もし結城リトのラッキースケベが限界突破していたら 【完結】   作:HAJI

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第三十話 「神罰」

結城リトのいない家の中で、美柑は安堵の溜息をついていた。リトの居場所が分かったこと。それを助けにララたちが向かってくれたこと。何よりも

 

 

(よかった……ヤミさん、立ち直ってくれたみたい。やっぱりララさんのおかげかな)

 

 

落ち込み、引きこもっていたヤミさんの姿はもうない。どころか今まで以上のやる気をみせながらヤミさんは出かけて行った。きっとララさんが救ってくれたんだろう。リトのことも含めて本当に頭が上がらない。とにかくあとは兄であるリトが無事に帰ってきてくれれば。そんなことを考えていると

 

 

「やっと行ったか、ガキのお守りは疲れるぜ」

「ギ、ギドさん……?」

 

 

いつのまにいたのか、やれやれとばかりに首を鳴らしているギドさんの姿がある。だが思わず苦笑いしたくなる光景。自分よりもはるかに小さい子供の格好のギドさんが子供のお守りに辟易していると言うのだから。

 

 

(もしかしたら……ヤミさんのことを心配してここに来たのかな?)

 

 

自分は数えるほどしかギドさんとは会ったことはないが、その傍若無人ぶりは知っている。いつもリトも巻き込まれて困っていたらしい。でも今回は少し事情が違っていた。わざわざこっちにやってきてわたしにリトの居場所が見つかったことを伝えてきてくれた。何よりもララさんよりも早くヤミさんの部屋に行き、発破をかけた……と言ってもいいのかどうかのはちゃめちゃっぷりだったが、とにかくギドさんなりに気にかけていたのは間違いない。

 

 

「なんだ? そんなにこの姿が珍しいか? 確かお前も何度か見たことはあったはずだが」

「い、いえ……その、そういえばララさんは大丈夫なのかなって。ヤミさんはともかく、ララさんって争い事苦手そうな感じがして……」

 

 

じっと見ていたのがばれてしまっていたのか、怪訝そうな視線を向けてくるギドさんを誤魔化す意味でも話題をそらす。一番気にかかっている心配事。ララさんは大丈夫なのか。宇宙一の殺し屋であるヤミさんはともかく、あのララさんが戦うことができるのだろうか。

 

 

「……そういえばあいつが戦ってるところをお前も結城リトも見たことがなかったか」

「え……?」

 

 

ようやく思い出したとばかりに頭をぽりぽりかいているギドさん。けどそれだけで察することができた。自分たちが知らないだけで、ララさんは戦うことができるのだと。

 

 

「ララの奴はオレの娘の中では一番オレの血を濃く受け継いでてな。親衛隊のザスティンよりも実力は上だ」

「ザスティンさんより……? それって、護衛されているララさんのほうが護衛よりも強いってことですか?」

「ぶっちゃければそうだが……ザスティンには言うなよ。また落ち込んで面倒クセーからな」

 

 

どうでもよさげにしているギドさんとは違い、わたしは驚くしかない。ザスティンさんは確かに頼りないところはあるがそれでも親衛隊の隊長。実力でいえば実質デビルークのナンバー2にあたる人のはず。それよりも強い王女様なんてどういうことなのか。

 

 

「ま、ララの奴は資質はあるんだがやる気がないっつーか、戦う気がないからな。訓練もサボってやがるみてーだし、戦うのが好きじゃねえんだろ。男だったら根性叩き直してやってもいいんだが、一応女だからな」

 

 

困りもんだとばかりに溜息を吐いているギドさんはどこからどうみても娘に手を焼かされているお父さんそのもの。銀河最強でもやはり娘には手を焼かされるらしい。確かにララさんらしいとはいえばらしい。きっと戦う訓練をするぐらいならリトと遊ぶか、発明するのを優先するはず。性格的にも争い事には向いていない。だがふと気づく。そう、ギドさんが言うことが本当なら

 

 

「じゃあララさんは、全然訓練してなくてもザスティンさんよりも強いんですか……?」

「そういうこった。ま、オレの娘だからな。あいつが本気を出したら今のオレより遥かに強いぜ。もっとも元の姿のオレにはまだまだ及ばねえがな」

 

 

ケケケ、と親バカ丸出しの発言をしながらも自分の自慢も忘れないのは流石ギドさんと言ったところだろうか。しかしそんなに強いララさんが子ども扱いなんて、いったいこの人はどれだけ規格外だというのか。

 

 

「っつーわけだから余計な心配は必要ねぇ。お前は結城リト達が戻ってきた時のために飯でも作ってな。オレもそれまでここでくつろがせてもらうぜ!」

 

 

ヒャッホーと叫びながらリビングで好き放題をしてるデビルーク王にかける言葉もない。もしかしたら今の姿が本来の姿なのかもしれない。それでも

 

 

「……ありがとう、ギドさん」

 

 

自分を心配してくれていたことはきちんと伝わってきた。きっと言っても本人は知らないふりをするのは目に見えているのでこっそりとお礼を口にする。セフィさんがギドさんを好きになった理由が少しだけわかったような気がする。

 

 

騒がしい子供で大人な優しい王様と一緒に、美柑は昼食を作りながら人騒がせな兄の帰りを待つのだった――――

 

 

 

 

(な、何だここ……? 砂漠か何かか……?)

 

 

慌てて監禁されていた部屋から出た先はどこか荒廃した大地がどこまでも広がっている光景。人間はおろか、生物がいるのかどうかも怪しい。きっとそんな辺境の星だからこそメアたちはここを隠れ家にしていたのだろう。

 

 

(ヤミとメアの姿はここからは見えない……どこか離れたところで戦ってるのか?)

 

 

きょろきょろと辺りを見渡すもヤミとメアの姿は見当たらない。きっとここから離れたところで戦っているのだろう。それも気になるが今は目の前のことに集中しなければ。

 

 

「ララ、大丈夫か!? ネメシスは……」

「うん、わたしに任せて! リトは危ないから少し離れてて!」

 

 

目の前にはガッツポーズを見せながらこちらに笑顔を見せているララの姿。さっきまでの真剣な表情はどこにいったのか。頼りにしていいのか悪いのかわからない、ある意味いつも通りのララに不安を覚えながらもひとまずはその場から離れることにする。自分がいては邪魔にしかならないのは分かり切っているのだから。

 

 

(でもネメシスはどこに行ったんだ……? 全然姿が見えないけど、逃げた……なんてことはないよな。あの性格だし)

 

 

ララと同時に部屋を出たはずのネメシスの姿がどこにもない。もしかしたら逃げてしまったのかもと考えるがすぐにあり得ないと気づく。あの人を屈服させるのが大好きであろうネメシスが尻尾を巻いて逃げるなんて考えにくい。ならどこへ。そんな思考は

 

 

ララの背後に黒い霧とともに、巨大な剣が突然姿を見せたことで断ち切られてしまう。

 

 

「っ!? ラ、ララ後ろっ!?」

「え? ひゃっ!?」

 

 

自分の声とほぼ同時に剣が襲い掛かるも、ララは間一髪のところでそれを回避する。後には巨大な剣が地面に突き刺さっている異様な光景が残されている。もし避けそこなっていたらどうなってしまうのか。想像するだけでぞっとする。だがそれを合図に次々に何もないところから剣が現れララに押し寄せてくる。

 

 

「きゃっ!? わっ!? たっ!?」

 

 

必死に走りながらララは紙一重のところで刃を躱していくも服が破れて切り刻まれていく。それでもダメージを受けていないのはララの驚異的な身体能力と反射神経のおかげだろう。もし自分だったなら最初の一撃すら避けられずに串刺しだったに違いない。

 

 

「フフ……どうかな、プリンセス。これが私の変身能力。ダークマターで構成されている私だからこそできる芸当だ」

 

 

どこからともなく黒い霧とともにネメシスが実体化し姿を現す。どこか上機嫌そうなのは戦うことができる兵器としての喜びか、それともただ単にドSなだけなのか。きっと両方だろう。

 

 

「ダークマター……? ネメちゃんはダークマターでできてるの?」

「話を聞いていなかったのか……? まあいい。これで分かっただろう。私は変幻自在、どこからでも攻撃できる。単純な性能だけならメアや金色の闇よりも私のほうが上だ。降参するなら今の内だぞ?」

「そんなことしないよ。言ったでしょ、わたし、怒ってるんだって。ちゃんとネメちゃんにごめんなさいって言わせてみせるんだから」

「それは怖い。では続きを始めるとしようか」

 

 

ネメシスの挑発にも物ともせずにララは腰に手を当てながらそんなことを口にしている。どうやらララにとってはこれは殺し合いなどではなく、ただの喧嘩のようなものらしい。それでも怒っているのに変わりはないようだが。

 

ネメシスの姿が霧のように消え去った瞬間、再び刃の嵐がララに降り注いでくる。その数はさっきまでとは比べ物にならない。一度でも避け損なえばその瞬間、無数の刃に貫かれてしまう。

 

 

(あれが変身能力なのか!? ヤミやメアとは全然違う……!? このままじゃララが……!)

 

 

同じ変身でありながらヤミやメアとは全く異質な力。相手の姿は見えず、何もないところから攻撃を仕掛けてくる。反則のようなデタラメさ。いくらララが超人的な身体能力を持っていても敵いっこない。

 

 

「ララ、ここは一旦逃げ……?」

 

 

て、と叫ぼうとしたまま口が開きっぱなしになってしまう。何故ならそこには

 

 

「よっ! ほっ! はっ! うん、何となくコツが掴めてきたかも!」

 

 

どこか楽し気に、アトラクションで遊んでいるかのような気軽さでネメシスの攻撃を躱し続けているララがあったから。先ほどまでの危なっかしさは微塵も残っていない。きっとその驚きはネメシスの方が大きいに違いない。ララはネメシス達のように特殊な能力を持っているわけではない。これはララ自身が言っているように、ただ慣れてきただけ。だからこそそれがどれだけデタラメなことなのか、戦うことができない自分でも分かる。

 

生まれ持った天性の直感と戦闘センス。それこそがララの、デビルークの真骨頂。

 

 

「なるほど……これがデビルークか。今なら創造主の気持ちが理解できるよ。私も相手がデビルーク王ではないから、などという考えは捨てさせてもらう」

 

 

どこからともなくネメシスの声が響き渡る。ララの力を目の当たりにして、本気を出すことにしたのかその声にはもう慢心は感じられない。同時に今まで絶え間なく続いていた攻撃が止んでしまう。まるで嵐の前の静けさ。それを示すように一瞬の間の後、再び刃が実体化してくる。だがその数は今までの比ではない。加えて全方位。ララの上空から背後、足元に至るまで刃に囲まれてしまっている。逃げ場はどこにもない。

 

 

「っ!? ララ――っ!?」

 

 

思わず悲鳴にも似た叫びを上げてしまう。だが自分はまだ知らなかった。

 

 

「えいっ!」

 

 

ララ・サタリン・デビルークがどれだけ規格外の存在なのか。自分が当たり前のように接していた少女が、どれだけ常識から外れていたのかを。

 

 

「え……?」

 

 

それは自分の声だったのか、それともネメシスの声だったのか。しかしきっとその心境は全く同じ。目の前にはまるで巨大な爆発が起こったようにクレーターができている光景。砂埃が舞い、次第にそれが収まった先には無傷のララがいる。その周囲には刃の残骸が無残に広がっている。さながら豆腐を砕いたような呆気なさ。

 

 

「あーびっくりした! ごめんね、リト、怪我はない? ちょっと本気でパンチしちゃった」

「そ、そうか……ちょ、ちょっとね……うん」

 

 

えへへ、ごめんねと謝ってくるララに乾いた笑みを浮かべるしかない。どうやらちょっと本気で拳を地面に叩き込んでしまったらしい。そう、それだけでこの有様。その余波で刃はすべて粉々に砕け、地面にはクレーターができてしまっている。同時に思い出す。いつか凄まじい速度で走っていたララが言っていた言葉。

 

『うーん、これでもすっごく抑えてるんだけどなー』

 

それが紛れもない真実だったのだと。もしそれがなければ今までの自分の生活はなかっただろう。知らず自分が綱渡りのような生活を送っていた事実を知り、戦慄するもこの場に限っては頼もしいことこの上ない。間違いなくララはあのデビルーク王の娘。蛙の子は蛙というがこの場合は何といえばいいのか。

 

 

「流石だな、プリンセス。正直ここまでとは思っていなかったよ。だがいくら攻撃は防げても私を捉えることができなければ私は倒せんよ。いや、プリンセス風に言えば謝らせる、だったか?」

 

 

上半身だけを実体化させながらネメシスはララに称賛を送るも同時に煽ることも忘れない。だがそれは正しい。確かにネメシスの攻撃は通じないかもしれないがそれはララも同じ。その証拠にララは防戦一方。このままでは勝ち目はない。しかし

 

 

「うん。じゃあそろそろこっちから行くね、ネメちゃん!」

 

 

ララは屈伸し、背伸びをしながら今度は自分から行くと宣言する。いったい何を言っているのか、自分とネメシスが一瞬呆けるもその隙を見逃さないとばかりにララは凄まじい力で大地を蹴り、ネメシスに突っ込んでいく。だが

 

 

「無駄だ。言っただろう、私はダークマターでできていると」

 

 

それよりも早くネメシスはダークマターへと変化し、姿を消してしまう。そうなってしまってはもうどうしようもない。見つけることも、捉えることもできない。あとは先ほどまでの焼き回し。ネメシスの攻撃に防戦一方になるしかない……はずだった。

 

 

「っ! 見つけた、そっち!」

「なっ!?」

 

 

ララは一旦しゃがみ込みながら、再び跳躍し何もないはずの場所に拳を繰り出す。瞬間、何かが弾けるような音と共に、ネメシスが姿を見せる。その体はララの攻撃を受けたことで破損してしまっている。しかしすぐさま修復し、再びネメシスはダークマターとなって身を隠そうとするが

 

 

「言ったでしょ、今度はわたしの番だって!」

 

 

まるでそれを予期していたかのようにララもまた弾けるように動き出し、ネメシスに攻撃を加えていく。ネメシスの姿が見えてるのかと思えるような怒涛の攻撃。ネメシスもまたそれに対抗するように刃を作り出して攻撃しようとするも、ララは刃が生成される前にその周辺のダークマターを無力化していく。まるで終わりのない鬼ごっこ。どちらが鬼かはもはや語るまでもない。

 

渾身の力を込めた全方位の刃をネメシスが繰り出すも、同じくちょっと本気を出したララの拳によってそれは相殺されしまう。その衝撃によって二人には距離ができ、互いに見つめ合う。どちらが優勢なのかは誰が見ても明らかだった。

 

 

「驚いたな……なぜ私の居場所が分かる、プリンセス? まさか何となく、ではないだろう?」

「? 何となくだよ? わたし、ダークマター調味料が好物だから、何となくダークマターの感じが分かるの」

「「…………」」

 

 

明かされる衝撃の事実。天才と何かは紙一重というがまさしくそれ。まさか戦いにおいても天然っぷりを発揮するなんて。呆れを通り越してもはや笑うしかない。そんなくだらない理由で自分の能力が看破されるなんてネメシスも夢にも思わなかっただろう。

 

 

「……冗談ではなく、このままでは本当に食べられてしまいそうだな」

「そんなことはしないけど、リトを返してみんなと仲直りするんなら許してあげてもいいよ。それとも鬼ごっこ続ける? わたしはまだまだ元気だから付き合ってあげてもいいけど」

「そうだな……それも悪くはないが、少し趣向を変えてみようか。今度は間違い探しだな」

「え?」

 

 

ネメシスの言葉の意味が分からず、きょとんとしているララ。その隙を狙うかのように刃がララではなく、自分の近くに現れ地面に突き刺さる。思わず声をあげそうになるが凄まじい砂埃が上がり視界が遮られてしまう。

 

 

(な、何だ一体……!? オレを狙ってきたのか……!?)

 

 

ララではなく今度は自分を狙うつもりなのか。それにしてはさっきの攻撃は全く見当違いのところだった。一体何が狙いなのか。ゆっくりと目を開けたそこには

 

 

「「…………え?」」

 

 

見間違うはずのない、鏡合わせのように自分を見つめている自分の姿があった。

 

 

「な、何だお前……!? ど、どうしてオレがもう一人……も、もしかしてネメシスなのか!?」

「お、お前こそ何言ってるんだ!? なんでオレの姿なんかに……!?」

 

 

あたふたしながら混乱するも目の前にいる自分も同じようにあたふたしている。自分が二人、しかもパンツ一丁の姿の自分がもう一人いるという悪夢のような状況。夢なら覚めてほしい。まだメアの精神侵入の方がマシかもしれない。

 

 

「あれ? リトが二人? リト、とらぶる以外にもそんな能力もってたの?」

「そんなわけないだろ!? ネメシスの奴が変身でオレに化けてるんだよ!」

「あっちが偽物だからな! そ、そうだ! ララならダークマターの気配で分かるんじゃないのか!?」

「うーん、気配を隠してるのかな? ごめんね、リト。ちょっと気配じゃ分からないかな」

「そ、そんな……じゃあどうすれば……」

 

 

腕を組み、首をかしげているララに頭を抱えるしかない。見ればネメシスが化けている方も同じように頭を抱えている。もしかしたら自分が偽物なのではないかと思えるような完璧な偽装っぷり。

 

 

(言動まで完璧に真似しているなんて……もしかして、メアと一緒に暮らさせたのもこのためか!? でもこのままじゃララも戦えないし、どうすれば……!?)

 

 

メアと一緒に暮らしていた光景をどこかでネメシスは監視していたのかもしれない。それならばこれだけ完璧な変身も納得できる。ある意味これが変身の一番効果的な使い方なのかもしれない。これを駆使すれば潜入も不意打ちもやりたい放題だろう。ともかくこのままではどうしようもない。ネメシスが何かを狙っているかもしれない以上、すぐにどうにかしなければ。なのに

 

 

「うーん、どうしよっかなー…………」

「「っ!? い、いきなりなにしてんだララ!?」」

 

 

何かを悩むそうな表情を見せながら、突然ララは自分の胸を揉み始める。あまりにも意味不明の奇行。いきなりどうしたのか。もしかしていつかのようにとらぶる中毒で欲求不満になっているのか。そこでようやくとらぶるのことを思い出し、それが見分ける方法になるかもと閃くも既に四回消費してしまっているためそれも不可能。それを知ってか知らずか

 

 

「……うん、やっぱりこっちの方がリトにはいいかな?」

 

 

ララは一人で納得しながら突然身に着けているペケを外してしまう。それがなくなればどうなるかもはや考えるまでもない。生まれたままの姿のララが現れる。見慣れているはずなのにいつ見ても見惚れてしまうほどの完璧なプロポーションと欠片もない羞恥心。初めて会った時を彷彿とさせる脱ぎっぷり。

 

 

「「い、いきなり何してんだよ!? は、早く服着ろって!」っていうか一緒に買いに行った下着なんで着てないんだ……よ?」

 

 

いつものように赤面しながら突っ込むもそこまで言ってようやく気付く。途中から自分しか喋っていなかったことに。もう一人の自分であるネメシスと思わず顔を見合わせてしまう。そこでやっと理解する。ララの行動の意味。

 

 

「うん、やっぱりそっちがリトだったね♪ じゃあ、せーのっ!」

 

 

満足げな笑みを浮かべながらもララはすぐさま化けているネメシスに向かって攻撃を仕掛ける。その衝撃によってネメシスははるか後方に吹き飛ばされてしまった。自分ではないとはいえ自分の姿のネメシスが吹っ飛ばされるのは心臓に悪い。一歩間違えばそうなっていたのは自分だったのかもしれないのだから。

 

 

「急いできたから下着忘れてきちゃってたの。本当はおっぱい揉んでもらえばすぐ分かったんだけど、そうしたらリトが困るかなと思って」

「そ、そうか……ありがとう。でも……その、できれば早く服を着てもらえると助かるかな……」

 

 

何の疑いもなくそんなことを教えてくれるララに何故か罪悪感しか感じない。胸を揉むだけで自分だと分かるほどララのおっぱいを揉んでしまっている自分のえっちぃさ。もはやケダモノ呼ばわりされても反論できないかもしれない。まさかララの下着を選んだことがここで役に立つなんて誰が予想できただろうか。なんか色々と台無しだった。

 

 

「なるほど……そこまで進んでいる仲だとはな。流石の私も読めなかったよ」

 

 

煽りでもなく本気で感心しているのか、ネメシスが体を修復しながら姿を見せる。ネメシスの予想を超えてしまったことを喜べばいいのかは別にして、まだ安心はできない。ネメシスの瞳は未だに爛々と輝いているのだから。

 

 

「ネ、ネメシス……まだ続ける気なのか?」

「フフ……私も負けず嫌いでな。見せる気はなかったが奥の手を見せてやろう」

 

 

そう言いながらネメシスが自らの手を重ねた瞬間、凄まじい暴風が辺りを支配していく。まるでネメシスの手の中に小さな台風が生まれようとしているかのような光景。

 

 

反物質(アンチマター)と言ってな。今の私が持ち得る最高の兵装だよ。ただ威力があり過ぎてな……どうする? プリンセスも私にこびへつらって下僕になるというのなら許してやらないでもないぞ?」

 

 

掌の中にとてつもないエネルギーを凝縮させながら黒の女王は告げる。自分の下僕になれと。もしかしたらネメシスなりの慈悲なのかもしれない。言ってることとやってることは真逆だが。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!? こ、これはいくらなんでも……ぶっ!?」

「リト、わたしに掴まって! このままじゃ飛ばされちゃから!」

「そ、それはいいんだけど、お前、裸のままじゃ……うぷっ!?」

 

 

アンチマターの余波によってその場から吹き飛ばされそうになるもララに抱き留められて事なきを得るが別の意味で今度は死にかねない。全裸のララにパンツ一丁のまま抱きしめられるという拷問のような状況。その谷間に押し込まれて息もままならない。頼みの綱のペケもいない。ララ様~という叫びとともにどこかへ吹き飛ばされてしまった。もう後は野となれ山となれ。できるだけ目を閉じたままララに全てを託すしかない。

 

 

「ダメだよ、ネメちゃん。わたしも、リトも下僕になんてならないから!」

「そうか、残念だよ。ならどうする? そのまま結城リトと一緒に運命を共にするか?」

「もちろん。でも言ったでしょ? わたしは怒ってるんだって。だからわたしの本気も見せてあげる!」

 

 

背中に羽を生やし、ネメシスと対峙するように上空に飛び立ちながらララは自らの切り札を見せる。それは尻尾。デビルーク人の証でもある尻尾がくねくねと動き、同時にその先端に凄まじいエネルギーが溜まっていく。その光と轟音によって辺りはさらに荒れ狂っていく。二つの台風が激突する前兆のように天変地異が巻き起こる。

 

 

「素晴らしい。デビルークの切り札か。どちらが上か比べてみるとしようか!」

「いいよ! でも負けないんだから!」

 

 

瞬間、まばゆい光とともに両者の切り札、神罰(ネメシス)のアンチマターとララの尻尾ビームフルパワーがぶつかり合った――――

 

 

 

「うあああああ――――!?!?」

 

 

もう何が何だかわからない。自分に押し付けられるララのおっぱいと、耳が壊れてしまいそうな爆音。目が開けられないような閃光。分かるのは、もしララから離れてしまえば死んでしまうということだけ。

 

 

「はははは! 最高だぞ、プリンセス! まさかここまで遊べるとは! これでこそ生まれてきた意味があったというものだ!」

 

 

ネメシスはただ高揚し、絶頂する。自ら生まれた意味がここにある。兵器としての本懐。戦うことでしか得られない兵器の幸福。自分の性能をすべて発揮することができる悦び。その感情がネメシスを支配し、力を引き出す。両の手から放たれるアンチマターは限界以上。負ける要素は存在しない。この星を半壊させて余りあるエネルギーの放出。だがそれは

 

 

「ぐぎぎ……!!」

「ラ、ララ……!?」

 

 

一人の少女の力によって徐々に押し返されていく。尻尾から放たれる光の矢がアンチマターの光を圧倒していく。デビルークの力でもない。与り知らない因縁も関係ない。今のララにあるのはたった一つ。

 

 

「リトは……わたしが守るんだから――――!!」

 

 

好きな男の子を守る。そんな少女の小さな、それでも絶対に譲れない意地だけ。

 

 

瞬間、光の矢がすべてを飲み込み天へと昇っていく。それがララとネメシスの結城リトを巡る喧嘩の終わりを告げるものだった――――

 

 

 

「ふう……リト、大丈夫? 怪我してない?」

「あ、ああ……ララこそその、平気なのか? なんかすっごいビームが出てたけど……」

「わたしは平気だよ。でも本気を出したのはほんとに久しぶりだったから、星を壊さないように気を付けるのが大変だったかな?」

 

 

自分を抱きかかえながら全く別次元の心配をしてるララにもはや言葉もない。ちらりと見降ろした先には余波だけで崩壊しかけている大地の光景。もしさっきのビームが星に当たっていたらどうなっていたのか。

 

 

(あ、明らかに前に見たデビルーク王のビームよりも威力が桁違いじゃないか……!? 下手したら本当に星が壊れて……)

 

 

その惨状に顔が真っ青になる。いつか聞いたナナの話。ララが本気を出したら地球が壊れてしまう。それが紛れもなく真実だったのだと悟る。ただ心に誓う。ララだけは本気で怒らせてはいけないと。

 

 

「……まさかここまでとはな。流石に予想を超えていたよ」

 

 

そんな中、ゆっくりとネメシスが姿を現す。しかし、それまでのようにすぐに修復できずにところどころ体が欠けている。流石にダークマターとはいえ、ララの尻尾ビームの威力は堪えたらしい。

 

 

「まだ続ける、ネメちゃん?」

「もちろん、と言いたいところだが……あちらもどうやら終わったようだしな。残念だが今回は変身兵器(私たち)の敗北のようだ」

 

 

両手をあげながら、それでも不敵な笑みを消すことなくネメシスはそう告げてくる。その視線の先にはおそらくヤミとメアがいるのだろう。そちらも終わったということなのだろうか。そんなネメシスを前にして勝者であるはずのララは

 

 

「じゃあ今度は仲直りだね。いつでも遊びに来てね、ネメちゃん!」

 

 

それまでの怒っていた雰囲気ではなく、まるで友達を誘うかのようにネメシスに言葉を贈る。その姿に自分はもちろんネメシスも呆気に取られている。喧嘩の後は仲直り。どこまでもララはララなのだと思い知らされてしまう。

 

 

「……ふむ、今度はお茶会をするのも悪くないかもな」

 

 

どこか楽し気にそう言い残したまま、ネメシスは黒い霧となりながらその場から去っていく。行先は恐らくメアの元だろう。なら自分たちもヤミのところに行かなければ。だが

 

 

「…………」

「どうしたの、リト? やっぱりどこか調子が悪いの?」

「いや……とりあえず、下してくれ。それとペケを探そう……」

 

 

全裸のララにお姫様抱っこされているパンツ一丁の自分。男しては情けなさの極みだが言ったところでどうしようもない。今の自分はヒロインでしかないのだから。

 

 

とりあえずパンツだけでは隠し切れない自分の分身を悟られないうちに、王女様のガラスの靴であるペケを探すことにしよう――――

 

 

 

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