真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~ 作:クーロン
オリバは二度目か…… 色々あって時間かかった割には短いですッッ その埋め合わせは割烹の企画で埋めてみようか……。興味のある人は読んでみてください。
江東にある、とある城の中庭――
そこに、四人組がいた。
女二人に男二人だ。
とはいっても、男性の片方は老人だ。
合コンのようなものではない。
雪蓮、祭、オリバ、渋川剛気の四人だ。
「やっと酒を飲めるわい。まったく……あの医者は頑固なヤツよ」
「俺たちの世界じゃ有名なんだがな。転移したガンを、一時間で取り除く……あと、心臓と頭の中の弾丸を摘出したりって話だ」
「そんなこと言われても、凄さなんて全然分からないわよ」
「環境さえあれば大抵の病気やケガは、なんとかなるということじゃよ。雪蓮嬢に祭さんもお世話になったのじゃから、分かるじゃろうて」
「お爺ちゃんも、そろそろお世話になるかもね」
「バカタレ。ワシはあと二十年は現役でいる」
「……渋川老の二十年後となると、いくつになるのだ?」
「九十五じゃのォ」
「お爺ちゃんなら本当に……」
「現役でいてもおかしくねえ」
オリバがそう言うのと、ほとんど同時だった。
侍女が徳利を持って来た。
徳利からは強いアルコールの香りがする。
「さて……みんな無事に帰って、そしてお酒が飲めることを感謝して……」
雪蓮は笑顔でそういい、一息だけ溜めた。
「乾杯!」
壱
「中国酒……
オリバはそういい、小さな杯に酒をついだ。
そして、薫りをかいだ。
「フム……驚いた……。よく、白乾児を“薫り高い”などと言うが、その一言では表現しきれない。数多の芳香成分を感じさせる」
オリバはそう言い、小さな杯を口に運んだ。
元々小さい杯だったが、それはオリバの手の中では、さらに小さく頼りないものにみえる。
口の中に入った酒は、冷たくも温かくもなかった。
そして、その酒を口の中で転がして飲み、鼻から一息吐いた。
「流石だ……この時代でこの完成度……。麹に様々な穀物――小麦に大麦そして、大部分を占める米。その味わいはどれを邪魔するでも、引き立てるでもない。しっかりと各々が自己主張している。そして、熟成させている土――この国の豊穣な土の香りだ。それらの要素が複雑に絡み合い、たった一口だというのに、この国の歴史の雄大さを物語っている」
オリバが酒の一粒一粒を味わうように飲んでいた時だった。
オリバの徳利へ真っ直ぐと、スラリとした腕が伸びていった。
「何をごちゃごちゃ言って飲んでおる。そんな少ししか飲まんのじゃったら儂によこせ」
祭はそう言い、オリバの徳利に触れた。
だが、オリバはすぐに徳利の首を指で摘み、持ち上げた。
「おいおい祭よぉ。酒ってのは、しっかり味わって飲むもんだぜ。大体、自分の酒はどうしたというんだ。それに、こっからは普通に飲むんだ」
「お主が冗長なこと言ってる間に飲んだわい。小難しいこと言っても酒が不味くなるだけじゃ」
祭はそう言い腕を引っ込めた。
そして、次の酒を持ってくるように催促した。
「あーあ。私も無くなっちゃった。お爺ちゃんは?」
雪蓮はそう言い、空になった徳利をつまんで、軽く左右に振った。
「ワシはそんなに多くの量をいっぺんに飲めん。チビチビと飲んでおるよ」
「じゃあ、まだ徳利の中に残っているわよね!? 少し貰うわよ」
「どうぞどうぞ」
「やった。ありがと、お爺ちゃん」
雪蓮はお礼を言って渋川剛気の徳利を取り、自分の杯に酒を注いだ。
注いだ分を一息で飲み干し、口を開いた。
「そう言えばオリバさ~」
「俺がどうしたって?」
オリバは杯に目を向けたまま言った。
「蓮華に何か言ったらしいけど、何て言ったの?」
雪蓮がそう言うと、そこで顔をあげた。
「何か言ったってことを知ってる以上、なんて言ったのか知っているだろうよ」
オリバは苦笑して言った。
「でも直接、なんて言ったのか聞きたいのよ」
「なんじゃ、オリバ。お主、なんかやらかしたのか」
「そういう訳じゃねえよ。ただ……」
オリバはそう言い、話し出した。
弐
それは、洛陽から帰ってきた時の事だった。
蓮華は雪蓮を怒鳴った。
理由は簡単なものだ。
一言で言ってしまえば、自重をしろということだ。
それは蓮華が雪蓮を心配していたからだ、ということは全員が分かっていた。
だから、雪蓮を含めた全員が何も言わなかった。
その後で蓮華は思春相手に鍛錬をした。
蓮華にとっては日課であり、思春にとっては病み上がりでの調子を確かめる、いい機会であった。
オリバは、たまたまその鍛錬の場に居合わせた。
「だいぶイラついてやがる」
オリバはそうつぶやいた。
言った通り、蓮華の眉間にはシワがよっており、そのイラつきが見て取れた。
さっきの一件や、思春の守りを突き崩せないことへのいら立ちが混じったものだ。
さらに……
「はぁ……」
「あきれたな! その余裕が……!」
思春は時々、蓮華の気性を煽るような態度をとった。
そして、蓮華は感情を露わにして剣を振った。
思春は冷静に守り、蓮華の隙を狙うように攻めた。
蓮華はなんとか受けていたが、その拮抗は次第に崩れていき、蓮華はジリジリと後退していった。
「くうぅっ!」
蓮華はうめいた。
「……死中に活を見出すのが孫呉の……!」
「死の中に……ってか」
――ゲバルよ……
オリバは思った。
――君はどう思う。勇敢に死の中に向かおうとする、あの少女をどう思う。
そして、たまたま近くにあった手ぬぐいを掴み、蓮華の顔にかかるように投げつけた。
それと同時に、思春は蓮華が持っていた剣を弾き飛ばした。
蓮華はすぐに、まとわりついている手ぬぐいを取り、大声で言った。
「誰だ!」
「俺だぜ」
「オリバ! 何のつもりだ!」
「危ねえことを、しでかしそうだったからな」
オリバはそう言い、蓮華のそばによって、手ぬぐいを拾った。
「オリバ。それは否定しないが、鍛錬の邪魔をするな」
「ただ邪魔してぇから、したんじゃねえ」
思春は鋭い目でオリバを睨みつけながら言ったが、オリバは気にとめたふうもない。
ただ、蓮華を見た。
「何だ。私に何の用だ」
「いい日じゃねえか」
「……は? 確かに、天気は……」
「そうじゃねえ。そうじゃねえよ」
オリバは真顔だった。
真顔で言った。
「今日は死ぬにはいい日だ、ってことだ」
「……どういう意味だ」
「まぁ、分かるときになったら分かる話だ」
そう言うと同時に、風が吹いてきた。
オリバは少しだけ目を細め、蓮華に背を向けた。
「俺は帰るぜ」
――風たちぬ
いざ生きめやも
参
「ってことだ」
「で、蓮華に聞かれたのよ。今日は死ぬにはいい日だ、ってどういう意味かって」
「雪蓮よ……お前はどう思ってんだ?」
オリバがそう言うと、雪蓮はアゴに手をあてて考えた。
「ん~……死を覚悟し、向き合おうとする人の言葉、かな。オリバの答えは何?」
「さあ? この言葉の意味は自分で考えるものだぜ。ただ……ヒント、取っ掛かりを与えるってのなら、これは兵士の言葉だってくらいか……」
「教えてはくれないってわけね。ケチ」
雪蓮はイタズラっぽく言った。
肆
「なんだ、雪蓮。酒を飲んでいたのか」
「冥琳、仕事はしたわよ」
「知っている。していなかったら、渋川老に指捕りをしてもらうところだ」
侍女が三本目の徳利を持って来たころだった。
冥琳が来て、雪蓮に話しかけた。
そして、侍女に椅子を持ってこさせ、四人の中に入った。
「渋川老の指捕りか……どれほどの腕前なのじゃ?」
祭は好奇心にあふれた目で言った。
「ホントに痛いぜ」
「ホントに痛いわ」
オリバと雪蓮の声は沈んでいた。
特に、雪蓮は酒を飲んでいるというのに、顔から赤みが引いていた。
「俺は一度、人差し指を捕られたことがあるが……」
「一度ならまだいいわよ。私なんて二回もあるのよ。それも小指……」
「カッカッカッ。今後、増えるかもしれませんがな」
「げっ」
渋川剛気は笑いながら言った。
対照的に雪蓮の顔からは、笑みが消えた。
「ふふっ……。今度、雪蓮や祭殿が仕事をせずに酒を飲んでいた時は、渋川老にも説教しいただいた方が良いかもしれんな」
「冥琳~。冗談に聞こえないわよ~」
「本気だからな」
冥琳は微笑して言った。
彼女の分の徳利と杯が目の前に置かれると、特に何も言わずに杯に注いだ。
「そう言えば、冥琳嬢も終わったのかの?」
「仕事ですか? まだ残ってはいますが、本日中に終わらせる予定だったものは全て」
「そうですかそうですか」
渋川剛気は自分の杯に、少しだけ酒をそそいだ。
そして、舐めるように飲んだ。
「あれ? お爺ちゃん、もうキツイ?」
「こう見えて、もう年が……」
「と、言いながらもウソでしょ? あと二十年現役でいる人だし」
「さあ?」
渋川剛気は笑って答えた。
「あと二十年現役か……渋川老なら出来そうですね」
「冥琳嬢。そう、おだててくれるなや」
「いや、本心ですよ」
冥琳はそう言い、一口だけ酒を飲んだ。
そして、一息ついて言った。
「雪蓮。渋川老の技術を習ったらどうだ?」
「え? でも、ちょっとだけ真似たことあるけど、何ていうか……お爺ちゃんの技って、私と会わないのよね。興味はあるんだけどさ~」
「そうか?」
「そうでしょう。ワシが柔なら、雪蓮嬢は剛と言うべきでしょう。どっちかと言えば、理屈的な冥琳嬢の方が性に合いそうじゃな」
「雪蓮ほどの才がなければ、使いこなせるような気はしませんが」
「わが師……御輿芝老をして、完成には至りませんでしたからな。ワシとて道半ば……。たとえ、才ありと言えど、歳若い娘に極められちゃあ……」
そう言い、渋川剛気は笑った。
「でも、指捕りや足への体当たりぐらいなら、ありがたく使わせてもらうわよ」
雪蓮は笑顔で言った。
だが、渋川剛気は少しムッとした顔になった。
「そう簡単に思われては、とてもとても……」
「勘でなんとかなるものよ」
「ほう……では、実戦で使いこなせますかな?」
「敵兵ならとにかく、将相手は厳しいかもしれないわね。お爺ちゃんなら、楽々でしょうけど」
その言葉を聞くと渋川剛気は、ククッと笑った。
閑話はあと二回を予定しています
次に烈さん&花山さん その次に範馬 と考えています。