに動けそうにない。

それでも別れの挨拶を言いに来るのは彼の律儀差が伺える。

 

 

決闘に関しては俺の勝ちだった。だが『神解』という知らない技が出てきたため、かなりの収穫になった。

そこら辺は素直に感謝しよう。

 

 

夜の神社の外、俺は須佐之男に背を向けると、視界には諏訪子と神奈子と天照が話し合っているところが映った。

 

「話は済んだか?」

 

「ええ、大丈夫です。弟が失礼しました。何故こうも私の兄妹はみんなこう……個性的なのでしょう」

 

「ん、須佐之男の他にお前に兄妹なんかいたっけ?」

 

「一応いるんですけど、『月夜見尊(ツクヨミノミコト)』という名で、やっぱり変わり者で『地上は穢れる』とかいうふざけた理由で月で暮らしています。今回の宴会も参加しなかったのは彼がただ地上に降りたくなかったというだけですし」

 

あっ、そう言えば月夜見は天照の弟だっけ。須佐之男しかいなかったから完全に忘れていたな。

というか

 

「やっぱり月の民がおかしいなら、月の神様をおかしいってことか。悲しいことに。

 

「その口ぶり……月の都を知っているようですね。まあ深くは詮索しませんが……とりあえずまた来てくださいね。我々はいつでも歓迎していますので」

 

「OKだ。じゃあな」

 

そう告げると、俺の体は光に包まれ、消え去った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「……帰ってきたか」

 

「うーん、疲れたぁ…」

 

「いやー飲んだ飲んだ。久しぶりに結構飲んだな」

 

守矢神社に帰ってきた後、俺らは各々でそれぞれの感想を述べる。そして神社の中に入った。

 

神社の居間に着くと、そこには守矢の巫女ーー東風谷凛が堂々と寝ていた。

どうやら俺らが帰ってくるまで待ってるつもりのようだったらしく、布団などは一切敷かれていなかった。

 

「あーあ、凛もこんなところで寝てちゃ風邪引くよ」

 

「…むにゃむにゃ、諏訪子様……神奈子様……」

 

諏訪子は慣れた手付きで、寝ている凛を持ち上げて部屋へと運ぶ。

少女が自分より大きい女性を運ぶという中々シュールな光景に出会えたが、なんで素でそんな力強いんだろう。

 

そんなことを考えていると、帰ってきた諏訪子が無言のまま睨みつけてきた。

俺はとりあえず話題を逸らそうとする。

 

 

「ちなみにさ、早奈は結局誰と結婚したんだ?そこんところ気になるんだが」

 

 

俺は軽くそう言う。だがその瞬間辺りの空気が変わるのを俺は感じた。

 

見れば二人は無言のまま俺を見つめる。そしてしばらく経つと神奈子が口を開いた。

 

「……はぁ、いいよ教えてあげる。お前が去ったあの日から何が起きたかを」

 

「ちょちょっと神奈子!?これは話さない方が……」

 

「楼夢自身が気になっているんだ。教えてあげた方が吉だと私は思う」

 

「……分かったよ」

 

「どういう意味だ?早奈に何かあったのか?」

 

俺は真剣な顔で神奈子に尋ねる。

だが真実は俺が思っていた以上に重かった。

 

 

 

「早奈は、結婚なんてしていないんだよ」

 

「……は?」

 

神奈子が言ったその言葉を俺は理解することができなかった。

何故だ?一体彼女に何が……

 

「楼夢が去った後もね。早奈はお前のことを忘れることができなかったみたいなんだ。その後何回も旅に出ようとした。その時はまだ私たちが止めたんだけどね。一ヶ月後とうとう私たちの目を盗んで抜け出したんだ」

 

神奈子の話はこうだ。武力では諏訪子と神奈子に勝てるはずない早奈は二人の食事に睡眠薬を混ぜて、眠った隙に旅立ったそうだ。

 

その話を聞いた時、俺は無意味に唇を噛み締めていのに気がついた。

唇から赤い血を流しながらも、俺はさらに強く歯に力を入れる。

何故なんだ早奈。お前にとって諏訪子と神奈子は家族なんだろ。なのにそれを裏切って、なんで俺を追いかけたんだ……っ!?。

 

 

「よっぽど好きだったんだろうね。楼夢のことが」

 

俺の表情の奥を読んでか、神奈子はそう語る。

瞬間、俺の思考が一瞬フリーズする。

 

「少なくとも、楼夢と一緒にいた時の早奈の顔は私たちにも見せていない程明るかったよ。なんというかね、こう満たされていたんだと思うよ」

 

何が満たされていたんだ!?俺は結局数百年間も彼女の思いにすら気づかず、のうのうと暮らしていたクソ野郎じゃねえか!?そんな奴を好いて、朽ち果てた早奈の気持ちすら今の俺には分からないじゃねえか!?

 

 

「そんな顔しないで。少なくとも私たちも、早奈も、楼夢を恨んでなんかいないと思うよ。なんてたってあれでも私の子供だもん」

 

今まで黙っていた諏訪子はそう告げる。

彼女の顔は嘘偽りもなく、果てしない程に純粋だった。

 

「だからさ……そんな顔しないでよっ。これじゃあ……彼女も……早奈も報われないよ……っ」

 

泣き出しそうな声で、諏訪子はさらに語る。声はかすれており、目には今にも溢れだしそうな涙が溜まっていた。

 

 

結局、何がやりたいんだろうか、俺は……

 

「……すまねえ。少し出かけてくる……」

 

そう告げ、俺は障子を開き外へ出る。

 

ピシャンッ と、戸が閉まる音だけが、神社に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「畜生ォオオオオオオオオオッ!!!」

 

 

闇夜に紛れながら、雄叫びだけが辺りを木霊する。

 

 

今宵は神無月。神すら消えた地に、冷たい光が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふふふ、待っていますよ、楼夢さん♪』

 

 

 

 

Next phantasm……。






~今日の狂夢『様』~

「期末が近づいてきた!もうダメだおしまいだぁ……作者です」

「最近ニキビができはじめた作者を眺める狂夢だ」


「さて、今回は本編で書き忘れた須佐之男の『叢雲草薙』とその神解『羅閃叢雲草薙』の能力紹介です」

「叢雲草薙の能力は【単語を刃に付与する程度の能力】だ。どういうのか説明すると、破剣『薙散』は薙の文字を付与することで、相手を薙ぎ払う烈風を巻き起こすことができるぜ。

羅閃叢雲草薙は【言葉を刃に付与する程度の能力】で、上記の上位互換だ。これは例えば『砕けろ』という言葉を付与するとそれに見合う分の威力が大剣に付与されるぜ。一応『スパイラルブレード』などの英語も適応される。まあ、要するに技を作り出す能力だと思えばいいぜ。
注意点としては、『ファイナルカオスストロングフレアヘルブリザード』みたいに、意味が分からない言葉は付与できないということだな」

「長い説明ありがとうございます。次回もキュルッと見に来てね」
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