真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~ 作:クーロン
まぁ、誰かが噛まれるだけの回です
軍議は荒れに荒れたが、紅葉がなんとか袁術をなだめ、総大将は袁紹に落ち着いた。
そして、軍議がようやく再開した。
一番最初に決めるべきことは、洛陽へと続く二つの関を誰が攻めるのか、であった。
最初にあるのは、汜水関。次に虎牢関。
ともに堅固である。
そこを攻め落とすのを、誰がやるのかということが、議論の中心であった。
最初、袁紹は立候補を募ったが、誰もなろうとはしなかった。
そこで、袁紹は桃香を攻め手に決めた。
「劉備さん! 先陣は貴方でどうでしょう?」
「え……? 私ですか?」
「ええ」
「でも、どうしてですか?」
「なんとなくですわ」
「え……?」
「承知したらいかがでしょうか」
「烈さん!?」
ありえない話であったが、烈海王は承諾。
袁紹は気をよくしたが、桃香は困惑した。
「烈さん。勝算はありますか」
「刃牙さん。朱里と雛里がいます」
刃牙は、なるほどと呟いた。
弐
桃香は陣に戻り、全員に事情を説明をした。
それに対し、全員が渋い顔をした。
「厳しいですね……」
特に朱里は浮かない顔をしていた。
雛里もまた同様であった。
「兵力が少なすぎます」
「二人の知恵では、どうにかならんか」
「烈さんの期待に応えたいですが……」
朱里と雛里は二人で、地図とにらめっこを始めた。
他の面々も、関を落とす方法を考え出した。
だが、その場に範馬刃牙はいなかった。
彼はストライダムと話していた。
「ストライダムさん……親父の情報はありますか?」
「ユージローカ……残念ダガ、今ハ無イ」
「そうですか……」
刃牙もストライダムも、勇次郎についての予感はあるものの、確信はなかった。
果たして、いるのか。いないのか。
今の所、確定的な情報は皆無であった。
「ダガ、多分……ユージローハ、居ルダロウヨ」
「でしょうね……」
ストライダムは少しうつむいて言った。
参
一方桃香の陣では、なんとか策の大筋は決まった。
目の付け所は敵将の華雄であった。
真っ向から関を落とすのではなく、挑発をして誘い出すのが最も現実的な策であった。
だが、不確定要素も存在していた。
張遼である。張遼がどう動くかで、策の成否が分かれるだろう。
だがその挑発に、華雄と因縁がある孫堅の娘・孫策の協力を取り付け、より確実に華雄を誘い出す形にした。
「烈さん。上手くいきそうですか?」
「臥竜、鳳雛に仁君、軍神、小覇王と揃っている策です。上手くいきます」
烈海王は自信ありげに、そして誇らしげに言った。
刃牙は、策の詳しい話は知らなかった。
だがその代りに、その会議の時間では情報を集めていた。
曹操の所で、独歩から。孫策の所で、渋川から。
「烈さん。親父もこっちにいます」
「事実ですか?」
「ええ……渋川さんの所に居た人が、それらしい姿を見たと言ってました」
刃牙は、ボソリと呟くように言った。
烈海王は意外そうな顔はせず、ふむ……とだけ反応した。
「多分、親父は――」
「来るでしょう。ここに。この時代の英傑が集う戦に」
戦場に居るのに、二人の間は物静かであった。
だが、その空間は急に切られた。
「華雄が来たッッ」
「こっちに……ッ」
刃牙と烈海王の元へ、二人の兵が来た。両方とも、息切れをしていた。
少し泗水関の方を見ると、敵軍がこの陣へと迫っているのが見えた。
先鋒に居るのは、大斧を握りしめた女性であった。
表情には怒りが見え隠れしている。
「烈さん、成功ですか?」
「七割といったところです。本来は、兵の多い袁紹に当てる予定でしたが」
「こっちに来るのはマズイよね」
刃牙はそう言い、歩き出した。
「刃牙さん、どこへ――」
「止めてくるッッ」
敵は真っ直ぐに、突っ込んできた。敵の道は想像がつく。
刃牙は、その道の真上に立った。
華雄は速度を緩めない。
「このまま突っ切る! 貴様等も休むな!」
『オォォォォオオオッ!』
華雄は刃牙に目もくれず、突っ込んできた。
肆
ジャンプして、華雄の突撃を躱しざまに合わせた右は――――正確に華雄の顎の先端を捕え――――脳を頭骨内壁に激突させ――――あたかもピンボールゲームの如く、頭骨内での振動激突を繰り返し生じさせ――――典型的な脳震盪の症状をつくり出した。
さらには既に意識を分断された華雄の下顎へ、鐙に右足をかけた状態から、ダメ押しの左アッパー。
落馬する体勢を利用した――――左背足による廻し蹴りは、華雄を更なる遠い世界へと連れ去り――――全てを終わらせた!!!
その間 実に2秒!!!
声を忘れた両軍兵士達は――――ただただ目前の状況を見守るのみ。
これが、もうじき18歳を迎えようとする少年、範馬刃牙。ベストコンディションの姿である。
「親父ィ……そろそろ来るよなァ」
華雄の軍も止まり、静かになった戦場。
その戦場に、少年の声が小さく響いた。
次回に、最強決定戦ですッッ