真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~   作:クーロン

19 / 75
新章のプロットが固まるまでの間、各バキキャラ達にスポットライトを当てた閑話をやろうと思っています。
大体、4~5回くらいやるかもしれません。今回は第一弾の鎬紅葉&ビスケット・オリバです


閑話
洛陽にて


 鎬紅葉の診療日誌

 

 今回の戦では、範馬勇次郎の大暴れで多数のケガ人がでた。

 そうであるこそ、私のような医者は余計に忙しくなる。

 そして今日、もう一つ仕事が増えた。

 洛陽で各諸侯が復興作業をしている間、怪我人の様子を見ることが出来ないので、ケガの治り具合をを後で纏めて教えてほしい、とのことだ。

 これはもっともな要求だ。

 そして、なるべく多くの情報を伝え、そして深いことを伝えられるように、怪我人達の状態や生活をこの診療日誌に残す。

 

 〇月×日

 

「どこか、痛みを感じる時は?」

「呼吸する度に胸が痛みます」

「怪我した時と比べて、楽になりましたか?」

「はい」

「……なるほど。退院は三週間後を予定していましたが、それよりは早くなりそうですね。ですが、治りかけですので、運動をしてはいけません」

「分かりました」

 

 関羽さんの容体は、非常に安定している。

 私の言いつけも今のところはしっかりと守っており、心配事の少ない患者だ。

 このような人が多いとありがたいのだが……。

 

「一つ聞きたいのだが……」

「何でしょう」

「鈴々……張飛は、しっかりと鎬先生の言うことを聞いていますか?」

 

 この時、私はきっと苦笑いをしていただろう。

 

「いえ……全然聞いてくれませんね。退屈だ、と言ってよく部屋を抜け出します」

「やっぱりか……」

 

 関羽さんはそう言って、溜息を吐いた。

 やはり、義姉妹というだけあって性格も分かっているらしい。

 

「すまんが、部屋を相部屋に出来るか?」

「ええ。貴女がよければ可能です」

「なら、鈴々と相部屋にしてくれ」

「分かりました」

 

 私はそう言い、部屋を出た。

 次は……すぐ隣の張飛さんの所だ。

 

「兄貴ッッ!」

「どうした、昂昇」

 

 部屋を出ると同時に、昂昇の声が聞こえた。

 昂昇は今、外から戻ってきたのか、軽く汗をかいていた。

 死刑囚と闘い、顔面を吹き飛ばされたと聞いた時には不安に思ったものだが、今の昂昇は健康そのものだ。

 そして、強くなろうとしている。

 その弟を私の仕事に付きあわせるのは心が痛むが、人手が足りない以上、仕方ない。

 

「張飛が逃げ出した」

「またか……劉備さんに連絡は」

「もうしたぜ」

「そうか……なら、また後で診るとしよう」

 

 説教なら、誰かがやるだろうと思い、私は張飛さんの部屋を飛ばして、その隣の部屋に行った。

 趙雲さんの部屋だ。

 ノックをし、ドアを開ける。

 そして……

 

「ハァ……」

「む?」

 

 溜息を吐いた。

 この人も中々の問題だ。

 部屋に入った瞬間、臭いで分かった。

 部屋にあるのは、酒が入った徳利。

 そして、メンマが入った壺……。

 

「昂昇。酒とメンマを没収してくれ……」

「……分かった」

「待て! せっかく、頑張って見つけたメンマと酒を……!」

「没収します」

「鎬! メンマと酒は百薬の長と言うではないか!」

「メンマは言いません」

 

 趙雲さんが抗議する間にも、昂昇がテキパキと酒とメンマを回収していく。

 本当によくできた弟だ。

 

「昂昇、それは全て劉備さんに渡しておいてくれ」

「分かってる」

「くっ……! せっかく集めた物を……っ! キサマには血も涙もないのか!」

「ありますよ。まず、怪我人に酒はお奨めできません。そしてこのメンマ……塩分過多です。将軍の健康のため、没収します」

 

 そう言い、私と昂昇は部屋を出た。

 『返せ!』とドアの向こうから聞こえたが、それは無視だ。

 そして、あの状態を見る限り、心身共に健康だろう。

 

 〇月△日

 

 今日、容体を診るために怪我人の部屋に向かっていると、廊下で愚地先生と出会った。

 右目には新しく買った眼帯がまかれている。

 

「愚地先生、どなたかのお見舞いですか?」

「おうよ」

 

 愚地先生はそう言い、私が行こうとしていた部屋に入った。

 許褚と典韋の部屋だ。

 

「あ、独歩!」

「独歩さん! 今日は早いですね」

「昨日は来れなかったからなァ。その分だ」

 

 愚地先生は、特に差し入れを持って来たわけではない。

 ただ、二人と談笑していた。

 

「そういやぁよ、紅葉」

「なんでしょう」

「コイツ等の退院って何時になるんだ?」

「脳震盪だけだった許褚さんの退院は少し早めです。脳にも異常は今のところは見られません。観察期間が明後日までですので、それ以降は、いつ退院して頂いても構いません。

典韋さんは手の骨折がありますから、それが完治してからです。明後日以降ならですが、出歩く分には構いません。ですが、復興作業は厳禁です」

 

 私は持っていたカルテを見て答えた。

 そして、さっきの会話を見る限り、脳の異常も感じられない。

 念のため、ということで入院させてはいるが、もう退院しても問題はない。

 

「良かったじゃねえか。オイラよりは軽いぜェ」

 

 愚地先生は二人を見て言った。

 

「愚地先生の場合、私がいなければ死んでいましたから。彼女たちの場合、私でなくとも命は助かったでしょう」

「含みのある言い方じゃねえか」

 

 愚地先生は笑みを見せて言った。

 

「はい。今後の生き方は、大きく変わったでしょうから」

「ッたく……またオメェに世話になったなァ」

「いえ、私は医者ですから」

 

 私はそう言い、お辞儀して部屋に出た。

 そして隣の部屋に向かった。

 ドアをノックし、開ける。

 

「む……? 鎬か」

「はい。回診の時間ですので」

 

 入ったのは夏侯淵さんの部屋だ。

 夏侯淵さんはベッドの上で本を読んでいた。

 そして、その本を閉じた。

 

「食事はとれましたか?」

「ああ」

「日常生活を送るうえで、支障をきたすような苦痛は?」

「ないな」

「では……」

 

 何度か質問をしたが、夏侯淵さんは全てに的確に答えた。

 身体も、大きなケガはなく健康そのもの。

 この人の退院も、早い内だと思って間違いない。

 

「分かりました。この調子のままでしたら、明後日以降はいつ退院していただいても構いません。ですが、何か異常があったら、すぐに知らせてください」

「分かった」

 

 それだけ言い、向かいの部屋に行こうとドアを開けた時だった。

 

「スマン、鎬。私も一つ質問をしたい」

 

 夏侯淵さんが言った。

 

「なんでしょうか」

「姉者の容体を聞きたい」

「分かりました」

 

 私は短く答え、夏候惇の容体が書かれたカルテを取り出した。

 日本語で書かれているカルテなので、読めるワケはないだろう。

 一文字一文字、しっかりと朗読した。

 

「……以上です」

「重傷だな……」

「ですが、適切な処置を行いました。時間はかかりますが、完治するでしょう」

 

 夏侯淵さんは暗い声で言った。

 その不安を消すように私は言った。

 

「そういえば……独歩殿が勇次郎と戦った時はどうだったか、知っているか」

 

 思い出したかのように、夏侯淵さんが言った。

 

「応急処置は私がしましたから、大体は」

「なら、教えてくれないか」

「分かりました」

 

 愚地先生のケガとなると……。

 

「胸骨がボロボロでした。右目も取られ、心肺停止……といったところです」

 

 当然、これが全てではないハズ。

 だが、はっきりと言えるのもこれだけしかない。

 

「……姉者より重いな」

「ですが、愚地先生は無事に復帰しました。あなたの姉も復帰できると思います」

「……そうだな」

「では、退院のことについては曹操さんに自分から伝えておきます。夏侯淵さんはゆっくり休んでいてください」

 

 私はそうとだけ言い、部屋を出た。

 次はここの向かい……夏候惇さんの部屋だ。

 そして、軽くドアをノックした。

 

「独歩か!?」

「紅葉です。診察の時間ですので、入ります」

 

 大怪我だというのに、部屋の中から元気な声が聞こえてきた。

 部屋に入ると、夏候惇さんは不満そうな顔をしていた。

 

「またお前か……。独歩は何をしているのだ。結局、昨日も来なかったぞ!」

「今、来てますよ」

「むぅ……」

「どうかしましたか?」

 

 喜ぶような反応をするか、と思ったが想定外だ。

 夏候惇さんは、何か考えるように唸った。

 

「いや……この眼帯をいつ返そうか、と思ってな」

「愚地先生は自分で新しいものを買ったみたいですよ。それと交換になるかもしれません」

「なら、貰ってもいいのか?」

「かもしれません」

 

 話すぶんには、極めて普通だ。

 呼吸するときにも、顔が歪まないから痛みはあまりないのだろう。

 だが、聞いてみないことには分からない。

 それを聞いたら、今日は終わりだ。

 

 〇月□日

 

「右足の調子は?」

「痛みはありません。ですが、力を入れると痛みます」

「分かりました。数日間はあまり、力を入れずに過ごしてください。あと、食事はとれましたか?」

「はい」

「内臓……胃には、大きな傷はないようです。では、包帯を取り換えますので右足を動かさないでください」

 

 楽進さんも身体に、特に異常はないようだ。

 握撃の治療というのは、中々出来る事ではないからいい経験だった。

 

「あと、面会希望が届いています。今日の正午辺りで李典さんと于禁さんが来るそうです」

「分かりました」

「それでは、お大事に」

 

 楽進さんと甘寧さんの部屋で診察を終え、自分の医務室に戻る。

 今日は、自分一人ではどうにもならないのだ。

 昂昇と渋川先生が来るまでは……。

 二人が来たのは、部屋に戻ってから、大体三十分くらい経ってからだった。

 

「兄貴、渋川さんを連れてきた」

「……分かった」

「どうも二人が、ご迷惑をおかけしているようですな」

「いえ、渋川先生が謝る事ではありません」

 

 渋川先生が頭を下げた。

 だが渋川先生が頭を下げても、あの二人の意識が変わらないと、どうしようもない。

 

「……行きましょう」

 

 私は、小さな声で言った。

 そして、向かったのは黄蓋さんの部屋。

 ノックはせずに、ドアの取っ手に手をかけた。

 

「……予め言っておきます。昂昇は酒の没収を。渋川先生は抵抗された場合に、取り押さえてください」

 

 小さな声でそう言い、ドアを勢いよく開けた。

 

「黄蓋さん! 隠し持っている酒を渡して頂きますッッッ!」

「急になんじゃ!?」

「昂昇ッ ベッドの下だッッ 私は引き出しを見るッッ!」

「兄貴ッッ あったッッ 徳利だッッッ!」

「お主ら! 何をしとるっ!」

「祭さん」

「おお! 渋川老もおったか! あの二人を止めてくれんか!」

「いや、ワシも鎬さん側でな。暴れるようなら、取り押さえろと言われまして」

「何じゃと!?」

 

 黄蓋さんはベッドの上で横になっていた。

 出るな、という言いつけを守っていたのはいいが、酒を持ち込んでいるのは容認できない。

 

「鎬! これは薬じゃ! 言うじゃろ、酒は百薬の長と!」

「趙雲さんと同じ言い訳をしますね……。薬は過ぎれば毒になりますから、没収します。薬が必要でしたら、私に直接言ってください」

「ええい、この頑固者の藪医者めが!」

「なんとでも。昂昇ッッ! まだあるハズだ!」

「鎬ぃっ! 貴様は儂を衰弱死させるつもりじゃな!」

「……たかが酒ですよ」

 

 これで、何件目だろうか。

 この人は何度も酒を病室に持ち込んでいる。

 その度に没収しているが……正直、いたちごっこだ。

 何度言っても改めようとしない。

 

「何度も言ってますが、怪我人に酒は奨められません」

「ケガなどないじゃろう!」

「内臓がどうなっているか、分からないでしょう。内臓の傷があった場合、毒になります」

「飲んで、どうということがない以上、無事じゃろ」

「何かあってからでは遅いのです。いい加減、禁酒してください。一生というワケではありませんから」

 

 そうは言っても、この人は聞かないだろう。

 趙雲さんと違って、足は無事なためスグに抜け出して酒を持ってくる。

 本当にどうしたものか……。

 額に手を当て、考えていた時だった。

 ドアが開く音がした。

 

「祭~。お酒を取りに……げ」

「孫策さん……最近、大人しくしているかと思ったら……」

「あー……お取込み中?」

 

 入ってきたのは、孫策さんだ。

 最初は酒を持ち込んでいたが、最近は態度を改めたと思っていたが……そういうことか。

 

「孫策さん、酒はダメと言ったハズですが」

「ゴメンね。わたし、お医者さん嫌いなのよ」

「それでも、しっかり守っていただきます」

「…………」

「……取り押さえろ、昂昇ッッ! 紐切りを使っても構わんッッッ!」

「分かったぜ、兄貴ィッッッ」

「チッ! 面倒なことになったわね……痛いっ! 痛い痛い! お爺ちゃん放してっ!」

「雪蓮嬢や……健康に気を遣った方がええよ」

 

 孫策さんの指を、渋川先生が捕り背中に回った。

 これは極められているだろう。

 まったく……これで、少しは懲りるといいのだが。

 

 

 軍師候補 ビスケット・オリバ

 

 

「冥琳、面白ェものでも探してんのかい?」

「私にとっては面白いぞ」

「へェ……」

 

 オリバと冥琳は洛陽にある朝廷の書庫に入り、とある物を探していた。

 書庫には、天井につくほどに高い本棚に、ぎっしりと本がつめられていた。

 

「で、何を探してんだ」

「……地図と台帳だ」

「ってコトは……コイツか」

「随分と速いな」

「さっき読んだものだからな」

 

 オリバは冥琳に二冊の本を渡すと、グルリと周囲を見渡した。

 その目は、どこか好奇に満ちた目だった。

 

「それにしても……ここには貴重な本が集まっているじゃねえか。孫子、呉子、六韜だけじゃねェ。拳法書まで完備してるぜ。北派から南派までしっかりとある」

「……読めるのか?」

 

 冥琳は心底驚いたような顔で言った。

 オリバは冥琳の顔を見て、ニィ……と笑って言った。

 

「バカ力だけが自慢と思っていたかい?」

「正直……な」

「言ってくれるじゃねえか」

 

 そう言って、くつくつと笑った。

 

「……オリバ」

「なんだい。お目当てのモノは見つかったんじゃねえのか?」

「いや……文官の仕事、やってみるつもりはないかと思ってな」

「性に合わない仕事だ」

 

 オリバは一笑に付し、書庫を出て行った。

 冥琳は

 待て!

 と言って、その後を追った。

 

「ウチの実情は分かっているな」

「文官不足だろう?」

「ああ。だから、少しでも出来る人材は欲しい。オリバの場合、ここの文字は読める。読めれば大体の場合は書けるから、書きの方も心配ないだろう。そして、私達が知らない知識もある。……十分、やっていけるぞ」

 

 そう言われると、オリバはアゴに手をあてて考え出した。

 冥琳はもう一押しか、と思って畳み掛けることにした。

 

「何なら、交換条件でも構わんぞ」

「へェ……」

 

 そう聞くと、オリバは子供のような笑みをみせた。

 

「そういやぁよ。こっちじゃあ、肉があんまり食えねえんだ。それを何とかしてくれたらいいぜ」

「……そんなことでいいのか? だが、あまり大量になると……」

「オイオイ。俺一人分だぜ? 別に大した量じゃねえ」

 

 冥琳はその言葉を聞くと、ふむ、とだけ唸って考え出した。

 恐らく、損得勘定をしているのだろう。

 

「どれくらい食うのだ?」

「三十キロ辺りが妥当ってとこか」

「ふむ……実際、その量とはどれくらいだ」

「さぁ? こっちの単位を知らねえからな」

 

 オリバはそう言い、笑った。




今回、オリバの肉話が後半にありましたが、実際の量は最大でどれ程なのか計算してみました。

計算するシーンとしてケガ(軽傷)があるバキの91話を基準に計算します。

ダメージ ショットガンによるもの。両腕にいくつもの小さい穴が出来るくらい。
食ったステーキを一般的で大き目の300gとし、皿の枚数が大体90枚前後(自力で数えました。ただし、絵にある量なのでこれ以上も考えられる)
つまり、一回の食事で27㎏の牛肉をオリバは食べます。三食で81kg/日
牛一頭が大きくなり、乳を出すようになる頃が600~700kg。その内、食えない部分――骨が7%、頭と足が4%、血が6%、皮が6%と計23%を捨てます(タンやスネは無視)。
で、残りを全部オリバが食べるとしても、462~539kg
小数点第一位まで計算し、一頭で5.7~6.6日持つという結果に。
……孫呉、オリバの維持費で倒れるんじゃね?

尚、10万キロカロリー摂取については、動物園の像が一日あたり4万キロカロリー辺りで生活しています。
オリバ=像×2.5ッッッ! 

……孫呉、ガチで倒れるんじゃあないだろうか
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。