承一が「スタンド」の襲撃を受ける数十分前。
市内、表通りに面しているカフェの店内に一人の男がいた…背中まで伸ばした黒髪を首あたりで結び、前髪の一部を両目の間まで伸びている。
注文したカフェオレに砂糖を三杯ほど入れ、口に含む…コーヒーの香りと牛乳のクリーミーさと砂糖の甘さを感じ、至福の一時に浸っていると、携帯が鳴った。
「もしもし」
「古賀さん?俺です、川西です」
古賀と呼ばれる男は着信相手に僅かながら口角を上げ、応対する。
「義俊君か、どうしたんだい?」
「はい、今夜の為に「あれ」はもう出しておきますか?」
「そうだね、そうしておいてくれ…僕の方も動くからね」
「分かりました…あの、古賀さん…」
「?、どうした?」
「いえ、俺の能力が古賀さんの役に立てて…それが嬉しくて」
「そんな事か…別に気するな、それに僕もようやく同志を見つけられたのだから、お互い「win-win」になれたからね」
「…ありがとうございます、それでは」
通話が終了する、携帯をズボンのポケットにしまい、カップを手に持ち一口飲む。
しかし、その表情は通話前の穏やかな顔ではなく、狂気の笑みを浮かべていた。
「クク…役に立てて嬉しい、か…せいぜい役立って貰うさ…俺の為だけに…な」
静かに呟くと、男の背後から「スタンド」の「像」が出てくる。
名前…「古賀
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時は戻り、現在
バイクに跨がる「スタンド」に見下ろされている承一は、先程の奇妙な攻撃の事を考えていた。
本来の「自動操縦型」は一度放てば、ほぼ無限の射程を持ち尚且つパワーのある攻撃力が可能となる…しかし、スタンドを介して状況を把握できず、精密性のある動きはできないのが原則としてある。
先程の攻撃は、まさしく上記にあげたデメリットを無視していた…なまじ「スタンド」に対する知識がある承一にとっては混乱させるには充分なものだった。
――奴は自動操縦ではない…?それなら精密性を説明できるが、あの攻撃力は不可解だ…その逆も然りだ。
いや、今は深く考えている暇はないか…
「スタンド」は再び承一に向かってくる、だが受け止めることはせずに当たる寸前で避け、通り過ぎた後を振り向き様に拳を振るう。
「オラッ!」
しかし、当たる直前で突風が吹き拳が届く事はなかった。
こちらを向き、エンジンを吹かし立ち止まる「スタンド」を睨みながら、承一は体勢を整えていた。
その時、視界に二つの影が飛び込んでくる。
『ドリャァァ!!』
「な…!?」
飛び込んできた影の内、一つは「スタンド」に蹴りを入れた後、後ろ向きに回転しながら着地した。
その正体は「川西 傑」のスタンド「ムーンライト・ドライブ」であり、その内の二体であった。
「お前達!どうして…」
『イツモノ様ニ、偶々旦那ヲ見カケタンダ』
『…ソシタラ襲ワレテイテイタカラ…』
「なるほど、だが助かったぜ」
幸運な事に、蹴り飛ばした影響で後方に下がって承一達との距離が開けた、その短い間ながら周りを確認をすることができたが、本体らしい人物の姿はなかった。
息つく暇もなく、「スタンド」が突進してくるが行動を予め予測していたので、簡単に避ける
…が、「スタンド」は右腕を前に差し出す様に構えると、突風が発生し砂埃が舞い踊り、承一の目の前が塞がれてしまう。
その間にもエンジン音が近づいてくるのが分かった。
『旦那ァ!任セテクレ!』
それだけを言うと二体は砂埃に紛れていく…その直後、中から前輪を高々と持ち上げた「ウィリー走行」の状態で「スタンド」が出てきた。
だが、それが承一に届く事はなかった…後輪部分が重くなった様に地面にめり込んでいたからである。
『…車体ソノモノヲ十倍ニ重クシマシタ』
『旦那!チャンスダゼッ!』
「オオオ!オラッ!」
「アウタースローン」の拳が確かにヘルメットに直撃し、ぶっ飛ばす。
同時に重さがなくなったバイクを蹴りで横方向に飛ばしておく。
『ヨッシャァ!止メダァ!』
「いや、ここは……逃げる!」
二体を「アウタースローン」で掴むと、反対方向へと全力で走り出した、公園を北へ進み、通り抜けてそのまま西へと走っていく。
『チョ、チョット旦那ァ!ドウシテ…?!』
「敵はパワーとスピード、それに無限に近い射程…そして不可解な高い精密性を持っている…
そんな奴と正面から戦ったら俺達がジリ貧になる…!だからやるべき事は一つだけだ」
『ソ、ソレッテ…?』
「「スタンド」の本体を見つける事だ…!」
*
「クク…やはり、最近の俺は運がいい!」
カフェにてノートパソコンに送られてきたメールを見て、思わず笑みを浮かべる。
そこには数ヶ月前に自分の「スタンド」を引き出してくれた人からのものだった。
メール内容は「比屋定承一の始末」であり、成功報酬などが書かれていた…「スタンド」からの情報がタイミング良く来たので、呟く。
「報酬は…500万か、しばらくは盗みをしなくても食っていけるな…
それと、あのガキとは…まだ手を組んでおいてやるか、あれのおかげで無敵に近い能力を手に入れた…からな」
「それに…利用されている事も気付かない馬鹿を見ていると、とても良い気分にも浸れるからなぁ…」
歪む表情をする彼の肩に青と緑の配色をした小さな「蜂」がとまっている事に、店内にいる者達は気付く様子はなかった。
いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です。
スタンド名:「ライダーズ・オン・ザ・ストーム」
本体:川西 義俊
破壊力-A、スピード-B、射程距離-A
持続力-A、精密動作性-E、成長性-C
能力
本体に触れるか、または本体が触った物質に触れた者の所にランダムに出現するバイクに跨った人型スタンド、自動操縦型
現れた者に攻撃を仕掛け、立ち上がらなくなるまで追跡し続ける能力を持ち、またこのスタンドの周り(約1~2m)に突風を発生させることもできる。
因みに出現条件は一日経てばリセットできる。この事は本体は知ることはできない。
元ネタは「ザ・ドアーズ」の楽曲から
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