僧兵
日本史において平安後期から中世まで、寺院の守護を目的として武装化した僧侶のことである。本来、自衛が目的の武装化であったが神輿を担ぎ権力者に自らの要望を直訴する強訴や、戦国期になれば近隣の大名に求められ戦に参加することもあった。平安期は前者の有名なエピソードを挙げれば撃退例となってしまうが、まだ若き日の、のちに武士にして太政大臣となる平清盛が強訴に来た僧兵の掲げる神輿に矢を放ち、追い払ったというエピソード、後者の戦国期を例に挙げれば尾張という小国から成し上がった織田信長を各地の大名が滅ぼさんと信長を包囲した際に参戦した石山本願寺の僧兵などが有名であろうか。
しかし、僧兵の厄介な性質は軍事力ではない。いや、軍事力も侮れないが、為政者の立場からすれば山賊よりも性悪と言わざるをえない。
なぜなら神仏を掲げ、己のためにためではない戦いを行うからである。
自らが神仏の加護を得、大義を執行せんがために戦場で力をふるまうが故に武士や将軍ですらその意見を跳ねのけるが難しかった。理由として、その敵対する者たちも神仏を信仰し、守護を得ているからであった。かの強大にして絶対的な権力を己が手にした白川上皇も「自らが思いどうりにはゆかぬもの」として、一つは加茂川の洪水、一つは賽の目、そして一つが延暦寺僧兵の強訴であると残すほどである。仮にはむかえば、上記の例で上げた清盛の僧兵を追い返したその後、清盛の処分を多くの貴族が僧から圧力に求められ、信長は延暦寺焼き打ちを行うが大名から怒りを買い、特に戦国時代に軍神と謳われた上杉謙信との合戦、またそのライバルであり、戦国最強と名高い武田家との戦を引き起こしてしまう直接原因となるほど、厄介なものであった。
これはある程度、中世ヨーロッパの封建体制に近いものがある。やはり、神や仏という人知の及ばないものというのは、それに信任された権力という建前があるがゆえに、己の地位を証明する源泉であるためだろう。しかし、西洋で国土回復運動(レコンキスタ)の失敗やルネサンス期の発展などを経て教会権力が弱まっていったように、時の移り行きと共に日本の寺院の有する権力も弱体化してゆき、関白豊臣秀吉が行った刀狩りで完全とはゆかずとも勢力が衰え、そして更なる時の重なり、仏教勢力自体は力を失わなかったものの、治安の安定や幕府によって守護されたことにより、元来の僧兵の武装化の原因である寺院の守護という建前もうせ、いつしか僧兵は時代に消えていった。
現代、21世紀の日本おいて僧兵は存在しない。しかし、風香の前に一人の僧兵がいる。両手には槍を握り半身に構え、籠を背負い、籠には様々な武具が納められていた。
僧侶は巨漢だった。優に二メートル近い巨躯、襤褸となって、色落ちしている黒鉄色の袴をはき、裸足で大地を踏みしめている。どうやら素肌の上から胴鎧を纏っているとみえるが、そこからのぞかせる筋肉はよく鍛えられ、肥大化するように鍛えられたのではなく、ひき絞められるように実用的に鍛えられていた。日常的に鍛錬を行い、そしてそれが活かされているために、そのようなつき方になったのだろう。
一目見た時、長い茶色の蓬髪かと風香は見たが、よくよくそれを見れば布を頭に巻いている。風香は知らないことだったがそれは「行人包」(ぎょうにんつつみ)と呼ばれる僧兵が纏う頭巾であった。しかし、その頭巾が彼女に僧兵という印象を与えたのはやはり様になっているからだろう。
なによりも、醸し出す気が違う。
その双眸は隙なく一帯を睥睨し、常在戦場を具現したその立ち姿、一部のほつれもない絶対的な武の空気は現代において異質ともいうべきものである。
僧兵が部屋の中に与える威圧感はすさまじく、僧兵が乱入する前とは空気は一変していた。一つ、一つだけ殺意が混ざり合う。それだけでコールタールのようなコーヒーにミルクが混ざり合うように、変わる。
壁の穴の中に押し込められた死体が発する臭気と先ほど風香が行った魔術儀式による莫大な魔力の残滓、そして、突如として乱入した僧兵が発する殺気が混ざり合い、混沌と化し、気の弱い人間ならば、すでに気を失っているだろう。あまりにも異様過ぎて、静寂な空気が流れた。静寂とは清涼の、静まった中から発せられるものから産まれ出る、それこそ聖域とでも呼ばれる場所でしか生じないはずのものなのに、穢れに満ち溢れているこの場所でも産まれていた。だが喧騒から発する静寂を連想される物は地獄だった。
その静寂の地獄を破ったのは驚駭が含まれた一言だった。
「馬鹿な……サーヴァントだと、一体誰が召喚を?」
部屋を見下ろすように座っていた無刀は立ち上がり、右側に残った隻眼を見開いて僧兵を見下ろし、脇に控えていた一人の従者は主を守護せんとどこからか取り出したのか、銀の装飾が施された西洋剣を手にしている。
「Es ist mir」
突如、声がした。声がした方を、全員がほぼ無意識に視線を移す。正確にいえば、見上げた。声は天井から響いていた。
だが、そこには何もない。光が届かないためか、暗い。床から発せられる光は先ほどよりも光源は弱くなり、常闇が広がっている。
「うぐっ……!」
うめき声があがり、何かが倒れる音も続く。
もう天を凝視するものはいない。風香も視線をそちらに向けると、もしも自分の顔を見れるならば、唖然とした表情というのはこういうことか、と納得するほど、その光景を何がなんなのか、己でも理解できぬまま、ただ脳理に焼付いた。
部屋の一角、そこに二人の人間が地に伏している。源蔵の拘束していた二人の男だった。だが、二人の男の支えを喪失しても、源蔵も倒れることはなかった。
一人の男が源蔵を片腕一本で抱えていた。
年は三十を越えたばかりか、肩まで延ばして、ところどころに白髪の混じる紫色かかった髪をもつ、日本人には持ち合わせていない彫の深い顔立ちの男。見る者によってはハンサムといえないこともない顔。全身をカーキ色のコートで隠し、その下には神父が着るカソックを連想させる詰襟の服とそれに合わせた黒のズボンという服装。
頬が痩せこけ、幽鬼のように青白い顔色であったが、病的な弱弱しさを感じさせない。寧ろ、獰猛な肉食獣、それも鎖につながれておらず、いつだれに襲いかかっても何一つ不思議はない獰猛な獣を思い浮かばせる。
そう思わせる理由として、その両目はらんらんと輝きを放ち、何人であろうとも男の歩みを止めることはできない、と強き意思のこもった、彼の道を塞ぐ者は死を覚悟して臨まなければならないと思わせるほどの瞳を持っているからだ。
突如の乱入者にこの場にいる―感情を持っている者ならば、戸惑ったことだろうが、戸惑いを覚えた者は一人しかいなかった。
風香は呆気に取られ、侵入者である僧兵―サーヴァントと雲霞の如く突如湧いた男。
この場で戸惑いを覚え、侵入者の意図は理解せずとも現状を理解できたがゆえに戸惑い覚えた人間、無刀は呟く。
「アーベル…………?」
自己意識がその体から抜け去ったように放心仕切っていた無刀は名を呟く。困惑していたが、それはこの男がどのような人物であるか知っている、旧知の仲である為に、なぜここにいるのか、という戸惑いとそのために自然と口に出た言葉だった。
「Lange Zeit………」
よく響く声で男が無刀に話しかけるが、風香はその意味を知らない。それが何語であるのかも、だが、それが親しげな挨拶であることは理解できた。それも根拠のないものではない。
理由は、無刀の反応が、不作法な乱入者と相対した際のものではないことを察する。続けて、まだこの場の一連の流れ、何が起こっているのかを理解できていないだけ、ともとれるかもしれないが、全くの第三者や敵対者としては時間をかけすぎている。見知らぬ侵入者ならばどのような意図を持っていたとしても邪魔な対象物でしかなれければ排除すればいい。だから、どちらからも目を離せない。どちらも警戒しなければいけない。無刀はこの場を支配し、祖父である源蔵は文字通り男の腕の中なのであるから。
「……お久しぶりですね……いえ、あれ? いつ以来でしたかね? まぁ、いいですか、アーベル……サーヴァントを召喚したということは協力するということで間違いないでしょうか?」
我に返ったように、先ほどまで浮かべていた笑みを思い出したように作ると、ごく親しげに無刀は声をかける。
「それにしても協力するつもりなら、貴方も人が悪い。何も召喚の儀式を阻害してまでサーヴァントを見せびらかすことがないでしょうに。ああ、もしや彼女を助けようとしたなら勘違いです。彼女はまごうことなき持つ者、我々失敗作とは違う持たざる者なんかじゃない、だから彼女に召喚していただこうとしただけです。我々の原則からははずれておりません」
まるで初めから定められた脚本を読む役者のように、途切れることなく言葉をつなぎ、不気味な笑みを浮かべたまま、無刀は歩み寄ろうと、一歩、一段降りた。
「いやはや、まったくあなたという人はどこまでも茶目っけが過ぎる方ですね。では、召喚の続きといきま」
言葉を最後まで言い切ることはできなかった。
一閃、風が吹く。それは無刀の一段下の石段を削り、陥没させた。そしてそれまで、無刀を守るように立って剣を構える男と無刀との中間地点の場所には僧兵がいた。底で大槍を構えていたはずの僧兵は、一瞬のうちに無刀の前に位置していた。何があったのか、簡単なことだ。僧兵が誰にも反応できぬ速度で階段を駆けあがり、手に握る大槍を振り下ろしたのだ。目に捉えきれるものではない常識外の一撃。しかも、大槍を振るっただけの風圧で石段を陥没させるという結果。本来であれば無刀はなすすべもなく両断されているはずだった。
だが、無刀は健在であり、五体はいまだに欠損することがない。
つう、と、無刀の右頬を一滴の血が雫となって顎から流れ落ちる。思わず頬に手をやると、血で指先を濡らした。僧が無刀の足元の石段を砕いた際に、一つの破片が無刀の右頬を浅く切り裂いたのだろう。
無言で、そのまま前にたつ僧兵に視線を戻し、対峙する。
頬に流れ落ちた血を見て、僅かに表情が曇った。
「……ううん」
それでも一度唸り声をあげると、まるで憑き物が落ちたかのように、笑みを無刀は変わらずに浮かべていた。それも、自分は極上の品々が展示されている美術館を巡回している観覧者のように、一切の不安なく、僧兵を検分する余裕まで持ち合わせている。その証拠に、じっと僧兵ではなく、足元を砕いた大槍と籠に収められた得物たちを見つめていた。
なぜ、ここまでの余裕を持っているのか、怪訝に思い、逆に僧兵が眉をひそめた。
カチャリ
主を守らんと、剣を携えた従者が僧の首元に剣を向ける。だが、問題は一切ない。大槍を構える大男は無刀と同じく、一切の恐怖も焦燥も抱かった。
なぜならば、この場で最も力を持つ者は己であるから、だ。仮に従者が僧兵に喉元に付きつけた剣を引いても、それよりも速く、僧兵は従者の首を撥ねることもできる。
だが、部屋中からある音が耳に入った時、無刀の余裕の態度である合点がいった。
ガシャリ
その音が、無刀の後ろ、否、部屋中の壁に空いた穴から何かが立ちあがり、蠢く気配を発する。
壁から手が延ばされていた。白く、透き通るような女の細腕。しかし、その腕に金属光を放つ物が握られている。銃だ。銃を握る腕が延ばされていた。銃口は一つだけではない。無数に空いた壁の穴から、何十という手が延ばされ、そしてその手には銃が握られていた。
種類も、用途も、製造された年代も、産み出された国も全て異なる銃器が握られていた。
護身用として使用される小口径の拳銃もあれば某国の軍が正式採用しているライフル、面での攻撃が売りであるショットガン、弾をばらまき、人をあっという間に肉塊へと変えるマシンガン、家屋を制圧することも可能なグレネード、果てはあたり当たれば装甲車でもあろうとも貫通させ撃破するアンチマテリアル・ライフルまでが握られている。
それも、その先にあるのはサーヴァントである僧兵ではない。底で佇む、アーベルと風香に向けられていた。
例え、大槍で無刀の首を撥ねようとも閃光が部屋を照らし、そして、何百という脅威が己のマスターを蹂躙する、と理解した。
「……ッ」
舌打ちをすると、僧兵は再び消える。今度は底、大槍を背負っている籠に収め、陣の中央に刺さる野太刀を引き抜き、そのまま右手に太刀を、地面に力が入らずに座っている風香の襟首を掴むと、そのまま、投げた。
「は、へ……ああああああああああああああ!!」
先ほどまで声が出なかったがあまりのことで声が漏れると、あとは自然と悲鳴が口からでる。我ながら情けない叫び声だと理解していたが、それでも叫ばずには居られなかった。
風香は空間をすさまじい速度で飛んでいく、と普段体感することのできない感覚を味わい、そんな中で出来ることと言えば悲鳴を上げることが唯一の自由でもあった。
だが、それも一瞬。思わず着地、いや地面に叩きつけられる衝撃に怯え、眼をつむったが、衝突が齎す痛みはいつまでも襲ってこなかった。恐る恐る眼を開ける。と、いつもと視界の高さが違った。床と同じ高さでもなく、かといって、いつも自分が立っている視界よりは僅かに低い。状況が分からず、辺りを見回すと、すぐ隣に乱入していたアーベルという男がいた。否、アーベルの小脇に抱くように抱えていた。
現状を理解し、己の置かれた状況を見て、風香は再び冷や汗をかいた。
しかし、アーベルは風香に構うことなく、じっと無刀と視線を合わせている。
「……どういったつもりでしょうか、アーベル。貴方と私は共闘することはあり得ても敵対することはないはずですが、それともなんですか? そんなに気に入らないとでも? 私が、『偏執者』(カリギュラ)風情が戦力を持つこと自体が罪だ、ということでしょうか?」
笑みを変える。見る者すべてに卑屈だと連想させる卑下た笑みを浮かべ、無刀はじっとアーベルを見ていた。内容は続き、風香には一遍も理解できなかったが、その語彙がさげすむ意味を持っていることは無刀の表情から察することはできた。
あらかたしゃべり終えたのか、再び涼やかな笑みを浮かべる。
「一つだけお尋ねさせてもよろしいですか?」
乱入した男がうなずき、それを確認すると、無刀は正面から男を見据え、
「貴方は何をするつもりですか?」
穏やかな笑みを浮かべているが、その笑みには僅かに陰りが見え、さきほどの風香に向けてどんな時も変わらなかった笑みとは一変、感情を露骨にしている笑みだったが、動じる様子はなく、乱入者は言い放つ。
「ヤメサセル」
片言の日本語、それに声はひどくだみ声であり、混雑とした響きを思わせた。肉声ではない、人が生まれもったような声ではなかった。年齢も性別も、イントネーションすらもつぶし、まだ機械音声の方が温かみのある声で、非人間の声としたかのような声を発する。心底不気味としか表現のしようのない声。
風香は驚きと怯えの心が気持ちをもたげたが、意外にも、無刀もそれを聞いた時、びくりと震えた。まるで意図していなかったのような、裏切られたような表情を浮かべ、すぐに元の笑みに戻ったが。その答えに僅かに無刀は首をかしげる。
「この儀式を?」
その問いに、侵入者は首を縦に振る。
「聖杯戦争に参加を?」
もう一度、縦に振った。そして、何度かそのような一問一答の問答が続き、無刀が納得が言ったようにほほ笑む。
「……つまり、私を邪魔すると?」
僧兵が何か言いかけるが、その前に、しっかりとアーベルは頷いた。
無刀はその答えに、不敵な笑みを浮かべたまま、無言で右手を頭上に掲げ、指を鳴らした。
と、部屋のあちこちから何かが落下する音が部屋に響く。
唯の音ではない、キィンと金属質なものが落ちる音、ぐちゃり、と肉が落ちる音、
思わず、風香がそちらに目をやる。と、そこには女がいた。
灰のごとき髪を伸ばし、女性として、完璧な肉体を持ち見る者を虜にさせる肉体の女。何も身に纏っておらず、豊満な肉体を外気に晒している。
その目鼻は、筋の通った凛とした顔に、風香は憶えがあった。
その女は先ほど、風香の召喚の前に死んだ女と、腐り果てた女の顔と同じものだった。
ただし、先ほどと違い、生気を顔に宿し、手には、巨大な斧、ハルバードを持っていた。
それも一人ではなかった。どちゃり、どちゃり、と女の背後から音がする。薄暗いが目を凝らせば何かが着地し、そして立ち上がる。床の光に照らされ、その者たちが光にさらされると、思わず声をあげそうになった。
女たちがいた。
同じ顔、同じ体、同じ武器をもった全裸の女たちが、軍勢を形成していた。
その時、稲妻の如く光が破裂し、部屋全体を照らす。と、壁の穴の中、そこから銃口を向けるものたちを照らした。それも、同じだった。
全裸の女たちが銃口を底に向けて、構えている。
「なるほどなるほど、貴方はそこまでして私の力を得ることに反対だと、いうことですか? そりゃそうですよね、不愉快でしょうね、今まで闇でこそこそ害虫(ゴキブリ)のように動き回ることしか能のない私たちが、いきなり力を手に入れるんですから」
無刀はやおら右腕をあげる。もしも、振り下ろせば、どうなるか、風香でも容易に想像できた。
「戦うことすらも烏滸がましい、それならば自分がその絶対的な力を召喚してつぶしてしまえばいい。仮にも、末席とはいえ籍を置いていたもの、無様に敗北するようなことになって泥を塗るわけにもいかないから、処分した、とでもあとでいえば立派な理由ができてしまいますねぇ」
変わらぬ笑みを浮かべたまま、かすかに侮蔑と嘲笑の混ざり合った笑みで、嗤った。笑いながら嗤った。
「ですが、それも無駄でしょう。貴方があれからどれほど上達したのか存じ上げませんが、少なくともサーヴァントを戦闘では十全に発揮できるほど貴方の魔力量は優れてはいない……」
その後もずらずらとアーベルと僧兵がいかに不利な状況下におかれているかを述べる無刀、そのことに僧兵とアーベルは沈黙を貫くが、一人、冷や汗を流す者が一人、アーベルの小脇に抱えられる風香だった。
おい、何でもいいから何か言え、いや、何か言ってください、謝罪でもなんでもいいから火に油を注ぐようなこと言わなければいいから、とりあえず、止めて、そんなことを風香は願うが、風香を抱えるアーベルは涼しい顔でどこ吹く風、依然として声を上げることができない風香はアーベルに何一つ伝わることがなかった。
先ほどの名前を間違えた怒りや、無理やり己が剥がされていく感覚などは喪失し、それよりも、この状況を作り出した男と、それに引き金を引かせようとした男の双方に視線を泳がせるが、双方、風香に関心すら向けていない。
「たとえ最初は防ぐことができたとしても、はたして第二、第三波と続きますよ? ああ、私を殺しても無駄です。彼らは自立しておりますし、私が死ねばもう止まりま」
無刀はそのように言葉を続けようとしたが、続かなかった。なぜなら、ランサーが構えていた薙刀の振りかぶり、力む。全身の筋肉が膨張し、一回りほど体長が増えた。
それが引き金となり、その場にいた女たちがある者は強力な銃の引き金を引き、ハルバードを構えた者たちは突撃したが、僧兵は迫りくる銃弾、人形たちに一切気にすることなく、石突で一度叩く。無刀の言っている守護者たちを現世に呼びよせるために作られた儀式紋様の描かれた巨大な、魔力が貯蔵されている床を叩く。否、突き刺した。
石突で叩いただけ。その石突が地面に突き刺さった。有体にいってしまえばたったそれだけの行為だったが、僅か5メートルの槍が発した乱れは、部屋全体が、大気が振動した。不意をつかれた無刀は立っていることもできず、もしも前方で西洋剣を構えていた男がとっさに支えなければ階段から転げ落ちていたことだろう。だが、例え高所から落下していてもそんな些細なことは気に留めることではないほどのことが起こっていた。
その一撃、部屋全体を揺らすほどの振動を産み出した一撃は、床一面に蜘蛛の巣のように亀裂が走る。よって、全体に描かれていた紋様は歪み、先ほどの恐ろしいほどの魔力は紋様ではなく、亀裂にそって光が間欠泉の如く射出される。それは風香が先ほど召喚しようとした光と奔流というべきことも比較にならないほど、部屋の中をまばゆく照らし、まずい、と理解した時、すでに風香の体は再び、浮遊する感覚。そして意識は反転し、消失した。
外伝 第四話 「僧兵と呪われし背徳者」 終
諸事情で、オレの名はまだ明かせねぇが、このイカレタ戦争参加者だとだけ言っておく。
今回、次回予告を担当するもんだ。ああ、あと、前回うちのサーヴァントが迷惑をかけた、ここで謝罪する。
あー(手元のカンペ見ながら)……、とりあえず、次回予定として外伝は終了、それぐらいだかぁ、伝えることは。あっとは、夜中にうちのサーヴァントが抜け出して合コン行きやがったことが判明した。最近、令呪きるべきか真剣に悩んでる。
次回「少女とヒーロー」
……どこかの英霊は去勢拳つう必殺技を持ってるらしいな……オレも習得してあの万年発情期性王に食らわしたらおとなしくなっかな?……
大変遅くなりまして、申し訳ございませんでした。(土下座)
まさか、秋を通り越し、もうすぐ春という季節にまでなってしまいました。本当にすみません。しかも文量が少ないって、とんでもない事態です。
Ap2巻でるまでには更新しようとしてたら、Ap3巻発売から二カ月ですね、大変長らくお待たせいたしました。
Ap2・3巻で結構設定でましたね、どうしましょうか、想定してた設定と大分違いすぎて、設定が別物になってます。
プロトセイバーとアルトリアセイバー以上にアサシンが別キャラです。そういえば、3巻のカラー絵のアサシンものすごく可愛かったですね、ものすごく物騒でしたけど。
ご意見ご感想お待ちしております。