01
『ふゆき』
とりあえず、昨日アサシンが、本来であれば“ふゆき”という場所で聖杯をめぐる戦いが起こる、との言葉から、ふゆき、と検索エンジンに入れてみる。
途端、すさまじい数の検索結果数が画面に表示される。だが、地名だろうから人名を除いて、何件か見ていくうちに、すぐに目的のふゆきについての情報がヒットした。
“ふゆき”という地名についてだが、どうやら市の名称にして地名でもあるらしい。
場所はこれが南米とかアフリカだったら驚きだけど同じ日本国。“ふゆき”、漢字で書くと「冬木」。冬木市の公式ホームページにすぐに行きあたり、紹介ページと観光案内を読んでみるが、なんてことはない普通の地方都市という印象を受ける。
しばらく、ホームページを眺めていて、分かったことといえば、今いる東京からは結構離れている。売りは海と山に囲まれ、自然が多いことと振興の地方都市として企業誘致にも活発だということぐらい。
本当になんでもない地方都市。だけど、気になる点もいくつかあって、まず市の紹介ホームページで、市長の言葉と概要で、「二度の災害を乗り越え」とあったのが気になる。
災害?
検索エンジンに今度は『冬木 災害』と打ち込んだ。
このあと、見なければよかったと後悔するのだが、先人のいう通り、後悔というものは先には起こらないものらしい。
冬木市では、この半世紀、二度の災害に襲われていた。しかも自然災害などではなく、原因不明の火災や住民の大量死など。
一度目の災害については古いために、簡単に詳しい資料は見つからなかったものの、二度目の災害の方については比較的簡単に見つかる。
二度目の災害は今から17年前に発生。
探して行くうちに17年前の新聞記事や被害状況をまとめたサイトもあり、当時の新聞を読んでみるが情報が錯綜していたらしく、死者が何名、負傷者が何名、病院で確認された、という記事がおおい。
まとめた内容で連日の報道、といったことから全国的なニュースになって取り上げられていたみたいだ。それと、新聞などが15年前の悪夢再び、などと書かれていることから、一度目の災害は二度目の災害から15年前、今から32年前のことなんだろう。
しかし、災害について記載がない。住民が大量死を遂げ、多くの建物が壊れた。と、災害の被害に対しては伝わっているが、具体的なことが何一つない。天災という体をとってはいるものの、火災だったのか、竜巻だったのか、そんなことさえも分からない。まったくの原因不明の災害。ただ、多くの人が死に、建物の多くが壊れ、とある住宅街が壊滅した。その死者、行方不明者数ともに絶句するほどのものだった。
これが、聖杯をめぐる戦いによっての被害なのかそうでないのか知らないが、魔術が関わっていることは読み終わるまでに、察しがついていた。
大方、魔術に関わった被害であるため当事者が行ったのか、それとも外部者がやったのか、誰が行ったのか知ることはできないが神秘が漏えいしてしまうがために隠匿を行ったんだろう、しかしあまりの被害にこの災害自体が隠匿できなかった。だからこんな不自然なことになっている。少なくとも何かしらの力が働いているべきだと考えるのが妥当だ。
それと同じように、一度目の災害についても述べられているサイトを見つける。
二度目の災害よりも一度目の災害のほうが詳しく災害理由について述べられていた。
ある冬の深夜、住宅街が一夜にして燃え尽きた。火災理由は不明、だが、それが火災だったとのことはしっかりと明記されている。それゆえにあるサイトだと、冬木大火災とも書かれていた。死者行方不明者数は二千人近く、しかし、重軽傷者の数は少ない。なぜ、と思う前にいやでもわかる。殆どの人が死んでしまったからだろう。重軽傷者というのは生還を果たした人々のことであって、それ以外の人々はみんな死んだんだ。
これがはたして聖杯をめぐっての戦いによる余波によってもたらされたものなのか、それとも全くの無関係で、魔術とも何のかかわりも無いものなのか、俺にはこの情報だけだと判断なんてできなかった。
実を言うと、最大の前提を否定するようでアサシンには申し訳ないが、そもそも、アサシンが与えられた聖杯の知識そのものが誤りで、冬木なんて場所で、過去に一度も聖杯をめぐっての争いなんて起こっていないかもしれない。と疑っていた。
しかし、調べていくうち、これが17年前の災害は聖杯によるものかどうかわからないものの、32年前に、冬木で聖杯をめぐる戦いが行われたのか?という疑問が、行われた、と確信に変わる。
冬木市はネットである意味有名な町だった。主に怪奇現象を考察や紹介しているサイトなどでは、有名。
17年前の災害の前はそれほど目立ったことはないが、32年前の災害が発生する10日前、連日、怪奇と血であふれていて、不謹慎なサイトではお祭り、と評されていた。
個人的に、こういうことを書く人は気に入らないが、まぁ、こういうサイトの方が詳しい。だからなるべく感情を抱かないように目を通して行く。
冬木では児童連続誘拐事件が発生していた。しかし、それが通常とは異なることは、僅か数日の間に数十人もの児童が誘拐されて行方不明となった。その児童たちは、いまだに見つかっていない。
また、演習中の自衛隊の戦闘機が霧の発生していた場所の偵察を命じられ、その後姿を消す。
などなど、町中のホテルが爆破されたり、港の倉庫街で爆発事故が起きたりと、他にもまだたくさんある。
一番、気になった事件は、児童連続誘拐事件。
何一つ、証拠がなかった。と、書かれていた。
数十人の子供が誘拐されることなど普段であれば何かしらのボロがでて、いや、そんな派手なことをやればすぐに捕まることぐらい俺でもわかる。しかし、なにも証拠がなかったらしい。本当に、何一つ。
思い出させられるのはセイバー、剣を太ったサラリーマンに突き刺していた路地裏の光景、そして、枯れる死体。
セイバーは、あのスピーカーの女との会話で糧といっていた。
あの時は混乱していて、糧という意味がなんだかわからなかったが、サーヴァントが使い魔の一種と知ったいまならわかる。
使い魔であるサーヴァントを強化する方法など、三流である俺も想像がついている。贄を喰わせればいい。できれば、より多くの魔力を摂取するために、人間の魂ならば最適だ。
セイバーが人を襲っていたのは、おそらくそのためなんだろう。下手をすれば俺もそうなっていたかもしれない。だけど、そんな恐怖は置いておく。
誰かが、大飯食らいのサーヴァントを召喚して供給源のために殺してその亡骸を隠匿したのが誘拐となったのか。それとも本来の召喚儀式がどんなものか知らないが、最上ともいうべき格上の存在である英霊を呼ぶんだ、それ相応の対価も必要だろう、だから、強力なサーヴァントを召喚するために大量の贄が必要となって、生贄にでもしたのか、わからない。
しかし、物的隠匿を行っていたのは確実だ。だけど、杜撰すぎる隠匿なんてものを。その証拠に、おもての、しかも三十年以上たっても記録が残るような隠匿だったなんて、よほどの命知らずの魔術師だったんだろうか、この事件を起こした魔術師は。もしくはただの、超がつくほどの幸運な犯罪者かもしれないが魔術的な事件じゃないと仮定するよりも魔術が関わっている、と想定する方が納得できる。
さらに、聖杯戦争に参加するためになりふり構わずにこんな手段しか取れなかった、とすれば、こんな杜撰な隠匿にも、一応の筋も通っていた。
魔術師は実験材料として人を犠牲にすることがある。それは、一般的な価値観では蔑まれることなんだろうけど、魔術に携わる者が一番懸念することは神秘が漏えいしてしまうこと。裏を返せば、神秘の隠匿さえすればどんな外道であろうとも普通の魔術師が討伐されることはない、ということだろう。
母の残した日記を読む限り、人を犠牲にしない連中のほうが少ないが、まぁ、母が会っていた連中が例外ばかりなのかもしれない。だって、誰誰はどんな能力を使ってた、だからこういう方法で倒した、とかばっかりなんだもん。
すこし、わき道にそれた。とにかく、母の日記に書かれた言葉ならば、魔術師がこんなことをするときは決まっている。自分の家や命以上の価値があるものを手に入れるための時だ。
聖杯。どんな願いも叶えることができる規格外の礼装。それを手に入れるためだったら神秘の漏えいを恐れずとも、いや、代償が神秘の漏えいで済めば安いものなんじゃないか?
聖杯をめぐる戦いにしてもなんにしても、アサシンが言うふゆきの地にて起こった32年前の災害、魔術が関わっているだろう連日の怪奇ともいうべき現象、以上の点から32年前、これはもしかしたら、というよりも聖杯をめぐって殺し合いがおこった。と確信するに至り、もしも聖杯ではなくても、それに匹敵しうるなにかが行われた、としか思えない。
この騒動の原因が聖杯だったとして、これで誰が聖杯を手に入れたかわからないがその過程か結果において、こんな火災が起こってしまった。うん、一応筋は通っている。
しかし、冬木という場所について更に探ると、災害とはいえなくとも、何年かごとにこれに匹敵しうる怪奇や殺人が発生している。特に、サイトでは17年前の以前に何も起こらなかった災害よりも22年前の住宅町での連続殺人事件なども記されていたものの、いまは確実に何かが起こった32年前の事件について調べたいが、何分古いため、それ以上の情報は得られなかった。
怪奇や連続殺人、それと災害情報のサイトを閉じて、最後に、さっきの情報を踏まえたうえで冬木市のホームページを確認するが、新しい発見は無かった。しかし、観光案内の部署についての紹介を見つける。
本当だったら冬木にいって俺が調査しに行きたいが、無理だ。それに行ったところで何もわからないことが確かなことだ……少々悲しい事実だが。
さらに調べてみるが、得られる情報はもう得た。だけど、もしかしたら観光をしたい、といって、一般人からこういう場所の、怪奇を聞けるかもしれない。
パソコンのメール機能を起動させ、その観光案内所の番号と住所、郵便番号をデータ化させたメールを俺の携帯に送る。
メールと電話機能しかない俺の携帯はすぐにそれを受け取ると、圧縮されたデータの解凍を開始して、すぐに「登録しますか?」との電子音と表示が出た。
小学生のときに買った携帯だから、メールと電話機能しかない。本当に買え変えたい。登録に許可を出して、登録されるまで、ぼんやりと、携帯の画面を眺めていた。
軽快な電子音とともに、「登録完了しました」の表示。件名に「冬木市観光案内事業部」と書かれ、下の欄には電話番号、住所、郵便番号の順で……
電話番号の欄に目を戻す。正確にいえば市街局番、じっと、市街局番を眺める。よく使う東京都以外の市街局番だが、その番号には見覚えがあった。
しかも、結構目にするような感覚がある。
眺めること20秒、それが、どこで、いつ、みたか、その既視感に気がついた。
「連絡先」一覧から、「おばさん」と表示された欄を開く。
電話番号には二つの欄がある。ひとつは、俺がお邪魔して食事を食べさせてもらう都内の自宅マンションの番号。そして、もうひとつは…
ああ、くそ、そういうことか
道理で……そうか、ふゆき、冬木、冬木、どこかで聞いたことがあると思ったはずだ
もうひとつの番号のメモ欄。その番号の家にいるときの住所も載っていたが、おばさん-大叔母に手紙なんて送ることは、正月の年賀状と暑中見舞いくらいだ。
その時は、東京にいるから住所に見覚えがない。しかし、電話はするから、市街局番には憶えがあるわけだ。
ああ、そうか、そういうことか。
くそ、なんで最初に気がつかなかったんだろう。本当に、どうして、気がつけなかったんだ?
ああ、畜生、ド畜生。
こんな聖杯を思いついた魔術師どもに、いや、そもそも、この世の魔術師にたいして、考えうるすべての罵声を浴びせたかった。
母がいっていた。魔術は碌なもんじゃない。その言葉の意味が否応なく理解できた。
いや、まともな人間なんて、この世に存在するのか……そうか、魔術のあとにつけ加えられるように書かれた言葉はきっと母の苦悩と、懺悔だったんだろう
ああ、くそが、くそったれが
PCの電源を落とし、席を立つ。カウンターの奥で麦茶を飲んで本を読んでいたアサシンと先生がこっちをみて、心配そうに先生が、どうしたの? と尋ねるが、お手洗いに、といって図書室から出る。
泣きわめいてしまいたい。人間ではない、別なものになって逃げ出してしまいたい。今のこの感情を忘れられるなら、そうなりたい。それが正直な今の気分だが、そんなことはできない。
それにトイレに用があるのは、本当だ。
おぼろげな足取りでここから離れたくなったが、いつもよりも、いつもなら30秒もかからずに図書館から出ることができたはずなのに、まるで遠くの異境を目指す道のように感じられた。
02
特別棟の二階にある男子トイレにふらつきながらも、個室に入り、それまで我慢していた、腹の中におさまっていた昼飯を全て口から吐き出す。
吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた、吐いた
すべてをはきだして、胃液しかでなくても全てを吐く。胸のあたりがひりひりと痛み、口の中の酸味がひどかったが、気にならなかった。
頭の中に浮かぶ言葉はただの懺悔
俺たちの所為だ、俺たち魔術師が、奪ったんだ。あの温かい、決して壊しちゃいけない物を、絶対に奪われてはいけない物を、奪ったんだ。
泣きたかった。正直に、心の中のすべてをぶちまけると、泣きたかった。だけど泣いちゃいけないと分かっていた。俺は魔術師なんだから、泣く資格はないと思った。
口を拭うと、流して、個室から出る。
洗面所で、顔を洗う。手で水を掬って、顔を洗うが、やっぱり掬うのが下手だから、水がかかって、きていた水色のYシャツの青が濃くなってしまう。
でも構わなかった。
掛っていた鏡を見ると、顔が真っ青だ。幽鬼のような顔とはこういう顔を言うんだろう
そんな自分の顔を見て湧き上がる感情は、感情は
――ああ、殺してやりたい。という殺意
母が魔術師でなければ、世の中のすべての、俺自身も含めた魔術師を殺してやりたいと思っただろう。
だけど、母も魔術師だ。だから、どうしたらいいか、分からない
大切なものを奪いやがった。魔術とは縁もゆかりもない、世界で生きている人から聖杯は、いや裏の世界の事象が容赦なく、大切なひとから大切なものを奪ったんだ。
魔術なんて、消えちまえば――――
理解できた今なら、いや、聖杯かもしくは魔術に関する事件で冬木の災害を見た時から思った。
だけど、その先は続けられなかった。そう思った時、母の顔が思い出させられたから
でも、その世界、魔術は母の誇りでもあって、その誇りを俺は受け継ぎたかったから、魔術を習得したんだ。
だから、悩む。母が誇りの魔術と、おばさんが大事にしていたもの、その二つが頭の中に渦巻く。
魔術とは関係のない、不幸で死んだとばかり思っていた。
でも、事実は、それは母からもらった、母が大切にしていたものがおばさんの大切にしていたものを奪った、ということ。
だから、どうしたらいいかわからない。
ガッ
その音と、左手に痛みが、いや衝撃が襲った。
自分でも驚いて顔を上げると、手洗い場の鏡のすぐわきを、殴りつけていた。
でも、殆ど、無意識に、壁をもう一度、殴りつける。自傷行為というのだろうか、左拳が痛むが、それでも何処かにぶつけないとおかしくなりそうな頭がほんの少し、風が吹いたように、どうしようもならないのは同じなのに、ましになった気がした。
殴った。拳に包帯が巻かれていたが、それがほどけることがない。でも、痛みが中手骨の部分がひどく痛むが無視をする。
殴った。掌の包帯が赤くにじむ。ナイフを掴んだときにできた傷が再び裂けてしまったんだろう、裂傷独特の痛みもはしる。
殴った。最早、どこが痛むのかもわからず、指全体が痛かったが、そんなことは知ったことではない。
殴――
れない。
自分でやめたわけではない、後ろから、殴ろうと振りかぶった手を止められたからだ。振り返ると、銀髪青眼の少女、アサシンがたって、俺の手を掴んでいた。
アサシンは何を言うわけでもなく、俺を見ていた。だけど、強引に左手の包帯を解いて、水道の蛇口を開き、流れ出た水に左手をつけた。
水道の蛇口が全開だったため、水が強すぎてしぶきがこちらまで飛んだ。俺の着ていたシャツの青の濃さを更に強めるが、アサシンは構わないといったように水で冷やす。
言葉はお互いにない。
左手の指先の感覚が喪失するまで冷やされ、引き上げられると、アサシンは勝手に俺のズボンの左ポケットからハンカチを取り出し、丁寧に水を拭いていく。
そして、もう一度、アサシンは右手を掲げるように、アサシン自身の眼前に持ってくると、一瞬、もう包帯が巻かれていた。まかれた右手の包帯をほどいて、俺の左手にまく。ふと、気になって、それまでまかれていた包帯がどうなったか、見てみたが床に落ちたはずの包帯はどこにもなかった。
そんなことを考えているうち、もうすでにアサシンは俺の左腕に包帯を巻き終えて、その左手を引いて、俺を連れていく。
「……どこに行くの?」
尋ねると、こちらを見ないで答える。
「Answer。おかあさんがもうオワリだから、クレをよんで来いっていわれた」
おかあさんって誰?
そんなことを聞こうとした時、チャイムが鳴る。授業の始終を告げるものではなく、もう今日は終わりというチャイムが。
そうか、今日は終業式だから3時半で終わりなんだ。
そんなどうでもいいことを思い出していた。しかし、アサシンはそんな俺にかまわず、一階に下りて角を曲がった時、おかあさん、と声をだす。
おかあさんって誰だろう、アサシンの視線の先にいた人物は、図書室の入り口を施錠している最中だった鏡峰先生だった。
化粧が涙で落ちてしまった顔ではなく、もう一度化粧し直したのか、ばっちりとメイクを決め、いつもの先生に戻っていた。
施錠を終えたらしく、振り返ると、先生は俺を連れて歩くアサシンを見る。
「アサスィちゃん、ありがとうね」
笑顔を浮かべる先生に、アサシンが急いで先生の傍に駆け寄った。
「先生でしたか、アサシ……アサスィをよこしたのは」
それに対して、いじけたように先生は抗議の声を上げる。
「だって年末くんたらあと十分でしまっちゃうのに戻んないんだもん」
おい、生徒の心配はなしか、というかアサシンを取られたな
アサシンは先生の後ろに隠れるように腕にしがみついている。…というか、おかあさんって?
先生はそんなアサシンの頭をなでながら、御覧の通りと言った風に苦笑を浮かべ、
「まぁ、こんな位になつかれちゃって、もてる女のつらいところねぇ」
先生の足元に、先生のもとと思われる大きめの女性用バックと、俺の教科書でパンパンになった鞄が並んでいる。
そのままおもむろに、先生は足元のバックと俺の学生鞄を掴むと、本当に、軽く、まるでボールをパスするように、もしくはジュースをおごってそれを投げ渡すように、俺に投げた。
だから、俺もとくに思わず、それを軽いものを受け取るように受け取ってしまう。
あ、しまった。
それが普通の鞄だったら大丈夫だったんだろうけど、それが教科書とかで普通よりも重さが増している鞄だということを失念していた。
だから、胸に直撃した時の衝撃はすさまじかった。肺の中の息がすべて吐きだしてしまうのではないか、と思ってしまうほど、息が口から全部抜けてしまう。
鞄を抱きしめながら、うめき声をあげてその場にしゃがみこむ。
先生ぇ、なぜこんなことを?
そんなことを考えながら、顔を上げると、すげえ卑下た笑みを浮かべる先生。
「ふふっ、こっちにはアサスィちゃんがいる、そしてその彼氏である年末くんが腹パンで沈黙している状況」
「…………いや、俺アサシ…アサスィの彼氏じゃないんですけど…」
搾り出すように声を出すが、顔をあげると先生はまだ変わらない笑みを浮かべ、
「ザ・昼ドラごっこをしてみたくなっただけよ」
さいですか、ていうか、過去に何があったんですか、先生……
「ま、車廻してくれるから裏門の所で先に待ってて。アサスィちゃんも年末くんと一緒にね」
そんなことをいってアサシンをおいて本館校舎に小走りでいってしまう。
正門からは車でも侵入可能だけど、職員関係は裏門から出ることが決まっているため、裏門で待つことになる。
残されたアサシンと俺。アサシンはじっとうずくまって回復中の俺を見ていた。しかし、じれったくなったのか、一言。
「……はやくいこう?」
それに何とか応じ、
「うん、そうだねアサスィ」
あ、しまった、アサスィって言っちゃった。
「アサシン」
すっげぇ冷たい、残酷な目で俺を睨んで訂正を求める。
「はい、すみません。アサシンさん」
震えながら訂正を言うとアサシンは俺を見て、諦めたように、心底あきれたようにため息をついて、手を差し伸べる。
「ありがとうね、アサシン」
こっくりと頷いて、俺の手を引いて特別棟から出るが、そこで立ち止まる。
振り返って俺を見る。顔が真っ赤だった。
「くえすちょん」
羞恥のためか、小さな声でいう。
「どこでまってるの?」
ああ、そういえば、裏門の場所をアサシンが知るわけがなかった。だから笑ってしまい、アサシンが俺を睨むが、冷たい目で睨まれたら心底凍える思いだろうけど、可愛らしさが勝ってしまっている。だから怖くなかった。
今回も聖杯戦争は起こりませんでした。いや、文章書きとめてたんで知ってたんだすけど、改めて読んでみると戦いが起こらない。
しかし、この話書くにあたって、Fate/zero Fate/stay night を再読、各ルート再プレイ、聖杯戦争の被害をメモしていったんですけど、zeroは龍之介のイメージが強いので人的被害すごいだろうと感じてはおりましたが、人的被害も物的被害やっぱりすごかった。
でも、stay nightの方はそんなんでもなかったですね。特にFateルートとUBWルートは魂喰いとかで被害がでましたけど、物的被害はバーサーカーとライダーくらいです。そして、三ルートのなかで圧倒的な被害のHFルート。Zero越えしたのがHFルートでした。
でも、見逃していた文章などがあると思うので、私の換算は間違ってます。
ちなみに、この物語のFate/stay night はどのルートを進んだかは作中で明らかにします。
それと悩んでいるんですが、他の陣営も書いたほうがいいですかね?
ご意見・ご感想お待ちしております。
今回、やばいフラグがたちました。