東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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白の蹂躙撃の、始まりだァ


by白咲狂夢


神様曰く萌えよロリコン

  立ち上がろうとした俺の背中に、依姫の刃が食い込んだ。

 

「ぐがぁぁ!!」

 

  背中から噴水のように血があふれ出た。

  まずい。俺はゲームでいう攻撃力と素早さにステータスを極振りしたような存在だ。

  いくら素早くても、防御力はかなり低いのである。

  そんな俺が何十回も攻撃を受けていたら、間違いなくやばい。

  頭の中で魔法を唱えようとすると、金槌で脳みそを殴られたかのような痛みが襲った。

 

「……っ!?くっ……」

「今です!総員、撃ちなさい!」

 

  うつむけの状態の俺に、無数のレーザーが降り注いだ。

  回避できるはずもなく、ほぼ全ての攻撃が体を貫通した。

 

「が、がァァァァァァア!!」

 

  追い打ちにと、長刀の刃が振り下ろされ、血が吹き出る。

  ぼんやりと血だらけの視界の中、紫が悲痛な顔をしているのが分かった。

  ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。

  だんだん痛覚を感じなくなってきた。

  力がだんだん抜けていき、眠気が俺を襲った。

  考えろ考えろ。

  このままじゃ死ぬ。それも間違いなく。

  まだだ、まだ何か手が残されて……ッ!

 

  俺が見えた光景。そこには動けない紫を兵どもが乱暴に捉えているシーンだった。

  なに勝手に触ってんだ?そいつはテメエらが触れていいものじゃねえ!

  放せ!今すぐ放しやがれェ!!

 

「なぜ動けなくなったか、などは聞きません。だけど、結局あなたはその()()だったということです」

 

  俺が……その程度?

  神をも超えたこの俺を、その程度だとォォ!?

  フザケンナ!人間如キが俺ヲ見下スんじゃねえェ!

  殺ス。

  殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス!!!

 

「では来世で。最も、私が死ぬとは思えませんが」

 

  絶対、殺ス!!!

 

 

 

 ♦︎

 

 

「……終わりましたか」

 

  長刀を鞘に収め、そう小さく呟く。

  その近くでは、八雲紫が泣き出しそうな顔で叫んでいた。

 

「楼夢!!お願い、死なないで楼夢!!返事をして!!」

 

  必死に声をかけるが、目覚めることはないだろう。

  なんせ首を切り落としたのだから。

  銀色の土の上、妖怪の胴体と首はそこで風に吹かれていた。

 

「終わったようね。あ〜あ、最近はこんな物騒な仕事が多いわね〜」

 

  いつの間にか来ていた自分の姉、綿月豊姫(わたつきとよひめ)がそんな愚痴を私に言う。

 

「そうですね。後勝手に自分の仕事から抜け出されては困ります。……まあ今はそれよりも……早く罪人を拘束しなさい!!」

 

  私は部下の兵たちに指示を出し、一息付いた。

  これで一件落着。……になるはずだった。

 

  ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ヘっ?」

 

  続けざまに、巨大な閃光が私たちに向かって放たれた。

 

「依姫!」

 

  姉上が私の手を握り、自身の能力『山と海を繋ぐ程度の能力』で範囲外ヘワープした。

  そのおかげでなんとか当たらずに済むことができた。だが他の隊員たちは違う。

  百人以上いた私の部隊が、一撃で3分の2までその数を減らしていた。

  恐る恐る、後ろを振り返る。そこにはーーーー

 

「アッハハハハハハハハァ!!!いよぉう、ゴミ屑どもォ!俺の名は白咲狂夢!神名は時空と時狭間の神(ウロボロス)だ!……よろしくなァ?」

 

 天使のような()()()を生やした、化物がそこにいた。

 

 

 ♦︎

 

 

「ったくよー。随分と汚してくれちゃって。一応これオレの手作りなんだぞ?『ベホマ』」

 

  そう唱えると、あれだけあった傷が全て消え去った。

  それに驚き、兵たちは一瞬動きを止めた。

 

「ヒャハハハハァ!!!さあァて、楽しィ楽しィ人形劇の始まりだァ!!」

 

  無数とも呼べる魔法陣がオレの後ろで展開された。

  そこから出てきたのはゲロが出るほど大量の触手だった。

  その視界に収まり切らないほどの全てが、生意気な餓鬼に一直線に伸びた。

 

  だがとなりにいた金髪(パッキン)の女の能力のせいで、すぐに逃げられた。

  あの女の能力……分析した結果どうやら好きな空間にほぼ一瞬で移動できる能力らしい。

  しかも八雲紫のように空間に穴を空けてそこを通るのではなく、空間の点と点を繋げて移動するようだ。

  わかりやすく言うなら今いる場所と行きたい場所をタイムラグをほぼなしで入れ替える能力だ。

  これは一々スキマを空けなくてはいけない紫とは違って、頭で計算した座標にほぼ一瞬で移動できるので、こと空間移動系の能力に関しては『境界を操る程度の能力』よりは上だろう。

  ……最も、オレの能力よりは下なのだが。

 

「……なっ!?」

「鬼ごっこはもうお終いかァ?だったら大人しく寝てろやオラァァ!!」

 

  豊姫が空間移動した時には、オレは彼女の眼前に迫っていた。

  一秒以下の一瞬の移動に追いついたオレを見て、豊姫は酷く動揺した。

  楼夢に初めて負けて、オレが手に入れた能力は『時空と時狭間を操る程度の能力』だった。

  この能力は色々と応用があるため説明しにくいが、一言で言うなら時と空間とその狭間を全て操れるのである。

  この能力で空間移動を行うと、まず世界の時を止めた後に移動するので、彼女の能力よりも速く目的地につけるのだ。

 

  動きが止まった一瞬をオレは見逃さない。

  文字通り神速に蹴りを放ち、豊姫を地面に叩き落とした。

  なんかその蹴りの威力のせいで風が凄いことになってるが気にしない。

  ていうか生きてるのかアイツ?こんど人体実験で使いたいから死なないでくれよ。

  まあともかく、これで依姫ちゃんは逃げる方法をなくしたわけだ。

  後はもう要らない兵を消滅させて終わりである。

 

「……あちゃー、見事にこりゃぐちゃぐちゃだなぁ。生きてるのが奇跡みたいだぜ」

「き、貴様ぁァァァァァァァ!!よくも、よくも姉上をっ!!」

「あれ、もしかして怒っちゃってる?ねえねえ怒っちゃってる?そりゃよかった。いい月のゴミ屑どものデータが取れそうだぜェェ!!」

 

  依姫は怒りに身を任せ、長刀を前に向けた。

  すると、長刀の刃が激しく輝き始めた。

 

「降臨せよ、天照大御神!汝の光で、全ての邪悪を消滅せよ!」

 

  そう叫ぶと同時に、刀を思いっきり振り下ろした。

  そしてそこから、極大の光のビームが発射された。

 

「はっ、レプリカごときで、このオレを止められるわけねえだろうがァ!」

 

  迫り来る光の閃光を、虫を払うかのように腕で薙ぎはらった。

  一直線にしか行かないはずの光は機動を変えてオレの左に進むと、地面で爆発を起こした。

  だが依姫は諦めずその長刀を握る。

  そこで、他の兵たちも正気を取り戻した。

 

「依姫様!我々が先陣を切ります!依姫様はその隙を突いてください!」

「なっ、あなた達!?……ぐっ、死ぬんじゃないわよ!」

「「「はっ!!!」」」

「感動的な人間ドラマ見せてんじゃねェぞ!ムカつくんだよォ!」

 

  兵達は駈け出す。一直線に、オレの元へ。

  もちろん百人ぐらいの兵が一斉に来ると気持ち悪いのでところどころでデスビームっぽい何かを放っているのだが、その内数十人がオレの元にたどり着いた。

 

「月の民の誇りを、思い知れェェェェエ!!!」

 

  雄叫びをあげながら、兵達ははそれぞれの近接武器を持ってオレに飛びかかった。

 

  だが、この後彼らはその選択を後悔することになる。

 

「時よ止まれ」

 

  その言葉だけで、世界が灰色になり、全てが止まった。

  兵達のやりたいことはわかっている。彼らは時間を稼ぎたいのだ。

  後ろで依姫ちゃんがなんか準備してる間の時間を稼ぎ、その依姫ちゃんの一撃でとどめを刺す。

  OK。実に基本でシンプルな作戦だ。

  だがオレ相手に時間稼ぎなど、意味はない。

  灰色の世界の中、最初に来た五人の兵たちの間を歩いて通り抜け、時間停止を解除する。

  すると、彼らは突如地面から舞い上がった竜巻に呑まれ、切り刻まれて絶命した。

 

  時間差で、ボトボトと、兵の残骸が落ちてきた。

 

「今更だがこれチートだな。アフロディさんはこんな能力をサッカーで使ってたのか。まあ、名付けて『ヘブンズタイム』だろうな」

 

  言ってる内に、同じように時を止めて、竜巻で兵達を惨殺した。

  というかこれだけでゴール取れるだろ、と持ち主に突っ込んどいた。

  いつか改とか真とかに進化しそうだ。

 

  そんなことを繰り返していると、いつの間にか敵兵が全滅してました。

  月の兵弱ァッ!?何が月の民の誇りを思い知れ、だよ!一分で殺られるようならんな言葉吐くな!

  まあ目的の時間稼ぎには成功したみたいで、依姫ちゃんの頭上には巨大な火球ができていた。

 

「これが神の一撃ッ!滅びよ、『破滅ノ太陽(サンシャインブレイク)』!!」

 

  これが依姫ちゃんの切り札、かつて太陽神が楼夢との戦いのフィナーレで放った大技『破滅ノ太陽(サンシャインブレイク)』。

  まさか、これほどとは……。

 

  ()()()()()()()()()()()

 

「だァかァらァ!効かねえっつってんだろォ!『自壊しやがれ』!!」

 

  能力、『森羅万象を操る程度の能力』を発動。

  言霊一つで、火球がぶれたかと思うと、次には凄まじい轟音とともに自壊した。

  その事実に、呆然と依姫は立ち尽くした。

  そして、絞り出すように声を荒げた。

 

「そっ……そんな馬鹿なっ!私のほぼ全ての霊力を詰め込んだ一撃だぞっ!ありえないありえないありえないッ!!!」

「ありえないって言われてもな……。逆に聞こう。なぜ勝てると思ったんだ?」

「……えっ?」

 

  今まで自分の敵はいないと思っていた依姫に、その言葉が突き刺さった。

  そんなことも気にせず、オレは続けた。

 

「綿月依姫。正直言おう。お前は雑魚だ。決して強者なんかじゃねえ。狭い閉じこもった世界で最強を気取っている、ただのピエロだ」

「あっ、ああ……」

「井の中の蛙が調子こいてんじゃねェぞ。テメエらは警戒心なさすぎなんだよ。オレ最初に自己紹介したよな?『時空と時狭間の神(ウロボロス)』って。なのにお前らの目には「いつも通りきっと勝てる」「オレたちに負けはない」と映っている。

 ……舐めんのも大概にしろよ?」

 

  威圧を込めて、オレは依姫を睨みつけた。

  正直言うと、オレは今猛烈にムカついている。

  オレは神だ。それなりに誇りを持っている。

  そして強者にはそれなりの敬意を払う。

  だがあれはなんだ?

  ひ弱な武器を自慢気に抱え、強者を倒す策もなくただ突っ込むのみ。

  そんな奴らの目には、オレは勝てる相手としか映っていなかった。

  ふざけるなよ?

  貧弱なくせにオレたちを格下呼ばわり。

  許せない。絶対に許せない。

  ゆえに殺す。

  奴らにどちらかが上か教育してやる。

  感謝しろよォ?

  なんせ、世界最強の神様に調教してもらえんだから。

 

「さて、お前ら愚民に教えてやるよ。この世には、逆らっちゃいけないものがあるってことをよッ!!」

「あっ、……あああアアアアアアああッ!!!」

 

  オレの恐怖に耐えきれなくなったのか、凄まじい形相で依姫はオレに斬りかかろうとする。

  だが、遅い。

  時を止めて一瞬で彼女の前に移動し、みぞおちに拳を放った。

  オレを切ろうとして前に前進していたこともあり、カウンター効果でボギボギと彼女の骨がクッキーのように折れる音が聞こえた。

 

「っごぐゥ……ガハッ」

 

  ヤベエ、殺りすぎたかも。人間って意外に手加減難しいんだよな。

  前に崩れ落ちる依姫ちゃん。

  だがその頭をわし掴み、強引に立たせた。

  彼女の髪から女性特有のいい匂いがオレの鼻をくすぐった。

  確かに、これはいい。サラサラの髪と、腕がボロボロになった服が露出させている大きな谷間に触れていて、超気持ちいい。

  確かにこれはいい。できればまだこの感触に浸っていたい。

  だが残念だったな。

 

「オレの一番の好みはァッ!金髪ロリお兄ちゃん呼び属性を持ったァッ!幼女なんだよォッ!」

 

  地面を強く踏む。

  するとそこから、どっかの巨人たちから身を守るための壁と同じ高さの分厚い壁が、オレの目の前に現れた。

  そしてその壁にめり込むように依姫の頭を打ち付けた。

 

「なあ、依姫ちゃん。この壁が何メートルあるか知ってる?」

「……っ」

「この壁、約五十メートルあるんだってさ。でね、依姫ちゃん。

 

 ーーエレベーターって好きかい?」

「……あっ」

 

  そこで依姫はオレが何をしたいか理解したようだ。だが、もう遅い。

  オレは背中の翼を広げ、壁と平行になるように物凄いスピードで空を飛んだのだ。……依姫を壁にめり込ませたまま。

  オレが空を飛ぶと同時に、依姫はオレに連れられて頭を壁に打ち付けたまま、削り取られるように上へ上がっていくのだ。

  グチュグチャとへんな音が聞こえるが気にしない。

  というか一番上に来た時に骨だけになってないか心配だ。

 

  四十を切ったところで、オレは依姫を思いっきり放り投げた。

  依姫は地面にヘッドスライディングをしているかのようにグングン壁を昇り、後ちょっとのところで停止した。

  四十五メートルぐらいの高さで壁にめり込んでいる少女って、なんかシュールだな……。

 

「おいおい、まだおねんねの時間には早いぜオラァッ!」

 

  だが一切容赦はしない。

  めり込んでいた依姫の体に例の神速キックを繰り出す。

  その威力は依姫の体を通して壁を貫通させ、崩壊させるほどだった。

  飛び散る壁の一部とともに、依姫は空へ投げ出された。

  そして、吹っ飛んだ先では、狂気に顔を歪ませたオレの姿があった。

 

「がっ……ふぅ……っ!!」

 

  依姫の体に、本日何度目かの蹴りが突き刺さる。

  そして吹っ飛んだ先で、待ち構えていたオレによって再び蹴られ、吹き飛ぶ。

  まるで空中でリフティングをしているかのようだった。

  蹴られ、吹き飛び、血反吐すら吐き出し、もはや生気すらも宿していない依姫の瞳がそこにはあった。

 

「これでェ!止めだァ!」

 

  最後はオーバーヘッドキックで依姫を地面に叩きつけ、そこにダメ押しのように黒い閃光を放った。

  閃光が、倒れ伏した依姫の体に迫り、大爆発を起こした。

  だが依姫はまだ死んでいなかった。

  なぜなら、寸前のところで彼女の目の前に結界が張られていたからだ。

 

「……ほう」

「随分と私の土地を荒らしてくれたな。汚れし邪神め……。ただで帰れると思うなよ」

「アハッ!汚れてるなんて当たり前じゃないか!お前は神父服に身を包んだいかにも聖者なオーラを放つ邪神を見たことあるのかよ!?」

 

  依姫の前に立っている男ーー『月夜見尊(ツクヨミノミコト)』の金色の髪が風で揺れた。

 

「生きて帰れると思うなよ……この下郎が」

「上ォォ等じゃねェか!!簡単に死ぬんじゃねえぞこのゴミ屑野郎!!」

 

 

 

 




〜〜『今日の狂夢様』〜〜

「よっすみんなァ!久しぶりの本編登場だよぉぉぉぉお!!最近ストレス溜まってたからちょうど良かったぜ!!狂夢だ」

「誰かこの変態を捕まえてええええ!!書いてる途中正直無双しすぎじゃね? と思った作者です」


「いや〜今回は良かったよ。依姫ちゃんはいいサンドバッグになった」

「お前美少女たちに何てことを……っ。ちなみに誤解ですが作者は依姫ちゃんを嫌っておりません。むしろ大好きな方です。うっかり依姫ちゃんの同人誌をグーグル先生で覗いてしまう程度に大好きです。どうか勘違いしないように!」

「でもあれ結構本気でやったけど生きてんのかね?豊姫を一撃でぶっ壊した神速キックをリフティングみたいに食らわすって……生きてても想像したくないんだが」

「一応ネタバレになりますけどこの小説は基本的に原作キャラは死にません。というか女の子は全員生存します」

「あれ、でもこーりんっていう奴いたよな?東方初の男キャラの。あいつはどうなんだ?」

「……いい奴だったよ(キリッ)」

こーりん「解せぬ」



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