もし結城リトのラッキースケベが限界突破していたら 【完結】   作:HAJI

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第四十二話 「主従」

「~♪」

 

 

上機嫌な笑みを浮かべながら赤毛の少女、メアは風を切るよう速さで街を駆ける。それでも人目につかないのは建物の屋根から屋根に飛び移っているから。およそ地球人では不可能な身体能力の為せる技。いつもよりもその速さは増している。何故なら

 

 

「マスターと一緒に学校に行けるなんて……素敵♪」

『ふむ……そんなに楽しいところなのか、学校とは?』

 

 

今のメアは一人ではなく、マスターネメシスと一緒なのだから。

 

 

「うん、毎日色んなことがあって楽しいの。きっとマスターも気に入るよ♪」

『地球人ごっこ、というやつか。まさかお前まで金色の闇のようなことを言うんじゃないだろうな?』

「まさか。マスターの教えは絶対だし、わたしは兵器であることに誇りを持ってるもん。ただ、あの感情は素敵だなって♪」

 

 

駆け足でリトお兄ちゃんの家に向かいながら、マスターに話しかける。知らない人が見たら独り言をつぶやいているように見えるはず。今、マスターはわたしの体の中にいるのだから。

 

 

『前言っていた恋とかいうやつか……分からん。生殖本能と何が違う?』

「うーん……どうなんだろう? でも性欲で感じるえっちぃ気分とは少し違ってたよ?」

 

 

言いながら思い出すのはあの時感じたヤミお姉ちゃんの感情。えっちぃとは違う、もっとふわふわした素敵な感覚。わたしもリトお兄ちゃんに対して性欲を感じることはあるが、ヤミお姉ちゃんのような感情は感じたことはない。マスターもそれがどんなものか知らないらしい。

 

 

「だからわたしも恋がしてみたいなって。それに、ヤミお姉ちゃんの恋を応援したいのもあるかな♪」

『ふむ、お前が応援する必要があるかは疑問だが……まあよし。面白そうなら何でも許すさ』

「流石マスター、素敵♪ しばらくはこっちにいるんでしょ?」

『そのつもりだよ。ダークネスの件もあるしな……』

 

 

ダークネス、という言葉に反応するも何だかもやもやする。何か忘れてしまっているような。そんなことを考えているうちに目的地へと到着する。見ればちょうど玄関にお兄ちゃん達が出てきている。

 

 

「おはよー! リトお兄ちゃん、ヤミお姉ちゃん!」

 

 

一際大きくジャンプして二人の前に着地する。うん、今日は絶好調。やっぱりマスターが一緒だと全然違う。あとはいつも通り、リトお兄ちゃんのお叱りを待つだけなのだが

 

 

「お、おはようメア……今日も元気そうだな……」

 

 

予想に反して、どこか虚ろな様子でお兄ちゃんは挨拶してくるだけ。いつもの突っ込みのキレは見る影もない。

 

 

「……? どうかしたの、お兄ちゃん。調子が悪いの?」

「い、いや! そういうわけじゃないんだけど、ちょっと昨日夜更かししちゃってさ!」

 

 

眼を泳がせ、しどろもどろになっているリトお兄ちゃん。見れば確かに寝不足のよう。それだけなら別に変なことはないのだが

 

 

「…………」

「ヤミお姉ちゃん?」

「…………」

「むー……ヤミお姉ちゃんったら!」

「っ!? メ、メア!? いつの間に来ていたんですか?」

「今さっきだよ。どうしたの、みんなで夜更かしして遊んでたの?」

 

 

ヤミお姉ちゃんまで様子がどこかおかしい。ぼーっとしていて上の空。わたしが来たことにも気づかないなんて、普段ならあり得ない。もしかしたらお兄ちゃんと同じで寝不足なのか。それに混ぜてもらえなかったのもあるが、無視されるのはもっと悔しい。

 

 

「昨日の夜から二人ともずっとそうなんだよ? 朝のとらぶるの時もリト、ぼーっとしてたし。おかげで今日はあんまり気持ちよくなかったんだから」

「な、何の話してるんだ!? べ、別にララを気持ちよくするためにしてるわけじゃないぞ!?」

「それはそうだけど……うーん、変なリトとヤミちゃん。喧嘩したんならちゃんと仲直りしなきゃダメだよ?」

「別に喧嘩したわけじゃ……ただ、その……」

「…………」

 

 

何か言いかけるもお兄ちゃんはもごもごと口ごもってしまう。お姉ちゃんもそれは同じで黙り込んだまま。それでも互いに気になるのか二人とも視線を合わせては慌てて目を逸らしている。その理由を聞いてみようとするも

 

 

「あ、そうだ! ねえメアちゃん、ネメちゃん戻ってきてるんでしょ? 今も一緒にいるの?」

 

 

待ちかねていたとばかりにデビルークが目を輝かせながら迫ってくる。思わずこっちが後ずさりしてしまいそうな勢い。どうしてもこの人は苦手。嫌味も通じないし、それどころかもっと仲良くしようと近づいてくる。どうしてなのか。戸惑っていると

 

 

「久しぶりだな、プリンセス。相変わらず元気そうで安心したよ」

 

 

どこか皮肉交じりに笑みを浮かべたマスターがひょっことわたしの胸のあたりから姿を現す。生えてきているって言ったほうが正しいかも。ダークマターで構成されているマスターだからできる芸当。

 

 

「わ! ほんとうにメアちゃんの中に住んでるんだ! それって誰の体でもできるの?」

「もちろん。ただ、そこの下僕には拒否されてしまっているがな。いずれ屈服させてやろうと思っているところさ」

「流石リト! でも楽しそうだなー……ねえ、ネメちゃん。今度わたしの体で遊んでみない?」

「ほう、なかなか興味深いな。デビルークと変身兵器の融合か……いや、もしかしてそういうことなのか……?」

「どうかしたの、ネメちゃん?」

「ダメだよ、マスターはわたしのマスターなんだから! ほら、早く行こうお兄ちゃん、お姉ちゃん!」

 

 

何だかマスターが取られてしまうような気がして強引に話題を終わらせる。そんなこんなでマスターを加えた新しい学校生活がスタートしたのだった――――

 

 

 

あっという間にお昼休み。午前中はマスターのおかげもあっていつもよりも楽しい時間だった。特にハレンチ先輩……ではなく、古手川先輩の慌てようがすごかったのだが、その分、リトお兄ちゃんとヤミお姉ちゃんの様子がやっぱりおかしかった。

 

 

(リト兄ちゃんとヤミお姉ちゃん……やっぱり喧嘩してるのかな?)

 

 

授業中はもちろん、お昼ご飯を食べている間もそれは変わらない。意識しないようにしているのに、どうしても意識してしまう。そんなやり取り。

 

 

「そろそろお昼休みも終わりだな……教室に戻るか」

「うん! 午後は体育だから楽しみだなー」

「頼むから無茶はしないでくれよ……飛ぶのも禁止だからな」

「大丈夫だよ! ちゃんとするから!」

 

 

それを誤魔化すようにお兄ちゃんはデビルークと一緒に教室に戻って行こうとしている。わたしとしてはなんだかおもしろくない。もっとマスターと一緒にお兄ちゃんとお姉ちゃんと遊びたかったのに。そんな風に頬を膨らませていると

 

 

「おっとそうだ。すっかり忘れていた。金色の闇、お前に伝えようと思っていたことがあった。少しここに残ってくれ」

「私にですか……?」

「うむ、変身兵器のことでな。悪いがプリンセスたちは先に行っていてくれ。すぐに済むさ」

 

 

マスターが私の体から分離して、姿を見せながらお姉ちゃんを引き留める。いったい何の話だろうか。ヤミお姉ちゃんも内容に心当たりがないのか首をかしげている。変身兵器の話ということで、お兄ちゃんもデビルークも先に行ってしまった。残っているのはわたしたち姉妹だけ。

 

 

「それで……話とは何ですか?」

 

 

真剣な表情と雰囲気でお姉ちゃんがマスターに問いただすも

 

 

「いやなに、あの後、結城リトとの交尾は上手くいったのか聞きたくてな」

 

 

マスターは全然予想していなかった、素敵な爆弾をお姉ちゃんに炸裂させてしまった。

 

 

「――っ?!?!」

 

 

瞬間、ヤミお姉ちゃんの顔が真っ赤に染まる。湯沸かし器のように湯気立つような有様。いつものクールなお姉ちゃんとは思えないような反応。

 

 

「お姉ちゃん、リトお兄ちゃんと交尾してたの……? 素敵♪」

「ち、違います! 何でそうなるんですか!?」

「違うのか? てっきりそれで気まずくなっているのかと思っていたのだが……では何があったのだ?」

「何でそれを貴方に言わなければいけないんですか……午後の授業に遅れるので失礼します」

 

 

ずんずんとどこか怒りを見せながらお姉ちゃんはその場を後にしていく。ちょっとからかいすぎてしまったかもしれない。でも

 

 

「ほうほう……なら仕方ない。結城リトに直接聞いてみる事にしよう」

 

 

マスターはまだ足りない、むしろこれからが本番とばかりに煽っている。一瞬、お姉ちゃんの足が止まるもそれだけ。だが

 

 

「……勝手にすればいいでしょう。結城リトがしゃべればの話ですが」

「ん? ああ、心配ないさ。言っただろう? 直接聞くと……なあ、メア?」

「……!」

「流石マスター……素敵♪」

 

 

瞬間、マスターが何を言いたいのか理解する。それはお姉ちゃんも一緒。リトお兄ちゃんが答えなくても、わたしの精神侵入なら関係ない。流石マスター。ドSさは全く衰えていない。

 

 

「…………本当に性格が悪いですね、貴方は」

「褒め言葉として受け取っておこう。なに、悪いようにはせん。ただの好奇心だよ」

 

 

一本取ったといわんばかりのマスターに呆れたのか、それとも逃げ場はないと思ったのか。お姉ちゃんは渋々、昨日の夜の素敵な出来事を聞かせてくれたのだった――――

 

 

 

 

「…………何だつまらん。ただの粘膜接触か」

「そう言われれば身も蓋もありませんね……」

 

 

期待外れだと言わんばかりの態度のマスター。確かに今更キスなんて、といわれればそれまで。でもリトお兄ちゃんやヤミお姉ちゃんにとっては違う。何故なら唇へのキスはお兄ちゃんにとっては絶対にしてはいけないこと。つまり、本当に好きな人としかしない行為。その証拠に、わたしはもちろん、あのデビルークにもお兄ちゃんは決してキスだけはしていないのだから。

 

 

「凄い! これってキセージジツってやつなんでしょ?」

「なっ!? あれはただの事故で、その……」

「理解できんな。唇の接触がそんなに重要なのか?」

 

 

(お姉ちゃん、分かりやすすぎぃ……でも、今のお姉ちゃんも可愛いかも♪)

 

 

事故だといいつつも恥ずかしがっている時点でモロバレ。思わず嗜虐心がくすぐられるような可愛さ。今ならマスターの気持ちが分かるかもしれない。

 

 

「じゃあ後はもう告白するだけだね、ヤミお姉ちゃん♪」

「な、なんで私がそんなこと……それに、結城リトには婚約者候補のプリンセスが」

「あは、言い訳したってダメだよ、お姉ちゃん。前言ったでしょ? わたし、お兄ちゃんの記憶を見てるって。だから二人が婚約者候補なのが嘘だって知ってるんだから」

「う……」

「ほう、それは初耳だ。てっきりデキているのだとばかり思っていたが」

「だから告白するなら今だよ、お姉ちゃん! 早くしないとお兄ちゃん、取られちゃうかもしれないよ。あ、何ならわたしがリトお兄ちゃんの心を覗いてきてあげようか?」

「そ、それは絶対に止めてください! いくら貴方でも許しません! それに……これは私の問題です。口出しは無用です」

 

 

何とか二人がくっつく方向にもっていこうとアドバイスするも、お姉ちゃんは聞く耳持たず。もっとも、最初から素直ならとっくにどうにかなっている。いい加減限界だったのか、今度こそお姉ちゃんは屋上からいなくなってしまう。ただ残されたわたしとマスターの心は一緒。文字通り一心同体。

 

 

「お姉ちゃん、素直じゃないんだから♪」

「さて……どう転ぶかな?」

 

 

これからが楽しみ。素敵な展開になることを期待しつつ、わたしとマスターもまた屋上を後にするのだった――――

 

 

 

 




第四十一話を投稿させていただきました。今回はタイトルにもあるようにメアとネメシスから見たヤミの状況。いろいろな意味でネメシスはこれからの展開のキーパーソンになる予定です。次話はリト、ララ側のエピソードになります。お付き合いくださると嬉しいです。では。
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