もし結城リトのラッキースケベが限界突破していたら 【完結】   作:HAJI

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第四十九話 「計画」

「ねえ見て見て! あれは何をするところなの?」

 

 

少女はぱたぱたとせわしなく街中を動き回っている。周りから視線を集めていることには全く気付いていない。白い洋装に顔を隠すようなヴェールを被っている珍しさもあるが、それ以上にその美しさによるもの。男性はもちろん、女性ですら見惚れてしまうようなオーラが溢れている。それは構わない。問題はあの美少女が、自分を好きだと言ってくれた女の子の母親であるということ。

 

 

「っ!? ご、ごめんなさい、ちょっとはしゃぎすぎました。ちょっと昔を思い出しちゃって……」

「い、いえ……それはいいんですけど」

 

 

心ここにあらずと言った風に呆然としていたのを勘違いしたのか、小さいセフィさんは慌ててしまっている。久しぶりにお忍びで遊びに来たことにはしゃいでいたからか、それとも体に精神が引っ張られているのか。いつもとは全然違うセフィさんの変わりっぷりに圧倒されるしかない。

 

 

(な、何だこの状況……!? なんでセフィさんと一緒にオレ、街を歩いているんだ……?)

 

 

改めて今の状況の意味不明さに戦慄する。確か自分はさっきまで家と地球を人質にされてデビルーク王に脅迫されていたはず。メアとネメシスも巻き込みながらの大決戦になりかねない危機。それを一瞬でセフィさんは解決してくれた。あの時のセフィさんは怖かった。笑っているのに全然笑っていない。どうしてそんな姿なのか、ここにいるのか、聞きたいことは山ほどあったが口を挟む間もなくデビルーク王は強制送還となってしまった。なんか色々恨み言を言っていたような気もする。ただ分かったことはセフィさんだけは本気で怒らせてはいけないということだけ。

 

 

「……? どうしました、リトさん?」

「な、何でもありません! でもどうしてその、今日は地球に……? しかもそんな姿で」

 

 

考え事を見抜かれたのかと焦ってしまうようなタイミングで話しかけられて思わず身体が跳ねてしまう。知らずその姿に目を奪われる。容姿的にはモモに近いのだが、纏っている雰囲気や空気は全く違う。とらぶるのこともあり少し離れてもらっているのに胸が高鳴ってしまう。顔を隠していてこれならもし素顔を見てしまった時にはどうなるのか。想像するだけで恐ろしい。

 

 

「一度お忍びで地球に来てみたいと思っていて。この姿はリトさんを驚かせようと思ってララから発明品を借りてきたんです」

「そ、そうですか……ほんとに驚きましたよ……」

「ならよかったです。やっぱり若いっていいわね。私もこんな時代があったって実感してます」

 

 

ふう、とどこか感慨深げに溜息を吐いている宇宙一の美少女。見た目と言動がまったく一致していないので違和感が半端ない。なんでも最近のララを見ていて若いころを思い出したのだとかなんとか。

 

 

(い、いや……でもいくらなんでもおかしいだろ!? 若返れる発明品なんて……しかもそれが失敗だっていうんだから……)

 

 

呆れを通り越して尊敬してしまうのはここにはいないララのこと。身体を小さくして遊ぶ発明品を作ろうとしたら何故か肉体が若返る発明品になってしまったらしい。何がどうなったらそうなるのか突っ込みどころは満載だが分かるのはララが天才だということだけ。それを覚えていたセフィさんが発明品を借りてきて今に至るらしい。効果時間は半日ほどらしいが、宇宙でも歴史に残る大発明。本人にはそんな気はこれっぽっちもなさそうだが。

 

 

「そういえば、一人で来られて大丈夫なんですか? 護衛の人たちがいないと危ないんじゃ」

「ええ、でもきっと大丈夫。可愛い護衛さんも付いてきてくれてるみたいだし。私じゃなくてリトさんの護衛だけど」

 

 

ふふっ、優しく笑みを浮かべながらセフィさんは今いる公園から少し離れた建物の屋根の上に目を向ける。そこには隠れているようだが丸見えになってしまっている赤いおさげがある。言うまでもなくメア。セフィさんの登場によってあの場は収まったものの、メアとネメシスもまたそれから逃げるようにいなくなってしまった。だがどうやら自分たちの出かけた後をついてきていたらしい。護衛というよりは尾行だろうか。姉妹揃って自分を護衛してくれるのは嬉しいのだが、じーっという擬音が聞こえそうなほど見つめてくるのはやめてほしい。誰かさんのにらめっこ(一方的)を思い出しそうだ。

 

 

「すみません……悪い娘じゃないですけど、ちょっと人見知りで……」

「気にしないでください。あの娘たちと私たちの関係からすれば当然の反応ですから。仲良くなれればいいのだけど」

 

 

言うまでもこっちの事情を悟っているのかセフィさんは気にしていないようだ。デビルークと変身兵器の関係からいえば警戒するのは当たり前。もっともメアはデビルーク云々よりも自分とセフィさんが仲良くしているように見えるのが気に入らないようだが。

 

 

「それはともかく、さっきはごめんなさいね。ギドが無茶をしたみたいで。ちゃんと家の修繕はこちらでさせていただきますから」

「あ、ありがとうございます……助かりました、ほんとに」

 

 

本当に感謝しかない。あのままならギドにせよネメシスとメアにせよ、家が崩壊するのは避けられなかったはず。自分にとっては女神……ではなく、セフィ様様だった。

 

 

「でも気を悪くしないであげてね。あれはギドなりにあなたを気に入ってる証拠ですから」

「オレを……気に入ってる?」

「ええ。あの人は自分の気に入った相手には悪戯をしないと気が済まないたちなの。私もこの体ぐらいの年のころは毎日苦労させられてたわ」

 

 

困ったものねと呆れているセフィさんの姿を見ながらこっちも心境は全く同じ。小学生が好きな子に悪戯するようなノリ。姿は赤ん坊だが性格までそんなノリなんてどういうことなのか。それでも納得してしまうのはやはりデビルーク王だからなのか。ある意味ネメシスと近いのかもしれない。

 

 

「それに早く王位を譲って遊びたいのもあるけど、それ以上に貴方に息子になってほしいとギドは思ってるの」

「む、息子……?」

「義理の、だけどね。ほら、私達には娘しかいないでしょう? ギドからしたら男の子も欲しかったみたいで……だからリトさんと遊んでいるときは息子ができた気分になってるんじゃないから」

「そ、そうですか……」

 

 

息子、というフレーズに思わず背筋が寒くなる。セフィさんが言っていることが本当だとしたら喜ぶべきことなのだろうが全然うれしくないのはなぜなのか。だとあれだろうか、あのエロオヤジは息子がいたら一緒にアダルトショップに連れていく気なのか。嫌すぎる。そんなこっちの心情を察してかクスクス笑いながらも

 

 

「ふふっ、でもギドだけじゃないわ。私もリトさんが息子になってくれたら嬉しいと思ってるの」

「ぶっ――!?」

 

 

さらっとセフィさんも爆弾発言を投下してくる。冗談でしょう? と聞き返せないほど吹き出してしまう。なんだろう。セフィさんも自分をからかって遊ぶくせがあるのだろうか。

 

 

「ごめんなさい。でも良かったわ。あの時はもうちょっと先の話かと思ってたけど、もう出会えたみたいで」

「え……? それって……」

「以前、私の部屋でした話です。能力には良いことと悪いことがある、というね」

 

 

こちらの反応を見守りながら、セフィさんはそんなことを口にする。同時に思い出す。初めてセフィさんの部屋に招かれて、聞かせてもらった話。初めて、人前で泣いてしまった出来事。

 

 

「本当に良かったわ。能力に惑わされずに、真っすぐに貴方を見つめてくれる人が現れて」

「セフィさん……」

 

 

いつか自分のことを分かってくれる、救ってくれる人が現れるはずだとあの時セフィさんは言ってくれた。そしてそれは本当だった。そのおかげで今の自分がいる。とらぶるにも真っすぐ向かい合うことができている。そのことをセフィさんは我がことのように喜んでくれている。本当に感謝してもしきれない。だが

 

 

「でもそれが二人同時だったっていうのは予想外でしたけどね」

「っ!? そ、それは……」

 

 

すぐにそれは違う意味での緊張に早変わりしてしまう。思わず口ごもってしまうような内容。

 

 

「ララが告白したのは予想通りだったんだけど、ヤミさんの方が告白が早かったのは驚いたわ。リトさん、愛されているわね」

「あ、愛……!? な、なんでヤミのことを知ってるんですか!?」

「これでも恋愛ごとに関しては一家言あるつもりですから。ララ達からもよく話は聞かされますし。貴方が攫われた時のヤミさんの反応を見れば一目瞭然ね」

「そ、そうですか……オレ、本当にダメダメですね……」

 

 

それに全く気づけていなかった自分の鈍感さ、というか無神経さに申し訳なさすらある。

 

 

「そんなことはないわ。そんな貴方だからこそ、ヤミさんもララも貴方に惹かれたんでしょうから」

「え……? い、いや……でもオレ、すぐに二人に答えられなくて……迷っちゃってるんです……」

「迷うのは貴方の中に正しいと信じる何かがあるから。そしてそれが貴方の誠実さにつながっている」

「……」

 

 

こちらの悩みを全て理解しているかのようにセフィさんは助言をしてくれる。まだ答えを出せていない自分への。

 

 

「大丈夫。もし私が今ぐらい若くて、ギドに出会ってなかったら求婚してしたかもしれないぐらい、リトさんは魅力的ですから」

「っ!? じょ、冗談はやめてください!? デビルーク王に聞かれたらどうなるか……!」

「ジョーダンじゃないですよう。それはともかく、ゆっくり答えを出したらいいと思います。私個人としては、ララを選んでくれたらうれしいですけどね」

 

 

反射的にデビルーク王がいないか辺りを見渡してしまうようなとんでもない発言をするセフィさんに翻弄されっぱなし。冗談はともかく、最後の部分は本気なのだろう。デビルーク王とは違って脅迫でないのはせめてもの救いだろうか。

 

 

(とりあえず……デビルーク王に側室勧められたことは黙っておいた方がいいかな……)

 

 

側室どころかほかの娘たちまで巻き込んでいたことが知られればどうなるか。自業自得な気もするが一応黙っておこう。見栄を張っていたがセフィさんに怯えていたのは尻尾の震えから明らか。モモ曰く徹底したハーレム否定派なのは本当らしい。というかそれが当たり前だと思うのだが感覚がマヒしてしまっているのかもしれない。そんな中

 

 

「あ、あら……?」

 

 

不意にセフィさんが何かに気づいたのかそんな声を上げてその場に蹲ってしまう。もしかして体調が悪くなってしまったのか。

 

 

「っ!? ど、どうしたんですか……!? 気分が悪くなったとか……?」

「い、いえ……そうじゃなくて、嘘……こんなに早く……!?」

 

 

瞬間、信じられないことが起こり始める。それは成長。背丈でいえばナナや美柑ほどしかなかったセフィさんの身体が一気に成長していく。髪は伸び、胸はたわわに実り、ヒップが突き出てくる。あっという間に宇宙一の美少女は宇宙一の美女に変身してしまう。

 

だが成長したのは肉体だけ。身に纏っていた衣服や下着はそのまま。そのせいでそのはちきれんばかりの肉体美が露わになってしまっている。胸が服から溢れ、スカートはミニスカ同然、下着は食い込んだまま。背徳感しかないあられもない姿。

 

 

「セ、セフィさんっ!? だ、大丈夫ですか!?」

「っ! ダ、ダメ! 今こっちを見ては――」

 

 

慌てながらもどうにかしようとするのに必死で気づくことができなかった。服よりも何よりも大事なものがセフィさんからなくなってしまっていることに。

 

 

「え……?」

 

 

そこには、その名のとおり、宇宙で一番美しい女性の素顔があった――――

 

 

 

 

(ま、まさかこんなに早く元に戻ってしまうなんて……!)

 

 

身体を締め付けるような服の感触に苦しみながらも自分の迂闊さに後悔する。前に使った時は半日は保ったので油断してしまっていた。あくまでもこれは偶然の産物で生まれた発明品であり、失敗作。安定した効果は望めなかったのだろう。だが問題はそこではない。

 

 

(リトさんが美しい私の顔を……!?)

 

 

元の身体に戻った衝撃で顔を覆っていたヴェールがはだけてしまった。慌てて顔を隠そうとするも後の祭り。顔を赤くしたままリトさんは自分を見つめたまま固まってしまっている。考え得る限りで最悪の事態。

 

 

(いけない! 私、このまま義理の息子になるかもしれない男の子に○○○や××××されちゃうんだわ! 娘の想い人にそんな……美しすぎる自分が憎い!)

 

 

脳裏には他人様にお見せできないような惨状の映像。もはやそれから逃れることはできない。チャームという自らの能力。だがよりにもよって娘の想い人に襲われるなんて。ララになんて言えばいいのか。夫にどう説明すればいいのか。できるのはただその場で丸まることだけ。だがいくら待っても何も起こらない。恐る恐る目を開けたそこには

 

 

「あの……大丈夫ですか、セフィさん……?」

 

 

驚きながらも、真っすぐこちらをみつめているリトさんの瞳があった。

 

 

「え……? あ、あの……なんともないのですか、リトさん? 私の美しい顔を見て……?」

「え、ええ……それよりも早くここから離れましょう! その恰好じゃちょっと……」

 

 

リトさんはそう言いながら私の姿を直視しないようにしながらも落ちていたヴェールを手渡してくれる。間違いなく自分の顔を見たはずなのに。

 

 

(これは……ギドと会った時と同じ……?)

 

 

思い出すのは初めてギドと会った時の記憶。同時に確信する。さっきの自分の言葉は正しかったのだと。能力に惑わされずに私を見てくれる、二人目の男性。ララがリトさんを選んだのは間違いではなかったのだと。だがそんな中

 

 

「WRYYYYYYY!!」

「ヒャッハ――――!!」

 

 

この世の物とは思えない奇声とともに多くの男性がこちらに走ってくる。見間違うはずのない、チャームに惑わされてしまった者たち。

 

 

「な、なんで!? もう顔は隠したのに!?」

「さっきの瞬間を見られてしまったんです! 一度見られてしまうとすぐには効果は消えないんです!」

「そ、そんな!?」

「リトさん、早く離れてください! このままじゃ貴方も巻き込まれてしまいます!」

 

 

その場から逃げ出そうとしながらリトさんにそう促す。チャームにかかった相手は文字通りケダモノと化す。理性は残っておらず自分を求めて行動するのみ。その邪魔をするようならリトさんもただでは済まない。なのに

 

 

「……っ! セフィさん、ここはオレが食い止めます。その間に遠くに逃げてください!」

「リ、リトさん……!? それじゃあ貴方が……!」

「心配しないで…………何とかしますから」

 

 

並々ならぬ決意を感じさせる宣言とともにリトさんは襲い掛かってくる男性たちへ向かっていく。でもその恐怖からか、体の震えは隠しきれていない。

 

 

「うおおおおおお――――!!」

 

 

咆哮と共に彼は駆けていく。女を守らんとする男の姿。それを前にして止めることなどできない。できるのはただ逃げることだけ。けれど私は理解していなかった。

 

リトさんが、普通の地球人ではなかったことを。

 

 

「え……?」

 

 

思わずぽかんとしながらその場に立ちすくんでしまう。一体何が起こったのか理解できない。何故ならそこには

 

 

裸の男性たちにくんずほぐれつされているリトさんのお見せできないような惨状が広がっていたのだから。

 

 

それはまさに一瞬。リトさんが突っ込んだ瞬間、その周りにいた男性が全てまるで吸い寄せられるようにリトさんに群がっていった。しかも何故か服をリトさんが脱がせながら。しかもリトさんもパンツ一枚。意味が分からない。ララたちから聞かされていたとらぶるなのだろうが男性にも有効だったらしい。

 

 

「お、おぇえ…………」

 

 

その世界の中心でリトさんは魂が抜けたような、悟り切った顔で嗚咽を漏らしている。自分を助けるために尊厳や何やらを全て捨て去ってしまったリトさんに感謝してもしきれないのだが、目をそむけたくなるような光景には変わりない。

 

 

(はっ! い、いけない! 早く逃げないと……またこっちに……!)

 

 

すぐに我に返りながら再びその場から逃げなければと走り出す。今は転んでしまっているがすぐまた襲い掛かってくるのだから。だが

 

 

「痛てて……な、なんだこりゃ!? なんで俺、裸になってるんだ!?」

「そりゃこっちのセリフだ!? 離れろよ! 気持ち悪いだろうが!?」

「すみませんすみませんすみません……」

 

 

男たちはまるでさっきまでのケダモノっぷりが嘘のよう。違う意味での混乱でその場はめちゃくちゃになっているがもう自分のことは見てすらいない。

 

 

(ま、まさか……チャームの能力を、リトさんのとらぶるが打ち消したの……!?)

 

 

考えられるとしたらそれだけ。自分のチャームの能力をリトさんのとらぶるが打ち消し、上書きした。俄かには信じられないような事態。だが思い当たる節がある。それは初めてリトさんに会った時。リトさんは拒絶反応を示しながら私、チャームから逃れようとしていた。きっとあの時はまだ私のチャームのほうが力が強かったのだろう。でも今はそれを超えるほどとらぶるは力を増している。成長しているのかもしれない。遠くない未来、宇宙の法則すら捻じ曲げかねない能力の片鱗。

 

 

「リ、リトさん! ごめんなさい、私のせいでこんな……」

「だ、大丈夫です……ちゃんと唇は守りましたから……」

 

 

錯乱しているのか、よくわからないことを口走っているリトさんを何とか起こす。本当に申し訳ないことをしてしまったが危機は去った。どう思っていると

 

 

「おおおおお!! こ、これはなんという……もはや言葉にできない、ワシの中の『神』がムクムクと盛り上がっていきますぞ――!!」

「え……? あの……」

「ご婦人! ぜひワシと一緒に将来を熱く語り合いましょう――!!」

 

 

そのまま服を一瞬で脱ぎながら小太りのサングラスをした男性が空高く舞い上がりながらこちらに急降下してくる。もう顔は隠しているのにどうして。隣で朦朧としているリトさんが何かを呟いているが聞き取れない。もはや万事休す。あきらめかけた瞬間

 

 

「こういう時はなんて言うんだっけ……? そうだ、えっちぃのは嫌いです、かな?」

 

 

そんな声と共に、赤毛の少女が颯爽とその場に現れた。

 

 

「ひょ?」

 

 

瞬きほどの間に、メアさんは飛び上がりそのまま膝蹴りをサングラスの人の顔面にお見舞いする。見ているこっちがやりすぎではなないかと心配するような威力。なのに何故かその顔はどこか光悦としている。理解できない事態の連続。

 

 

「まったく……えっちぃのは学校の中だけにしてよね」

 

 

ぐにぐにと地面に倒れている男性を足で踏みつけながら呆れているメアさん。どうやら男の人は完全に伸びてしまっているらしい。

 

 

「あ、ありがとうメアさん。助かったわ」

「勘違いしないでよね。あたしはヤミお姉ちゃんの代わりをしただけだから」

 

 

そのままメアさんはぷいっと知らんぷりをしながらその場を離れていく。その姿に娘であるナナが重なる。仲良くなることができるのが目に浮かぶかのよう。

 

 

「ええ、それでも助かりました。今度何かお礼をさせてね。甘いものが好きなんでしょう?」

「っ!? い、いいから! もうあたしは帰るね!」

 

 

恥ずかしかったのか、誤魔化すようにメアさんは飛び上がりその場からあっという間にいなくなってしまう。間違いなく、いい子なのだろう。今度お茶会でも開いてみんなと交流してもらうのもいいかもしれない。

 

 

「あ、やっと見つけた! ほんとにママと一緒だったんだ、リト!」

「ララ? 健康診断はもう終わったの?」

「うん! パパからママがこっちに来てるって聞いて急いできたの♪」

「お久しぶりです、クイーン。その恰好はもしや……結城リトにえっちぃことをされたのですか?」

「ち、違う誤解だ!? オレは何も疚しいことは」

「その恰好では説得力皆無ですね」

「リト、何で裸になってるの? ペケ貸してあげようか?」

「や、やめろ!? それじゃお前が裸になっちゃうだろ!? あ、あれだ……ぴょんぴょんワープ君貸してくれ! あれで家に帰るから!」

「いいよ、じゃあみんなで一緒に帰ろっか♪」

「勘弁してくれ……それじゃみんな裸になっちゃうだろ……美柑に怒られるのはオレだけで十分だから……」

「えっちぃですね」

 

 

健康診断から帰ってきたララとヤミに囲まれてリトさんはげんなりしてしまっている。それでもどこか満更でもなさそうに見えるのはきっと間違いではないだろう。私はかつてギドに救われたが、リトさんはララとヤミさんに救われている。だからこそ、どちらかを選ぶのはきっと大変。でもきっと、リトさんなら答えを見つけられるはず。

 

 

「……四人目、頑張ってみようかしら」

 

 

若い子たちを見ているとまだまだ自分も負けてはいられないと思えてくる。ギドもそろそろ元に戻る頃だし、今度は男の子を狙ってみるのも悪くないかも。

 

そんな家族計画が立てられていることなどデビルーク王は知る由もなく、セフィの地球訪問は騒がしさと共に終わりを告げたのだった――――

 

 




今回はセフィ中心のエピソード。原作回のオマージュを強く意識したものになっています。とらぶる関係や人間関係で差異を楽しんでもらえればうれしいです。

ちなみにセフィに四人目が生まれても女の子だと作者は考えています。ララにも子供ができて、セフィからみて娘と孫が同い年という展開も面白いかもしれません。では。


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