東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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死の鐘がなるまで、このワルツは終わらない


by白咲楼夢


決着~Last battlefield~

 

私は今、スキマで楼夢と突如現れた火神という妖怪の戦いを見ていた。いや、戦いという名の災害を。

 

戦闘の状況ははっきり言ってよく分からない。

理由は、火神はともかく楼夢が速すぎて目に見えないからだ。

 

そんな楼夢と武器を交差して、しばらくすると火神の拳が楼夢を捉えた。

 

凄まじい威力、そう表現することしか私にはできなかった。

楼夢は、橋の下に流れていたそこそこ大きい川を真っ二つに分けながら吹き飛ばされ、五メートルはある巨大な岩にぶつかることで停止した。

 

その後再び火神と接近戦をし、その腹に見たところ風を圧縮した拳を放った。

だがなぜか火神にはあまり効かなかった。

 

だがそこで終わりではない。放った手を開いて押し込み、青白い巨大な閃光を放った。

 

大気が振動しているのを私は感じていた。

閃光は火神を包みながら一直線に飛んでいった。

だが全てではない。火神に触れた後、閃光の二割が村の方向に飛んでいき、その三分の一を軽く消し飛ばした。

 

目を凝らせば村では泣き叫ぶ者、さっさと避難する者、様子見に行く者などで溢れていた。

だが近い内にこの村は滅びるだろう。

なぜなら戦闘の余波だけで村が半壊しているのだ。戦闘が続けばたちまち地形が変わり、村を滅ぼすだろう。

 

だが止めるつもりはない。私もまだ死にたくないのだ。

今は大人しくこの災害が去るのを見守ろう。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

百を超える黒いワイヤーが、次々と楼夢に降り注ぐ。

 

同時に楼夢は自分の後ろに並ぶ無数の武器を全て放った。

 

無数の武器と黒いワイヤーが空中で互いに衝突する。

そして一瞬均衡すると、すぐに後ろに弾かれその後再び放った。

 

まず楼夢はワイヤーの雨を次々と掠らない範囲で最小限の動きで避けていた。

なぜ掠ってはいけないのかというと、それもきちんと理由がある。

 

そして避けたワイヤーや、避けきれないものに、楼夢は後ろの武器型弾幕を放つ。

 

「邪魔だ!!」

 

元々弾というより刃といった方が正しい性質の弾幕を圧縮して武器型にした弾幕は次々と紙をハサミで切るように断ち切る。

だが断ち切った瞬間弾幕は黒く変色して朽ち果てた。

 

「やっぱりこうなるか……」

 

それが火神の放つあのワイヤーの恐ろしい能力だ。

あれはルーミアの闇で出来ており、触れると侵食されてしまうのだ。

 

一度ルーミアと戦ったことのある楼夢はそのことにいち早く気がついた。

 

とは言ってもすぐに対策できるものではない。

この文面だけ見れば相手は百の巨大ワイヤー、対してこちらはパッと見て無数の数を誇る武器型弾幕だ。

触れれば朽ち果てると言っても一応断ち切れるのでそれだけであればこちらが圧倒的に優位だろう。

 

だがワイヤーの能力はそれだけではない。

次々と断ち切ってもその断面から闇が再生するかのようにまた生えてくるのだ。

素材が闇なだけあってルーミアの能力さえあれば簡単に修復できる。

 

つまり実質こちらは無限に再生する相手と戦っているようなものだ。

魔力切れを狙うという手もあるがそれは悪手だ。

なぜならその時は自分の魔力も底を尽きているからだ。

 

楼夢が火神と速度以外の身体能力の圧倒的なアドバンテージを持っていても、対等に並んでいられる理由は、何と言っても剣術と妖術だ。

 

剣を振るえばこの世で最強クラスの妖怪でさえも見きれない。

そして術の精度は完全無欠。様々な知識から一瞬で構成される複雑な術式は少なくとも今の世で自分を超える者はいないと思っている。

 

だがもし魔力や妖力が切れれば妖術はもちろん、身体強化も出来なくなる。

 

そして相手は気という謎の力を持っている。

魔力が切れた瞬間に追いつけなくなってなぶり殺しにされる未来しか楼夢は想像できない。

 

だがいつまでもこうしているつもりはない。

楼夢は刀に青白い霊力を込める。そしてさらに数千の桜型弾幕をその刀身に纏わせた。

 

「喰らいやがれ!!『桜花万象斬(おうかばんしょうざん)』!!」

 

瞬間、森羅万象斬よりも一回り大きい桃色の刃が、なぎ払うように火神を魔法陣ごと呑み込む。

そしてその隙に武器型弾幕で他の残った全ての魔法陣を破壊した。

直後、

 

「ウラァアッ!!」

 

桜花万象斬が吹き出た炎に焼き尽くされ、中から火神が飛び出る。

その体には炎を纏っていた。その温度は体感でいうとマグマ並に熱かった。

 

そんな火神は次に得意の炎属性の魔法を放った。

 

上からは太陽が小さくなったような弾幕が、地上ではほぼ全方位に等しい炎の風が放たれる。

 

楼夢はすぐさま炎の風に残った全ての武器型弾幕を放った。

 

武器型弾幕は炎の風と相殺され、爆発を起こす。そしてその余波で地面を薄く溶かす。

 

だが残ったミニ太陽が次々と上から降り注ぐ。

そこで楼夢は『妖狐状態』になり、その十一本の尻尾の先に妖力を集中させた。

 

「『無限装弾虚閃(セロ・メトラジェッタ)』」

 

その言葉が引き金となり、千を超える虚閃(セロ)がミニ太陽を次々と撃ち抜き、撃墜する。

 

そこで一旦火神の攻撃が止んだことで、楼夢は少しホッとする。

 

「あ~あ、一応あれでも結構な威力あった筈なんだけどな。ただデカくするだけじゃ意味ねェか。んまァ、でもーーーー」

 

火神は言葉を一旦途切れさせ、地を後ろ足で蹴る。

直後、小規模な爆発が起こりその爆風に乗って火神は一気に加速する。

 

「ーーーーこうして接近しちまえば、意味もねェけどな!『紅蓮一文字』!!」

 

加速しながら、火神はバールを楼夢に向けて一直線に振るう。すると、そこから炎の刃が、一文字を描きながら一直線に突き進んだ。

 

「ッ!?『羽衣水鏡』!!」

 

だがそこは流石楼夢。火神が急に加速したのに驚きこそすれ、一瞬で結界を張り斬撃を防ぐ。

 

その間に火神はさらに楼夢に接近しながら、次の魔法に移る。

 

「『ナイトバード』」

 

そう火神が唱えると、二種類のが鳥の翼を模しながら向かってくる。もちろん名前から察するに属性は闇。つまりルーミアの技である。

 

そこまで分かっていれば対処もさほど難しくない。楼夢は高速で術式を頭の中で展開し、発動する。

 

「『狐火開花』」

 

瞬間、夜空に花が描かれる。だがそれはすぐに散り、無数の狐火の雨と化した。

 

狐火の雨は火神の弾幕をかき消し、全方位に着弾する。見る方は楽しいが受ける方には地獄にも等しいだろう。……例外もいるよう、だが。

 

(ちぃ!やっぱり効いてねえのかよ!?)

 

全方位の狐火はもちろん火神にも降り注いでいた。だが彼は狐火を受けても風が吹いた程度のような様子をしていた。

だがよく考えれば分かる話だ。

 

火神の能力は【灼熱を操る程度の能力】。あらゆる温度の炎を扱い、相手を燃やし尽くす、言わば炎のスペシャリストであった。

そんな彼に狐火が効くかと聞けば、当然答えはノーだ。第一鉄が融解するほどの炎をその拳に纏わせたり、口から炎を吐き出すような奴に炎が効くと思った奴が馬鹿だ。

もし効くのなら今頃火神は自分の出した炎の熱にやられて自爆しているだろう。

 

だがこれで狐火が一切効かないことが分かった。これは楼夢にとってはかなりの痛手だ。

 

楼夢は実際様々な属性を操れるが、基本的に妖狐が最も得意な妖術は幻覚と狐火だ。

 

だがこの二つは今の状況で使えそうにない。

幻覚はそもそもかかるかどうか分からないし、かかったとしても我に返るのに持って2秒程だろう。それではほとんど意味がない。

狐火も炎なので無効化される。

つまりは妖狐として最も得意な技を、楼夢は二つ失っているのだ。

 

だがそれで詰むようでは最強クラスなんかやっていない。

すぐさま尻尾十一本と両手で妖術を発動させる。

 

「右手に『バギムーチョ』、左手に『マヒャデドス』ーーーー」

 

楼夢は最高位の属性魔法を二つ同時に発動させる。

直後、辺りが地面から伸びてきた巨大な氷柱に飲み込まれ、その氷を砕くように災害級の竜巻が襲いかかる。

 

「ーーーー二つ合わせて『バヒャムチョス』」

 

竜巻は砕いた氷を纏いながら、地形を滅ぼすように周りの物を吸い込み、砕く。

吸い込まれた橋や川の水、木々……そして村などは中でシェイクされながら巨大な氷の欠片などとぶつかり、潰されていった。

 

その様子を、楼夢は自身の周りに結界を張りながら見つめていた。

だがそれでもまだ終わる気がしない。

楼夢はどんどん消えて氷で埋め尽くされていく大地を眺める。直後、

 

 

「ーーーー極大五芒星魔法『アトミックニュークリアインパクト』!!」

 

 

悪魔の囁きが凍りついた大地に一瞬響く。

そして

 

「ッ!?『亜空切断』!!」

 

 

 

ーー炎の海が、地を埋め尽くした。

 

氷柱だらけであった大地は見る影もなく、炎に蹂躙されていく。

 

辺りを見渡せば山も空も大地も赤、赤、赤。

完全な灼熱地獄が降臨していた。

 

その様子を楼夢は『亜空切断』で切り裂いた空間内で観察していた。

 

正直言うと、これは酷い。

山数十個と中規模な村数個が丸々炎の海の犠牲になっていた。

 

だがそんな理不尽を可能にする封印されし魔法、それが『極大五芒星魔法』なのだ。

 

だが以前の戦いの時も凄かったが、今では比べられない程に威力が上がっていた。

おそらく火神がまた数段と強くなったせいだろう。

 

そう思考しながら、楼夢は注意深く火神を観察する。すると、一瞬だが火神と目が合った。

 

「あっ……」

 

火神はそんな楼夢の間抜けな声が聞こえたのか満足すると、狂気的に口を歪めながら楼夢の視線を感じられた空中に向かって軽く跳躍する。

そして空中で背中から炎で形作られた巨大な鳥の翼を生やした。

 

翼の炎は羽一枚一枚が金にも赤にも見えるような美しい色をしており、それはまるで日本の四神の人柱、朱雀を表しているかのようだった。

 

その翼で空中を一気に飛び、そしてーー()()()()()()()()()()()()

 

「なっ……、がァ…ッ!?」

 

「悪ィが、楽しいパーティーには強制参加だ!!ちゃっちゃと衣装着て着飾って、無様に転がりながら踊ってやがれェエェェッ!!!」

 

火神は楼夢と同じ空間軸に来ると、目の前に現れすぐさま無防備な楼夢にその拳を放った。

 

「『スピキュール……インパクトォッ』!!」

 

その拳を一言で例えるなら、赤い隕石だった。

火神の拳はまるでジェットのように勢いよく炎を噴射し、赤い流れ星と化しながら加速する。

 

火神の腕と同じサイズの、鋭く激しいその隕石はーーーー楼夢の顔面に着弾し、その頭蓋骨を砕いた。

 

「ぐがァァァアァァアァァァッ!!!」

 

だが楼夢はまだ死んでいなかった。

火神の一撃が当たる直前に楼夢は力を振り絞って幻術を発動し火神の楼夢の位置の認識を僅かにだがずらした。

 

結果、火神の一撃は楼夢の頭蓋骨ではなく、横に飛んで避けようとした左足に当たった。

 

瞬間、左足が爆発して大量の赤い液体と共に飛び散り、肉を抉る言葉にもできない凄まじい痛みが楼夢に走った。

 

「ァァアァァァァアアァァァァァァッ!!!」

 

火神が放った赤い流れ星は、楼夢の左足を貫いた後、『亜空切断』で切り裂いた空間を破壊する。

 

その衝撃で空間は消滅し、楼夢は抵抗することもできず数百メートル程の高さから地面に落ちた。

 

高所から地面に叩きつけられたことによりまた楼夢の体の骨と内蔵が数個潰れるが、そんな痛みは楼夢の頭の中に入って来なかった。

 

半狂乱になりながらもありったけの霊力、妖力、神力、魔力を治療術式に込め、発動させる。

 

すると左足があった箇所から溢れ出ていた血はすぐに止まる。だが逆にいうとそれだけだ。

左足が生えてきたわけでもなく、傷が塞がり痛みが消えたわけでもない。

 

それでも、楼夢は刀を杖にして立ち上がる。

もう『人間状態』にも『蛇狐状態』にもなる力は残っていない。

十一本の、美しい金色の尻尾を揺らしながらも震えながら体を支えた。

 

だが、そんな惨めな状態でも……ッ。

 

(勝ちたいッ。負けたくないッ!!)

 

彼の心の奥底に潜む本能に刻まれた唯一の誇りは、諦めていなかった。

 

「うおォォオォォォォオォォッ!!!」

 

叫びながらそのひ弱な体を打ち震わせて、楼夢は自身の背中に妖力を集める。

 

すると、二つの黒い球体が楼夢の背中に浮かび、そこからまるで影のように黒い悪魔のような翼が伸びるように生えてきた。

 

楼夢は空中に視線をずらす。

そこには楼夢の悪魔のような漆黒の翼とは違う、炎の鳥朱雀を模した金と赤の翼を生やした火神が、たたずむように空で待ち構えていた。

 

「火ィイィ神ィィッ!!!」

 

「ハハッ、とうとう狂っちまったか!?だがそれだ、それでいい。もっと俺を楽しませろォォッ!!!」

 

二匹の獣は雄叫びをあげた後、空中で激突する。

直後、空に黒と赤のラインが引かれた。

 

「ラァァァァアァァァッ!!!」

 

楼夢は、普段とは違う、叩きつけるように乱暴に刀を振り下ろす。

だが火神はそれをバールの釘を抜く部分で挟みながら受け止めた。

 

すぐさま刀を引っこ抜こうとする楼夢だが、火神は既に攻撃に入っていた。

 

「『シャイニングフェザースコール』」

 

火神の背中の黄金の炎の翼から、数百の羽がまるでマシンガンのように放たれた。

それらは全て至近距離にいた楼夢に命中し、その体を貫く。だが……

 

「ェハハハァッ!!!」

 

「なんだとッ!?……ッぐがァッ!!」

 

狂気に堕ちた楼夢はそこでは止まらない。

撃ち抜かれた体の傷を無視しながら、楼夢は刀を手放し、がら空きの火神の顔に拳を打ち込む。

 

「……『スパーキング』」

 

拳が火神の顔を捉える寸前に、楼夢はそう呟く。

 

すると楼夢の拳が雷電に包まれ、スパークした。

 

「『雷神拳』!!」

 

電家の宝刀と化した拳は、気で強化された火神の顔に大きなダメージを与える。

と同時に、本来使えないスパーキングを使った楼夢の体にも激痛が走るが、そんなのは気にしない。

 

吹き飛ぶ火神に追いつき、その背中にある黄金の翼を強引に引きちぎり、バランスを崩した時に地面にたたき落とした。

 

幸い翼は妖力でできていたため、火神はダメージを受けなかったが、地面に勢いよく叩きつけられ、楼夢と同じように内蔵がいくつか潰れる。

 

立ち上がった火神は、空から降りてきた楼夢をじっと見つめ、そしてその手の中にある相棒、『憎蛭』を握り締める。

 

楼夢は、左足がないため翼でバランスを取り、何もない両手に妖力を込めた。

すると両手が桃色の光に包まれ、刀と扇の二つの異なる形状の『舞姫』が出現した。

 

「……鳴り響け、『舞姫式ノ奏(まいひめしきのかなで)』」

 

楼夢は右手に刀の舞姫を、左手に扇の舞姫を握る。

そしてーー

 

「オアァァァアァァアアァッ!!!」

 

「ウオォォオォォォオォォッ!!!」

 

二人は同時に駆け出した。

 

楼夢の斬撃が火神の肩から胸を斜めに切り裂く。

 

「響かねェぞ楼夢ゥゥッ!!!」

 

赤い鮮血をまき散らしながら、火神の拳が楼夢の顔を捉え、地面まで吹き飛ばす。

 

それを見た火神は深く腰を落とした。

次の瞬間、全体重をかけて地面を踏みしめた。

 

一歩目、全体重をかけた地面を後ろに蹴飛ばし、一直線に走り出す。

 

二歩目、加速しながら右足を軸にしながら、反時計回りに回転する。

 

三歩目、地面を再び蹴飛ばし、回転しながら前進し、一瞬で楼夢の前にたどり着いた。

 

「『ブレイクスルー』!!!」

 

最後、全体重をかけながら遠心力を利用し、黒に光る憎蛭を振り抜いた。

 

 

ーーそして、周りの景色も、音も、全てが消し飛んだ。

 

 

だが、火神の手には楼夢を叩き潰した感触が何もなかった。

 

(まさか……ッ!?)

 

火神はすぐに上を見上げる。そこには、空中で桃色に光り輝く刀と扇を同時に振り下ろす楼夢の姿があった。

 

「『百花繚乱(ひゃっかりょうらん)』!!!」

 

振り下ろした二つの斬撃は同時に火神を切り裂き、手に持つ憎蛭を弾き飛ばしたところから、斬撃の花吹雪が始まった。

 

一瞬の硬直の後、楼夢は火神の体を真っ直ぐに捉え、秒単位に数え切れない程の斬撃を放った。

 

その一つ一つが森羅万象斬並の威力の斬撃が、嵐のように、火神に襲いかかる。

 

その斬撃の速度は正しく神速。そう呼ぶに相応しかった。

 

(55、56、57……もっと速く)

 

楼夢は火神の体を真っ直ぐ捉える型から、徐々に全体重をかけながら右から左、左から右と時計回りと反時計回りを繰り返しながら切りつけ始める。

 

(88、89、90……まだ、もっと……ッ)

 

そう思考すると、楼夢の剣速は光に匹敵するほど加速した。その速度を利用しながら、ただひたすら火神の体を切り刻む。

 

(97、98、99……これでーーーー)

 

「がアァァァアァァァァアアアァァッ!!!」

 

だが火神もただでは終わらない。全体重をかけて飛び込んだ楼夢に、通常の数倍の威力のカウンターが炸裂した。

 

(これで……なっ!?)

 

だが楼夢はその拳を額で受けて根性で跳ね返した。

楼夢の頭蓋骨にひびが入るがそんなことなどどうでもいい。

 

「これで……止めだァァアァァアッ!!!」

 

がら空きになった火神の体を、二つの舞姫の斬撃が貫く。

 

火神は舞姫を体に刺したまま、後ろに吹き飛び、動かなくなった。

 

「終わった…か……ゲホッ、ガハッ!!」

 

そう呟くと同時に楼夢は大量の血を口から吐き出し、冷たい地面に横たわる。

 

(……ん、あれは……雪?)

 

倒れた後、楼夢は空から何か白い物体が降ってきているのに気がついた。

 

(最後の最後で雪……か。悪くは……ねえ)

 

最後にそんなことを考えると、楼夢の意識は闇に落ちる。

 

 

ーー辺りに、まるで二人を労うかのように、雪が降り注いでいた。

 

 

 

 

Next phantasm……。

 

 


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