Fate/kaliya 正義の味方と桜の味方【完結】   作:faker00

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累計入りとかまじですか??こんなん書くしかないですやん


第11話 集いし英傑

「あーあ、だから"1人で"行くっつったんだよ。別に俺はアサシンの存在が露見しようがそんなもんどうでもいいが……こっちが方針に従ってるのに対してこれはねえんじゃねえか……なあ、時臣」

 

 召喚から今日に至るまで、ランサーは時折感じた違和感から時臣の戦士としての心構えについてあまり上手くないものと結論づけ、それに附随する形で魔術師として順風に歩んできた道からくる楽観的かつ主観的――ランサーに言わせればヌルいという言葉がしっくりくる――戦況判断に先行き不安を感じ、機を見ては釘を刺したりもしてきた。

 しかし、それはあくまでも時臣に見切りをつけたとかいうものではなく、出来る限り彼を聖杯戦争に相応しい側、ランサー達戦士の側へ引っ張り上げるための導きという方が正しい。

 その為、呆れたり、忠告の為に怒気を発した事はあれど、クー・フーリンという一人の人間としての怒りをぶつけたりすることはなかった――そう、今までは

 

「申し訳ありません、クー・フーリン殿。いくら貴方といえキャスターの工房に正面から乗り込むのは些か危険があるかと思い……」

 

 感じたことのない威圧感。本来この部屋の主であるはずの時臣は礼儀ではなく、心からの恐怖に近い感情で頭を下げていた。

 身体中に止まらぬ冷や汗が溢れる。今すぐにでもこの場を離れたい衝動を抑え付け、なんとか平静を保っていられるのは家訓である"優雅"が今でも心に防波堤をつくっているから、その一点に尽きる。

 

「だから問題はそこじゃねえっての。いいか、確かにお前は魔術師としちゃ確かに上等だよ、お前から流れてくる魔力だけでもそれは分かる……けどな、はっきり言うが戦士としちゃ二流以下だ」

 

「――――」

 

 なんたる屈辱。時臣は悔しさからランサーに見えないよう唇をギュッと結ぶ。

 彼の言いぶんが正しいかどうかは別として、今回の発端は自らにあるのだ。そして、その行動が軽率であったと認めざるを得ない、この叱責も受け入れなければならないことを本能が理解していることが何より腹立たしい。

 今まで自らを支えてきた努力・克己・自律、そして何より誇りでさえも今この場では無意味と悟る。もとより、クー・フーリンという大英雄は、時臣ではどうあがいても届かぬ境地に踏み込んだ戦士なのだから。

 

「これはお前らお得意の研鑽じゃなく、命のやり取りだ。当然、最初っから勝つ図を思い描いて、その通りに進めたら万事首尾良く進む、なんて都合の良いこともまずねえ。

 だからな、組んでる以上は互いに背を預けられる程度には互いを理解してなきゃなんも始まらねえわけよ」

 

 しかし、ランサーからして見ればこれでもまだ理性的に抑えて時臣に配慮している方である。なるべく手の内を晒したくないという時臣の方針を全面的に呑み、宝具はおろかルーンすらほぼ使用せずここまで来た。

 勝つ為に最善を尽くすのなら、些細なこと程度でマスターと常に衝突するのことに意義などありはしないのだから――

 

「それを拒むと言うのなら……まあそれも良いだろう。だがそん時は俺もお前の指図は受けねえ、俺の好きにさせてもらう。その方がよっぽど勝てる――ああ、令呪を使いたきゃ勝手に使え。一応お前は俺のマスターだ。権利は好きに使うがいいさ。

 その紋様程度でこのクー・フーリンを御しきり、加えて他のサーヴァントを打倒できる自信があるのならの話だけどな……!」

 

 これは警告だ。ランサーは最後言葉に力を入れてにドスを利かせる。確かに猶予はあるがその言葉自体は本気も本気、こけ脅しやはったりのつもりはないと。

 

「肝に銘じます……」

 

 時臣もそれを汲み取れないほど愚かでは無い。一歩下がると改めて一礼する。

 このクー・フーリンというサーヴァントは本気だ。次に彼の意にそぐわないことを"単独で"実行したならば、その時はこの関係に決定的な亀裂が入ることを免れることはできない。

 彼は置かれた現状の想像以上の危うさを即座に理解した。

 

「……あんまりがっかりさせないでくれや――ああ、そうだ」

 

「なんでしょうか?」

 

 どう解釈されたかまでは分からないが、自分の言葉の真意自体が伝わったならこれ以上言うことなどありはしない。

 ランサーは今しがたの光景は嘘だったのではないかと思うほどあっさり引っ込むと、扉へと歩を進めドアノブに手を掛け……1つ報告しておくことがあったことを思い出し立ち止まった。 

 

「あの赤いの、あいつのクラスはアーチャーだわ。あいつが何言おうが、んなもん信じる気にはなんねえけどマスターに鎌かけたら案の定だったし間違いねえ……そこそこ肝は座ってるがまだまだ若え」

 

 その時のやり取りを思い出しランサーは苦笑した。

 あの男……雁夜と呼ばれていた青年は、面白いくらいあっさりと誘導尋問に引っかかってくれた。

 アーチャーのマスター、と声を掛けたのにあれだけ素直に動かれてはもう確定である。

 かなりの極限状態で錯乱していなかっただけまだ常人としてはいい根性をしていると思うが、あれは頂けない。

 あの策士のことだからもう伝えているだろうが、万が一伝えていないなんてことがあれば、彼はまだ自分が己のサーヴァントのクラスを実質的に宣言してしまったという事実に気づいていすらいないだろう。

 

「アーチャー……やはりそうでしたか。因みにマスターと言うのは?」

 

「雁夜、って言ってたな」

 

「間桐……雁夜……」

 

「ん? 知り合いなのか?……意外だな、お前とあいつは接点がありそうな感じには見えなかったが」

 

「貴方の言う通り私と彼では人間性が大きく異なります。とても友人やそういった関係になれるものではない……しかしこの冬木に根を降ろす魔術師の家系は少なく、その家系のものとは例え本意でなかろうと関係を持つものなのです」

 

 時臣は雁夜に良い感情を抱いていない。それどころか、端的に言えば軽蔑さえしている。

 魔術師としての秘跡を紡げる立場を自ら放り投げ凡庸に身を落とした挙句、未練から舞い戻った落伍者。彼が雁夜に抱くのはその程度だ――桜を間桐が受け入れるきっかけの大元となったと解釈すればその点にだけは感謝すべきかもしれないという皮肉めいた感情も同居しているにはしていたが……根本的には前者、許せないと置き換えても問題ないだろう。 

 その表れか、時臣の言葉には普段ランサーに接する時には絶対に見せることのない、侮蔑したものに対して吐き捨てるような冷たさが入り混じっていた。

 

「……なるほどね。価値観の違いってやつか」

 

「は――?」

 

「なんでもねえよ。じゃな、あと俺今夜は空けるから気にしないでくれ」

 

 後ろから何か呼び止められたような気もするが、まあおいといて良いだろう。

 深く考える事なくランサーは部屋を出る。今夜の催事は彼にとっても中々に興が乗りそうであり、言いたい事を言って時臣からも別段深い話題も出てこなさそうな以上、その事について思いを馳せる方が余程重要であった。

 

 

 

「師はまだ何か言いたそうであったが、良いのか? ランサー」

 

「あん?」

 

 そんなランサーを呼び止める沈み込むような深い声。

 首を振ってみれば、いつの間にやら綺礼がすぐ横の壁に寄り掛かり腕を組みながら、いつもの様に無機質な視線をランサーに向けていた。

 

「問題ねえよ。話す事は話した、後はあいつ次第さ……お前は?」

 

「今後の対応をな、お前も知っての通りアサシンはまだいる。ある意味これはチャンスだ、アサシンが脱落したと他の連中が思い込めばその分戦術も広がるというものだ」

 

「またつまんねえことやってんな」

 

 ランサーはこれみよがしに両手を上げ肩をすくめた。

 綺礼は彼から見ても珍しいタイプの人間だった。それも悪い意味で。征服王の様に常に身に余るほどの大望に情熱を燃やしているわけではない。セイバーのように自らに誇りを持っているわけでもない。ただ、ひたすら空虚に佇むのみ。そんな綺礼とは時臣以上に合わないだろう。そんな風にも思っている。

 

「好きに言うが良い。私の目的は師を勝たせることだ」

 

「文句なんかねえさ。ま、お前ももう少し自分のやりたいようにやれよとは思うけどな」

 

「なに?」

 

 だから、それは単なる愚痴のようなものだった。

 

「お前みたいなのは見てて痛々しいって言ったんだ。そんな生き方しててもつまんねえだろ。なんかねえのか? 娯楽とか、やってみたいこととか。別段意義があろうがなかろうがそんなもんはどうでも良い。自然な息抜きくらいなきゃ苦しいだろ」

 

「――――」

 

 綺礼は答えない。もっともランサーがそれを気に留めるようなこともない。最初からまともな答えが来ることなど期待してもいないのだから。

 

「余計なこと言ったか……じゃあな」

 

 ランサーが姿を消す。綺礼は、その虚空をしばらくの間見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

「……本当にすまない、アーチャー」

 

「気にすることはない。いずれは明らかになることだ……それに、まだ策はある」

 

 陽が落ちた。と言うことはいよいよ英霊達に寄る次元違いの酒盛りが始まるということ。

 雁夜の気持ちは重たい。だがそれはその壮大さを感じてのものではない。つい今朝の自らの失策を恥じてのものだ。

 初戦においてアーチャーが凄まじい立ち回りを見せ隠匿したクラス、それを結果的にとは言え露見させてしまった事実を知り、雁夜は頭を抱えていた。

 

 

 

「……っと、気をつけてくれたまえ運転手。あまり形を崩したくないものも入っているのでな」

 

「タクシーの席の隣でラフな格好した英雄が上機嫌でスーパーの袋大量に抱えてるのも確かに頭痛くなるけどさ……」

 

 が、そんな大失態をかましたにも関わらずアーチャーはすこぶる機嫌が良い。今だって明らかにだるそうに謝罪する運転手に対しての対応がやたらにこやかだ。同じ様な事を雁夜がすればそうはいくまい。では一体なぜ? 雁夜はアーチャーの思惑を遂に断言できる所まで掴んだ。

 昼の行動、そしてこの表情を見れば一目瞭然である。

 

 この弓兵、どうやら酒の席の料理を全て自らの手で作るつもりらしい。

 

「服用意するのもなかなかかかったしな」

 

 黒の幅がタイトなジーンズにこれまた黒のワイシャツ――完全に同色だと明らかに不自然、加えてその長身も相まって無駄な注目を集めることうけあいなので何とか濃淡をつけるよう説得した――あまり詳しくない雁夜から見てもセンスがあるとは思えない服装をスタイルで誤魔化すアーチャー

 

 その苦労を思い出して無意識に雁夜の眉間に皺が寄ったのは、別に不思議でも何でもない。

 

「どうした雁夜……霊体化の事を言っているならさっきも言っただろう? それともこの食材をすべて君一人で持っていくというのなら話は別だが」

 

「違う。お前の商店街に対する馴染みっぷりが自然過ぎで気持ち悪かったってだけだ。お前ほんとどこの英霊だよ? 日本の値切り文化マスターしてる英雄とか全く以って分からん」

 

「なに、そう大したことはない。あの者達が良い人柄をしていたというだけだ」

 

「……」

 

 

 商店街についてからは独擅場だった――雁夜はそれを思い出して更に頭が痛くなる――戦闘時と変わらないほど鋭い目付きでキビキビと店を回るアーチャーは真剣そのもの。無駄な動き1つせずに商品の情報を叩き込み、高速で比較検討すると狙いの店へとまっしぐら。店主を、店を、商品を、絶妙なタイミングで褒めおだて、いつの間にか望む方向へ持っていく手際を雁夜はただ目を丸くして見ていることしか出来なかった。

 とりあえず分かったことは、生前のアーチャーはいわゆる買い物上手だったのだろうという全く以ってどうでも良い情報のみ。そして

 

「雁夜、君も来たまえ! この鰹は実に活きが良い!!」

 

 いつものポーカーフェイスが何処かへ飛んでいくほど、この男自身それを楽しむ性だと言うことだ。

 

 

「けど……これはさすがに買い過ぎなんじゃ……」

 

「君は知らないだろうが……今回の催しにはとんでもない大食いがいてね。その者を相手にするとなればこれでもまだ心許ないくらいだ」

 

「あのでかい奴か? それならまあ分からないこともないけど」

 

 何やら遠い目をするアーチャーに雁夜は疑問符を浮かべながらも取り敢えず納得する。

 

「まあ……行けばわかるさ。君も気を抜きすぎるなよ? あの征服王の事だ。なにも考えていないように見えて実はしっかりとした目的があって我々を召集したと見ていい」

 

「目的って……アインツベルンと組んで俺達を襲って来るとかか?」

 

「違う。上手く言えないが……そうだな、もっと明快かつ色々バカらしくなるほど清々しいものだと私は考えている」

 

 それだけ言うとアーチャーは窓の外から見える海を感慨深げに眺める。

 特に話すこともないだろう、そう判断した雁夜も膝の上に乗っていたビニールをアーチャーとの間に起き、夕焼けが照らす新都を目を細めながら流し見る。

 

 郊外の森までは、後1時間ほどだろう。

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

「結界が正面から破られるなんて……!」

 

「アイリスフィール、急くのは分かりますが焦らないように」

 

 アインツベルンの城は緊迫感に満ちていた。時刻は夜の8時過ぎ。本来なら敵を求めて出払っているか、それとも休息を決め込んで安息の時間を過ごしているか、どちらにせよ城は静寂に満ちている時間帯だ。

 そんな中をアイリスフィールとセイバーは長く続く通路を小走りに駆ける。

 森全体に張った結界を正面から根こそぎ剥ぎ取るような強引な侵入、これがサーヴァント以外のなんだというのか?

 

「……!!」

 

「まさか!!」

 

 唐突に、地雷が炸裂したかのような爆発音とともに城全体が揺れた。セイバーは天井から降ってくる煤を払い除け、隣で同じ様にしているアイリスフィールを見た。彼女の顔は真っ青になっている。

 

「アイリスフィール……これは……」

 

「切嗣が仕掛けてたC4爆弾……敵はもう城の中まで来てるわ!」

 

 

 

 

 

 

 

「おうセイバー! 何だ何だ、手荒い歓迎をしてくれよって」

 

「――」

 

「――」

 

 数十秒後、彼女ら2人は言葉を失った。

 まずその相手の格好。ぴちぴちのTシャツに身を包み酒樽を担ぐその姿はどこからどう見ても戦いに臨むそれでは無い。その後ろでスーパーの袋を大量持つ黒ずくめはもう論外だ。

 次に人数。豪快に笑うライダー……これはまあ予想通りだ。ここまで正面切ってくる相手は彼くらいなものだろう。だがなぜ、まるで示し合わせたように2人もサーヴァントがくっついて来ているのか?

 奇襲か? それとも別の何かか? アイリスフィール、セイバー、どちらもまともな答えを導き出せず、その結果としてただ固まる。

 そして、そんな2人を尻目にライダーはあたりをぐるっと見渡してから続けた。

 

「ここじゃあ湿っぽいな……おい、もっと良い所に案内せんか、こんなところではせっかくの酒まで不味くなる」

 

 その言葉の意味を、突然の訪問を受けた麗人2人が理解するまでにまた数秒の時間を要したのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




結局飲み始めない。
ちょっとだけエミヤさんサイドが柔らかいのは今後暗くなるから今のうちにと言うことで……こんなことやる余裕もそのうちなくなると思われますので遊び心です。

次回、聖杯問答いよいよスタートです。

ではでは
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