もし結城リトのラッキースケベが限界突破していたら 【完結】   作:HAJI

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第十四話 「再会」

(ふう……やっぱりここが一番落ち着くな……)

 

 

一人今の自分にとっての聖域の一つであるトイレにこもりながら大きく息を吐く。朝からどっと疲れた気分。何だか休日のサラリーマンの父親の気分がわかる気がする。休日のはずなのに全然休める気がしない。

 

 

(ナナもモモも悪い娘じゃないんだけど……もう少し何とか……いや、一番悪いのはオレのとらぶるなんだけど……)

 

 

いつもとは違い、ララの代わりにナナとモモがやってきたのだがいつもより何だかひどいことになっているような気がする。自分のとらぶるに関するあれこれでリビングはちょっとした戦場と化していた。今は何とか表向きは沈静化しているがいつまた再燃するかわかったものではない。とりあえずは美柑のフォローもあり三回は消費しているのでしばらくは大丈夫だろう。四回目が起こるにしてもまだ先のはず。

 

 

(とにかくそろそろ出るか……いつまでもここで引きこもっていられないし……)

 

 

気持ちを切り替えながら立ち上がる。いなくなって初めて感じるララの偉大さに感謝しながらトイレから出てリビングに向かおうとした瞬間、

 

 

「え!? な、何だっ!?」

 

 

いきなり腕を引っ張られてリビングから反対側の廊下に連れ込まれてしまう。そこでようやく自分を引っ張っているのがナナであることに気づく。

 

 

「しーっ! 静かにしないとモモに気づかれるだろ……」

「ナ、ナナ……? いったい何してるんだ……?」

 

 

まるで泥棒にこそこそしているナナに圧倒されながらも仕方なく付き合うことにする。どうやら自分がトイレから出てくるのを出待ちしていたらしい。かつてのヤミのことを思い出して変な汗が出かけるもとりあえず今はそれどころではない。

 

 

「前にも言っただろ、リトを連れていきたいところがあるって。電脳サファリっていう場所なんだけどこれから行くぞ」

「こ、これから……? モモ達はどうするんだ?」

「モモはいいんだよ! あいつも一緒だったらきっと面倒なことになるし、ヤミや美柑には……後で謝るからさ、いいだろ?」

 

 

若干拗ねるような態度を見せながらもちらちらとこちらの様子をナナは伺ってくる。どうやら自分と二人でそこに遊びに行きたいらしい。しかしどうするべきか。一応モモもうちに遊びに来ているわけだしそれを放っていくのはいかがなものか。美柑やヤミにも何も言っていない。だが

 

 

「前に約束しただろ、遊びに来るって……それともやっぱりダメか……?」

 

 

目の前の不安そうにしているナナを見ているとそれも仕方ないかと思えてくる。実際前デビルークに行ったときは夕食会がメインでほとんど遊べていない。ならちゃんと約束を守る機会が今だろう。

 

 

「分かった……でも後でちゃんとモモたちに一緒に謝るんだぞ、いいな」

「っ! 分かった、約束する! じゃあこっちだリト、早く早く!」

 

 

自分の答えを聞いた途端花が咲いたように笑顔を見せながらナナは自分を引っ張っていく。何でもこれから行く場所とつながっているゲートのようなものがあるらしい。ちょっと後が怖いような気もするが仕方がない。ナナのほうが先約であるのは間違いないのだから。それに加えて若干モモには苦手意識があるのも正直なところ。

 

 

そんなこんなで数か月越しのナナとの約束を果たすために結城リトは家を後にするのだった――――

 

 

 

 

「す、凄い……これが全部作りものなのか……?」

 

 

ただ目の前の光景に圧倒されるしかない。視界の先にはどこまでも広がっている大自然の姿。地球でもめったにお目にかかれない景色。しかもそれが実物ではないというのだから驚かないほうが無理というものだろう。

 

 

「作り物っていうか仮想空間なんだけどな。まあ似たようなもんだけど……」

 

 

自分が驚いてくれたのが嬉しかったのかどこか照れくさそうにしながらナナはそう告げる。だがこれだけのものなら誰かに自慢したくなるのは分かる。自分でもきっとそうするだろう。

 

 

「しかし意外だったな。ナナはこういった機械にも強いんだな」

「そ、それは……うん、実はこの電脳サファリを作ってくれたのは姉上なんだ。あたしはちょっと手伝っただけでさ、はは……」

「そうか……確かにララならこういうの得意そうだもんな。いつもこういう発明品作ってくれれば助かるんだけど」

 

 

正直に話してくれるナナに苦笑いしながらも改めてララの天才っぷりに改めて驚かされる。宇宙の技術であるとはいえこれだけの技術があればどんなことでもできるのでは。ぴょんぴょんワープくんにしても使い方を考えれば地球の常識が変わってしまうレベルのもの。それを使って大儲け……は止めておこう。きっと酷いことになる。冗談抜きで地球人から命を狙われかねない。

 

 

「とにかく、友達を紹介するぞ。おーい! みんなー遊びに来たぞー!」

 

 

そんな物騒なことを考えているとナナが気を取り直しながら近くにある森に向かって大声で呼びかけ始める。すると同時に地鳴りのような振動とともに森から次々に動物たちがやってくる。ちょっとした行進にも似た光景。思わず後ずさりしてしまう。

 

 

「ナ、ナナ……大丈夫なんだよな……?」

「? 大丈夫だぞ、ちゃんと今日リトが来ることは伝えてあるからな、前みたいにドラ助に食べられそうになることはないから安心していいぞ」

「そ、そうか……」

 

 

自分より年下の少女の後ろに隠れている自分の情けなさを痛感しながらもやはり怖いものは怖い。犬や猫のような動物ならまだいいが自分の周りには明らかに肉食獣な動物や、地球では見たことのないような怪しい動物があふれかえっている。いくら動物好きといってもすぐに飛び越えるには高すぎるハードルだった。

 

 

「じゃあみんなを紹介していくからな。この子はマリモッタって言って鼻が利くいい子なんだ。それでこっちがクラウドン、雷を落とすから遊ぶ時には気を付けなきゃいけないんだ。それでそっちは――――」

「…………」

 

 

こっちの戸惑いなどそっちのけで次々に友達の動物の紹介をナナがしてくれる数が多すぎて全く頭に入ってこない。しかもところどころで聞き違いかと思うような説明が混じってくる。明らかに危険があるような動物が大半のような気がするがナナにとってはそれが普通らしい。デビルーク人にとっては当たり前なのか、それとも動物と話せるナナだからなのか。恐らくは後者なのだろう。

 

 

「そ、そういえばナナは動物と話せるんだろ? ドラ助は何かオレのこと言ってるか……?」

「ドラ助が? えーっと『おいしそうだけどあたしの友達だから食べないであげる』って言ってるぞ。良かったなリト!」

「……そっか、これからもよろしくって伝えておいてくれ……」

 

 

聞かないほうがよかったと後悔しながらもナナの能力には驚かされる。動物の言葉がわかるだけでなくこっちの言葉も伝えることができるのだから。何でもデビルークでもレアな能力らしい。自分のとらぶるもレア度では負けないかもしれないが他は天と地ほども差がある能力だった。

 

 

「ほら、リトも突っ立てないでこっちに来いよ! みんなリトに会うの楽しみにしてたんだからな!」

「分かった! 分かったから引っ張るなって!」

 

 

自分のフィールドに入ったからか、いつもの人見知りは全く感じさせずナナは自分を引っ張りまわしてくる。それに翻弄されながらもそれでもいいかと感じている自分がいる。まるでもう一人妹が増えたような感覚を覚えながらもナナの動物探検ツアーが開催されたのだった――――

 

 

 

 

「ご、ごめんなリト……地球人がこんなに身体が弱いなんて知らなくって……」

「い、いや大丈夫だ……ただちょっと休憩させてくれると助かる……」

 

 

罰が悪そうにしているナナとは対照的に自分は肩で息をしている。理由は単純な身体能力の差。ナナは何でもないように動物たちと一緒に走り回って遊んでいるのだがそれについていくことができない。にもかかわらずナナがこっちを引っ張ってくるものだからたまったものではない。その結果がご覧のあり様。子供に振り回された父親のような醜態を晒してしまっているのだった。

 

 

「で、でもあたしはデビルーク人の中ではそんなに強い方じゃないんだからな! デビルークのパワーを一番受け継いでいるのは姉上だし……体術ならモモの方があたしより成績は上だし……」

「じゃ、じゃああれか……あれでララは力をセーブしてるのか?」

「当然だろ。姉上が本気を出したら地球が壊れちゃうだろうし」

 

 

明かされる驚愕の事実。だがよく考えたら当たり前かもしれない。父親であるデビルーク王は子供の姿で地球を壊す力を持っている。ならその娘であるララにそれができないわけがない。あり得ないだろうがララを本気で怒らすことだけしないようにしなければ。むしろララを怒らせることのほうが難しそうだ。

 

 

「……そういえばリトはその、姉上と結婚してデビルークを継ぐつもりなのか?」

「えっ!? なんで急にそんなこと……!?」

「モモの奴がそんなことばっかり言うから気になってさ。そうなったら……うん、リトはあたし達の兄になるわけだし、聞いといたほうがいいかと思って」

「ど、どうかな……? まだ先の話だし……正直デビルーク王なんてオレが継げるとは思えないんだよな……オレ、地球人だし……」

 

 

いきなりの爆弾投下に冷や冷やするも何とか当たり障りのない答えを口にするしかない。モモには既に嘘の婚約者候補であることはバレているがナナはまだ知らないのだから。だが言われて改めてぞっとする。地球人の自分がデビルーク王になどなれるわけがない。どこまでいっても自分はただの貧弱な地球人なのだから。もしかしたらララがデビルーク女王として君臨すれば問題ないのかもしれないが女王としてのララもまた想像できない。

 

 

「そっか……そうだよな!」

「? ナナ? どうかしたのか?」

「な、何でもない! それよりも……そうだ! ジューイの勉強は進んでるのか、リト!?」

「ジューイ? ああ、獣医のことか。あんまり進んではないかな……最近ちょっと忙しいし……」

「そうなのか……リトって勉強の成績いいのか?」

「う……まあ良い方なのかな。これからもっと頑張らないといけないけど……」

 

 

ナナの質問に言葉を詰まらせるしかない。実のところ成績はかなり上位ではある。しかしそれはとらぶるのせいで勉強以外にやることがなかったせいでそうなっているだけであって、決してすごく頭がいいわけではない。加えて最近はララを筆頭とした宇宙人の襲来によって勉強の時間が削られつつある。このままでは遠からず本来の成績に戻ってしまうだろう。

 

 

「そうかー、あたしも頑張ってるんだけどなかなか上手くいかないからなー」

「ナナも勉強してるのか? もしかして獣医になるために?」

「そ、そうだよ悪いか? そもそもあたしに勧めてきたのはリトのほうだろ?」

「それはそうだけど……そっか……ならオレも頑張らないとな、なれるかどうかは分からないけど」

 

 

自分よりも小さなナナが頑張っているのだからこちらも負けるわけにはいかない。とらぶるに加えて婚約者候補の問題、将来がどうなるかは全く分からないが勉強をして損はないだろう。もっともナナには動物と話せるという絶対的アドバンテージがあるので自分よりは何倍も可能性があるだろうが。

 

 

「もしリトがどうしてもっていうんなら、あたしがジューイになったら、その……」

 

 

ナナがどこか恥ずかしそうにしながら何かを口にしかけたその時、奇妙な鳴き声と共に巨大なイカがこちらに近づいてくる。いったい何があったのか。

 

 

「もしかして……もう生まれたのか!? よかったなゲソルスキー!」

「う、生まれた……?」

「赤ちゃんだよ! ほら、そろそろ生まれそうだから心配してたんだ!」

 

 

ナナは喜びをあらわにしながらこちらに小さなイカのような動物をこちらに抱かせてくる。もっとも小さいといっても親である巨大なイカの比べればの話だが。

 

 

「この前はギガイノシシの赤ちゃんも生まれてさ、電脳サファリはちょっとした赤ちゃんブームなんだ!」

「そ、そうか……」

「でも不思議だよな。なんで夫婦になると自然に赤ちゃんができるんだろう?」

「……え? どうやって赤ちゃんができるか知らないのか……?」

「? リトは知ってるのか?」

 

 

きょとんとした様子でこちらを見つめてくるナナに確信する。間違いない。ナナは子作りについての知識が全くない。だがどうしたものか。教えるのは簡単だがもしかしたらセクハラになるのでは。男である自分が女の子であるナナにそれを口にするのはいろいろ不味い気がする。まさに子供に赤ちゃんはどこからくるのと聞かれたような状態。

 

 

「い、いや……オレも知らないけど、セフィさんに聞いてみたらどうかな? あの人なら何でも知ってそうだし……」

 

 

変な汗をかきながらも恐らくは最適解であると思われる返事を行う。ララについては知っているかどうか怪しく、モモについては聞いてもからかわれてしまう可能性が高い。ならナナの母であるセフィに振るのが正解のはず。

 

 

「そうだな。でも母上も忙しいからなー今度いつ帰ってくるのかもわからないし……」

「相変わらず忙しいんだなセフィさんってぶっ―――!?」

「り、リト!? だ、大丈夫か!?」

「…………大丈夫だと思う……多分」

 

 

瞬間、視界が真っ黒に染まる。自分が抱きかかえていたイカの赤ちゃんの墨によって全身真っ黒にされてしまったと分かった時にはもう遅い。何でもこの赤ちゃんなりの愛情表現だったらしいので仕方ないが、そんなこんなで長かったサファリツアーも強制的に閉幕となったのだった――――

 

 

 

 

(はあ……散々な目にあったな……ま、ナナが楽しそうだったからよしとするか)

 

 

頭の上にタオルを載せながら湯船につかり安堵の声をあげる。今自分はデビルーク王宮の大浴場を貸し切りにして入浴しているところ。流石に全身墨だらけのまま家に帰るわけにはいかず、ナナの提案でここを使わせてもらうことになった。

 

 

(しっかし本当に広いな……ララがお付きの人に体を洗ってもらってたってのも本当だったんだな……)

 

 

きょろきょろと庶民丸出しで浴場を見渡す。広さもだが造りも明らかに普通ではない。まさか本当に獅子の顔をした銅像の口からお湯が出てくるようなお風呂に入ることがあるなんて夢にも思わなかった。以前ララが家にいるときは付き人に体を洗ってもらっていたと言っていたが本当だったらしい。もしかしたらそのせいで羞恥心が薄いのかもしれないが。

 

 

(だけどそろそろとらぶるも怪しいな……お風呂を出てからはナナにも距離を取ってもらった方がいいかも……)

 

 

時間的に四回目が起こる可能性が高くなってきた。最近は四回目が起こるのがほとんどになってきた気がする。ナナは今、汚れてしまった自分の服を洗濯乾燥してくれているところ。何でも短時間でできる機械をララが作って置いているらしい。浴場には使用禁止の札をかけてもらっているので誰かが入ってくる心配もない。予想外の事態だがせっかくの機会。ゆっくりお風呂を楽しませてもらうことにしよう。だがそんな願いは

 

 

「お疲れのようですねリトさん。お背中流しましょうか?」

 

 

そんなあり得ない少女の声によって儚く崩れ去ってしまった。

 

 

「――――っ!? モ、モモ!? なんでこんなところに、じゃなくてなんて格好してるんだ!?」

「あら、ここはお風呂なんですから当たり前だと思うんですけど。それに確かリトさんはわたしの体には興味がないんでしょう? お気になさらずに♪」

 

 

思わず自分の物を隠しながらその場を飛び退くも、モモは全く動じることなくどこか楽しそうにクスクス笑っている。その恰好も不味すぎる。というかなにも着ていない、一糸まとわぬ全裸。タオルもなく、まったく隠そうともしない。むしろ見せびらかしているのではないかと思うほど。

 

 

「どういうつもりだよ……!? こんなところ誰かに見られでもしたら……!?」

「心配しなくてもここには誰も来ませんよ? それにリトさんはお姉様の嘘の婚約者なんですからそんなに慌てなくてもいいと思いますけど?」

「それとこれとは関係ないだろ!? とにかくオレはもう出るから後はごゆっくり……」

 

 

できるだけモモから視線を外しながら一刻も早くこの場を離れんとする。とにかくこの状況は不味すぎる。取り返しがつかないことになりかねない。なぜなら

 

 

「あら、どこに行くんですかリトさん? もしかしてもうとらぶるが溜まってらっしゃるんですか?」

 

 

目の前の少女、モモはララともナナとも違った意味で自分のとらぶるに興味があるのだから。ヤミ風にいうならびっち。

 

 

「な、なんでそれを……?」

「お姉様から話はよく伺ってますから♪ 今はヤミさんもいませんし、観念してください。大丈夫ですよ、誰にも言いませんから♪」

 

 

そう言いながら確実に距離を詰めてくるモモびっち。もはや退路はない。デビルークの女性からは逃げられない。そんな不文律が頭によぎるも最後の抵抗を図るも無駄に終わる。

 

 

「――――わたし、結構嫉妬深いんです。覚えておいてくださいね♪」

 

 

自分を放ってナナと遊びに行ったこと、自分の体に興味はないと言ったこと。そしてナナへの対抗心。ようやく結城リトは自分のモモへの対応がすべて裏目に出てしまったことを悟るももう遅い。

 

 

「や、やめ―――!?」

 

 

悲鳴を上げるももう間に合わない。襲われたはずなのに何故か自分からモモを襲う羽目になってしまう。しかも風呂場で互いに全裸で。もはやヘンタイどころのレベルではない。だがその結末は完全にモモにとっては想定外のことになってしまう。

 

 

「きゃっ!? え? ちょ、ちょっと待ってくださ―――ひっ!?」

 

 

湯船に押し倒されながらモモはその胸をリトに鷲掴みにされてしまう。だがその手つきが尋常ではない。触れられるだけで体に電流が走っているのではないかと思ってしまう感覚。加えてなぜか弱点である尻尾まで掴まれてしまっている。本当に無意識にやっているのか疑わしくなるほどのテクニック。

 

 

「お、おい大丈夫かモモ!? し、しっかりしろって!?」

「ふあ……ふぁい?」

 

 

意識がもうろうとしているモモを何とか起こすもまだ呂律が回っていない。だがとりあえず一安心だ。あのまま意識を失っていたらどうなっていたか。もしかしたら全裸に加えてお風呂場というシチュエーションのせいで変な化学反応でも起きてしまったかもしれない。

 

 

「だ、大丈夫かモモ……? なんか尋常じゃないことになってたけど……立てるか?」

「だ、大丈夫れす……でも、ようやくわかりました……お姉様が夢中になるわけです、こんなにすごいなんて……」

「……ほ、ほんとに大丈夫か……?」

 

 

ゆっくりモモを抱き起こすが大丈夫だろうか。本当ならそのあられもない肢体にあたふたするところなのだがそれどころではない。別の意味でのやばさを感じながらもとにかく湯船から上がろうとした時

 

 

「な、なにやってるんだリト……じゃなくてモモっ!?」

 

 

考えうる最悪のタイミングでナナが慌てて浴場へと姿を見せる。どうやら自分の悲鳴を聞きつけてやってきてくれたらしい。傍目から見ればどうみても襲い掛かっているのは自分なのだが助かったらしい。日に二度の張り手は流石につらい。

 

 

「見てわかるでしょう? リトさんのとらぶるを消費していたの」

「そ、そういうことじゃない! なんで裸なのか聞いてるんだ! そんなケダモノみたいな……」

「あら、殿方だけじゃなくて女もケダモノよ? お子様のナナにはまだ早かったかもしれないけど」

「お、お子様は関係ないだろ! それよりも早くリトから離れろよ! 困ってるだろ!」

「ちょっと服のまま湯船に入ってこないでよ! 非常識でしょ?」

「非常識なのはお前の頭だろ! いいからこっちに来いって!」

 

 

からかわれたことに頭に来たのか、それともこのよくわからない状況にあてられたのか。ナナは服のまま湯船に浸かりながらモモを自分から引きはがそうとするもモモもまた自分を盾にしながら抵抗している。そのせいで身動きが取れずどうしようもできない。モモは全裸であるため当然だが、ナナも服がお湯で透けて直視できないことになってしまっている。とにかくこのままでは埒が明かない。

 

 

「お、お前らいい加減に――――」

 

 

しろと、ララがやってきて以来のマジ切れを起こしそうになった瞬間、一気に血の気が引いてしまう。なぜなら

 

 

 

「――――何をやっているの、あなたたち?」

 

 

 

浴場の入り口にあり得ないはずの人影があったから。それによってあれだけ騒いでいた双子姫も動きを止めてしまう。

 

 

 

それが結城リトとセフィ・ミカエラ・デビルークの考え得る中で最悪の再会だった――――

 

 

 

 


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