俺の相棒は最強の遺伝子ポケモン 作:吾輩がネコである
正解者プレゼントはありません!
「ん、んん~!……………どこだ、ココ?」
真っ暗な洞窟の中。そこで一人の青年が眠りから目覚めた。
上体を起こして辺りを見回すも、真っ暗で何も見えない上に、先程まで背中や手足に感じていたゴツゴツした感触は間違いなく岩石のもの。
青年は腕を組んで首を傾げた。
「何で俺はこんな所で寝そべってたんだ?昨夜、俺は確かに築35年のボロアパートで、新調したばかりのフカフカなオフトゥンに帰宅後即スヤァしたはずなんだが……」
一人でネットスラングを用いながらブツブツと呟く青年。状況によっては通り掛けの子供に「ママー、あの人何言ってるの?」と後ろ指を指され、その親には「シッ!見ちゃいけません!」と腫れ物の様に扱われかねないタダの変人である。
が、身に覚えのない場所に寝そべっていると言う不可解な状況に放り出されている青年からしてみれば、自分の言動はおかしなものでは無いと言う認識であった。
もっとも、真面目な顔してネットスラングを呟くのが一般的なのかどうかと言われれば考えるまでもないのだが。
「ん?」
暗闇に目が段々と慣れてきた時、青年は近くに何らかの気配を感じた。気配のする方に視線を向ければ、確かにそこにはうっすらと人型の影が暗闇の中に立っていた。まだハッキリと視えない為、そこに居るのが一体何者なのかは不明だが、平和な日本の都会での生活に染まりきっていた青年はそこに居るのが人間であると信じて疑わなかった。
「あっ、すいません。ちょっと良いですか?」
青年は明るい声でその人影に声を掛け、そちらに向かって近付く様に歩き出した。この薄気味悪い暗がりに居るのが自分だけでは無かったと、僅かに心細さを感じていた青年が無防備にも安堵した事がうかがい知れた。
だが、冷静に考えてみてほしい。
普通、目が慣れて来たとしても周りの様子が分かりにくい様な暗い洞窟の中に、人間が明かりの一つすら持たずに居るものなのだろうか?
一般的に考えれば答えは否である。無論、例外と言うものは存在する。十人中一人位は明かりなんて要らないとか何とか言ってしまうかもしれない。だが、それはつまり普通の相手ではない可能性が高い事を意味している。そんな相手に不用意に近づくのは危機管理と観点から見て、無用心にも程があると言えた。
しかし青年は安堵しきっているのかそんな事に気が付く事もなく、影に向かってズンズン歩を進めていく。
そして、その影との距離が2メートルを切った所で青年は立ち止まった。その頃になると目が暗闇に適応して、ある程度ではあるが周りの様子が判る様になっていた。
「……えっ?」
そんな青年が人影の容姿をハッキリと捉え、存在を理解した瞬間、思考が停止した。辛うじて口から漏れた短い言葉は、無意識に発したものだったのかもしれない。
青年の目の前に佇む影は、青年よりも少しばかり大きかった。体長はおよそ2メートル程度。影から察した通り、相手は人型だった。だが、人間と呼ぶには少々奇怪な姿をしている。頭部には頭髪の類いは生えておらず、動物の耳の様な一対の突起物が生えており、首は頭部を支えるには少々細すぎる。その代わりというか、後頭部から背中に掛けて一本の管のような物が生えており、頭部を支えているようにも見える。
また四肢は細長く、臀部からは尻尾と思しき器官が生えているのだ。
まず間違いなく、人間ではない。
『……………』
青年の目の前に佇む謎の生命体Xは、静かに青年へと視線を向ける。その瞬間、青年は何とも言い難いプレッシャーを全身に感じた。そして、心というか本能が青年の理性を呼び戻して警鐘を鳴らした。
危険だ、逃げろ―――と。
しかし、青年は動かなかった。いや、動けなかったと言うべきなのだろうか?逃げようと思っても、足が全く動かなかったのだ。
それだけではない。青年は少し、というかかなり混乱していた。目の前に佇むXが何なのか。青年はそれを知っていた。だが青年の中にある常識と言う概念がそれを“有り得ない”と否定する。
何故ならば、青年の知っているソレはゲームやアニメと言った二次元にしか存在しない人間の想像によって生み出された架空の存在なのだから。
では、目の前のアレは何だ?
理解不能な現状に思考回路がショート寸前な青年。そんな青年をよそに、謎の生命体Xが動きを見せた。
生命体Xはその細い腕を上げて青年に向ける。すると、青年の身体の自由が利かなくなった。
「……っ!?」
御丁寧に口までもが動けなくされている。鼻が塞がれている訳ではない為、何とか呼吸は出来る。少なくとも窒息させるつもりはない様だ。
呼吸が出来る事に僅かばかりだが安堵した青年だが、生命体Xの行動はそれだけではなかった。青年に向けていた手を、少し上に向ける。すると、青年の体が地面から離れて宙に浮かび上がった。
「!!」
青年は目を見開いて驚く。そんな青年の様子に対して微塵も介さずに生命体Xは腕を動かす。それに合わせて青年の体も宙を動き、生命体Xを中心に120度程動いた所で停まった。
『……立ち去りなさい』
「……!」
青年の脳内にそんな声が響く。その声は女性的なもので、どこか柔和な印象を青年に抱かせた。だが次の瞬間、青年に向けられていた生命体Xの掌から青白い球体が生み出された。
青年が、“あ、この展開はマズイ”と思ったが身動きが取れない以上、対処の仕様がなかった。
バシュンッ!と言う音と共に放たれた球弾は、青年の腹部に直撃した。しかも当たる瞬間に肉体の拘束が解除されたらしく、ホンの一瞬だが浮遊感を感じ、直後に腹部を強烈な衝撃が襲ったのだ。
「ゴハァッ?!」
腹から思い切り息を吐き出す。それだけに留まらず、空中に浮いた状態で強烈な一撃を喰らった青年の身体は慣性に法則よって後方へと吹き飛ばされる。
腹部の衝撃が強すぎたせいか、青年の意識が遠のき始めた。
意識が完全にブラックアウトする瞬間、青年の目に映ったのは生命体X―――いや、“ミュウツー”の何処と無く寂しそうな横顔であった。
立ち去れと言いつつ攻撃による強制退去。
と言う訳で前書きの正解は「ぶっ飛ばされた」でした。
実際の所、目と目があった瞬間じゃ無かったのはご愛嬌。