東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:キメラテックパチスロ屋
たとえ間違いを犯そうが
どんなに堕ちようが
届かせたい願いがある
前を行く先人は、そう語った
by博麗楼夢
禁忌を犯しても
「ハアッ!」
「そりゃッ!」
暗い闇夜の中、ギャリンッ! と刃と刃がぶつかり火花が散る。
楼夢はそれを振り払うと、後ろにステップした。
「逃がさない!」
それをチャンスと見て、黒い巫女服の少女ーー博麗楼夢は前へ駆けた。
数秒に複数の斬撃が楼夢に襲いかかる。だがそれら全てをわかってたのかのように、いなし、受け止め、流した。
だがこの程度では止まらない。博麗の刃はさらに加速する。
同時に、楼夢も要所要所でカウンターを放った。
その内の一つが、博麗の頬にかすり、僅かに血が流れた。
やがて、楼夢のカウンターが当たるようになってきた。
対して博麗の斬撃は未だに楼夢の体を捉えていなかった。
(何回もやってるが、攻撃が全然当たらないっ。……仕方ない。奥の手を使うか)
決断するがいなや、力を込めて楼夢の体を後ろに弾くと、博麗は大きく息を吸う。そして、楼夢もよく見る構えをとった。
(あの構えは……『夢想斬舞』でもやるつもりか。残念だがそれは悪手だな)
そう思考する内に、博麗の刀に霊力が集中してきた。
楼夢は脳内に今までの『夢想斬舞』の威力、速度を計算すると、受け流した後でカウンターを放つために霊力を込めた。
一瞬の静寂。
そしてーーーー
「ウオォォォォォッ!」
雄叫びと共に、博麗が突っ込んできた。
彼女は楼夢の懐に飛び込むがいなや、光り輝く刃を斜め上に切り上げる。
だが、それは楼夢の計算通りだった。
楼夢は同質の霊力の刃をぶつけ、光り輝く刃を消滅させようとした。
だが、次の瞬間、
「なっ!?」
「『森羅ァ……万象斬ッ』!」
青白く輝くそれは、楼夢が多様する技『森羅万象斬』だった。
計算した威力を超えた一撃で、楼夢の態勢は崩れる。
だが、奥の手はまだ終わらない。
「ハアァァァァァァァアッ!!」
ギョッと目を見開く。
そこには、大技を放ったばかりの博麗が、再度青白い刃を振り下ろす光景が目に映った。
「くそッ! ……痛ッ!」
避けきれず、血しぶきが宙に舞う。
返す刀で、博麗はそのまま楼夢に連続で森羅万象斬を放った。
「ぐぅッ! ごッ! ガァッ! ぐあァァァッ!」
その全てが、楼夢の体を捉えた。
特に最後の一撃はクリーンヒットしたようで、派手に楼夢の血が舞った。
「『
止めにと、博麗は一瞬静止した楼夢の体に鋭い突きを放った。
青白い美しい刃が、楼夢の体を貫く----ことはなかった。
「楼華閃九十六『桃姫の桜吹雪』」
突如、そんな声があたりに響いた。
青白い刃の刃先に、楼夢の姿はない。横を見れば、髪を風にたなびかせた楼夢が、刀をゆっくり納刀した。
直後、無数の桜色の斬撃が、博麗を包んだ。
「!? ぐぅ……がァァァァァッ!!」
博麗を中心に血が地面に飛び散った。
そのまま、気を失い博麗はゆっくり地面に崩れた。
「……あ、やべぇ。手加減忘れてた」
♦︎
現在、楼夢は博麗の部屋で彼女の看病をしていた。
模擬戦で受けた傷は両者共直しており、後は彼女が起き上がるのを待つばかりであった。
ふと、窓の外を覗く。
今の時刻は11時、季節は真冬の2月であった。
ポロポロと、雪が舞う。
今回の模擬戦は限りなく実戦に近かった。おかげで、博麗は血を流して気絶中である。
だが彼が驚いたのは、博麗が自分に傷を負わせたことであった。
もちろん制限はあった。今回の模擬戦で楼夢は体術と妖術などに術式を禁じていたが、それでも真正面から楼夢が切られたのは久しぶりであった。
流石、初代白塗の巫女と称賛する。
実際、楼夢が彼女に剣術を教えてから、彼女は凄まじい速度で腕を上げている。それこそ剣術を限りなく極めた楼夢と競えるほどだ。
だが同時に惜しくも感じられる。それは彼女が人間だからだ。
彼女はここに来てから毎日死に物狂いで修行している。おそらく彼女も分かっているのだろう。剣術を極めるには
六億年生きた楼夢と違って、博麗は僅か二十年ほどでここまで強くなった。だが、ここから先に行くには時間が圧倒的に足りない。
六億年磨かれた剣術を、十年単位で極めるには無理があるのだ。せめて、後百単位。それでも足りないかもしれないが、彼女が剣を極めるには十分な時間だ。
「……ん、ぐぅっ!」
布団から苦しそうな声が聞こえた。どうやら九十台の楼華閃を受けて貧血気味のようだ。
そんな様子の博麗を見て、楼夢は懐からあるものを取り出した。
それは、楼夢の血液が入った瓶だった。
実は模擬戦の後、掃除のついでに回収していたのだ。
悪魔の考えが、楼夢の頭をよぎった。
だが、それは、確かに寿命を長くする唯一の方法だ。たとえ人間にとってそれが
「……っ」
楼夢は悔しそうに眠る博麗を見た後、瓶を懐にしまった。
♦︎
暗闇に沈んだ意識が引き戻される。
眩しい光の中で、目を開けると、博麗の視界に木製の天井が映った。
しばらくぼうっとして、状況を把握する。
ーーーー確か自分はトガミ様と模擬戦をしていたはずだ。
その後はどうなったか覚えている。奥の手を突きつける寸前で躱され、無数の刃に切り刻まれたはずだ。
体中に巻かれた包帯を見れば、どれほどの傷だったかすぐにわかった。
最近、博麗は思っていた。このままでは剣を極めることはできないと。
楼夢の教え方が悪いわけではない。むしろ師としてはこれほど素晴らしい存在はいないだろう。
ではなぜ剣の極地にたどり着けないのか?
時間だ。
博麗は圧倒的に時間が足りなかった。
博麗は二十代の若々しい女性だ。だが当然老いは来る。
おそらく全盛期でいられるのはあと二十年ほどだろう。だが、たかが数十年で楼夢を超えられるだろうか?
否、断じて否だ。
楼夢は六億の長い時をかけてあの極地にたどり着いた。
博麗がいくら天才であろうと、
「……く、ぅう」
立とうとするとめまいがした。おそらく貧血にでもなったのだろう。
いつもの巫女服に着替え、布団を片付けようとすると、その上に手紙が置いてあることに気づいた。
「……『俺の部屋に来い』か……。なにかあったのだろうか?」
手紙には短く、そう書かれていた。
字を見れば書いたのは楼夢本人なのはわかるのだが、いかんせん楼夢が書いた手紙にしては不自然だ。
いつもの楼夢なら、お気楽に冗談をニ、三個混ぜているだろう。だが疑うばかりでは失礼だ。
とりあえず、刀を腰に差すと、博麗は楼夢の自室に向かった。
♦︎
「……よう、来たか。待っていたぞ」
「……よかった。どうやらあの手紙は本物だったようだ」
「ん、本物って?」
「いや、いつもと比べてやけに短い文だな、と思ったからな」
「……これからする話は真剣だ。よく聞いておけ」
少し薄暗い部屋の中、楼夢はテーブルの前で椅子に腰掛けていた。
博麗に同席するようにうながすと、テーブルにグラスを一つ置いた。
「さて、正直に言おう。今のお前じゃ剣の極地にたどり着けない」
「……っ!」
楼夢の口から語られた事実。それは博麗が考えていたことと同じであった。
「今のお前には時間が足りない。剣術を極めるための時間が、な」
「……分かっている。だがどうしてもたどり着きたいんだ!」
熱のように熱い気持ちを、博麗は吐き出した。
彼女は元々博麗神社という神社の巫女だ。だが剣術を極めるため、妹も、全てを捨てて旅に出たのだ。
そこまでしてきて、諦めきれるわけがない。
博麗の瞳が、その熱い心を物語っていた。
「時間だ。私には時間が欲しい! このまま諦めてたまるかッ!!」
「……寿命を延ばす方法は、ある」
その一言で、博麗の思考が停止した。
だが楼夢の真剣な顔から、それが事実であることがわかった。
「ど、どうすればいいんだ! どうすれば寿命を延ばせる!?」
「それは……こいつだ」
楼夢は懐から、真紅の液体が入った瓶を取り出した。
「簡単だ。
「……えっ?」
楼夢は液体をグラスの中に注ぐ。
グラスの中が、真紅に染まっていく。
不思議とその光景から、博麗は目を背けることができず、ただじっと見つめていた。
「この液体は模擬戦で流れた俺の血だ。今回傷をつけた褒美として、この血液をやる。そうすればお前の寿命は延ばせるだろう。だが代わりに
「人間を辞めるって、つまり」
「半人半妖になるってことだ。この量の俺の血液だったら、あと千年は生きていけるだろう」
「……」
博麗は迷っていた。
確かに楼夢の言っていることは正しい。彼ほど高位の妖怪の血を飲めば、寿命も現在とは比較にならないほど伸びるだろう。
だが同時に、彼女の脳裏に置いてきた唯一の妹の顔が浮かんだ。
彼女の妹は、博麗が旅に出ると言った時に特に反論しなかった。
彼女曰く、博麗ならば多くの悪を正しく導ける。ここにいては宝の持ち腐れだ、と。
そんな自分を信じた妹を裏切って、禁忌の道に進んで、果たして自分はいいのだろうか?
正義と悪。人間と妖怪。人間を選べば、夢は消え、妖怪を選べば、妹を裏切ってしまう。ならば自分はどうすればいいのだろうか?
『姉さんは自分の信じた道を突き進んでください』
旅立ちの時に、妹にかけられた言葉が、頭の中を反響する。
そうだ。何を恐れているんだ。
これは自分の道。自分で決めるもの。正しさなどない。
ーーーーならば、ならば私は……
「……決めました、トガミ様」
「そうか」
博麗は、グラスの持ち手を握ると、密かに狂気が込もった瞳で楼夢を見つめた。
「私は……妖怪に、なります」
博麗は血液を勢いよく口に流し込んだ。
直後、体の奥底から、喉を焼くような熱が湧いた。
「あ、アァァァァァァアアァァアッ!!!」
熱い熱い熱い熱い熱い熱い。
体が、喉が、頭が焼かれていく。
これが人間を辞めると言った罰なのだろうか? 罪人を焼く業火の炎の如く、博麗の体を熱がかける。
どのくらい経ったのだろうか。気づいた時には、熱はもう消え去っていた。
グッショリ、という汗の感覚を感じつつ、博麗はおぼつかない足取りで立ち上がる。
そして、目の前に落ちていた鏡を覗いて絶句した。
「……ぁぁ」
先ほど叫びすぎて声が出てこなかったが、それでも確かに彼女は驚いた。
鏡に映った自分の顔に、変わったことはなかった。ーー一点を除いて。
博麗の瞳ーー夜のように黒かった瞳は、赤い先ほどの血のような真紅に染まっていた。
よく見れば彼女の歯には鋭い犬歯も生えており、それがギラリと光っていた。
「ようこそ、
後ろで、見ていた楼夢が、そう告げた。
「はーい、今回から新章へ突入! 最近やけにやる気が出てきた作者です」
「やる気が出るのはいいことだ。いつもより早めの更新に驚いている狂夢だ」
「突然ですが、ホラーゲームって狂夢さんはしますか?」
「ホラーゲーム? まあ一応やるっちゃやるな。ちなみに作者は?」
「できるわけないでしょう」
「デスヨネー」
「ただ、プレイは無理ですが実況を見るのは好きですね」
「そういえばお前日本の2Dのホラゲーが好きなんだっけ?」
「ええ。たけしのいる青●はもちろん、魔●の家とかかなりのもの見てますね。ちなみに最近はバイオ7ですね。あれ見た後ほかのバイオシリーズ見たら、全然怖くなくなりました」
「まあ、バイオ7はFPS視点だからな。チェーンソーで腕を間近で切られるシーン見たら、そりゃ耐性つくわ」
「ちなみに今ちょうど深夜の12時ぐらいですね」
「マジかよ。ちなみに午前2時にホラゲー見る作者が異常なのであって、耐性がない方は真夜中のホラゲーを見るのはやめといた方がいいぜ。絶対眠れなくなるので」
「異常って、おい」
「というよりリアルでお前五年前に初めて青●見て3ヶ月近く眠れなくなっただろ?今じゃすっかり耐性ついたが」
「でもなんで自分じゃプレイできないのかな……?」
「いくら耐性がついても、チキンはチキンのままってことだよ」