もし結城リトのラッキースケベが限界突破していたら 【完結】   作:HAJI

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ヤミルートIF 第三話 「番人」

(な、何なんだこいつら……?)

 

 

息を飲みながら突然現れた謎の二人組に目を奪われる。一人は全身黒づくめのシルクハットにサングラスというどっからどう見ても不審者でしかない男。年は二十代半ばといったところ。もう一人は学校の制服姿の女の子。年はおそらく自分と同じぐらい、高校生だろうか。変なカップルと言えばそこまでだが流石にそこまで自分も鈍くはない。ここは地球ではなく、辺境の星。加えてティアさんが身を潜めていた隠れ家。そこにやってくるということはただ者ではない。とらぶるの危機察知が働いているのがその証拠。そのまま緊張状態がしばらく続くかと思われた瞬間

 

 

「あ! その恰好、もしかしてあなたたちも地球人なんですかー!?」

 

 

まるで友達を見つけたと言わんばかりの制服の女の子のハイテンションによって空気は一気にぶち壊されてしまう。

 

 

「え……? そ、そうだけど……君も地球人なのか……?」

「そうですよぉ! 私、キリサキキョウコって言います! 十七歳の高校二年生! あなたも高校生ですか?」

「え、あ、うん……そうだけど……」

「きゃー、ステキ! 私、宇宙に出てから地球の人と会うの初めて! ねえ、どこに住んでるんですかぁ? 私は」

 

 

きゃーとまるで地元の友達に会ったかのように騒ぎ始める少女、キョウコ。会って数秒で分かるほどマイペースな性格。その姿にどこかメアが重なってしまう。それを示すようにいつの間にかキョウコは自分の目と鼻の先にまで近づいてきている。思わずのけ反ってしまうほど距離が近い。何とか止めようとするもそのマシンガントークは止まる気配はない。何が好きで嫌いで、どこに住んでいているか。逆に自分はどこの高校なのか、名前は何なのか。答える間もない質問の連射砲。そんな中

 

 

「……そこまでです。いきなり現れて一体何のつもりですか」

 

 

様子を見ていたが流石に見かねたのか、それとも自分がキョウコと身体接触しそうになっていたからか。若干さっきとは違う意味で不機嫌になりつつあるイヴが割って入ってくる。

 

 

「あ! あなたも地球人なの? カワイイー! お人形さんみたい! ねえ、キョウコとお友達になりませんかぁ?」

「……とりあえず第一印象は最悪なのでお断りさせてもらいます」

 

 

見ているこっちが気の毒になるようなイヴのセメント対応。だがそれに負けじとキョウコはイヴの絡んでいる。そのままズバリ嫌いだと言われているのに全くめげる様子がない。というか全く気付いていないのかもしれない。

 

 

「そのぐらいにしてはどうデス、キョウコさん。皆さん困っているようデスし、ここには遊びに来たわけではないのデスから」

「ちぇっ、分かってますよーシャルデンさん。でもちょっとぐらいいいじゃないですかぁー、同じ地球の人に会えたんだだしぃー」

 

 

仲裁をするようなタイミングでシルクハットの男、シャルデンと呼ばれる人物が割って入ってくる。どうやらキョウコに比べて常識的な性格らしい。もっともまだ話したりないのか、キョウコはぶーぶー文句を言いながら唇を尖らせている。

 

 

「そうデスね……ですがキョウコさん、その男性はともかく、女性は地球人ではありまセンよ。そうでしょう、金色の闇?」

 

 

だがシャルデンがその名を口にした瞬間、イヴの空気が変わる。同じく自分も知らず気を引き締める。完全にキョウコのペースに飲まれてしまって忘れかけていたが目の前の二人は突然やってきた謎の来訪者。そしてシャルデンという男は金色の闇の通り名を、ヤミを知っている。

 

 

「こんじきのやみぃ? なんですかそれ?」

「宇宙一と恐れられている殺し屋デスよ。ここ数年は姿を見せず、死んでしまったのではと噂されていましたが、こんなところで会えるとは」

「殺し屋? こんなカワイイ子がですか?」

「……今は元ですがそれはいいです。貴方たちは何者です? 何の目的があってティアに近づこうとしているんですか?」

 

 

全く知らないのかキョトンとしているキョウコとは対照的にシャルデンは意味ありげな笑みを浮かべている。サングラスをしているので分かりにくいが焦っているような様子は見られない。金色の闇の名を知っていながら平然としている。それだけで目の前の二人が一般人ではないのは確実。

 

 

「そういえば自己紹介がまだでしたネ。私はシャルデン。隣にいるキョウコさんと同じ、星の使徒という集団のメンバーになりマス」

 

 

帽子を取り、恭しく礼をしながらシャルデンはそう自己紹介をしてくる。しかし自分には全く心当たりがない。星の使徒という集団が何なのか。だがイヴには心当たりがあったらしい。

 

 

「星の使徒……確か、ここ一年ほどで台頭してきている革命集団でしたか」

「流石は金色の闇、と言ったところデスね。私たちのこともご存じとは」

「殺し屋は引退しましたが、厄介ごとに巻き込まれることは少なくないので。目的は確か、現支配体制の崩壊でしたか。デビルークに反乱を企てているということですか……無謀ですね」

「仰る通りデスね。ですがそれは最終目標。私たちの目的は裏の支配体制を壊すことデスから」

「裏の……秘密結社のことですか? ですがあの組織には……」

 

 

イヴはそのままシャルデンと向かい合いながらやり取りをしている。その間には聞いたことのない、知らない単語が行きかっている。恐らくは裏の世界の話なのだろうが自分には全くついていけない。完全な置いてけぼり状態。そんな中、ふとシャルデンの後ろにいるキョウコに視線が向く。自分たちの組織の話をしているはずなのに退屈そうにあくびをしているのはどうなのか。

 

 

「んフ♪」

 

 

こっちの視線に気づいたのか、イタズラする子供のようにウインクをしながらこちらに投げキッスをしてくる光景にあきれ果てるしかない。普通なら可愛い女の子にそんなことをされれば喜ぶのだろうが生憎そんな余裕はない。あるのは嫌な予感だけ。

 

 

「――貴方たちの素性は分かりました。ですが、それとここに来たことに何の関係があるんですか?」

 

 

自分が嫌な未来を幻視しているうちにイヴの方の話も進んでいたらしい。ようやく本題。星の使徒と呼ばれる彼らがここにやってきた理由。それは

 

 

「簡単なことデス。かのエヴァ・セイバーハーゲンが残した遺産を手に入れるためデスよ」

 

 

完全に予想外でありながらも、決して自分たちに無関係の物ではなかった。

 

 

「エヴァの遺産……変身兵器のことですか?」

「いいえ。確かにそれも遺産といえるのでしょうが、私たちが手に入れようとしているのは未だ宇宙の歴史で誰も成し遂げていない夢……不老不死の実現です」

「不老不死……!? そんなことできるわけ……」

「確かにまだ理論だけですが、それを実現できる可能性があるのがナノマシン工学デス。私たちも変身ではない能力は持っていますが、それだけでは世界を作り変えることはできないと考えていましてネ」

「キョウコはぁ、お祭りが楽しそうだから参加してるんですぅ♪」

 

 

ハーイ! と場違いなテンションを見せているキョウコとは対照的にシャルデンには全く気負いが見られない。本気でそんな夢物語を信じているらしい。

 

『不老不死』

 

古今東西。恐らくは宇宙が生まれてから生物が挑んできた夢。だが誰一人成し遂げたことのない幻想。だが、それを世迷言だと笑い飛ばすことができない理由が自分たちにはある。

 

 

「プロジェクト・エデン……それがエヴァ・セイバーハーゲンが残した計画。それを実現させるためにはどうしても貴方の頭脳が必要なのデスよ、ティアーユ博士」

 

 

――エヴァ・セイバーハーゲン。変身兵器の生みの親であり、ギドのライバルでもある魔人。不可能を可能にするしかねない存在。彼の人が残した計画は三つ。

 

『プロジェクト・イヴ』『プロジェクト・ネメシス』『プロジェクト・テュケ』

 

だが明かされていない四つ目の計画があった。ナノマシンによって不老不死、永遠の存在を生み出すための計画。神の領域に踏み入れんとする挑戦……だったのだが、エヴァにとってはギドとずっと遊ぶための計画であり、そのあまりの中二具合、痛々しさにある日気づいたエヴァ自身によってなかったことにされた黒歴史。もちろん星の使徒も、リトたちもそんなことは知らない。ただ一つ迷惑なことは、黒歴史であったとしてもそれを可能にしかねない計画だったということ。

 

 

「ドクターの代わりに返事を聞かせてもらいマショウ。私たちに協力してくれマスか、博士?」

 

 

シャルデンはそのまま自分たちの後ろにいるティアさんに向かって問いかける。ようやく分かった。これがきっと、ティアさんがずっと隠れて生活していた理由。ティアさんが持つナノマシンの知識を狙う者たちから逃げるために。だがそれもここまで。もう逃げ場はどこにもない。相手がただ者でないことも明らか。それでも

 

 

「お断りします! 私は……命を弄ぶ研究には二度と携わらないと決めているんです!」

 

 

ティアさんは迷うことなく断言する。かつての過ちを繰り返さないという科学者としての、一人の人間としても覚悟。それを前にして自分とイヴの視線が交差する。その紅い瞳だけでもう十分だった。

 

 

「……リト、ティアをお願いします。ここは私だけで十分です」

「分かった、頼んだぞ、イヴ」

「イヴ……」

「心配無用です、ティア。これが終わったらお願いしたいこともありますから。リトと一緒に安全なところに離れていてください。それと、慌ててまた転ばないように」

 

 

自分たちを守るように一歩前に出てるイヴ。その髪は既に変身によって蠢いている。最後の助言だけは本当に身に染みているので急ぎながらも細心の注意を払いながら裏口から外に脱出する。

 

 

「残念デス。できれば穏便に済ませたかったのデスが」

「革命集団が言うセリフではありませんね。貴方たちに個人的に恨みはありませんが、ティアを狙うと言うのなら容赦はしません」

「シャルデンさん、ヤミヤミのことは任せていいですかぁ? 私、あの男の子と遊びたいんです♪」

「またですか……悪い癖ですよ、キョウコさん」

「ふふっ、キョウコはキス魔なもんでぇ♪」

「……前言撤回します。個人的にも貴方には容赦はしません」

 

 

瞬間、弾けるように両者は動き出す。それが星の使徒、道使いと変身兵器の戦いの始まりだった――――

 

 

 

「だ、大丈夫ですかティアさん!? まだ走れますか!?」

「え、ええ……でもイヴは……相手は二人なのに……」

「大丈夫です! 今のイヴは宇宙で一番強いですから!」

 

 

後ろで心配そうにしているティアさんを手を握って引っ張りながらそう告げる。そう、今のイヴは冗談でも何でもなく宇宙で一番強い。きっと対抗できるのは元の姿に戻ったギドか、エヴァぐらいだろう。なので問題は自分達の方。自分たちが足手纏いになることの方がイヴの邪魔になってしまう。

 

 

(よし……ここまでくれば大丈夫か……な……?)

 

 

とりあえず全力疾走であの場から離れて一安心。あとはイヴがあの二人を倒してやってくるのを待つだけと安堵しかけた瞬間、それは現れた。

 

 

長髪に長いロングコートを身に纏った男。その佇まいと空気は明らかに常人離れしている。何よりも目を引くのはその手にある布によってくるまれた長い棒のような物。その眼光に射抜かれ、思わず体が震える。リトは知らなかった。目の前の男が何者なのかを。

 

 

ベルゼー=ロシュフォール 。

 

 

秘密結社(クロノス)の特務部隊、時の番人(クロノナンバーズ)のⅡにして、副隊長である男。

 

 

今、運と時の番人の戦いが始まろうとしていた――――

 

 




作者です。次回作のプロットを優先していて遅くなってしまいましたがヤミルートの第三話を投稿させていただきました。今回登場したキョウコはTo LOVEるのマジカルキョーコではなく、ブラックキャットのキリサキキョウコとなっています。シャルデンについては地球人ではなく宇宙人という設定です。ちなみに強さに関してはTo LOVEるに合わせて宇宙レベルになっています。後二話ほどになる予定ですが原作者が同じ作品のクロスオーバーだと思って楽しんでもらえると嬉しいです。また次回作についてはブラックキャットを書かせてもらおうかと考えています。もし機会があればまたお付き合いくださると嬉しいです。では。

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