Fate/kaliya 正義の味方と桜の味方【完結】   作:faker00

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なんかお気に入り数とかとんでもないことになってる……この流れに乗って更新してみよう。


第4話 アーチャーの読み

「まさか……今の戦闘だけでセイバーの真名を暴いたというの……!? そんなこと出来るわけが……」

 

 セイバー、ランサー、そして謎のサーヴァント、繰り広げられた凄まじい戦いに指示やサポートをすることはおろか、呼吸をするのさえも忘れそうになっていたアイリスフィールが口を開いたのは随分と久しぶりのことだった。

 彼女に浮かぶ畏怖。セイバーと互角の戦いを繰り広げる相手そのものに対するものではない。これは聖杯戦争だ。いかに自らのサーヴァントに自信があろうともそれを凌駕する相手が現れたとしても不思議はなく、そしてそれを補うのが自分達の役目だとアイリスフィールとて理解しているからだ。

 だが、いま目前で起こった出来事はその覚悟、想定すら上回っていた。武器が視えないどころか性別すら伝承と別物になっている、ある意味歴史がその正体を覆い隠していると言っても過言ではないセイバーの真名が早々に看破される異常事態。

 もう何が起こっても不思議はない。飄々とした態度を崩さない赤いサーヴァントにアイリスフィールは、何か自分の立っている場所が突然消え去り、そして落ちていくような不安感を覚えていた。

 

 

 

『アイリ、聞こえるかい、アイリ? 聞こえたら小声で返事してくれ』

 

「切嗣の声……? これね……!」

 

 そんなアイリスフィールを現実に引き戻したのは、別行動をとっているはずの切嗣の声だった。

 

 聞こえるはずのない声にあたりをキョロキョロと見回すアイリスフィールだが、別れる前切嗣に耳につけておくように頼まれていた何か――当時の技術では若干オーパーツ気味とも言える小型ピンマイク――がその発信元だと気付き、手を口にあてて返事を返した。

 

『落ち着いて聞いてくれ。アイリ、今すぐにセイバーを退かせるんだ。あの赤いのは確実にセイバーについて何か知っている。加えてセイバーがアーサー王だなんて事実がこんな公然の監視下で他の陣営にバレてしまえば――』

 

「切嗣!?」

 

 突如として切嗣の声がザーっというノイズに呑み込まれる。

 現代機器に対する知識に乏しいアイリスフィールは焦ってマイクに手を伸ばした拍子に落としていた視線を上げ

 

「え――」

 

 ようやく事態が急展開していることに気が付いた。そして何となく切嗣の声が聞こえなくなった理由を理解する。

 いつの間にか三者の中央にどす黒い魔力の渦がその姿を現していた。そして誰もがその突然の変化に顔を引き攣らせ、各々が武具を構えている。そうなれば結論は簡単に出るだろう。

 

「まさか――4人目のサーヴァント!?」

 

 あれだけの魔力、人間に起こせるわけがないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「アーサー……ペンドラゴン……?」

 

 元来ランサーは敵の素性などどうでも良いと思っている人間だ。理由は単純かつ明快。強いか弱いかにそれは関係ないからだ。

 勿論名のある方が当たりの率としては高いだろう。しかし100%そうとは限らないし、逆に名も無い戦士が彼を満足されるほど強いということもままある。やってみなければわからないのだ。

 だが、そんな彼でも流石にこの名前には面食らうというか強い衝撃を受けざるをえなかった。ブリテンのアーサー王と言えば人類史にその名を大きく残す大英雄、そしてその武具、エクスカリバーに至っては恐らく世界の歴史上でももっとも有名な剣かもしれない。

 そんな英雄と切り結ぶというのはランサーにとってどれだけの至福であることか。

 

「まじかよ。"あの"アーサー王が女とはな……いや、それはまあいいわ。あれだけのもん見せられたら否定のしようがねえ」

 

 最初は出任せだと思った。あわよくば動揺を誘うためのつまらない牽制。これだけ楽しい戦いの最中にそんなものを捩じ込んできた赤いサーヴァントには怒りすら覚えたものだ。 

 だが実際は違ったのだ。よくよく考えてみれば自分の真名まで言い当てられている。もちろん、ゲイボルグを開放こそしていないものの普通に使用している時点でセイバーに比べればバレる可能性は遥かに大きかったとはいえ、この僅かな相対でバレるとは少し予想外のことである。

 そして何よりも、目に見えて驚いているセイバー自身がその言葉の真偽を雄弁に語っている。

 

 

 

 

「てめえ……何者だ!」

 

「私か? 先程も言っただろう。凡百以下の無名だが」

 

「ふざけるな!」

 

 こうなると1番になんとかしなければならないのはこちらの方だ。ランサーは最大級の敵意をもって赤いサーヴァントに向き直る。

 アーサー王を言い当てられる時点でこの男の出自はある程度予想がつく、と言うよりも1つしか思い付かない。しかしそれでは何故これだけの腕を持っていながらあのセイバーが顔すら知らないのか、そして自分の真名にはどうやって行き着いたのか、説明がつかない。

 完全に謎に包まれた未知、アーサー王よりも優先して潰さなければ今後不味くなりかねない……ランサーの本能がそう言っていた。

 

「嘘などついていないさ。なら私の正体を予想してみろ。どの時代、どの英雄にも私に該当する者など見つからないと思うがね」

 

「野郎……!」

 

 溢れ出るような自信、それを見てランサーは主導権を握られたことを察した。

 この男は自らのカードを1枚も切ってはいない。実力も"恐らく"一番下だ。だと言うのに、今この場の中心にいるのはこいつ。セイバーは勿論のことランサー自身も次にこの男が何をするのか注視せざるを得ない立場に置かれている。それがどれだけ歯痒いことか。

 

 

 

「ち……」

 

 それでも飛び込むしかあるまい。ランサーは意を決した。

 こいつがどれだけの手札を隠し持っているか知らないが、今までの戦いが手をぬいたものだとも到底思えない。自身の宝具を持ってすればその手札を切らせることなく屠る事も不可能ではないと。未知への警戒よりも自らが目にしたものを信じようと腹をくくり――

 

「なんだと――!?」

 

 その動きを止めざるを得なくなった。

 

「おい……これもてめえの仕業か」

 

「私にこんなことはできんさ……この状況で私に槍を向けるのは間違っていると思うが?」

 

 双剣を握るサーヴァントから余裕の空気が消え、真剣な様子で警戒をほとんどそちらへ向けていることからもその言葉が嘘でないのはよく分かった。

 突如として巻き起こった真っ黒な魔力の渦。今や一番近くにある倉庫のトタン屋根を吹き飛ばさん勢いの風を発生させるそれは驚異的な密度を誇り、間を挟んで向こうにいるはずのセイバーの姿はとう捉えることも出来ない。

 

 

 

「面倒ごとは好きじゃねえんだけどな……!!」

 

 宝具か、魔術か、それとも他の何かか、全く予想のつかないものを放置して置けるほどランサーはお気楽ではない。

 赤いサーヴァントから目を離し、どんな変化にも対応出来るように神経を研ぎ澄ます。

 

「おい……こりゃあまさか……」

 

 そして、その勘の良さ故に、真っ先にそれが何の前兆なのかに気がついた。

 

「4人目のサーヴァントだと!? ――ぐっ……」

 

 渦が弾ける。規則性を失った魔力はその威力を保ったまま四方八方へと吹き飛び、結果として全てを切り裂く刃となる。

 無論その程度の単純なものにやられるランサーではない。その尽くを驚異的な槍捌きで持って消し飛ばし、その身には傷一つ付けはしない。

 

 

 

 

 

 

「なるほど。とりあえずあのいけすかねえ野郎がバーサーカーって線はなくなったか。まあ最初から無かったようなもんだが」

 

 "そいつ"を見てランサーは呟いた。

 爆発で周りの建物はその殆どが半壊し、整備されていたコンクリートの大地は抉れ剥がれ、至る所穴だらけと見るも悲惨な画が広がる。

 そんな廃墟と呼ぶに相応しい場所の中心に立つ姿がここまで似合う者がバーサーカー以外の何者であるはずもない。そこに理論も何もありはしない。だがそれは絶対の確信だった。

 

 

 

 

 

「■■■■■―――――――!!!!」

 

 狂獣が天に吼えた。

 その全貌はまがまがしい黒の魔力に覆われて細かいところまで見ることが出来ないが、紅く燃える双眸から隠しきれない狂気が発散される。

 確認出来るのは、細身だが正常な人間としてみれば相当高い身長であること、髪が長髪であること、そして――何か雷の様なものを身体全体に纏っていること。

 この場で誰もその正体に気づくことはないこの狂戦士の正体は、近代において最大にして至高の自然への挑戦を成し遂げた偉人、ニコラ・テスラその人である。

 

 

 

 

「アイリスフィール、離れて……!」

 

 突如として現れた新手の標的が自分だと理解したセイバーの行動は迅速だったと言っていい。

 アイリスフィールを庇うためにその前に立ちはだかっていたのだが、そう1つ声をかけるとまた同じように彼女を庇うためにまた全力で離れる。

 当然アクセル全開で少しも手を抜いてはいない。それなのに――

 

「はや――!?」

 

 目前にそいつが現れたのはセイバーの予想よりも遥かに早かった。

 

「■■■―――!!」

 

「雷だと!?」

 

 振り上げられた拳を受け止める。その瞬間に迸る光にセイバーは目が眩むのを感じた。それと同時に身体を走る痺れ、光の正体は火を見るよりも明らかだ。

 

「はぁあ!!」

 

 力比べならば負けるつもりは毛頭ない。セイバーは真っ向から受けて立つことを選んだ。この異様な風体からしてバーサーカーであることは疑いの余地もない。ならば求められるのは純粋な力と力のぶつかり合い。

 

 ――おもしろい……受けて立つ!!

 

 ランサーや赤のサーヴァントと対峙したときのような技巧はいらぬ。ぶつかり合う衝撃にセイバーは言い知れぬ高揚すら感じていた。

 雷とは見慣れない戦いではあるが、これもまた強敵であることに違いはないのだと。

 そうして2度、3度、交差のたびにその勢いも上がっていく。

 

「もらったぁぁあ!」

 

 セイバーの背丈は平均的な女性よりも小さいくらいの150cm、それに対してバーサーカーは190cmはあるだろう。

 となればその拳は普通にしているだけでも上から叩きつけられることになるのだが、特に上段から振り上げられたそれをセイバーは掬い上げた。

 反動で上体が仰け反り無謀備になるバーサーカー、そのがら空きの胸に必殺の一撃を叩き込むべく剣を突き出し――

 

 

 

「すまねえな、嫌な命令受けちまった」

 

 赤槍に弾かれた。

 

「え――」

 

 想像もしていなかった横槍にセイバーの意識に空白が空く、空いてしまった。

 それを見逃すような相手など、ここにいるわけがないのに。

 

「■■■■―――!!」

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

 

「さて……邪魔は入ったが」

 

 バーサーカーがセイバーに襲いかかったその時、ランサーはまだ赤のサーヴァントをこの場で殺すつもりでいた。ここに来て現れた新手は気にかかるが思うままに力を奮う狂戦士だ。標的を定めた以上無視しても問題あるまい。

 只でさえ色々と面倒なこの赤いのが狙われなかったことで様々な可能性が考えられるのだ。ただこの戦いにつられてマスターの制御を振り切ってきたのか、タイミングを見るに目の前で無表情を貫いているサーヴァントのマスターとバーサーカーのマスターが裏で組んでいて戦局を動かしにきたのか、それとも――

 

『戦闘中に申し訳ない、クー・フーリン殿』

 

「殿はいらねえよ……で、なんだ?」

 

 その腰をへし折るように優雅な声が聞こえた。が、同時にそろそろ来ると思っていた。

 ランサーは予想通りの動きを見せたマスターの念話につまらなさげに返答した。今回のマスターはこういうやつなのだと。

 

『はい、進言なのですがこのままあの狂戦士とともにセイバーを葬り去るのが最上の案かと。ブリテンの王、アーサー王は残しておくにはあまりに脅威すぎる』

 

「……俺としちゃあセイバーを掩護してあのバーサーカーを殺す。んでもってその後にこの赤いのを何とかする。その方がよっぽど良いと思うが」

 

 そしてまた予想通りの提案に内心呆れながら対案を示す。

 どうもこのマスターは、頭は悪くないもののそれだけで戦場をどうにかできると思っている節がある。計算が狂うとダメなタイプだとランサーは初見の印象で踏んでいた。

 典型的な戦いを知らないまま指揮官になったタイプ。そこから弾き出される案は無難の一言に尽きるだろうと。

 

『……いいえ、それは上手くないかと。あの赤いサーヴァントは未だ謎が多すぎます。聖杯戦争はまだ序盤、手が進むうちの自ずと知れてきましょう。決着はその時でよろしいかと』

 

「はあ……わーったよ。マスターはお前だ、時臣。方針には従ってやる」

 

『ありがとうございます』

 

 念話が切れたのを確認してからランサーは穴熊を決め込んでいるのであろう時臣に向けて盛大な溜め息をついた。恐らく戦士が戦場で見て感じる"勘"を理解させるのには相当苦労しそうだと。

 

「どうした」

 

「うるせえよ……今回は見逃してやる。けどな、次に会った時は……殺すぜ」

 

 いつの間にか余裕綽々な様子になっているのを見るとある程度この状況を予想していたのだろう。

 そんな赤いサーヴァントをランサーは最後に一睨みし、セイバーを討ち取るべく駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「危なかったな……」

 

 アーチャーは安堵に緊張を緩めた。

 

 セイバーがアーサー王であることを報せれば、あのバーサーカーのマスターのように誰もがセイバーを狙うものだと彼は踏んでいた。

 その隙に自分は離れ、上手く行きそうならばそこで疲弊した相手も討ち取る。それが描いていた青写真だったが、ランサーの勘はそれを許さなかった。揉めていたのを見るに恐らくマスターと意見が割れ、彼が折れたというところなのだろうが……もしもマスターまで勘の良い相手だったならこちらが無事でいれた保証はない。

 アーチャーはランサーに対する評価を心の中で上げていた。

 

「さてと」

 

 これからどうしようかとアーチャーは考える。

 下手な動きをすればまずランサーに察知される。となれば高台に登って狙撃、という理想のプランは捨てざるを得ない。となればこのまま成り行きを見守るか、それともセイバーの討伐に参加するか。

 

「―――」

 

 選ぶべきが後者なことくらいアーチャーは分かっていた。

 セイバーの強さを1番よく分かっているのは他の誰でもなく自分だ。だからこそ彼女を真っ先に倒せる状況を作りだし、ここまで首尾良く進めてきたのだと。

 だと言うのに……彼の足はそこを離れようとはしなかった。

 

「――甘いなオレも。真っ向から倒すのならばこんなことを思いもしないだろうに……嵌めるのは心の何処かで気がひけているということか」

 

 その原因を理解すると、アーチャーはバカバカしいと吐き捨て一歩を踏み出した。

 彼女と自分の縁はとっくの昔に切れている。そんな感傷に浸っている余裕などこにもありはしないのだ。

 

 

「む――?」

 

 そうして、ふと感じた何かが迫ってくる感覚に上を見る。そして驚愕に顔を歪めた。その目に映ったありえないものへの理解が追いつかない、気付けばそれが"落ちて"くる逆方向へとアーチャーは走り出して――

 

 

 

 

 

「AAAALaLaLaLaie!!」

 

 

 

 そのとき、音も、光も、世界からなにもかもが消えた。

 

 

 

 

「なんだ、あれは――」

 

 ミサイルでも降ってきたのかとアーチャーは本気で錯覚した。それだけ破格の威力だったのだ。回避に全力を尽くしていたため正確な判断は出来ないが、少なくともAは優に上回る大火力。

 その証拠に、セイバーと彼女を狙うバーサーカー、ランサーの戦いは強制的に終結させられていたのだから。

 

 モクモクと上がる白煙。その中央で、未だ姿の見えない大男は高らかにこう叫んだ。

 

「双方剣を収めよ!! 王の御前であるぞ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




サーヴァントは触媒無しだとその人に似てる奴が出るということで考えてみた。
天才肌、プライド高い、研究とかそっちの方、そんな都合の良い理系バーサーカーなんて……あ!!いたわ!バーサーカーじゃないけど狂化経験あるのが!!

と言うわけでケイネス先生の相棒はテスラです。うん、バーサーカーで良いのかということを除けば個人的にはしっくり……どうですかね?

今作のテスラさんは狂ってるんで明らかに頭使いそうな雷飛ばしは使えません。その雷を全身に帯電させて戦うゴールデン(もちろんあの人)スタイル

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