ここは桜屋敷。
無事フィリア女学院を卒業した桜小路ルナと色々な出来事を乗り越えた小倉朝日……改め大蔵遊星の二人は共に幸せに暮らしていた。
ある日ルナがアトリエでデザインを行おうとしていたとき、奇妙なものを見つけた。
「遊星、ちょっと来てくれ」
ルナが遊星を呼んでから、すぐに遊星はアトリエにやってきた。
「遊星、これを……おや、今は朝日なのか」
「はいっ。明日はお兄様や大蔵の皆さんがいらっしゃいますから、その準備を。家事をするときはやはり朝日のほうが落ち着くので。ルナ様、もしかして遊星に用事だったでしょうか」
「いや、朝日で構わない。……にしても朝日はいつ見ても可愛いな」
「ありがとうございます。お優しいルナ様。……ところで、これは一体なんですか?」
「ああ、旦那の可愛さに見惚れてすっかり忘れていた。実は私にもわからないんだ。気がつけばここにあった。いや、現れたと言うべきか」
「私はいつもお嫁さんの美しさに見惚れていますよ。……ですが、これは鏡でしょうか? ゲートのようにも見えますが」
「私には鏡に見えるが……」
朝日が鏡に触れようとするのが、ルナの目に入った。
「朝日。そんな怪しいものに触るんじゃない」
だが、その忠告は遅かった。ルナが言葉を言い終えたころには朝日は鏡へと吸い込まれていった。
そして朝日は鏡とともに地球からその姿を消した。
「朝日? どこいったんだ!? 朝日ー!」
――――。
私が気がついたとき最初に目に入ったのは抜けるような青空だった。
それから私の顔をまじまじと覗き込む女の子が一人。
黒いマントの下に、白いブラウス、グレーのプリーツスカウトといった格好でなんだかハリーポッターを思い出す。
そのような格好をしているにも関わらずコスプレのような違和感は全くない。
それは彼女がガイジンさんでしかも顔がとびきり可愛いからだろうか?
桃色がかったブロンドの髪、ルナ様ほどではないにしても透き通るような白い肌。まるで人形のようだ。
けれど、もしコスプレじゃないのなら一体なんなのだろうか。
制服?
だとしたらどこのだろう? ホグワーツ?
それとも宗教?
そんなことを考えていると私は自分が仰向けに地面に寝転んでいるらしいことに気がついた。
桜小路家のメイドがいつまでもこんな格好でいるわけにはいかないので、急いで立ち上がって辺りを見回すと、自分をまじまじと見ていた少女と同じ服装をした子がたくさんいた。
そして景色を見ると、豊かな草原と石造りの大きな城が見えた。
見たことのない風景のはずなのにどこか故郷であるマンチェスターを思い出す。
「あんた誰?」
「私ですか……? 私は大……小倉朝日といいます」
ピンクの髪をした少女に尋ねられ痛む頭をおさえながら答えた。いきなりだったので本名を言いそうになったが、今の自分の格好を思い出して女性として生活するときの名前を名乗る。
「平民? メイド?」
平民……ということは恐らくこの少女は身分の高い女の子なのだろう。
ただ、日本では日常生活で使わない言葉だ。せいぜいトランプゲームのときぐらいだろう。
ということはここは外国ということなのだろうか? でも、使っている言語は日本語だし……。
「あ、あの、ここは一体ど……」
とりあえず場所を尋ねようとしたとき、私の声は誰かに遮られた。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民のメイドなんか呼び出してどうするの?」
「その辺から拾ってきたんじゃないか? この学院にはメイドはいっぱいいるもんなー! ……にしても特別に可愛いけど」
「この学院出身者にはいないな。この俺があのような美人を忘れるはずがない。とりあえずヴァリエールに交渉して俺の妾に……」
私の声は誰かの発言と大勢の笑い声によってかき消された。……というか恐ろしい発言が聞こえたような。
「ちょ、ちょっと間違っただけよ」
ピンクの女の子が鈴のように上品な声で怒鳴った。
「いつも間違いじゃないか! さすがはゼロのルイズだ!」
誰かがそう言うと、また笑い声が起きる。
会話から察するにピンクの女の子は、どうやらルイズというらしい。
「ミスタ・コルベール!」
ルイズと呼ばれた女の子が笑い声を無視するように頭皮の寂しい中年の男性に怒鳴った。
ミスタ・コルベールと呼ばれた男性は大きな木の杖を持ち、真っ黒なローブに身を包んでいる。
まるで本当に映画にでてくる魔法使いのようだ。
「なんだね、ミス・ヴァリエール」
「召還をやり直させてください!」
召還? なんでしょうか、ネトゲの話かな? と私は首を傾げる。
目線を先ほどから会話をしている二人に戻すと、ミスタ・コルベールは首を横に振っていた。
「それはできないよ。使い魔で、今後の属性を固定し、それにより専門課程に進むんだ。そしてなにより使い魔召還は神聖な儀式だからね。好む好まざるにかかわらず、彼女を使い魔にするしかない」
「でも、平民をそれもメイドを使い魔にするなんて聞いたことがありません! だいたいメイドの属性ってなんですか! どの系統にも当てはまりません!」
「メイドは家事が得意だからな。火系統じゃないのか? 火事だけに」
今度の野次では誰も笑わなかった。
ミスタ・コルベールはコホンと咳払いをすると、再び彼女に説得の言葉を続けた。
「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認めらない。彼女はただの平民かも知れない。人を使い魔にした例なんて聞いたことがないが、使い魔召還は先ほども言ったが神聖なものだそのルールを変えることは許されない彼女には君の使い魔になってもらわなくてはな。……正直言って羨ましいよ。あんな美女を使い魔にできるなんて」
「ミスタ・コルベール?」
「失礼。つい本音が。……さて、では、儀式を続けなさい」
「彼女とですか?」
「そうだ。何か問題が?」
「あの、わたしファーストキスが……」
「ん?」
「いえ、何も……」
彼女はため息を吐くと、私の顔を困ったように見つめた。
いったい私は何をされるんでしょうか……。
「ねえ」
「はい」
「あんた、感謝しなさいよね。ただのメイドが貴族にこんなことされるなんて、普通は妾にされることでもなければ一生ないんだから。……ったく使い魔とはいえファーストキスを同性とするなんて」
「あの、こんなこととは……」
私の言葉を無視して彼女は手に持った杖を振って呪文らしきものを唱えはじめた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
そして杖を私の額にすっと置く。
それから……唇と唇が重なった。
「な、なにを」
「いいからじっとしてなさい」
「あ、あの、私には心に決めた大切な人がいまして……」
「ああもう、じっとしてなさい!」
そういって私は彼女に動けないように強引に抱きしめられる。
ああ……。
申し訳ございません。ルナ様。
私、朝日はルナ様以外の女性に体を許してしまいました。ですが、事故なのです。ルナ様神様仏様。信じてください。
心の中でルナ様と神様と仏様に懺悔する。
「終わりました」
数秒だったはずなのに何時間も感じられた時間はどうやら終わったらしい。
彼女は顔を真っ赤にしている。もちろん私の顔も……。
「上手くいったようだね。よかった」
ミスタ・コルベールが嬉しそうに言った。彼女もほっとしているのか顔が少し綻んでいる。
その様子を見ていたときだった。左手に激痛が走ったのは。
「……っ! 熱い。熱いです……っ!」
そんな私を見て彼女は苛立たしそうな、でも少し同情も含んでいるような声で言った。
「すぐに終わるわ。使い魔のルーンが刻まれているだけだから」
「私は一体どうなるのでしょうか……?」
「さあ? 使い魔になるのだけは確かじゃない?」
「はえ……」
痛みと熱さが終わり、私は膝をついた。
すると、私にミスタ・コルベールが近寄ってきて、私の左手の甲を確認した。
「ふむ……珍しいルーンだな。しかしどこかで見たような……」
ミスタ・コルベールは少し考えてから、他の生徒の方へと体を向きなおし、儀式の終わりを告げた。
そして、口でなにかを呟くと、宙に浮いた。
私は開いた口が塞がらなかった。
な、なぜ浮いているのでしょうか?
しかし浮いているのはミスタ・コルベールだけではなかった。
他の生徒っぽい方々も、続々と宙に浮いていく。
そして皆城へと向かっていく。
「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」
「ゼロのルイズはコモン・マジックすら使えないんだもんなあ!」
「その平民よかったらぼくに……ああ、引っ張らないでくれたまえモンモランシ!」
口々に言いたい放題言って飛び去っていく。
残されたのはルイズと呼ばれた女の子とわたしだけになった。
彼女はため息をついてから言った。
「で、あんた、なに」
「え、えっと、先ほど述べましたように小倉朝日と申します。生まれはマンチェスター。桜小路家に使えるメイドでございます」
「変な名前。どこそこ? その家知らない」
「では、日本、大蔵家という言葉に聞き覚えは……?」
「ないわ」
「あの、ではここは一体どこなのでしょうか?」
「はぁ……。あんた田舎もの? この国はトリステイン。それから今いるのはトリステイン魔法学院」
全く聞き覚えがなかった。
ああ、これから私はどうなってしまうのでしょうか。ルナ様……。
地の文は次からはもっと自然になるように努力します。
またキャラの一人称やここがおかしいなどの指摘は大歓迎です。
心配事は原作から文章を大幅にコピーしていたりの部分ですね。
ひどすぎるなどの指摘があった場合は書き直しますね。
指摘があった場合、原作のギーシュ戦ぐらいからある程度オリ展開になっていく予定なので、そこからはじめるのもありかもしれません。
最後になりますが読んでいただきありがとうございました。