東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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失った力の大きさに気づく

でも、戻らない

なら次は失わないようにと

そう、心に決めた


by白咲楼夢


第一次月面戦争 終了

 

  深夜、深い闇が覆う森の中の空間に、ヒビが入った。

  それは音を立てながら大きくなり、二メートルぐらいになったところで、空間が割れた。

 

「いや〜、今回は疲れた疲れた。さっさと帰ってラーメンでも食おっかね」

 

  ニョキッ、と。そこから白い巫女服を着た妖怪が出てきた。その腕には紫色の中華風のドレスを着た女性が抱えられていた。

  狂夢はスキマのようなものから出てくると、紫をポイっと放り投げた。

 

「キャアッ!」

 

  小さな悲鳴が聞こえたが、気にしない。彼の好みの美少女が今のリアクションをしたら狂夢も対応を変えていたが、少なくとも紫は高校生ぐらいの大きさなので彼は放っておいた。

 

「ちょ、ちょっと!もうちょっと優しく扱ってよ!第一貴方は何者なの?」

 

  恐怖を帯びた瞳で、狂夢を見つめる。

  彼女は見ていたのだ。目の前の悪魔が自分が敗北した少女や、月の最高神を赤子のようにいたぶっていたのを。

  ふと、空を見上げた。最初月に侵入したときは満月だったが、1日も経っていないのに今空に浮いているのは三日月だ。

  最後の光景。天を覆う闇が空から落ちてきたところで、彼女はいつの魔にか亜空間に回収されていた。

  だが空に映る三日月が、その後月がどうなったかを物語っていた。

 

「答えなさい。貴方は誰?楼夢と一体どういう関係なの?」

「うーむ、オレかぁ……。一言でまとめるには、ちと難しいな。まあ、オレは楼夢の裏、本能に位置する存在だ。神名は『ウロボロス』、時空と時狭間の神をやっている。業務は主に時狭間の世界の管理。趣味は人間観察、プライバシーの侵害を犯すことだ。もちろんお前のこともよく知っているぜ、八雲紫」

 

  あっけからんと、狂夢は答えた。

  そもそも知られても問題はないため、変に隠しておく必要がないのだ。万に一の場合は武力で全て解決できる。

 

「ほれ答えたぞ。これで満足か?」

「……ええ」

「そうかい。そりゃよかった」

 

  近くにあった木に背を預ける。

  そして、目を閉じた。

 

「すまんがオレはもう戻るわ。楼夢の野郎を運んどいてくれ」

「分かったわ。それと、助けてくれたことについては感謝するわ」

「礼ならどこぞのピンク頭に言え。オレはもう帰る」

 

  最後にさりげなく楼夢をディスると、髪の毛が白から美しい桃に変わり、動かなくなった。

  よく聞けば、小さな寝息が聞こえた。どうやら熟睡しているらしい。

 

「貴方もありがとね、楼夢」

 

  感謝の言葉を楼夢に告げると、紫はスキマで楼夢ごと移動した。

 

  あたりに、淡い月の光だけが残った。

 

 

 ♦︎

 

 

「……んぐぅ?」

 

  早朝、楼夢は布団の上で目を覚ました。

  上を見れば、よく知っている天井がそこにあった。

  ここは白咲神社。その中の彼の寝室であった。

 

「……怪我が消えている」

 

  体を確認すると、痛々しい傷跡は微塵も残っていなかった。

  ーー狂夢の仕業か……。

  最後の記憶。そこで楼夢は依姫に首を切られるより早く体を狂夢に明け渡した。ここでこうして寝ているということは、全てが無事に終わったということだろう。だがそのことを直接感じたい自分がいた。

 

  時計の針が11を指す頃には、楼夢は着替えを終えていた。

  ぐぎゅるゥ、と腹が鳴る。そういえば昨日から団子しか食っていなかったので、腹が空いたようだ。

  立つために杖を取ると、枕の横に置いてあったヘッドホン型思考演算装置を見つめた。

  ーー結局、何もできなかった。

  その思いだけが楼夢の心に満ちていく。今回紫を救ったのは自分ではなく、狂夢だ。自分はあろうことか格下との戦闘で倒れ、一方的にやられてしまった。

  ーー情けない。悔しい。

  確かにハンデはあった。だがそれは言い訳に過ぎず、最後まで戦えなかった自分が情けなかった。

  何が最強だ。10分もまともに戦えない自分に、果たしてこの称号は合っているのだろうか。

 

「いや、よそう。変な考えは持つな」

 

  そうだ。

  この称号は命懸けで戦い、勝ち取ったものだ。たとえ不相応だとしても、この名を偽ることは彼女への侮辱にあたる。

  だったらまだ最強を名乗ろう。

  たとえそれが今の俺にふさわしくないとしても。名乗ろう。

  それが自分にできる、仲間を守れる最後の仕事なのだから。

 

 

 ♦︎

 

 

  「ろ、楼夢!?もう大丈夫なの?」

 

  楼夢が廊下を歩いていると、それを見つけた紫がそんな声を上げた。

  怪我は全て狂夢の時空回帰(ベホマ)で健康な状態に戻されているので、体の心配はない。

 

「ああ、紫か。お前の方こそ怪我はないのか?」

「わ、私は大丈夫!その……白い貴方が……全部片付けたから」

「そうか、よかった」

 

  紫が怪我をしていないことに安堵した。狂夢さん、今回はグッジョブだ。

  気を緩めながら、思わず紫の頭を撫でてしまった。

  紫はそれを嬉しそうに受け入れていた。

  お、体も同時に揺れて胸が!ふむ、いい光景だ。

  朝からそんなことに考えていると、ふと頭に何かが繋がった音が聞こえた。

 

『ちぃ、テメエ、巨乳派か!?』

『朝っぱらからどうした狂夢。ていうかいきなり何聞いてんだよ』

『うっせェ!今までオレはお前が性欲なんてないと思っていたが、それは間違いだったようだ!』

『待て!この体だぞ!こんな体で性欲湧くか!』

『それは今までテメエが幼女にしか会ってなかっただけだろうが!言え、今までテメエは何人の巨乳と出会った!?』

 

  え、えーと。永林に……神奈子に……紫に……勇儀に剛だな。あとルーミア完全体も意外にデカかった気がする。ってなんで覚えてんだよ!?

  どうやら脳が無意識に記憶していたようだ。これよく考えるとすごい変態だな自分。

 

『分かったか!テメエが圧倒的にロリ率が高いということに!うらやまけしからん!』

『おい待てそれは誤解……』

『もう知らん!お前は今日から貧乳派の敵だ!というわけで死んでろこの屑が!』

 

  プツンという音と共に、そこで念話は途絶えた。

  なんか変態認定された気がするが、どうか感違いであることを祈る。

 

「どうしたの?急に立ち止まって」

「いや、なんでもない。それよりも娘たちはいるのか?」

「ええ、今頃多分昼食を取っていると思うわ」

「そうか。じゃあ俺も食いに行こうかな」

 

  正直言うともう空腹で腹がペコペコであった。なので娘たちが昼食を食べているのはグッドタイミングであった。

 

 杖をついてるが、できるだけ急いで、楼夢は部屋に向かった。

 

 

 ♦︎

 

 

「お父さん!?もう平気なの?」

「あ、お父さんだ〜おはよー」

「お父さん、月が3分の2かけてるんだけど何故だか知らない?」

「おはよう、トガミ様。今昼食の準備をしてくるので、少し待っててくれ」

 

  部屋についた楼夢を待っていたのは、娘たちや博麗からの労いの言葉だった。……約1名違ったが。

  舞花よ、世の中には知らなくていいこともあるのだよ。というかムカついて月をぶっ壊したなんて言ったらどんな目で見られるか分かったもんじゃない。幸い紫は黙秘しているので黙っておこう。

 

  テーブルに、味噌汁と白米と焼き魚が置かれた。

  一口食べる。

  上手い。ようやく我が家に帰ってきた実感が湧いた。

  ちなみに紫はここにはもういない。楼夢を部屋に送り届けた後、今回の件の後始末をしに行ったようだ。まだまだ若いのに頑張っている。

  いや、この場合は楼夢が年をとりすぎているのだった。正式な年齢は自分にも分かっていない。おそらく火神も剛も自分の年齢なぞ忘れているだろう。唯一狂夢なら知ってそうだが、一応約六億歳というのは分かっているので必要ない。

 

  後始末といえば、月の最高神であるツクヨミが月の魔力を使いすぎたせいで、結局月の魔力は枯渇したらしい。

  狂夢の記憶の情報では、その足りない魔力は狂夢が補っているようだ。

  楼夢自身、よく彼が魔力を提供したなと思ったが、本人曰く、地球の生態系が崩れると後々かなり面倒くさくなるから、らしい。

  彼らしい理由だ。ようはこのまま時代が変わってしまったら、アニメも漫画もゲームもできなくなるので、手伝ったという意味だろう。

 

  そんなことを考えている間に、昼食を食べ終えていた。

  食器を片付け、楼夢は自室へと向かい、休眠をとった。

 

 

 ♦︎

 

 

  夜、楼夢は神社の屋根の上で、月見をしていた。

  ちなみに今日は8月十五夜、月見をするには絶好の季節である。と同時に、月の使者が輝夜を連れ戻しにきた日でもあった。

 

  グビリと、杯の中の酒を一口。

  直後、焼けるような熱が喉から体中に伝わる。

  それがまた心地よく、もう一口、飲み干した。

 

  そしてちょろちょろと杯に酒を注ぐと、ふと月が杯の中に浮かんでいるのが見えた。

 

  だが、その月は三日月であった。

  本来、8月の十五夜は満月の日である。だが今日の月はブーメランのように、欠けていた。

  原因はハルマゲドン、狂夢の繰り出した全力の一撃であった。

 

「スカーレット・テレスコープ」

 

  緋色の目を見開き、月の表面を凝視する。

  すると視界が徐々にズームされ、月の兎たちの姿がはっきりと映った。

 

  「ちょっとあなたたち!真面目にやりなさい!」

 

  長刀(ものほしざお)を持った美少女の口の動きから、そう月兎たちに怒鳴っているのが分かった。

  その隣では金髪の帽子をかぶった美少女が、テーブルの上で美味しそうに桃を頬張っていた。

 

「ちょ、ちょっと姉上!?あなたも仕事してくださいよ!」

「|ひひほの、ひょりひへ。ふぁってふぁたひひふたいひょうどうでひなひふぁら《いいのよ、依姫。だって私肉体労働できないから》」

「食うか喋るかどっちかにしろ!そして今すぐ鍛え直せ!」

 

  のんきに返事を返す豊姫と、それにキレのあるツッコミを入れる依姫。

  依姫ちゃん、アンタ苦労キャラだったんだね……。

  全く仕事をしない姉に怒鳴り散らしている依姫に、楼夢はお疲れ様です、と内心呟いた。

 

  そうこうしている間に、月兎たちが何かの機械を月の地面に設置していた。

  あれがなんなのか楼夢には分からなかったが、おそらくは月を直す機械なのだろう、と楼夢は推測する。

 

  とりあえず、月の問題は終わった。今回月の魔力を枯渇させたツクヨミは降格とともに、神力の半分近くも失ったらしい。

  おまけに最近では外に出ないで、パソコンっぽいものをカタカタ弄っている。ああ、新たなニートを誕生させてしまった……。

 

  狂夢からもらったその時の写真を見ながら、楼夢はその情報を振り返っていた。

 

  最後に杯の酒を飲み干し、もう一度空を見上げた。

  天には相変わらずの三日月が、浮かんでいた。

 

  今回の事件で思い知ったことがある。

  それは、自分は最強であっても、無敵ではないということだ。

  今回は、慢心が引き金となり敗北してしまった。

  そのせいで、紫を危険な目に合わせてしまった。

 

  --次はもうない。今度こそ俺が守りきる。

 

  三日月の月の下、楼夢はそう胸に誓った。

 

 

 --そして、俺たちの第一次月面戦争は幕を閉じた。

 

 

 

 

 





〜〜今日の狂夢『様』〜〜

「どーも、皆さん!というわけで今章が終わりました。多分次が前編の最終章になりそうです。作者です」

「心はいつもロリと共に!ゴスロリ幼女を眺めるのが最近の日課の狂夢だ!」


「いや〜やっとここまでたどり着いた……。というか前編長すぎましたね」

「いやまだ前編敗北終わってないだろ。というか後編は絶対前編より短くなるよな」

「まあ、そうなるでしょうね。というかキャラたちの力順ってどんな感じになってるのかわかりにくい気がします」

「ふ、ふ、ふ!こんなこともあろうかと、最近出てるキャラの総合戦闘能力を数値に表してみたぜ!カモン、ナレちゃん!さあ持ってくるんだ!」


白咲狂夢:

通常状態(魔力以外封印):20万
全力解放状態:100万


白咲楼夢:

通常状態:9万
舞姫解放状態:18万
天鈿女神解放状態:80万


鬼城剛:

通常状態:50万
本気モード:75万


火神矢陽:

通常状態:10万
憎蛭解放状態:20万
???:不明


八雲紫:2万

ルーミア:5万

綿月依姫:2万5千

綿月豊姫:2万

月夜見命(ツクヨミノミコト)

通常状態:5万
魔力吸収状態:7万
極限魔力吸収状態:10万


白咲美夜:1万5千

白咲清音:1万3千

白咲舞花:1万

博麗楼夢:2万5千



「----と、数値で表すとこうなる。ていうか伝説の三大妖怪の中で火神って弱くないか?」

「ああ、それは火神さんが神解を使ってないからですよ。一応使えるようになっているみたいですが、この小説ではまだ出てないので数値は不明になってます」

「というか伝説の大妖怪以外との差が激しすぎるな。というか地味に紫より博麗が強かった件www」

「まあ、そこは諦めるしかないでしょう。伝説の大妖怪は、そんな規格外の集まりなんですよ」

「あと、ツクヨミが頑張ったら通常の楼夢を超えるんだな。まあ妖魔刀解放で一気に差がつくがな」

「というかあなたが一番規格外ですよ。なんですか?三大妖怪最強の楼夢さんより20万多いって」

「まあオレにはまだ『八百万大蛇(ヤオヨロズ)』とかそういう反則級の武器もあるからな。伊達にこの小説最強のキャラをやってねえよ」

「まあ、パワーバランスがどうなっているか大体わかりましたね。
それでは皆さん、途中経過に今章の記録を追加したら、新章がスタートです。あと、ここにのってないキャラにも力の数値を書いとくので、ぜひ見てください!次の章が投稿されていたら、完成していると思うのでよろしくお願いします」






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