真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~ 作:クーロン
範馬勇次郎が、暴れた。この闘いに収集はつくのだろうか…
巨凶、
これらの言葉は、全てたった一人の事を指す。
――範馬勇次郎。
個人が恐れる力ではない。
国が、世界が恐れる超暴力。
その
求めるのは闘い――正義も悪も
それが、範馬勇次郎。これが、範馬勇次郎。
そして、その
遺憾なく、古代中国の英雄に――古代中国の力に向けて、振るわれていた。
「貴様等の強さへの解釈、解説などは全て、弱き者共の
鬼は止まらない。
三国志の英雄相手に思う存分、その力を振るった。
鬼の肉は
鬼の血は
鬼の魂は
強者との闘いに。己の力の解放に。
壱
範馬勇次郎の闘いを、何人もの人間が見ていた。
始めてみる、権力では勝てない超規格外の暴力を。
数、武器などでは、到底覆せない範馬勇次郎という力の形を。
その中で一人の男は、医者の目でこの闘いを見ていた。
「……昂昇、七乃さん」
「どうした、兄貴?」
「はいはーい」
「至急、清潔な布と手術台になるような机を……十四名分お願いします」
鎬紅葉は、神妙な顔でそう言った。
弐
「チッ……弓がうるせェな」
勇次郎が呟いた。
そして、次の瞬間に紫苑を見た。
その時は紫苑が丁度、勇次郎に矢を向けた瞬間であった。
紫苑は寒気を感じた。
刃物に貫かれるような寒気だった。口の中が、渇いた。
一瞬だけ、まばたきをした。
「オメェの間合いだぜ」
「っ!」
勇次郎が紫苑の目の前にいた。
紫苑は何も叫ばなかった。叫ぶ余裕すらなかった。
だが――せめてもの余裕で、矢を射った。
外さない、外れない距離であった。
普段通り、無心で矢を放った。
「スッとろい矢だッッ」
矢は、弓の弦から離れぬうちに鷲掴みにされていた。
次の瞬間に、シッという鋭い呼気が聞こえた。
そして、急に視界が暗転した。
勇次郎の蹴りによるものであった。
垂直に綺麗に振り抜かれた足により、アゴを打ち抜かれ、脳を揺すられたのだ。
「弓の残りはキサマかァッッ」
勇次郎の双眸は、次に祭を捕えた。
祭と勇次郎の間には、距離がある。
大体、十五メートルほどだ。
祭は、矢を二本を同時に構え、射った。
一本は勇次郎の右足に、もう一本は胸に、真っ直ぐ吸い込まれるように放たれた。
勇次郎は避けない。
代わりに、ずいと前に出た。
攻撃のための動きであった。
それが、避ける動作になっていた。
――疾い!
その動きは、祭が今まで見てきたどんな人間よりも、どんな獣よりも素早かった。
祭はすぐさまもう一本の矢を取り出して、放った。
足には当たらないだろう。狙うなら、胴だ。
矢が、放たれた。
真っ直ぐ、範馬勇次郎の胴に向かい伸びて行く。
勇次郎は当たると同時に、身をよじり、一瞬だけ背を向けた。
矢は、勇次郎の薄皮を切り裂き、飛んでいく。
――外したか!
そう感じるのと同時に、何かが吹き飛んできた。
蹴りだ。
地上最強の生物が放つ、最強の蹴り技――後ろ回し蹴り。
それが、腹に入った。
祭は、内臓を吐き出してしまいそうな激痛を感じ、それから逃げるかのように、気を失った。
十三名いた将達。
残るは、三名。
参
凄まじい光景だった。
範馬勇次郎は、鈴々も星も、そして他勢力の音に聞く名将、猛将らを赤子扱いにしていた。
気付けば、残りは三人だ。
私に夏候惇、孫策。
勝てるのか?
敗けるのではないか。一瞬、そんな考えが私の頭の中を過った。
違う。勝てるのか、ではない。勝つのだ。
勝たなければ、これからがどうなる?
桃香様の理想はどうなる?
この男の闘いは、私達の理想を成すうえでは、避けられない。
避けてはならない。
この
なら、どうする? どうする!? どうやって勝つ!?
私は必死で探した。勝ちへの道筋を。
何がある!? 何かあるのかっ!?
だが、何もない。
あるのは、賊相手に武を振るった姿。鈴々と鍛錬で手合せした姿。星と鍛錬をした姿だ。
強敵と言える人間と全力を尽くし、戦った私がいない。
どこにも、いない。
そうこう考えている内に、勇次郎が私を見た。
……戦わなくては。腹を決めなくては。
私は、青龍を向けた。
呼吸を一つ。
二つ。
三つ目は吸わせてもらえなかった。
来たっ!
手刀か?
勇次郎が振り下ろしてきた。
柄で受けた。
凄まじい力だった。
こんな力で殴られたら、誰だって立っていられない。
頑丈な鈴々ですらが、一瞬でやられる訳だ。
次は……足か。
何故だろうか。それに、見覚えがあったのだ。
それも最近――
思い出したぞ。
烈だ。烈海王だ。
あった。あったぞ。いた!
私がいたっ! 強敵と、全力をだして、戦った私がいた!
敵は?
中国四千年。四千年の拳法だ。私達の二千年先を行った拳法だ。
どんな技だ?
理合だ。理にかなった武術だ。
こんな風に――
一撃、範馬勇次郎の足首に加えた。
私に向かわないよう、力を逸らした。
こうか? こうだ!
これが中国拳法の理合だ。
そう、分かった時だった。
ゆらり、と二人分の影が動いた。
肆
「にゃあああああっ!」
「はぁあああああっ!」
鈴々と星は、勇次郎の後ろから斬りかかった。
容赦などない。
範馬勇次郎に敬意を持つが故の、奇襲であった。
「鈴々! 星! 無事だったか!」
「なんとかな……!」
「まだクラクラするのだ~」
星は苦しそうに、鈴々は軽くふらつきながら、答えた。
立ち上がりはしたが、万全ではない。
だが、二人の目は確りと、範馬勇次郎を睨んでいた。
「一度敗れ、穢れた身体で立ち向かいおって」
勇次郎は、静かに吐き捨てた。
眼光は鋭い。
叩き潰すという意思を感じさせる、寒気のする眼光であった。
「……鈴々、星。正面からは私がやる。二人は、何としても、横からでも後ろからでもかかってくれ」
「てっきり、愛紗のことだから、『奇襲など、卑怯者のすることだ!』等とでもいうかと思っていたが……ヤレヤレ。少しは融通が効くようになったか」
「範馬勇次郎に正攻法では勝てない、などということは、分かりきっている」
「……勝つのだ。コイツには、勝たなきゃダメなのだっ!」
鈴々の言葉に、愛紗と星は頷いた。
愛紗は、大きく一息だけ吸った。
「行くぞ! 範馬勇次郎ォオっ!」
「お仲間が来て、チッタぁ強気になれたってかい」
「ああそうだ。それに、もう一つの武器も見つかった」
愛紗はそう言い、武器を構えて走った。
気合と共に、青龍の切っ先で突いた。
狙いは、勇次郎の顔面だ。
愛紗は、これが当たるなどとは思っていない。
案の定勇次郎は避けた。
――それでいいっ! 次に来る! 来たっ!
勇次郎の左手が動いた。
拳か、平手かなどと言うことは、どうでもいい。
ただ、どちらで叩くつもりか分かればいい。
愛紗は蹴り上げた。
範馬勇次郎の左手の、手首を蹴り上げた。
間違いなく、理合の技であった。
一瞬だけ、勇次郎に隙が出来た。
「行け! 鈴々! 星!」
愛紗は、叫んだ。
叫ぶのと全く同じタイミングで、星は勇次郎の右から、鈴々は左から切り込んだ。
ピタリと、完全に息が合っていた。
狙いは心臓。
二人の切っ先は、寸分とずれることなく放たれていった。
金属音がした。
甲高い金属音だ。
肉の内側で鳴った音じゃあない。
ただ、数本だけ勇次郎の髪が、空に舞っていた。
勇次郎の頭は下にあった。
丁度、愛紗の腹辺りの高さだ。
次の瞬間だった。
星の左ひざが、奇妙な音をあげた。
みじりっ
という、何かが肉の中で壊れるような、くぐもった音であった。
勇次郎の拳によってあげられた音だ。
星は、
かっ
かっ
と、熱い息を吐いた。
まるで、膝の中に直接、真っ赤になるまで熱した鉄の棒を、入れられたような気分だった。
――折れた!
星は考えて分かったのではない。ただ、感じた。
――だが、右足は生きている。やれる。まだやれるのだ、私は。
星は叫び、槍を振った。
「 っ!」
星が何と叫んでいたのか、何と言っていたのかは分からない。
ただ、憑かれたかのように叫んだ。
それと同時に、勇次郎の拳も伸びて行った。
力んでいない、モーションのあまりない一撃だった。
インパクトの瞬間は見えない。
その一撃で、星は血を吐き、倒れた。
「たあああああっ!」
鈴々は飛び掛かっていった。
勇次郎の頭に向かって、蛇棒を振り落とす。
勇次郎は柄を掴み、鈴々の懐に入り込んだ。
そして、腹へと掌底が伸びて行く。
「貰ったぁああっ!」
勇次郎が攻めに回った瞬間に、愛紗は勇次郎の後頭部を狙い、武器を振った。
鋭い。
だが、勇次郎の頭がまた下がる。
それと同時に、踵からの蹴り上げが来た。
右足の蹴り上げだ。
鋭い。
それが、愛紗の腹に突き刺さった。
さらに、みぞおちを切り裂くかのように、脚が上がっていく。
そして、胸へと到達した。
胸骨、肋骨が、破壊される音が聞こえたような気がした。
「愛紗っ!」
「邪ッッッ」
鈴々が一瞬だけ気を取られたのと、同時だった。
さっきまで上がっていた勇次郎の右足が急に、振り子のように戻ってきたのだ。
そのまま、右足は鈴々の頭を叩いた。
流れるような動作であった。
それで、二人が倒れた。
劉備軍――壊滅。
残るは、二名。
「一日に二度ッッ それも同じ相手に敗けるバカがいるかッッッ」
伍
ズチャリ……
ズチャリ……
無音になった戦場に、鬼の足音だけが響く。
もう、数では押せない。
だが、個人で押せる相手でもない。
でも、腹をくくるしかない。
雪蓮の背に、冷や汗が一筋だけ流れた。
汗が、背骨の辺りを真っ直ぐに駆けおり、腰にまで達するかという時に、雪蓮は弾かれたかのように、駆けだした。
「はぁああああっ!」
雪蓮は雄たけびをあげ、斬りかかった。
雪蓮は、勇次郎の闘いをしっかりとみていた。
勇次郎の闘いはシンプルだった。
重い拳を、相手にぶち込む。
重い蹴りを相手にぶち込む。
唯、己の力のみを信じて、ぶち込む。
ガードするなら、その上からぶち込む。
そして、ぶちのめす。
小賢しい策、技術などは、その力の前に叩き伏せられてしまう。
その力に、どうやって立ち向かうか――
方法は、たった一つしかなかった。
その力と戦わないという方法だ。
雪蓮は、胸に斬りかかった。
それと同時に、勇次郎の左脚が動いた。
剣も、胸も、顔も全てを巻き込み、とどめを刺すような蹴りだ。
雪蓮は屈んで、避けた。
それだけではない。更に低く、もっと低く体が沈んでいく。
そして、身体から勇次郎の右足元にぶつかっていった。
渋川剛気が好んで使う技だった。
勇次郎は跳ね、避けた。
それは、雪蓮が期待していたことだ。
雪蓮は勇次郎の背後に回り、鬼の貌と向かい合った。
「近くで見ると、随分と怖い顔してるのねっ!」
雪蓮は剣を振った。
鬼を袈裟切りにするよう、振った。
背中の鬼に、一筋だけ赤い線が出来た。
勇次郎がタイミングを合わせ、前に出たのだ。
致命傷には、なりえていない。
雪蓮は追うように、半歩前に出た。
前に出ると同時に、勇次郎の右足が吹っ飛んできた。
ブラジルのカポエィラに似ている動きだ。
雪蓮は、凄まじい圧力をもったそれを、剣の腹で受けた。
後ろに飛ばされないよう、必死で耐えた。
それでも、押された。
雪蓮が再び攻めようとしたときには、勇次郎は正面を見ていた。
「シュッッ」
勇次郎が鋭く息を吐いた。
それと同時に、雪蓮はいやな音と臭いを感じた。
雪蓮の真下から、走り駆けようとしている
ぼぼぼ、
という音。
そして、焦げ付くような臭いだ。
無論、それは幻聴だし、幻臭だ。
しかしそれを感じさせるほどの、凄まじい攻撃だ。
相手が常人なら、かわせない。
それどころか、もし当たればこの一撃で死ぬだろう。
良くても、骨が砕ける。
だが、雪蓮も常人ではない。
その一撃を、スウェーバックで避けた。
雪蓮の鼻に触れるか、触れないかの位置を、その一撃が通り過ぎて行った。
左足の蹴りだった。
その蹴りは止まらない。
天へ昇っていく。さらに高い天に昇っていく。
雪蓮は、人の足がこんなに長いものかと思った。
「あ……」
気付いた。
雪蓮は、気付いた。
――来る。まだ、何か来る!
雪蓮は下から来る攻撃に対して、慌てて首を振った。
しかし――
その逃げる頭を狙い、左足のかかとが落ちてきた。
それが、雪蓮の脳天を襲った。
同時に、後から上がった右足が雪蓮の顎を襲った。
雪蓮の頭は、勇次郎の左足の踵と右足で挟まれたのだ。
江東の虎の娘――雪蓮を葬った技の名は、余りにも皮肉な名であった。
陸
「虎王だ……」
本部以蔵は、低い声で呟いた。
「虎王は古流柔術の奥義……。やはり勇次郎も知っておったか。
虎王というのは、自分の両脚を虎の
漆
最後に残ったのは、春蘭一人だ。
範馬勇次郎は春蘭を見た。
そして、笑みを見せた。
「おめェはオレの右目を取るって言ってたな」
「当然だっ! 独歩の仇は、私がとる!」
春蘭は斬りかかった。
雄たけびをあげて、斬りかかった。
勇次郎は、軽く動いてそれを避け、イタズラっぽい笑みを浮かべた。
悪巧みをしている笑みだ。
「何を笑っているっ!」
「余りにも必死ってのが……どうにもこうにも……」
「黙れ!」
春蘭は斬り続けた。
全力で斬り続けた。
呼吸の時間も、心臓を動かす時間も、勇次郎を斬るのに使った。
吼え、斬りかかった。
だが、ただ剣を振るだけではない。
剣をフェイントにし前蹴り、三日月蹴りなども繰り出した。
空手を自分流にアレンジし、取り込んでいた。
「空手か……上手いことやるじゃねえかッッ」
「当然だ!」
春蘭は、そう言うと同時に前蹴りを放った。
勇次郎は右腕で防いだ。
だが、衝撃は無い。
蹴りはフェイントだ。
本命は――突き。
剣で右目を狙った突きだ。
それを放った瞬間だった。
ぱんっ
という、乾いた音がした。
鼓膜打ちだ。
勇次郎が両手を離すと、両耳から血が溢れ出した。
春蘭はたたらを踏んだが、踏みとどまった。
「勇次郎……貴様は……私が……」
そう呟き、顔をあげた瞬間だった。
勇次郎の右手の親指が、春蘭の左目のあたりに当てられた。
そして、その親指へ右の掌底。
その光景は、かつて地下闘技場で行われた、範馬勇次郎対愚地独歩の一戦での光景に、よく似ていた。
捌
春蘭の頭の中で、何かが引きちぎれる音が聞こえた。
なにか、太い糸を切るかのような……。
その音と同時に、左側の視界が弾け飛んだ。
一瞬で真っ暗に変わったのだ。
観戦していた人は見た。
何か、白い球体の物が春蘭の顔から――勇次郎が手を当てた辺りから、飛び出て来たのを。
眼球だった。
眼球が宙に浮いたのだ。
春蘭の左目にはポッカリと穴が開いている。
まだ、勇次郎は止まらない。
鬼が――哭いた。
そして、凄まじい音が聞こえた。
右拳が、風を斬る音だ。
その拳は、春蘭の胸に突き刺さった。
玖
勇次郎は春蘭の胸に刺さった拳を引き抜いた。
春蘭は立ったまま、動かない。
「これで仕舞だ。この時代の戦士の力……堪能したぜ」
勇次郎がそう言い、立ち去ろうとした時だ。
誰かが、地面を引っ掻いた。
「ゆうじろォ……」
立ち上がったのは、赤い髪の少女だった。
顔面は髪と同じように、いや、それ以上に真っ赤だ。
そして、戟を片手に握っている。
「……終わってない。まだ……終わっていない」
立ち上がったのは、先まで範馬勇次郎と闘っていた恋であった。
オッカシイな~
今回で勇次郎の大暴れが終わるハズだったのに…また大暴れしそうだ…
さて、必要ないかもしれませんが、一応まだ範馬勇次郎の紹介を書いていませんでしたので、書いておきます
13 範馬勇次郎 はんまゆうじろう
身長 推定190cm強 体重 推定120kg強 ファイトスタイル 特になし
刃牙世界最強のキャラ。初登場時にはそこまで理不尽な力は持っていなかったが、回を追うごとに化け物になっていった。偉業としては、アフリカゾウ(超巨大)を素手で葬る。時速20kmで流れるプールでバタフライ等。人間じゃねえ……はひぃ~~
闘争というものを、力の解放と言い、力以外の一切は不純物と言い切る。なお、技についてもないわけではなく、ありとあらゆる格闘技をマスターしているらしい。
背中の鬼は本気になった時に開放するもので、規格外の力を持つ。
個人的にベストバウトは、範馬勇次郎vs郭海皇