真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~   作:クーロン

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閑話の二話目です。
今回は、愚地親子の番外編になりました。


平穏な時を

 反董卓連合が解散し、各諸侯は自分の領地に戻った。

 怪我人は鎬紅葉から退院の許可を貰い、それぞれの居場所に戻った。

 そして、わずかな間の平穏を楽しんでいた。

 

 

 愚地独歩編 武神の加護

 

 

 まったくの偶然だった。

 華琳はいつも通り朝早く起きた。

 だが、ちょっと中庭で散歩をしたい気分になり、外に出た。

 外の空気は冷たかった。

 まだ、日はほとんど出てなく、青白い光が差しているだけだ。

 草木の葉には露が溜まっている。

 静かな朝であった。

 だが、その静寂を鋭い呼吸が断ち切った。

 

「シッッッ」

「独歩……」

 

 華琳がその音源に目をやると、愚地独歩の姿が目に入った。

 独歩は華琳の声に気付いていないのか、黙々と宙に向かって拳で突いていた。

 正拳中段突きだ。

 何回、突きを放ったのだろうか。

 独歩は一息ついて、両腕を下ろした。

 

「お疲れ様」

「お、華琳。オメェ、いつからいやがったんだ?」

 

 独歩は笑みをみせて言った。

 

「ついさっきからよ」

「意地悪いなァ、オメェはよォ。声ぐらいかけてくれたって、いいじゃねェか」

「あら? 私は声をかけたわよ。気付かなかったのは独歩じゃない」

「そいつァ、悪かったな」

「別にいいわよ。集中していたみたいだし」

 

 華琳はそう言って笑みをみせた。

 独歩は近くに置いてあった、手ぬぐいをとって顔の汗を拭きとっている。

 ちょっと会話が止むと、異様なほどの沈黙が二人の周囲を包んだ。

 華琳はその沈黙が居心地悪く感じ、口を開いた。

 

「ねぇ、独歩。毎日千本やっているって、本当?」

「ああ。だから春蘭や秋蘭も避けられねえんだ」

「ふぅん……」

 

 華琳は鼻を鳴らした。

 そして、思いついたように言った。

 

「ねぇ、私相手にやってみてくれないかしら」

「オメェじゃあ避けれねえよ」

「やってみなければ分からないわよ」

「そりゃあそうだ。……やってみるか」

「ええ。やるわ」

 

 華琳はそう答えて、構えた。

 膝を軽く曲げ、右手を前にし、左手はちょっと引いている。

 そして、一度だけ深呼吸をした。

 

「じゃあ、行くぜェ……。上段の正拳――顔面への突きだ。しっかりと守りな」

「分かったわ」

「突くぜ」

 

 そう言って、一呼吸あるかないかの間だった。

 独歩の右手が、華琳の視界から消えた。

 華琳は両手で顔を守ったが、その隙間を拳が通り抜けた。

 鼻の前で、拳が止まった。

 

「当たっちまったなァ」

「……本当に消えるのね」

「次は中段に前蹴りだ。水月(みぞおち)を守りな」

 

 独歩はそう言い、前蹴りを繰り出した。

 その蹴りは、やはり華琳の視界から消えた。

 そして、水月に爪先が触れるか触れないかの位置で止められた。

 

「なるほどね……。苦労するわけね」

「そりゃあ俺は、コイツ等……基本技を毎日千本を続けているんだ。初めて受けるヤツに簡単に受けられたら、たまんねぇや」

 

 独歩はそう言い、笑った。

 

「で、華琳よォ。お前さんはいつまでも此処にいていいのか? お上なんてやってりゃ、仕事とか多いだろうよ」

「ええ……そうね。でも……」

 

 華琳は思い出したかのように言った。

 

「午後からは空くのよ」

「へェ。まあ、オメェも偶には休んだ方がいいぜェ」

「で、街に行こうと思っているのよ」

「お、いいじゃねぇか。毎日、けっこう賑わっている。気分転換には……」

「そうじゃなくて……」

 

 そこまで言って、華琳は溜息を吐いた。

 

「独歩も一緒に行く気はないかしら?」

 

 それを聞いて、独歩はきょとんとした顔になった。

 そして、くつくつと笑った。

 

「つってもよォ。午後になりゃあ、春蘭とか季衣とかが来ちまう。行くとしたら朝に……」

「約束でもしてるの?」

「そういうワケじゃねえ」

「ならいいじゃない。ちょっと、一緒に行きたい所もあるのよ」

「……ならしゃあねェ。アイツ等には悪いが、一緒に行くかァ」

 

 独歩は頭を掻いて言った。

 

「じゃあ、正午に門で待っていなさい」

「オウよ」

 

   壱

 

「……まったく。正午に待っていなさい、と言ったのに……」

 

 華琳は門のところに来て、そう言い溜息を吐いた。

 太陽の位置は丁度、正午の位置を指している。

 間違いなく正午の時間だった。

 

「はぁ……」

 

 ちょっと早かったのかもしれない、と華琳は思った。

 天気はあまり良くない。

 曇りだった。

 だが、外にいる分には楽なので、降ってさえこなければ、出かけるのにはいい日だ。

 ――遅いことについて、なんて言ってやろうかしら。

 そんなことを思いながら、待っていた。

 大体、五分くらい待っていた時だった。

 

「なんだ、随分早いじゃねえか。部屋まで迎えに行ったってのによォ」

「……あなたが遅いのよ」

 

 華琳の後ろから声がした。

 独歩の声だった。

 

「で、何よ。その格好」

「空手着で出歩くわけにはいかねェだろうが。で、街の服屋に無理言って作らせたんだ。コイツが意外と、着るのに時間がかかってな」

 

 独歩は背広姿だった。

 もちろん、彼が普段着るようなものとは違うのだろう。

 そして、眼鏡をかけて帽子をかぶっていた。

 空手着と比べ、余所行きの格好だった。

 

「別に空手着でもいいわよ」

「まぁ、せっかく仕立てたんでェ。ちったあ着たくなるだろうが」

「意外と子供っぽいところもあるのね」

「言うじゃねえか」

「さて……行きましょ」

 

 華琳はそう言い、歩き出した。

 独歩もその後について歩き出した。

 

   弐

 

 独歩は華琳の隣を歩いていた。

 華琳の身体は小さいため、独歩が居いる側から見ると完全に身体が隠れていた。

 そして、ちょうど服屋の前を通りかかったあたりだった。

 店の中から大声が聞こえてきた。

 

「独歩! 私の稽古を放り投げて、こんなところにいたのか!」

「あっちゃあ~。見つかっちまった。よりによっても春蘭かァ……」

 

 独歩はそう言い、頭を掻いた。

 

「独歩が逃げ出したら、どうしようもないではないか!」

「俺が逃げ出したんじゃあねェや。華琳に連れられてよォ」

「華琳様が!? いい加減なことを言うな独歩!」

「カ~ッ 人の話を聞きやしねえ!」

 

 独歩はそう言い、助けを求めるような目で華琳を見た。

 華琳は笑みを見せて言った。

 

「春蘭、独歩の言う通りよ」

「華琳様ぁ!? なぜ独歩と……」

「独歩が言ったじゃない。私が誘ったのよ」

「私に仰ってくだされば、私がお供を……!」

「その前に独歩に言っちゃったのよ。今度は春蘭を誘うわ」

 

 独歩は二人が話す姿を見て一息ついた。

 ――少なくとも、春蘭は華琳の話はしっかりと聞くみてぇだな。

 そんなことを思っていると、店の中からもう一人出て来た。

 春蘭の妹、秋蘭であった。

 

「独歩殿、姉がご迷惑をおかけしました」

「いや、秋蘭が謝ることじゃねえや」

 

 独歩は笑みを見せてそう言った。

 

「で、秋蘭よォ。オメェさん達はここで何を買っていたんだ?」

「それは……いや、独歩殿に気付いていただくのが、一番でしょう」

「オイラに気付けってか……出て来たのが服屋からだからなァ。つっても服が変わったみてぇじゃねェ」

「独歩殿は変えたみたいですね」

「おうよ。むこうの服を真似て作らせた、余所行きの服だ」

「随分と私達の服とは違う雰囲気で……」

 

 秋蘭はそう言って、独歩の頭からつま先を見た。

 

「そりゃあそうだぜ」

 

 独歩はそう言い、華琳と話す春蘭を見た。

 そして、むぅと唸った。

 

「気付きませんか」

「ちぃっと待ってくれ。もうちょい待ってくれや」

 

 秋蘭がせかすように言ったが、独歩は自分で探した。

 そして、気付いた。

 

「お、眼帯かァ」

「はい。ここで新しく買ったものです」

 

 独歩の言った通り、春蘭の眼帯は独歩が付けていた物ではなくなっていた。

 蝶の形をした眼帯だ。

 

「で、俺が元々つけていた眼帯はどうしたんだ?」

「それは姉者が持っています」

「へェ、捨てはしねぇのかい。今、つけているヤツの方が上等だろうによォ」

「姉者にそのつもりはないようです」

 

 独歩はその言葉を聞いて笑った。

 

「まぁ予備として、もっておくのもいいかもしれねェ」

「ええ。……では、独歩殿。そろそろ私達は仕事の方に、向かわねばなりませんので」

「おう。じゃあな」

「では、また後で」

 

   弐

 

 独歩と華琳は再び一緒に歩き出した。

 会話はなかった。

 最初は街の喧騒で気にならなかったが、だんだん中心地から外れていくと、それが気になってくる。

 そして、一際大きな音が飛び込んできた。

 雷の音であった。

 

「こりゃあ、一雨きそうだぜェ。華琳、どうする?」

「……まだ、行きたい所には着いてないわ」

「どこに行こうってんだ」

「ついて来て」

 

 独歩は頭を掻いた。

 そして、何も言わずについて行った。

 華琳の足は街の外に向いている。

 そして、街の喧騒も届かない森の中に着いた。

 

「こんな場所があるってぇのは初めて知ったぜ」

「…………」

「で、華琳よォ。何かあるんだろ?」

「……ええ。話したいことがあるの」

 

 そう言って、華琳はポツリポツリと話し出した。

 いつの間にか、雨の降る音もしている。

 

「……怖いのよ」

「何がだ」

「範馬勇次郎のことよ」

「…………」

 

 独歩は何も言わず、華琳の言葉に耳を傾けた。

 

「私もしっかりと、ヤツの闘いを虎牢関で見てたわ。そして、思ったのよ。……もし、あの男が私の国に牙をむいたら、民を守れる気がしないって……」

「キッツイだろうなァ……」

 

 独歩の声は心底言ったような声色だった。

 独歩も範馬勇次郎の力というのは理解していたのだ。

 だから、しっかりと国と鬼を天秤にかけることが出来た。

 

「……かといって、ヤツにひざを折るわけにもいかない。ここまでたどり着くのに払った犠牲も安くはないの」

「…………」

 

 独歩は何も言わなかった。

 雨音は次第に強くなっていく。

 最初は森の木の葉が傘代わりになり、雨を防いでいたが、だんだんと二人の頭の上にも降ってきた。

 

「ねぇ独歩ぉ……」

 

 華琳は泣き出しそうな声で言った。

 

「今も、不安で仕方ないの……私は……どうしたらいいのよ……っ!」

 

 そう言う華琳の身体は震えていた。

 雨に打たれる寒さだけではないだろう。

 

「ったく。どうしたらいいのか、じゃねえだろうよ」

 

 独歩はそう言い、華琳の頭に手を置き、視線を華琳と合わせた。

 

「どうにかしてくれ、でいいんだ」

「でも……っ!」

 

 華琳が反論しようとした途端、独歩が華琳の鼻をつまんだ。

 

「オメェ、言っただろうがよォ。オイラが親父みてェだって」

「そう思ってるんじゃあないか、ってだけよ」

「それでもいいぜ。でも思われてんならよォ、娘を守るのは親父の役目だ」

「…………」

「確かに勝てねえ。勝てねえかもしれねえ。でも、何とかするくらいなら出来るかもしれん。オメェの小っちゃい身体じゃ背負えねえのは、オイラに任せな」

 

 独歩はそう言い、華琳の鼻から手をはなした。

 

「……帰るぜ。ここにいつまでもいたら、風邪をひいちまう」

「……ええ」

 

 そう言って、また二人は歩き出した。

 

 

 愚地克巳編 追うもの追われるもの

 

 

 城の中庭でコン、と軽い音がした。

 その音は何度も響いた。

 木刀と拳が、ゆっくりとぶつかる音だった。

 

「とった……」

 

 春蘭がつぶやくように言った。

 

「おう、全部キッチリな」

「どうだ見てたか秋蘭! 独歩の攻撃、全部おさえたぞ!」

「ああ、見てたぞ」

「やった! ついにやったぞ!」

 

 春蘭は今まで見えていなかった独歩の拳足を止められたことが、本当に嬉しかったのだろう。

 喜びを爆発させ、その場で高笑いもしていた。

 

「独歩! 貴様を超えるのも、そう遠くない!」

「はァ……オイラはよォ五十年以上、空手やってんだぜ。簡単に超えられちゃあたまんねェや」

 

 独歩がそう言った時だった。

 独歩の後ろから、一人の青年が歩み寄ってきた。

 

「なんだ? 何か、春蘭の高笑いが聞こえると思ったら……」

「おう、克巳か。春蘭が、俺の拳足を受けきったんだよ」

「もう全部、受けきるようになったのか? ……早いな」

「確かに早いけどよォ……天狗になるのも早いなよァ、アイツは」

 

 独歩はそう言い、笑みを見せた。

 

「それに、実はよォ。秋蘭が三日前……春蘭が討伐に行ってた時に、成功させちまってるんだ」

「それ、言わなくていいのか?」

「言わなくていいだろうよ。それじゃあ、春蘭の鼻っ面へし折るだけだ」

 

 独歩はそう言い、腕を組んだ。

 そして、唸った。

 

「克巳よォ……」

「どうした、親父」

「オメェも久しぶりにやってみっか?」

「いいけどよ……普段通り、だよな?」

「ああ。そっちの方が良い刺激になる」

「ぬか喜びにさせちまうけどな」

 

 克巳は独歩のしたいことを把握したのだろう。

 笑みを浮かべ、構えた。

 

「いくぜェ」

 

 独歩はそう言うだけだった。

 

「なんだ、克巳。貴様もやるのか? 克巳では受けることも……」

「姉者……克巳が独歩殿の何か、忘れたのか?」

「へ?」

 

 そして、太極拳のようなゆっくりとした動きで拳を繰り出した。

 右の拳だった。

 克巳はそれを左手で受け、同時に彼の右足が独歩の頭へと昇っていく。

 それは、独歩の頭に当たるか当たらないかのところで止まった。

 克巳が足を下ろしてから、独歩は左の貫手で克巳の首を狙った。

 それを避けて、克巳は独歩の首に手刀を振り下ろした。

 そこまでやった時点で、春蘭が怒鳴った。

 

「独歩! 貴様、克巳には手加減しているのか!?」

「しちゃいねえよ。克巳との稽古に関しては、まだ上がいるってことをオメェに見せるためだ」

「なんだと!」

 

 独歩の言葉を聞き、春蘭は

 むむむ……

 と唸った。

 そして、持っていた木刀を地面に置いてから言った。

 

「独歩! 次は私だ! 克巳と同じことを一発でやってやる!」

「いや、春蘭。それはムチャだ。俺だって受けられるようになってから、反撃するまで時間かかったんだ」

「克巳が出来るなら私もできる!」

「まぁ、そんなピリピリするんじゃねえや。この稽古が出来る、即ち強いってワケじゃねえんだからよ」

 

 ま、オメェ達には受けられるようになっただけで十分だ。

 と独歩は言った。

 事実、武器を持っているならそれで反撃した方が、拳や蹴りで反撃するより相手を倒しやすい。

 それならば、起こりのない予期しない攻撃に、しっかり対処できるようになっただけで十分だ。

 相手の拳足の攻撃に、律儀に拳足で返す必要はない。

 

「今度、誰か強敵がいたらやり合ってみな。受けに関しては、絶対オメェの方が上だ」

「そう……なのか?」

「ああ」

 

 その言葉を聞き、春蘭は黙った。

 克巳はそれを見て一息つき、独歩に言った。

 

「なぁ、親父」

「どうしたってんだ?」

「凪がより強くなりたいって言ってるんだ。だから親父から稽古つけておうって思ってるんだけど、大丈夫か?」

「オメェもう、神心会館長じゃねぇか」

 

 オメェがつけてやればいい、と独歩は暗にそう言った。

 だが、克巳は首を横に振って答えた。

 

「俺の空手は、親父のように実戦性が高いわけじゃない。実戦で空手を使うなら、親父から習うのが一番だ」

「克巳。オメェ、勘違いしてるぜ」

「勘違いしてるって、何が」

 

 克巳はあっけにとられたような顔で言った。

 

「オイラが空手を教えてもよォ、凪が使うのは空手じゃねえ。空手を応用して闘うだけだ」

「…………」

「ま、オイラから技を盗もうと考えてるとしても、盗めねえ。だったら、オイラとやる必要はねえ。やっぱ克巳の方が向いてるってことだ」

「まぁ……それはそうか」

「春蘭達につけている稽古も、オメェなら出来るだろうよ。どっちにとってもいい経験だ。オメェが稽古つけてやれや」

 

   壱

 

「いい経験……って言ってもなぁ……」

 

 克巳は不意にそうつぶやいた。

 独歩に言われた後、中庭から道場に向かう道を歩きながら克巳は考えていた。

 最終兵器(リーサルウェポン)とおだてられながらも、それに相応しい結果は残していない。

 その事実が、克巳をせめていた。

 凪の稽古相手にも、自分よりも義父である愚地独歩の方が良い、と考えていたが、独歩は克巳でいいと言った。

 ――俺は親父の期待に応えられるのだろうか

 克巳はそう考えていた。

 そう考えている内に、克巳は道場に着いた。

 既に道場には人がいた。

 凪が一人、神棚に向かって正座していた。

 

「……もう来ていたのか。真桜と沙和はどうした?」

「真桜は工房に、沙和は話題の店に言ってると思います。……それにしても遅かったですね。何かありましたか?」

 

 凪は立ち上がり、克巳の方を向いて言った。

 

「いや、お前の稽古を親父に頼もうか、と思っていたんだ。武術としての空手なら、親父の方が上だしな」

「独歩殿は、克巳さんの方が強いと仰っていましたよ」

「だとしてもさ……」

 

 克巳は額を人差し指で掻いて言った。

 

「勝てる気がしないんだよ。……親父には」

「…………」

「身長、体重、速さとかは勝ってる。運動神経とか、そういう肉体的なことは勝っているけどよ――それでも、勝てる気がしないんだ」

「なら、勝てるように稽古をすればいいでしょう」

 

 凪は毅然とした態度で言った。

 

「敗けないように、稽古をすればいいでしょう」

「そう……だな」

 

 つぶやくように克巳は言った。

 そして、

 ぱん

 と音をたてて両頬を叩いた。

 

「凪、お前の稽古の相手は俺になった」

「分かりました」

「俺が親父から教えられたこと、全部教えるからそのつもりでいてくれ。基礎から黒帯でも限られた人にしか教えないような技……ぜんぶだ」

「はい」

「じゃあ、まずは三戦(さんちん)からだ」

 

   弐

 

「やっぱりきっちり教えられるじゃねえか」

「なんだ独歩。ちょっと見たいもの、とはこれか」

「バカ、春蘭。声がでけえ。覗いてるのがばれちまうじゃねえか」

「独歩殿も大きいですよ」

「お、悪いな秋蘭」

 

 三人が道場の入り口から、克巳と凪の稽古を覗き見していた。

 克巳と凪は集中していて、三人に気付く気配はない。

 

「オメェ等もボケッとしてられねえぜェ。後ろから凪が追っかけていらァ」

「そんなことは分かってるぞ」

「ええ。独歩殿から合格と言われても、止めるつもりはありませんよ」

「こりゃあ疲れたとか言ってる場合じゃねえや。オメェ等にも、もっと面白いものを教えてやるぜ」




最初、克巳の話は克巳が甘党だ、って話にしようかと思っていましたが止めました。
バキ12巻で鎬昂昇と話しているシーンで、コーヒー(?)にやったら砂糖を入れているから、そうなのか……と思っていましたが、公式で言及していないんですよね。
克巳が甘党、というのって公式ではあるんでしょうか?
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