真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~   作:クーロン

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今回で、この小説の第一章、格闘士降臨編が終わります。
次回からは、バキでいう死刑囚編みたいなストリートファイト中心になるのかな……と妄想しています。
もっとも、バキキャラがもう新しく出ないか、と言われると微妙ですが……


男一代“侠客立ち”

 花山薫の頭に氣弾が当たる。

 しかも、ゼロ距離だ。

 周囲に閃光が迸る。

 その光が収まると同時に、人が倒れる音がした。

 

「はっ……はっ……っ!」

 

 倒れたのは凪だった。

 そして、花山薫は未だに立ち続けている。

 破裂した彼女の右足からは、血が流れ続けていた。

 呼吸は荒く、既に体力が限界であることが見て取れた。

 

「まだだ……まだ……」

 

 そうつぶやきながら、凪は拳を地に着けて立ち上がった。

 だが、一瞬でも気を抜けば、そのまま気を失ってしまいそうだった。

 意識が剥がれる度に、握撃で破裂した右足の激痛が、意識を引き戻す。

 その痛みだけが、彼女の意識を繋ぎ止めていた。

 立ち上がり、足の指を動かす。

 親指、人差し指、中指と順に。

 ――大丈夫だっ! まだ動く!

 動くのなら、闘える。

 凪はそう思い、拳を固めた。

 それでも、身体を突き刺す激痛で力が抜ける。

 ――頼む! あと少しだけ……!

 凪は願った。

 心から願った。

 それでも、血は止まらない。激痛も止まらない。

 そして、拳に己の意志を残したまま――倒れた。

 

   壱

 

「鎬はん! ホンマ、凪は大丈夫なんやろな!? もう、普通に生活出来へんとか……!」

「ええ、保障します。彼女は大丈夫です」

 

 洛陽内にある、紅葉管轄下にある、とある家屋。

 そこには、この戦での負傷した将達に一人一部屋与えられたうえで、まとめられていた。

 そして、新たに三人がそこに運び込まれた。

 だが、沙和と真桜は既に自分の部屋を出て、凪の部屋に集まっていた。

 そこでは、簡易ベッドの上で凪が横になっていた。

 彼女は安らかな表情で、寝息をたてている。

 

「さて……曹操さんにも、負傷を把握して頂きたいのですが、いらっしゃるでしょうか」

 

 紅葉はカルテを手にし、そう言った。

 

「華琳様なら……」

「ええ。ここにいるわ」

 

 沙和が、外にいる、と言おうとするのと同時であった。

 華琳はドアを開け、部屋に入ってきた。

 

「愚地さんは?」

「独歩も克巳も私からの頼みごと――洛陽の復興の作業中よ」

「神心会の館長達を雑用にする人がいるとは……驚きました」

 

 紅葉はそう言って、軽く笑みを見せた。

 

「言い出したのは彼等よ。……で、三人の容体は?」

「はい。まず、李典さんと于禁さんですが、見ての通りと言うのが一番です」

「歩き回れるだけの力はあるってことね」

「はい」

 

 紅葉はそう言い、沙和の方を向いた。

 

「彼女は右手首を脱臼しましたが……まぁ、克巳さんが肩と肘を脱臼した際、自力で治し闘い続けた実例がありますので、問題ないでしょう。そのあと、普通に花山さんと闘ったわけですし」

「沙和にはそんなこと無理なの!」

「となると……数日間は、添え木で手首を固定しておきましょう」

 

 紅葉はそう言い、もう一枚のカルテを手に取った。

 

「では、楽進さんですが……」

「ええ」

「疲労もあるのか、全身の筋肉が固まっています。数日は筋肉痛に悩むかもしれません。そして、右足ですが……」

「どないなったんや!?」

 

 真桜が若干、前のめりになって聞いた。

 紅葉は落ち着き払って、カルテを見たまま答えた。

 

「握撃で破裂した右足ですが、神経は無事でしょう。血管については縫合しました。そして傷跡については前例として、克巳さんが握撃を受けたことがあるのですが、傷跡が残っていません。ですから、楽進さんについても、傷跡が残らずに回復することも十分に考えられます」

「成る程ね……世話になったわ、鎬紅葉」

「いえ、私は医者ですから」

 

 紅葉はそれだけ言って、お辞儀して部屋をでた。

 廊下に、コツコツと靴の音が響く。

 

「キツイ仕事を頼んだわね……」

 

 紅葉が去ると、華琳は呟くような声で言った。

 

「あの、すいません華琳様」

「どうしたのかしら、真桜」

「ウチ等、華琳様のご期待に……」

「あなた達は、十分こたえてくれたわ」

 

 華琳は笑みを浮かべ、言った。

 

「でも、花山は立ったままだったの……」

 

 沙和が不安げに言った。

 その視線は床を見ている。

 

「ええ。立ったまま気絶していたらしいわ」

「立ったまま!?」

 

 真桜は驚き、目を大きく開いて言った。

 沙和も視線をあげた。

 

「そう」

 

 華琳は頷いて言った。

 そして、二人の目を見た。

 

「そして、花山が気絶したあの状況では、生殺与奪の全権は私達が持っていた。だから……勝ち。私達――いえ、あなた達三人の勝ちよ」

 

 華琳がそう言うと、真桜と沙和は小さく笑みを浮かべ、頭を下げた。

 

「あれ程の怪物を相手に、よくここまで戦ったわ。あなた達三人に五日間の休みを与えるわ。しっかり体を休めなさい」

 

 華琳は柔らかな声色でそう言って、部屋から出た。

 

「…………」

 

 華琳は廊下に出ると、少しだけ眉間にシワをよせた。

 シワをよせ、花山薫の戦いを思い出していた。

 ――どうして、あれ程に……

 不可解だった。

 何故、倒れないのか。

 何故、闘い続けられたのか。

 ――董卓の人望……? 違うわ。もしそうなら、董卓ともっと繋がりの深い呂布は、範馬勇次郎と死ぬまで戦ったはず。なら……

 廊下を歩きながら、考えていた。

 ――独歩に聞いてみるしかないわね

 だが、答えはでない。

 華琳は答えの出ない問いを、頭の隅に押しやって外に出た。

 

   弐

 

「お、もう目が覚めた。ホンッとタフだな、花山さん」

「……刃牙か」

 

 連合軍の将達が寝ている家屋とは、また別の家。

 花山薫はそこで、仰向けで横になっていた。

 簡素な布の服を着ている。

 その下の身体には包帯が巻かれ、闘いの凄絶さを物語っていた。

 

「なんで……オメェもこっちに居るんだ」

「俺だけじゃない。他にも大勢いる」

 

 刃牙はそう言い、今までに分かっている人たちを挙げた。

 そして、彼らがどこにいるのかも。

 花山薫は何も言わず、聞いていた。

 

「そして、全員が原因に言っているのは“鏡”だ。それも大昔の。花山さん、心当たりは」

「……木崎が持って来た鏡を触ったぐらいか」

「多分、それだと思う」

 

 刃牙が言い切った。

 

「で、花山さんはこれからどうする?」

「これからってェのは」

「もう、気付いているよね。ここは、俺達がいた世界じゃない」

 

 花山薫は何も言わない。

 だが、動揺しているふうではなかった。

 

「事実、ここは大昔の中国だ。そして、俺達はここから帰る手段を探さないといけない」

「だろうな……」

「それで、花山さんはどうするのか、ってこと」

 

 刃牙がそう言うと、花山薫は少し考えたようにして、言った。

 

「オメェのとこには、烈の野郎がいるんだったな」

「ああ」

「どっちにしろ、俺はここには土地勘が無ェ……。お前さん達が、手の届く距離にいることにさせてもらおうか」

「うん、分かった。じゃあ、烈さん達にもそう言っておく」

「ああ……」

 

 そう言い、花山薫は外に目をやった。

 何となく、物思いをしているようであった。

 

「何か、他にもある?」

「……昨夜、世話になったヤツがどうしたのか、と思ってな」

 

 花山薫はそう言っただけで、何も言わなくなった。

 部屋が沈黙に包まれる。

 その時、ドアがノックされた。

 

「花山さん。お客さんです」

「……誰だ」

 

 ドアの外から聞こえてきたのは、烈海王の声であった。

 花山が聞くと、誰だという返事はなく、ドアが開いた。

 まず、最初に入ってきたのは烈海王だった。

 そして、その後ろから二人の少女が入ってきた。

 淡い青色の髪の少女と緑の髪をした少女であった。

 

「この二人が、花山さんに用があるとのことですが、ご存知ですか」

「いや……知らねェ」

 

 花山薫は首を横に振って、そう言った。

 

「……何やら、事情があるようですね」

「花山さん、俺達はちょっと出てるよ」

 

 烈海王は花山薫の微妙な変化を読み取ったのか、そう言った。

 それを聞いて、刃牙は部屋から出て行った。

 そして、烈海王も出て行き、部屋には三人だけが残った。

 部屋を再び沈黙が支配した。

 

   参

 

 廊下を歩きながら、二人の男が話していた。

 先程、花山薫が横になっている部屋を出た、範馬刃牙と烈海王だった。

 

「烈さん、さっきの闘い――どう思います」

 

 刃牙は一言だけ言った。

 

「凄まじい闘いでした――とは、求める回答ではないのでしょう」

 

 烈海王はそう言い、話し続けた。

 

「勝者、ということであれば花山氏でしょう」

「生殺与奪の全権をとられたけどね」

「それも事実です。ですが――」

 

 烈海王は立ち止まって刃牙の方を向いた。

 

「わたしは、『強さ』というのは、自己(おのれ)の意を貫き通す力。我が儘を押し通す力だと思っています」

「…………」

「花山氏は、己の意を貫き通しました」

「あの二人のことだよね」

「ええ。おそらく、あの少女を守らんとしたのでしょう。そうである以上、勝者は明白――」

 

 烈海王は、息を吸った。

 

「花山氏が勝者です」

 

 烈海王はそう言い切った。

 

「烈さん……。俺も、同じです」

 

 刃牙もそう言い、再び家屋の外へと向かって歩き出した。

 

   肆

 

「逃げるんじゃあなかったのか……」

 

 最初に口を開いたのは、花山薫だった。

 

「ええ。そのつもりよ」

 

 詠が言った。

 

「でも、あの状況で城門から兵と一緒に逃げ出したら、董卓はここにいると言うようなものでしょ」

「目立つだろうな……」

「だから一旦、町の民に化けることにしたの。幸い、月は洛陽(ここ)に来てから、あまり外に出れなかったから、民にも顔は知られていないわ。……連合軍にもね。そして、本来なら董卓がいる宮殿には、火をつけたわ」

「…………」

「これからは、ほとぼりが冷めてから、どこかに逃げるつもり」

「どこかってのは」

 

 花山薫が聞いた。

 

「故郷に戻ったら、私達の顔を知っている人は大勢います。だから、こんなことになってしまっては、もう故郷に帰れません……」

 

 花山薫の問いに答えたのは月だった。

 うつむいているため、表情は見えない。

 

「ですから、どこかでひっそりと暮らすことになります」

 

 月はそう言い、顔をあげた。

 

「……住むトコの伝手ならあるぜ」

 

 花山薫は天井を向いたまま言った。

 

「え……?」

「刃牙と烈……さっき、ここに居た二人に相談すりゃあいい」

「でも、それじゃあそいつ等に迷惑かかるわよ。それに、月をどうするかも分からないのに……!」

「問題ねぇ」

「そんなこと言われても……!」

「アイツ等なら、悪いようにはしねェぜ」

 

 詠は訝しんでいた。

 だが、花山薫を見て、嘘ではないと思ったのだろう。

 

「……分かったわよ。まず、さっきの二人をここに呼ぶわ」

 

 そう言って、詠は部屋から出た。

 残された月は、少しおどおどしながら訊いた。

 

「……連合軍の狙いって知ってますか?」

「知らねぇ」

「私が誰か、というのは」

「知らねェ。眼鏡かけたのが、オメェの部下ってのは聞いた」

 

 花山薫は天井を見たまま答えた。

 月は再びうつむいて、小さな声で言った。

 

「私は……董卓といいます。そして、連合軍は私の命を狙っています……」

「へェ……」

 

 花山薫は特に驚くでもなく、淡々としていた。

 

「まだ、私達を助ける気ですか……? 私達を抱え込んだら、ばれた時にどうなるのか、分かりません」

「ああ」

「身体がそこまで傷ついて、なんで……なんでまだ――」

「一晩、世話になった」

 

 董卓は言葉を失った。

 何て言えばいいのか、分からなかった。

 花山薫は、そう言っただけだった。

 つまり、やったことはそれだけなのだ。

 たった一夜の宿を貸し、それだけで命を張ったのだ。

 彼女の口が、何度かぱくぱくと動いた。

 

「たった一晩だけで……」

 

 何とか出た声は、蚊の鳴くような声だった。

 

「たった一晩、泊めただけでですか……?」

 

 花山薫は無言でうなずいた。

 そして、思い出したように口を開いた。

 

「オメェらが無事でよかった……」

 

 ぶっきらぼうな言い方だった。

 だが、同時に温かさもあった。

 

「…………」

「……どうした」

 

 董卓は鼻をすすって、小さな声で呟いた。

 

「月……です……。私の……真名……」

 

 月は鼻をすすりながら言った。

 

「真名ってのは何か知らねぇが……もらっておくぜ」

 

   伍

 

 一九一年

 当時、一大勢力として知られた董卓勢力は、ある日、反董卓連合と戦うことになる。

 自軍壊滅の憂き目に会うも、その夜、一夜の宿を貸した喧嘩師により、董卓本人と賈駆が守られることとなる。

 城門の前に立ち、我が身を盾に二人を守り抜いた、この喧嘩師。

 彼は、どんな数相手にもひるまずに闘い続け、気絶してなお、立ち続けたとさえ言われる。

 以来、この喧嘩師を侠客(おとこ)の鑑として崇め『侠客立ち』と称し、その喧嘩師が背中に彫物をしていたのを真似、その侠客にあやかろうとする人間が生まれることとなる。

 

   陸

 

 唯貸一夜宿

   其名筈一夜亡

 

 被救喧嘩師

   恩返只一昼夜

 

 総身被打斬

   尚不退侠客立

 

 既失己意識

   尚否倒侠客立

 

 既総力尽果

   男一代侠客立

 

           月




え~っと、最後の漢詩(っぽい)ものは、モノスゴイ適当です
何となく、という雰囲気で書いてあるので、押韻だとか絶句とか律詩とか一切考えていません。
ですが、ここが間違っているとか、こうした方がより漢詩っぽいとかのご意見がありましたら、御一報よろしくお願いいたしますッッッ
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