もし結城リトのラッキースケベが限界突破していたら 【完結】   作:HAJI

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第二十八話 「黒鳥」

どうしてこんなことになっているのか。目の前にはベッドに押し倒され、浴衣をはだけながら自分を期待に満ちた瞳で見つめているメアの姿。対して自分はパンツ一丁でそれに襲い掛からんとしている。どこからどうみても変態。えっちぃどころではすまない有様。だがそれは決して疚しい気持ちからではなかった。多少頭に血が上ってしまっていたのはあるが、それでもこの状況を打破して地球に帰るための行動。そのために自分が知り得る変態のイメージである校長をトレースすることで、ありえない自分を演じえっちぃことをしようとしていた。それは間違いない。だというのに

 

 

「ん? どうした、私のことなら気にしなくていいぞ。知識では知っているがヒトの交尾を直接見たことはなかったからな。ほら、早く続きを見せてくれ」

 

 

何でこんなことになっているのか。そこには黒髪で褐色肌の幼女が脚を組んで椅子に座り、みたらし団子を食べながら自分とメアの様子を観察している光景がある。しかも全く自分やメアの格好と状況を気にした様子もない。色んな意味で犯罪臭しかしない状況。一体どんな羞恥プレイだというのか。

 

 

「ひ、人前でそんなことできるわけないだろっ!? それにオレはその、疚しい気持ちでえっちぃことをしようとしたわけじゃ……」

「その恰好では何の説得力もないな。何をそんなに恥ずかしがっている? 繁殖行為など珍しいものでもあるまい」

「そうだよリトお兄ちゃん。ここまでしたんだからちゃんと最後までしてくれないと地球に返してあげないよ?」

「そ、それは……じゃなくて!? とにかく中止だ中止! 大体本当にオレを返してくれる気があるのか!?」

「あ、バレちゃったかー残念。あと少しだったんだけどな♪」

 

 

悪戯がバレてしまった子供のようにメアは舌を出しながらあちゃーといった顔を見せている。危うく本当に犯罪者になるところ。もしかしたら一週間閉じ込められていて、自分でも知らない内にいろいろ溜まってしまっていたのかもしれない。

 

 

「なんだ、つまらん……だがどうやら結城リトとは良好な関係が築けたようだな、メア」

「モチロン♪ マスターの命令だったし、お兄ちゃんと一緒に生活するのは楽しかったよ。えっちぃこともいっぱいできたし」

「なるほどな。それにしてもその恰好はなんだ? 見たことのない服装だが」

「これ? これは地球の服装でユカタっていうんだよ。リトお兄ちゃんの記憶から再現したんだ。可愛いでしょ?」

「ふむ、民族衣装のようなものか。確かに中々良さそうだ。少しアレンジして……こんなカンジか」

 

 

自分はえっちぃことはしていないと反論したかったが、とらぶるでむちゃくちゃをしてしまっている手前何の反論もできない。そんなこんなのうちに幼女は興味深げにメアの浴衣を凝視した後、黒い霧に包まれると同時に黒い浴衣姿になってしまう。ところどころはアレンジを加えられたもの。それまでは黒のキャミソール姿だったのでそれよりはマシかもしれない。だがそれで確信できた。

 

 

「今のは……変身? もしかして本当に君がメアの言うマスターなのか……?」

「そういえばまだちゃんと挨拶をしていなかったか。初めましてと言えばいいのか? 私はネメシス。メアのマスターで変身兵器だ。ヨロシクな、結城リト」

 

 

くくく、とどこか不敵な笑みを見せながらネメシスは挨拶をしてくる。見た目はただの小さな少女なのだが明らかに纏っている空気は普通ではない。ヤミともメアとも似つかない、異質な雰囲気を持っている。

 

 

「その、ネメシスもメアと同じ第二世代とかいう変身兵器なのか……?」

「いいや、変身兵器という意味では同じだが私とメアたちは根本的に生まれが違う。私は実体を持たない、ダークマターで構成された変身兵器なのだよ」

 

 

そう言いながらネメシスは見せびらかすようにその体を黒い霧に変化させていく。ゆらゆらと漂うその様はさながら実体がない幽霊のよう。あの時、自分を攫ったのも同じ力だったのだろう。だが自分はそれ以前からそれを知っていた。なぜなら

 

 

「ダークマターって……あの滅茶苦茶不味い調味料のか!?」

 

 

いつかデビルーク王宮でララに勧められた調味料。思わず吐いてしまいそうになるほど不味かったあの調味料で構成されているなんてどういうことなのか。

 

 

「……そういわれては身も蓋もないな」

「あはは、マスター、お兄ちゃんに嫌われちゃったね? 気を付けないと食べられちゃうかも」

「おおう、それは怖い。こんな小さな私を食べようとするとは……これがロリコンとかいうやつか」

「お、お前らな……」

 

 

きゃっきゃっと仲がいい姉妹のようにこちらをからかってくる二人にあきれ果てるしかない。自分が想像していたのとは全くかけ離れたマスターの姿に喜べばいいのか悲しめばいいのか。あのマスターにしてこのメアあり。間違いなくメアがあんな風になっているのはネメシスの影響が大きいのだろう。

 

 

「そ、それよりもネメシスは一体何を目的にこんなことをしてるんだ? メアが言っていた、兵器としての幸福ってやつのためか?」

 

 

このままでは話が進まないため強引に話題を変更する。何はともあれ首謀者であるネメシスが姿を見せた。ならその目的は何なのか。瞬間、それまでふざけていたネメシスの空気が変わる。メアもまた表情を消し、それを待っている。どれだけの時間がたったのか。ネメシスは口を開き

 

 

「目的か……そんなもの決まっているだろう。お前を攫って、私の下僕にするためだよ、結城リト」

 

 

そんな理解不能な答えを口にしてくる。サディスティックな笑みを浮かべ、こちらに足を突き付けてくる姿はまさに女王様。足を舐めろといわんばかりの態度。魔性の女ならぬ魔性の幼女とでもいえばいいのか。

 

 

「げ、下僕……!? な、何の冗談だ!?」

「本気も本気さ。私はお前を下僕にするためにここまで攫ってきたのだからな。私は見ての通りドSでな。気に入った相手は屈服させて隷属させなければ気が済まない性質なのさ」

「リトお兄ちゃんもわたしと同じようにマスターの下僕になるなんて……素敵♪ でもわたしもお兄ちゃんにちょっかいだしてもいいんだよね?」

「ん? まあいいだろう。しかしたった一週間でここまでメアを手懐けているとは……お前にもマスターの資質があるのかもしれんな。いや、変身兵器はやはりテュケに惹かれるということか」

 

 

冗談とも本気とも取れないやり取りをしながらもその中で聞き逃すことができない単語を耳にする。ある意味、ここから抜け出すことと同じぐらい、自分にとっては重要なこと。

 

 

「ネメシスは……オレの能力のことを知ってるのか?」

 

 

とらぶる。ネメシス達の言葉を借りるならテュケ。自分にとっては全ての元凶でもあるこの力のことをネメシスは知っているはず。

 

 

「あ、そうだった! ねえ、マスターもう教えてくれてもいいでしょ? お兄ちゃんも連れてきたんだしもうお預けはなしだよ?」

「そういえばそういう約束だったか……ま、いいだろう。結城リトにも知ってもらっておいたほうが都合は良さそうだからな」

 

 

メアにねだられたこともあってか、ネメシスは若干思案しながらも話してくれることに決めたらしい。知らず息を飲む。当たり前だ。約三年間。自分の人生を狂わされた原因の正体がようやく明かされるのだから。だが

 

 

「しかし何から話したものか……ふむ、結城リト、『強者の条件』とは何か知っているか?」

 

 

ネメシスの口から出てきたのは理解できない問いかけ。意味が分からない、一体その質問と自分のとらぶるに何の関係があるというのか。

 

 

「強者って……強い者って意味の?」

「そうだ。真の強者には二つの条件がある。一つはその名の通り『強さ』という力があること。そしてもう一つが『運』を持っていることだそうだ」

「強さと……運?」

「幸運、ツキとも呼ばれるたぐいのものだよ。いくら絶対的な力を持っていても運に見放されれば破滅する。逆に運を持っていても強さがなければ同じく破滅してしまう。この二つを併せ持つ者が真の強者だと考えたわけだ」

 

 

まるで何かを読み上げるようにネメシスは語り始める。その語りからその考えは恐らくネメシス自身のものではないのだろう。だが話の流れが見えてこない。一体何を言おうとしているのか。

 

 

「では思い浮かべてもらおうか。今この宇宙で真の強者とは一体誰だと思う?」

 

 

こちらを値踏みするような笑みを見せながらネメシスは問いかけてくる。この宇宙での真の強者とは誰か。言い換えればこの宇宙で一番強いのは誰かという問い。そんなものは考えるまでもない。自分の身近にそれを体現している存在がいるのだから。

 

 

「そう……デビルーク王。ギド・ルシオン・デビルークこそが現在の宇宙においての『真の強者』だ」

 

 

自分の思考を読むかのようにネメシスは答えを明かす。銀河最強であり先の大戦の覇者。今は弱体化し、子供の姿になってしまっているがそれでも地球を破壊できるほどの力を持つ怪物。デビルーク王以上に強者と呼べるものはいないだろう。

 

 

「だがそんなデビルーク王にただ一人、対抗できる存在がいた。それがエヴァ・セイバーハーゲン。組織エデンの創始者にして私達変身兵器の生みの親……いや、創造主とでもいうべきか」

 

 

形容しがたい感情を見せながら、ネメシスはその名を明かす。自分にとっては聞いたこともない名前の人物。だがその人物が全ての中心であることは疑うことはできない。何よりも信じがたいのは

 

 

「創造主……? いや、それよりも……そのエヴァって人はデビルーク王に対抗できたっていうのか!? あのデビルーク王に!?」

 

 

聞きたいことは山のようにあるのが一番驚愕したのはその一点。自分はデビルーク王の力を知っている。しかも今のデビルーク王は子供。全盛期はどれほどになるのか想像もつかない。それに対抗できるなんて一体どんな強さを持っていたというのか。

 

 

「まあ対抗といっても一度も勝てたことはなかったようだが……それとエヴァには戦闘能力はほとんどない。彼の人が持っていたのは知力。未来を見通すとまで言われた頭脳と統率力。ある意味でデビルーク王と対極の力を持っていたらしい。なんでも『魔人』とまで恐れられたそうだ」

 

 

それはまるで昔語りだった。時は第六次銀河大戦中。デビルーク王がその力をもって宇宙統一を成し遂げんとしていた時。エヴァ・セイバーハーゲンはその前に立ちはだかった。理由はたった一つ。デビルーク王があまりにも強すぎたからこそ。恒星級の力を持つデビルーク王は軽々と星を砕くことができる。そんな力をたった一人の個人が持っている。その危険性と恐怖のためエヴァは反対勢力を統制しデビルークと争った。力で劣りながらも卓越した知略によって幾度となくデビルーク王を苦しめた。だがそれでも大勢は覆せない。

 

 

「知力を持っていたとしても、強者ではない自分ではデビルーク王には勝てない。そこでエヴァは考えた……自分が強者でないのなら強者を人工的に造り出せばいいのだと」

「人工的に……造り出す……?」

「そうだ。それが私達『変身兵器』ヒトでありながら兵器として、デビルーク王を倒すために生み出された存在だ」

 

 

瞬間、ようやく理解する。いつかメアが言っていた言葉。デビルークは自分達の敵だと言っていた理由。だが同時に恐ろしさを感じる。変身兵器ではなく、それを生み出したエヴァ・セイバーハーゲンに。いくらデビルーク王を倒すためとはいえそんな人道から外れたことをするなんて。

 

 

「それがプロジェクト・イヴとプロジェクト・ネメシス。強者の条件の一つである『強さ』を生み出すための計画。そしてもう一つの『運』を生み出すための計画がプロジェクト・テュケ。結城リト、今お前が持ってる能力を生み出すための計画だよ」

「とらぶるが……!? じゃあこれも、そのエヴァって人が造り出した能力なのか……!?」

「正確には、運、因果という観測できない力の流れを実体化させたもの。その能力、テュケを変身兵器に持たせることでデビルーク王を超える真の強者を作り出そうと考えたらしい。なんでも形は黒い白鳥のようだったそうだ」

 

 

いつの間にかネメシスはその手にレポート用紙のような物をもっている。間違えないように読み上げてくれているのだろうがなんかいろいろと台無しだった。だが心当たりがある。そう、もう三年以上前になるが自分は中学校の帰りに黒い白鳥を見かけたことがある。何故か弱ってしまっていたその黒鳥を自分は世話していたのだがいつのまにかいなくなってしまっていた。もしかしたらあれがそうだったのだろうか。

 

 

「だが完成したの束の間、黒鳥……テュケは施設から逃げ出してしまった。殺し屋クロの襲撃に合わせてな。それがおよそ三年前……フフ、その顔では何か心当たりがありそうだな、結城リト」

 

 

(じゃあ……三年前に高熱が出たのは、そのテュケっていう黒い白鳥のせいなのか!?)

 

 

思い出すのは三年前の高熱。生死の境のさまようほどの出来事。今思い出せば黒鳥がいなくなってからすぐだった気がする。ならあの黒鳥が今、自分に宿っているということなのか。

 

 

「で、でもおかしくないか? そのテュケって奴は凄い幸運をもたらす能力なんだろ? でもオレの持ってるとらぶるはそんなことないぞ。どっちかっていうと不幸なことのほうが多いような……」

「単純な話さ。その黒鳥はメス、女性に寄生することを前提に生み出された能力。変身兵器がすべて女性なのもそのため。なのに男であるお前に寄生……は表現があまり良くないか。憑依したことでバグが起きてしまっているのだろう。それがとらぶるというわけだ」

「そ、そうか! それで……」

 

 

これでようやく納得がいった。思い出すのはララの発明品で女になってしまった時の事。とらぶるがなくなった代わりに、何故か運が良いことが立て続けに起こる現象があった。あれはもしかしたら女になったことで一時的にとらぶるが本来の力を発揮したのかもしれない。

 

 

「それにバグだけではないようだぞ。確かに本来の力を失ってしまってはいるようだが、それでもテュケはお前には幸運をもたらしている」

「幸運……? 何のことだ……?」

「なに、たいしたことじゃない。たまたまデビルークの第一王女が家出をして、たまたまワープで自宅にやってくる。そしてたまたま変身兵器である金色の闇が護衛についている。いったい確率でいえばどれだけ天文学的な確率になるのかな?」

 

 

どう思う、とばかりに愉し気にこちらを見つめてくるネメシスに返す言葉がない。考えもしなかったこと。そう、ただの偶然だと思っていたこと。自分の前に突然ララが家出してきたこと、殺し屋であり変身兵器であるヤミが護衛になったこと。挙げればきりがないそのすべてぼ偶然が、とらぶるの能力だったとしたら。

 

 

「それにしてもデビルークを倒すために生み出された変身兵器と能力が両方ともデビルーク王の下にあるとは、これ以上にない皮肉だな。いや……もしかしたらそれすらも魔人の掌の上なのかもしれんが。まあ、今の私達にとっては与り知るところではないか」

「え? それって……もうそのエヴァって人はいないのか?」

「先の銀河大戦の最終戦でデビルーク王に倒されてるよ……結局計画は間に合わなかったのさ」

「へーそうなんだ。会ってみたかったのに残念」

 

 

今まで黙っていたメアが飴を舐めながらそんなことを口にしている。自分としては会うことがなくて助かったと思うべきか。恐らく会っても楽しいことにはならないだろう。それよりもデビルーク王はこのことを知っているのだろうか。そんなことを考えていると

 

 

「さて……つまらない昔話はここまでだ。それではさっきの続きと行こうか、結城リト。いや、我が下僕よ?」

 

 

それまでの厳かな空気はどこに行ったのか。楽しそうに目を細めながらネメシスがこちらに近づいてくる。

 

 

「げ、下僕……!? じょ、冗談じゃなかったのか!?」

「私は嘘はつくが冗談は言わんよ。さっきまでの話と無関係でもないしな」

「? それってどういう――――ぶっ!?」

「お?」

 

 

どういうことなのかと聞く間もなくとらぶるによってネメシスの股間にダイブしてしまう。まさか四回目がこんなに早く発生するなんて。いや、問題はそこではない。履いてない。何も履いてないところに顔から突っ込んでしまっている。我が能力ながら恐ろしい。一体どこが幸運を呼ぶ能力だというのか。バグにしてもあんまりだろう。

 

 

「やるな下僕。虚を突かれたぞ。しかしこれはあながちテュケのせいだけではないかもしれんな」

「いいなーマスター。わたしもまだそこまでされたことないのに」

「ど、どうでもいいから早く離れて……ぐっ!?」

「そっちから突っ込んできたんだろうに。まあちょうどいい。このままさせてもらうとしようか」

 

 

何を考えているのかネメシスは離れるどころかそのままあ両足で自分を頭をがっちりと挟んでしまう。いったい何をするつもりなのか。端から見れば幼女の股間に頭を突っ込みながら捕まっている状況。ある意味校長を超えてしまっているかもしれない。だがそんな心配は

 

 

「さて……では私の下僕になってもらうぞ、結城リト」

 

 

突然ダークマターへと変化し、自分の身体へと入り込もうとしてくるネメシスによって霧散してしまう。

 

 

「っ!? な、なんだこれ!? なにをしてるんだ……!?」

変身融合(トランスフュージョン)という能力でな。対象の身体に入り込み融合することができる。私が造られたのもこのためでな。もしテュケが変身兵器ではなく違う者に憑依してしまった場合の保険だよ。変身兵器である私がテュケを持っているお前と融合することで真の強者となることができる。デビルーク王を超える力が手に入るんだぞ? 喜んだらどうだ」

「よ、喜ぶって……!? 自分の身体が乗っ取られるのに喜べるわけないだろ!?」

「なに心配するな。主導権は私に移るがちゃんとお前にも使わせてやる。悪い話ではないぞ?」

 

 

どこまでも女王様な発言をするネメシスに圧倒されながらもどうすることもできない。メアもどこか興味深げに見つめているだけで助けてくれそうにはない。もはやここまでか。そうあきらめかけた時

 

 

凄まじい電撃が走ったような光と音があたりを支配した。

 

 

「なるほど……そういえばネメシスとテュケは対をなす存在だったな」

「え……? 何の話だ……?」

「ようするに私はお前とテュケに拒絶されてしまったんだよ。正確にはダークマターに対する拒絶反応か。思うようにはいかないものだな」

 

 

いつの間にか自分から離れ、なくなってしまっている右腕を見ながらネメシスはそんなことを口にしている。どうやら自分への変身融合は失敗してしまったらしい。もしかしたらダークマターへの拒絶反応、王宮でダークマター調味料が食べれなかったのもとらぶるのせいだったのかもしれない。

 

 

「大丈夫マスター?」

「心配ない。すぐに修復できる。だがなかなか強敵だ。下僕を調教するには少し骨が折れそうだ」

「流石お兄ちゃん、素敵♪ ねえ、わたしも一緒に混ざっていい?」

 

 

まるで嘘だったようになくなったネメシスの右腕が黒い霧とともに再生してしまう。体がダークマターで構成されているというのは本当らしい。だがどうすればいいのか。このまま自分は調教されるしかないのか。

 

 

「それも愉しそうだが……どうやらようやく役者が揃ったらしい」

 

 

だがネメシスはそのまま上機嫌に自分ではなく、その背後にある部屋の入り口に目を向けている。そこには二つの人影があった。見間違えるはずのない、二人の少女。

 

 

「っ! ララ、ヤミ――――?」

 

 

驚きながらも振り返り、再開の喜びを伝えようとするもすぐに気づく。二人が何故か固まってしまっていることに。ララはどこかキョトンとした様子、ヤミは目を細め、心底呆れているような表情。ようやく気づく。

 

 

 

今の自分がパンツ一丁だったことに。

 

 

 

それが一週間ぶりのララとヤミとの再会。そして締まらない、デビルークと変身兵器たちの因縁が交差した瞬間だった――――

 

 

 

 

 




作者です。第二十八話を投稿させていただきました。

今回はネメシスの登場とこのSSの独自設定である要素の核心を明かすエピソードです。

エヴァというキャラが変身兵器たちの創造主という位置づけですが、実際に生み出したのは原作同様ティアーユ達エデンの研究者となっています。あくまで変身兵器たちを生み出すきっかけを作った存在という意味です。その目的もディアーユ達研究者たちには明かされていませんでした。

また独自設定と言いましたが設定の多くはある漫画のオマージュとなっています。元々はその作品のSSを書きたいと思っていたのですが難しかったため設定だけこのSSに使わせてもらっています。知っている方ならこの先の展開や流れも理解しやすいかもしれません。もちろん知らなくても全然問題はないのであくまで楽しみ方の一つとして。

今回のネメシスは残された情報をまとめただけでエヴァの真意、目的までは分かっていません。

明かされた情報を頭に入れたうえで最初から読み返してもらえれば面白いかもしれません。それでは。

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