Angel Beats! ~失せた心と色~   作:拳骨揚げ

2 / 10
 二話です。


 ゆりのキャラがこれでいいのか不安です。


 この小説、物語の進みが絶望的に遅いので、読んでくれている方たちはもどかしい思いをするかもしれませんが、どうかご容赦ください。


 かなり加筆しました。よろしくお願いします。


#2

 一瞬だけ目を細めたかと思うと、彼は○ッキーを一本口にくわえる。

 

「調子はどう? どっかえらくない?」

 

 言いながらその笑みを少しだけ心配そうに曇らせてこちらに近づいてくる男子生徒。しかしその手に持つポ○キーを食べる手は止まる気配はない。

 ……ぽりぽりぽりぽり……

 ―――こっちが混乱しているのに、なに呑気にポッ○ーなんか食ってんだっ!

 もはや緊張感の無い行動がすべて逆鱗に触れたかのように、あたしはこの男子に掴みかかった。男子は「グエッ!」とカエルが踏みつぶされたかのような声を上げる。もちろん、○ッキーは地面にこぼれ土にさらにコーティングされる。だがこちらはそれどころじゃない。

 

「ねえ、ここはどこ!? なんであたしはこんなところにいるの!? だってあたしは……!」

 

 襟を掴んで激しく揺らしながら訊ねる。

 

「やめて揺らさないで……脳が揺れる。……それと首締まってる」

 

 しかし返って来たのは苦しそうな声。やりすぎたことにようやく気付いて手を放すと、「ゲホッ! ゲホッ!」と何度も咳をした。

 

「ごめんなさい。それで、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

 気を取り直して聞くも、彼からの返答は苦しそうに咳き入っている声だけ。

 

「ゲホッ! ゴホッ!」

「ねえ」

「オエッ! ゴホッ!」

「ちょっと」

「エホッ! エホッ!」

「話を聞けぇぇぇっ!」

 

 いつまでも咽ていてこっちの話を一向に聞こうとしない男子生徒に、あたしはたまらず飛び蹴りをかましてしまう。

 

「おわぁぁぁぁぁっ!」

 

 見事に腹部に入ってしまい、男子生徒はその場でもんどりうつ。―――あたしは悪くない。十分な時間を与えたのにこちらの話を聞かないこいつが悪い。

そしてフラフラと膝を笑わせながらなんとか立ち上がって呻きながら言う。

 

「ぉおぉぉ、見事に鳩尾に入った。まさか、倒れていた少女が格闘技を得意とする少女だったなんて」

「するかぁぁ!」

 

 まったく不名誉なことを言われてたまらず回し蹴りをくらわそうとしたとき、ふいに目の前にヤク○トを差し出された。空気を読まないその行動に呆気に取られて差し出してきた男子の方を向くと、彼はにっこり笑う。

 

「まあまあ、ヤ○ルトでも飲んで落ち着きなさい。ヤクル○には精神を落ち着かせる効能がある」

「あるかぁぁっ!」

「ぐふっ!」

 

 中断してしまった回し蹴りを彼の横っ面に叩き込んだ。完全に伸びてしまった男子を見て、そしてこれまでのことでようやく落ち着いてきていた。まだまだ混乱はしているが、冷静になるだけの余裕は生まれた。

 

× × ×

 

「落ち着けた?」

 

 伸びていた男子が復活するのには十数分かかった。彼は首元を抑えながらなんとか立ち上がる。そして地面に散らばって粉々になったポッ○ーの残骸を見て顔を青くさせる。心なしか涙目だ。それを落胆のため息とともに諦めると、こちらに向かって蹴られた頬をさすった。

 

「それにしても、随分容赦なく蹴ってくれたな」

「ご、ごめんなさい」

 

 気まずくなって謝った声も小さくなってしまう。さらにはお菓子一つにそこまでショックを受けられるとは思っていなかった。

だけど彼はあたしの様子を見て、自分の問いかけの答を見つけたようだ。満足そうに二度、三度と頷く。

 

「それは良かった。わざわざ蹴りを耐えただけあった」

「え?」

 

 と間の抜けた声が漏れる。まさか、この男子はわざとあたしの蹴りをくらっていたということ? あたしを落ち着かせるために? ううん、むしろわざとあたしを怒らせるようなことをしていた? 一体いつから? そして思い当たる。目の前の男子がしていた行動のすべてが―――ということは、まさか最初から、起きたあたしに一声かけたあの瞬間から!?

 そこまで考えついたところで、その男子は誰もが安心するような柔らかい笑みを浮かべて言う。

 

「混乱すると、それが暴力に変わる人は少なくない。行き場のない不安を体を動かすこと、あるいは人にぶつけることで解消しようとするのは決して予想外の事態じゃないさ」

 ―――だったら、それをこちらは全て受けてあげればいい。

「てゆうか、最初は全部受け止めるつもりだったんだけどね、キミって随分と運動が得意だったんだね」

 

 そう疲れたように笑って締めくくった彼だが、それでもあたしは驚かざるをえない。

 いきなり蹴られたことを怒らない理性と、一目見るだけであたしの精神的状況を読み取り的確な対処法を考え出す頭の回転の速さ。

 

 

 ―――この人、一体。

 

 

 彼は新しく懐からト○ポを取り出し口に入れて、名乗る。

 

 

 

「そういえば、自己紹介がまだだったね。俺は無心真実、無心(むしん)の真実(しんじつ)と書いて無心真実。ただのお菓子好きの高校生」

 

× × ×

 

「お菓子好きの高校生」

「なんでそこだけ繰り返したのよ」

「なんか、キミには言っておいた方が良いと思って」

 

× × ×

 

 無心真実と名乗った彼は、話をするなら場所を変えようと言って歩き出した。こちらに来てまだなにも知らないあたしは、それについていくしかない。

 歩きながら彼の後姿を見て、彼を少し観察してみる。顔立ちはかなり整っていて、特にその瞳と口元の柔らかな笑みから来る温かな印象は、そのまま彼の雰囲気を表しているようだ。だけど背丈は一般高校生よりは少しだけ小さくて、あたしより少しだけ高いぐらいだ。だからだろう、イケメンというよりは美少年と形容したほうが正しいその容姿。短めに切りそろえられた落ち着いた髪型。けれどもそれなりに鍛えられたのが分かる体つき。先程のあたしの対応やその落ち着いた喋り方からして性格の方もいいのだろう。

 ―――なんだ、この一見完璧な人間。こんな人がいるなんて反則だ。―――……こんな人がいるなら、あの時どうしてあたしの前にもいてくれなかったのか。

……分かってる。これはどうしようもないことだ。それがあたしの人生だったんだから。それを彼に八つ当たりしても彼を困らせるだけ……。

 

「あ、そういえばキミの名前をまだ聞いてなかった」

 

 キャンディーを舐めながらこちらを振り向いた彼が、あたしにチョコレートを差し出しながら聞いてきた。少し迷ったすえ受け取ると彼は満足そうに微笑んだ。

 

「ゆり。仲村ゆり」

 

「そっか、じゃあ仲村。ん? ゆり? どっちがいい?」

 

 呼び方一つに迷っている辺り、少しばかり天然も入っているのだろうか?

 

「どっちでもいいわよ」

 

 ため息交じりにそういうと彼は―――

 

「じゃあ、ゆりで」

 

 そうあたしの呼び名を決めた。いきなり下の名前で呼ぶことに若干の不快感を覚えつつもここで彼に機嫌を損ねられたらもう頼る人がいない。

 

「じゃあ、あたしも真実って呼ぶわよ」

 

 けれども、それじゃ気が治まらない。だからそう言ってやったのに彼は一瞬キョトンとした顔をしただけで、すぐに少しだけ照れくさそうに笑った。

 

「うん、いいよ。女の子にファーストネームで呼ばれるの初めてだ」

 

 一つの校舎の中に入って階段を上る。大きな校舎だけあってその段数はかなり多い。まだ慣れていないあたしとしてはこの量はかなりきつい。しかし彼はそれに気づいているようで、あたしに合わせるように徐々に上るスピードを緩めてくれた。隠れた気遣いの出来る男子はモテると聞いたことがあるけれど、この人もそうなのだろう。漠然とそう思った。

 その道中でも彼はお菓子を食べるのをやめない。最初に食べていたキャンディーは食べ終わり、今はバウムクーヘンを食べている。

 

「ねえ、そんなにお菓子食べてるけど飽きないの?」

 

 実はここに来るまでに何度か菓子を渡されているのだ。それは今もあたしのセーラー服のポケットに入っていて、そろそろ零れ落ちそうだった。

 

「飽きないよ。どれも美味しいしね」

 

 応えながら今度はラムネを渡してくる。

 

「いや、もういらない」

「そう? まだまだいっぱいあるんだけど」

「一体どこにそれだけの量を持っているのよ」

 

 見た感じ袋のようなものを持っていない。制服にいれているとしてもその量は制服の体積を完全に超えている。しかしそれに応えることは無く。バウムクーヘンを食べた影響で

 

「うわ、口の中パサパサ。ヨーグルト飲もう」

 

 飲むヨーグルトを飲みだす始末。それを眺めていると、あたしの顔と手元のヨーグルトを交互に見てポンと手を叩いた。

 

「いらないわよ」

 

 彼が懐からなにかを出そうとしたあたりでそう言うと。彼はその姿勢で固まり、残念そうに肩を下げた。

 

「じゃあ、ちょっと寄り道」

 

 そういって彼はいったん階段から離れる。少しだけ不思議に思いながらついていくと、先の方に自販機を見つけた。彼はそれの目の前で立ち止まり、お金を入れてコーヒーを購入。それをあたしの方へと渡してきた。

 

「いらないわよ」

 

 さっきと同じことを言う。しかし彼は苦笑して言い返してきた。

 

「どうせ、話は少し長くなるからね。これでも飲みながら聞いててよ」

 

 ……そういうことならとコーヒーを受け取り、彼が階段に戻るのに合わせて歩を再び進める。そのこちらに気を遣う姿を見ていると、もしかしたら生粋のお人好しで苦労人気質なのだろうか。

彼の観察をやめ、自分なりにこの世界について考えてみる。どうせこのあと真実(まこと)の口から聞くことになるけれど、それでもこちらであらかじめ考えておいて損はないだろう。

 ―――まず、あたしが死んでしまったのは間違いないはず。今でも鮮明に覚えているのだから。そして気付いたらこの学校に来ていた。つまりここは死んだ人が来る世界? だとしたらこの学校はどんな意味を持つ?

そんなことをしているうちにどうやら目的地に着いたようだった。

 

「あ、そろそろつくよ」

 

 彼が扉を開ける。来たのは屋上、そこには誰もいない。柵からグラウンドを一望できた。今はどのクラスも教室内で座学なのだろう、グラウンドには誰もいなかった。

その柵に寄りかかって彼は少しだけ空を仰ぐ。それにならってみるも、そこにはなにもない普通の空で……いや、あたしの状況からしたら普通の空というのがおかしいのだ。

 ―――そこであたしは、この世界の真実を知ることになる。

 




 お菓子の品名って伏字にする必要あるんですかね?


 なんか話の進み方が物語シリーズのアニメみたいになってます。会話だけして話が進まないというやつですね。

 次回も投稿できるかわかりませんが、できるだけ早く出来るように努力していきます。

 ではでは、第二話を読んでいただきありがとうございました。
 できれば次回もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。