女神達の奇妙な冒険   作:戒 昇

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第63話 川西兄弟その②

四人の服装は、駅前にて出会った二人とは違いは一つだった…描かれている月の形が微妙に細かったり、ふっくらしている程度の違いだった。

 

 (さっきのと、ほとんど同じ格好…群体型か…)

 

 ベンチから距離をとるとスタンドを出し、承一は相手の出方を見る。

小人達は背もたれの上に立つと、内二人が溢れていた小銭の元に近寄り、それを掴む。

 

 『マ、サッサト終ワラシマスカ!』

 

 『右二同ジ!』

 

 ほぼ同時のタイミングで、小銭を投げ、やはり途中で軌道が見えなくなる。

だが、承一にも対策が無い訳ではなく、素早く頭を下げる…すると頭上から物が通り過ぎる音が聞こえた。

 

 「同じ手が通用するとでも、思ったか」

 

 『ナラ、コレハドウカナ?』

 

 頭上からの声に反応し、見上げると先程までベンチにいたはずの小人の一人が、踵落としの体勢になって現れた。

 承一は「アウタースローン」の左腕で止め、カウンターで右拳を放つが体をひねり、避けられてしまう。

 そのまま地面に着地すると、他の三人は承一の周りを囲むかの様に立っていた。

  四人が同時に走り出す…手には何も持っていなかったが承一は危険だと判断し、回避をする。

 だが、一歩遅れてしまい右足のスニーカーに手を触れられてしまう。

 

 

 『タッチ!』

 

 

 その声と共に右足の全体が若干重くなる感じがした。

 しかし、それに構う暇もなく他の三人がそれぞれの箇所に触れてくる。

 

 

 『タッチだぜ!』

 

 『…触レタゾ!』

 

 『タッチダヨ!』

 

 

 左腕、左足、そして右手の親指辺を触れられて、やはりその箇所が重くなる。

 拳を振るおうにも上手く動かせず、簡単に避けられてしまい、四人は一定の距離を置く為、その場を離れる。

 

 

 『サァ!止メトイコウカ!』

 

 

 一人が傍にある十円玉を拾い上げる、その動作に合わせたか三人が承一に真っ直ぐ向かう様に、列を成す。

 列ができたのと同時に十円玉を蹴って、近くにいる小人に渡す…それを、渡されたがまた蹴る、その次も同様であり、最期の一人が蹴る体勢に入る。

 

 

 『テメェノ顔面二シュゥゥート!!』

 

 

 蹴られた小銭は、瞬間に消えた。

 …承一は全身の重みが無くなったのを感じ、回避をしようとするが……

 

 僅かな気配を察し、横目で確認すると幼稚園児ぐらいの女の子と傍にはその子の母親の親子連れが歩いてくるのが見えた。

 

 ――俺が避けたら…あの人に当たってしまう…!それだけは!

 

 避けるのではなく、別の方法を探る…自分の為ではない、他の誰かが傷つかない為に…!

 

 

 「オラッ!」

 

 

 「アウタースローン」の左手が空を掴む様に振り抜く…静寂が一瞬だけ支配される。

 最初にその静寂を破ったのは、承一だった…握った左手を離すと、そこから十円玉が出てくるが、表面に少しばかり血が付着していた。

 

 

 『嘘ダロ!?アノスピードヲ止メタノカヨ!』

 

 『…厄介ダナ』

 

 

 驚く四人を尻目に、承一は距離を詰めるべく走り出していた。

 素早く移動し、四人を自身の射程内に捉える。

 

 

 「待ってくれッ!!」

 

 

 その時、公園内に響く声が聞こえた、承一がその声の元を探ると、入口辺りに人影が見えた…傍らに三人の小人を連れて…

 

 

 

 

 

~~~~****~~~~ 

 

 

 

 

 場所は変わり、市内のとある一軒家。

 そこに、承一はお茶と菓子類を出されている、そして…目の前には綺麗な土下座をしている同年代ぐらいの男子がいた。

 ここに来てから一時間近く経っていたが、今だに顔を上げない事から痺れをきらし、声をかける。

 

 

 「あの…もういいから、顔上げなよ…」

 

 「いえ!後、三時間はこのままでいいです!!」

 

 

 駄目だ、こりゃ…承一は出された菓子に手をつけ始める。

 その様子を見ていた七人の小人達は申し訳なさそうに出てきた。

 

 

 『ナァ、ゴ主人様~モウイイト思ウケド…』

 

 『ソウダ…痛ダダッ!顔ヲツネルナァァァ~!!』

 

 「大体な!ほとんどの原因はお前達なんだぞ!」

 

 

 小人の顔が真横や上下に動かしながらつねりまくる、この黒色の短髪で半袖、長ズボンの少年は「川西 (すぐる)」と名乗り、周りの小人達は「ムーンライト・ドライブ」と言う群体型スタンドであると、土下座をする数分前に紹介された。

 

 

 「事情はよく分かったし、そろそろ許してあげなよ…彼等も反省しているだろうし」

 

 『比屋定ノ旦那ハ、分カッテイルネェ~ウチノ主人モ見習ッテ欲シイゼ』

 

 「一言余計だ、一言」

 

 

 突っ込みをいれ、ようやく顔をあげる。

 彼等の事情とは、ここの所頻発に発生する謎の傷害事件である…分かっているだけで数十人が被害に遭い、中には重症者も出てきている程である。

 何より不気味なのは、それほど被害が出てきているのに誰一人として、犯人の顔はおろか姿すら見ていないことだった。

 

 

「…実はその中に、俺の父親もいて…幸い軽傷で済みましたけど…」

 

 

「川西 傑」はその一件から幼い頃から持つ親への感情と正義心から、三ヶ月前に自分に宿った力…「ムーンライト・ドライブ」で犯人を見つけようと、市内全体に散らばせていたのだ。

 

 承一は偶々、血の気が多い小人と当たってしまい、公園での戦闘になってしまったらしい。

 

 

 「だけど、少し気になるな…」

 

 「比野定さん…?」

 

 「いや、君の話だと昼も夜も動かしているなら、見つかってもおかしくはないはず…だけど」

 

 「見つける所か、手がかりすら掴めません…」

 

 「…もしかしたら、犯人は一人では無いかもしれないな…」

 

 

 単独で逃げ回るのには、限界がある…だが、それに一人が加われば話は違ってくる、今回の事件もそうではないかと承一はそう推測する。

 

 

 「そ、そんな…じゃあ、どうすれば…」

 

 「まだ推測の域を出ていないから、決まった訳ではないから…」

 

 

 項垂れる傑を何とかしようと弁明する承一だったが、あまり効果があったとは言い難かった。

 そうこうしていると居間の扉が開かれ、一人の背が高い長髪の男が入ってくる。

 彼は台所にある冷蔵庫に真っ直ぐに行くと、扉を開けコーラを取り出しその場で飲み始める。

 

 

 「義俊(よしとし)!せめて、お客さんが来ているから挨拶ぐらいしなよ!」

 

 「……」

 

 

 弟だろうか、傑が注意するも何も言わず、飲み干したペットボトルを捨てて居間から出ていこうとするが、傑が腕を掴み、引き留める。

 

 

 「おい、義俊!」

 

 「…うるせぇぞ、クソ兄貴」

 

 

 掴まれた腕を振りほどき居間から出ていくのを、傑はただ黙って見送るしか出来なかった。

 

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です。


スタンド名:「ムーンライト・ドライブ」
   本体:川西 傑
破壊力-D、スピード-C、射程距離-A
持続力-B、精密動作性-A、成長性-B
七体の小人達で構成される群体型スタンド
能力
触れた物体の速さ・重さを十倍にし、さらに物質の個数をも十倍にする能力。
一度、能力をかけたものに別の物が触れても射程内なら発動が可能。
しかし、一度に複数の物に別の能力をかけることはできず、その場合は一旦能力を解除しなければならない。

元ネタは、アメリカのロックバンド「ザ・ドアーズ」の楽曲「月光のドライブ」より


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