真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~   作:クーロン

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今回は、タイトル通りの方が主役ですッッ
刃牙で中国といったら、やっぱりこの方しかいないでしょうッッッ


海王

 ――不可解 不可解 不可解也!

 黒いオサゲが風に揺られている。

 女ではない。男の髪だ。

 服装は映画で見るような、典型的な拳法着であり、褐色の肌はその下に隠されている。

 服に隠されている肉体は、かなり鍛えこまれているのは誰から見ても明白だ。

 烈海王であった。

 彼は神心会のビルで光に呑まれ、気が付いたら見覚えもなく、よく分からない山の中に居たのだ。

 戸惑うのも仕方ないだろう。だが……

 ――ここに居て、訝しんでいるだけでは、何も解決などしない。

 烈海王はそう思い、山の中を歩き始めた。

 

   壱

 

「いいか、春蘭。まずは腹だ」

「よし! 来い独歩!」

 

 愚地独歩は曹操に招待され、陳留に滞在していた。

 一緒に飛ばされた烈海王に養子の克巳を探すのには、コッチの方がやりやすい、と判断したのだ。

 その交換条件として、ここで愚地独歩がやってるのは主に育成だ。

 曹操は克巳と烈海王の情報を探す代わりに、武官……しかも、夏候惇と夏侯淵といった主力の育成をするように、頼んだのだ。

 そして、それが決まった際に、三人から真名も預かった。

 曹操が華琳、夏候惇が春蘭、夏侯淵が秋蘭といった。

 

「ッッ!」

「当たっちまうなァ……次は顔だ」

 

 今、春蘭がやっているのは、剣の腹で、独歩の攻めを受ける稽古だ。

 独歩の攻撃は太極拳のような動きだが、春蘭は受けるどころか、避けれないでいた。

 実はこの稽古、見た目ほど単純ではない。

 独歩は場所は宣言したが、蹴りか、拳かを宣言していない。

 それだけなら一般人でも受けられるのかもしれないが、独歩の攻撃が目の前から消えてしまうのだ。

 簡単ではない。

 

「また当たったな」

「むむむむむ……! 何故、受けられんのだ!」

「単純な話しだぜ。俺はなァ、今見せた基本技を五十年……毎日、千本以上続けてんだよ……。呆れただろ? それができる馬鹿なら、誰だって今のような真似ができる」

 

 たとえ鬼でも避けれねェ打撃の境地だ、と独歩は言った。

 春蘭は少しの間、むむむと唸っていた。

 

「姉者。そろそろ私の時間だ」

「秋蘭、少し待ってくれ! 次は……!」

「そのセリフは三回目だぜ、春蘭。妹と交代してやんな」

「むぅ……仕方ない! だが、秋蘭が終わったら、また私の相手だからな! 独歩!」

 

 春蘭はそう言って、剣を片手にちょっと離れた場所に移った。

 二人の全身が目に入るが、離れすぎない丁度いい場所だ。

 そこで春蘭はじっ……と独歩の拳足に目をこらしていた。

 一度も受けれずに、完敗したのが悔しいのだろう。

 

「アイツは何て言うか、加藤みてェだな……」

「加藤?」

「おう。俺の直弟子みてえなもんだ。出来は悪かったが、一生懸命でなァ……」

 

 その姿が、今の春蘭(アイツ)と妙に被るんだ、と独歩はどこか懐かしそうに言う。

 

「もっとも、才能はオメェの姉貴の方があるぜ」

「姉者は武には一生懸命ですから」

「それが本気になってきた……こりゃぁ克巳と烈も、うかうかしてらんねえぜ。春蘭に越されちまう」

 

 そう言い、独歩は心底楽しそうに笑んだ。

 その顔を見て、秋蘭は聞いた。

 

「克巳さんは愚地殿の養子と聞きましたが、烈というのは……?」

「メチャクチャ強ええ、中国拳法の達人さ。多分、アイツもこっちにいるんじゃねえか」

「ほう。愚地殿がそこまで……どのような人か楽しみです」

 

 姉の春蘭を瞬殺した独歩。

 それが達人といい、高い評価をしている烈。

 姉の春蘭と同じく、秋蘭もまた武人だ。

 それを聞いて、自分の中で昂ぶる何かがあった。

 

「秋蘭! 話すだけなら私と交代してくれ!」

「姉者、気が早いぞ。……では、愚地殿」

「おうよ。まずは裏拳だ」

 

 秋蘭は昂ぶりを押さえて一息し、消えるであろう裏拳を受けるため、目を細めた。

 

   弐

 

「誰かおらんかッッ」

 

 烈海王は夕方になるまで、山の中を歩き回っていた。

 だが、理由は分からないが意外とここへの土地勘はあり、遭難という最悪にはならなかった。

 ほとんど一日中歩き回り、烈海王が見つけたのは一軒の家だった。

 古風の家だが、あばら家ではない。むしろ立派だ。

 門のまわりはキレイに掃除されていて、雑草は見あたらない。

 門の材木も、年代を感じさせるものではなかった。

 間違いなく誰かが住んでいる。

 

「はい。どちら様でしょうか?」

 

 門の向こうから、物腰柔らかな声が聞こえる。

 しかし用心しているのか、門を開けようとしない。

 門は固く閉ざされている。

 

「わたしは烈海王という。どうか、近くの町までの道を教えていただきたい」

「近くの町ですか……それでしたら、そこに着くころには夜中になりますよ」

「わたしはかまわん」

「道の途中で虎を見た人もいますよ?」

「わたしは一向にかまわんッッ」

 

 それを聞き、門の向こうから、ふん……と一考するような声がした。

 そしてちょっとしてガチャガチャと無機質な音がした。

 鍵を開け、門の向こうから出てきたのは、優しそうな女性だ。

 外見はまだ若いが、山中に住んでいるのと相まって、俗世を離れた賢人といった説明が、しっくりくるような女性だった。

 

「烈さんでしたね。よかったら此処に、一晩だけ泊まるのはどうでしょうか?」

「見ず知らずの人間を泊めてもよいのか?」

「ふふ。わたしは一向にかまいませんよ」

「ですが……」

「あなたは悪いヒトではないみたいですし、問題ありませんよ」

謝々(ありがとう)ッッ」

 

 もっとも寝床は別館になりますが、と女性に言われたが、野宿にならないだけ十分であった。

 烈は女性の後ろについて行った。

 家は意外と広く、大人数で生活が可能のようにみえた。

 戸が開けっ放しの部屋をちょっと覗くと、まるで教室のように机がならんでいた。

 しかし、その部屋には、今は誰もいない。

 

「塾でも経営してるのですか?」

「はい。これからの世の中で内政、軍事、教育で、役に立つ人材の輩出を目的にしてます」

「それを一人で……」

「ええ。今の時代、才人は諸侯に仕えていますから」

 

 どうやら、目の前の女性はかなりの才人らしい。

 有名人なのだろうか? と烈海王は思い、名前を聞いてみた。

 

「私の名前ですか? この水鏡女学院で教鞭をとっている司馬徽といいます。ここの生徒たちからは、水鏡先生と呼ばれてますわ」

 

 ――どういうことだ……

 烈海王は戸惑った。

 司馬徽、水鏡先生と言えば三国時代の人間のはずだと思った。

 が、同時にこの女性が冗談を言っている、とは思えなかった。

 そして女学院という単語。

 それに、更に戸惑いがあった。

 ――これでは、わたしはまるで場違いではないかッッッ

 

   参

 

 早朝に少女が一人、縁側を歩いていた。

 水色の髪をツインテールにし、ファンタジーの魔法使いのような帽子をかぶっている。

 身体は細く、身長も低い。

 水を汲むため、女学院の別館近くの井戸に向かっていた。

 実はこの少女、名を鳳統といい、水鏡女学院きっての秀才だった。

 諸葛亮とともに将来を期待され、その才から鳳雛とまで呼ばれていた。

 しかし、そんな天才でも予期できないことがある。

 

「あわわーーーーッッ!?」

 

 そう。井戸の近くで、烈海王が上半身裸で、湯気をだし、汗を流しながら、站椿(たんとう)をしている事は、全く想定できてなかった。

 鳳統はあまり運動が得意ではなかったが、この時ばかりは素早かった。

 早朝から裸で筋肉質の男が汗だくになり、よく分からない何かをしている。

 走りだした瞬間に、邪ッッ! と掛け声がし水が飛び散る音がした。

 それが鳳統の足を加速させた。

 ――変態が居る! よく分からないけど、変態が居る!

 彼女はこけることなく、ある部屋まで駆け抜けた。

 

「朱里ちゃん! 大変だよぉ!」

 

 鳳統は、まだ寝床で布団に包まっていた親友を叩き起こした。

 起こされた少女は、眠そうな目をこすっている。

 ショートカットの亜麻色の髪をした少女だ。

 名を諸葛亮といった。

 

「ん……? どうしたの雛里ちゃん」

「へ、へんひゃいが……」

 

 鳳統はショックのせいか、説明の呂律が回っていなかった。

 しかしその真剣さは伝わったのか、諸葛亮は起き上がり、鳳統に手をひかれながら、井戸まで一緒に近づいて行った。

 鳳統の手は、井戸に一歩一歩と近づくたびに強さを増していく。

 

「ひ……雛里ちゃん……」

「離さないで……。お願い、離さないで……」

 

 鳳統は完全に怯えきっていた。

 声が怯えの色をありありと伝えてくる。

 

「……もう着くよ」

「~~~~~~っっ」

 

 鳳統は体を震わせ、目をギュッと瞑った。

 諸葛亮はその間に井戸を見たが、それらしき人の姿はなかった。

 

「あれ……誰もいないよ?」

「え……? でもさっき……」

「雛里ちゃんが、寝ぼけてただけだよ」

「そうかな……うん、多分そうなんだ」

 

 鳳統は落ち着こうと、深呼吸をした。

 そして、ただの勘違いだった、寝ぼけていたのだ、と自分に言い聞かせた。

 

「それより、今日こそ先生を説得しなくちゃ」

「……うん」

 

 諸葛亮は鳳統の意識を、さっきまでのことから逸らそうと話しを切り出した。

 水鏡女学院(ここ)を出て、弱き民を助けるために行動しよう、と。

 

   肆

 

 烈海王は站椿を切り上げて、山の中で鍛錬をし、再び水鏡女学院に戻ってきた。

 司馬徽に礼を言うためだ。

 建物内を司馬徽を探すために歩き回り、院長室にさしかかった所で、議論が烈海王の耳に飛び込んできた。

 

「二人とも、まだ早いです。もう少しここで……」

「ですが、力のない民は今も苦しんでいるのです!」

「水鏡先生は、こんな時に役立つことを、教えてくれたのですよね! ……お願いします!」

 

 中に居たのは探していた司馬徽と、二人の少女だ。

 諸葛亮と鳳統だった。

 議論の真っただ中に、割って入り辛かったため、烈海王は部屋の外で待っていた。

 そこに居ると、烈海王の耳に議論がありありと入ってきた。

 三人の話しを聞いて、烈海王は大体の構図を理解した。

 二人は働きたい。

 司馬徽は出してやりたいが、二人を心配しているのだ、と。

 

「あなた達には武がありません。そしてそれは、私が教えることの出来ないものです。今、襄陽であなた達を護衛してくれる武芸者を探しています。それが見つかるまで……」

「司馬徽さん。その役目、わたしに任せてください」

 

 ――問題は分かった。なら、私はそのために何をするべきか。

 烈海王は部屋に入った。

 

「~~っ! 朱里ちゃん! この人!」

「わたしが何か……?」

 

 二人は、特に水色の髪をした少女は烈海王を見て戸惑っていたが、烈海王は気にせずに提案した。

 

「その役目、わたしに任せては如何かッ」

「烈さん、しかし……」

「全く問題ありません。どうかッ」

 

 烈海王の目は真剣だ。

 身体から流れ出す覇気もかなりのモノだ。

 中国武術の高位の称号、海王は伊達ではない。

 

「なら、烈さん。二人をお願いします」

明白了(ミンバイラ)ッッ(承知した)」

 

 司馬徽は頭を深く下げた。

 そして、二人を頼みますとハッキリ言った。

 だが、寂しさがあるのだろう。

 少し、籠ったような声だった。

 何秒たっただろうか、司馬徽はやっと頭をあげた。

 

「朱里。雛里。……許可します。外に出て様々なことを経験し、ここで学んだことを生かして下さい」

「でも、水鏡先生。その人は悪い人じゃあ……」

「そんなことありませんよ、雛里。私が保証します」

「朱里ちゃん。水鏡先生がそう言うから、大丈夫だよ」

 

 そう諸葛亮が言うと鳳統も少しは納得したのか、うんと頷き、二人は烈海王に正座したまま向き合った。

 二人とも、とても真っ直ぐな目をしていた。

 

「お願いします、烈さん。私は諸葛亮、字を孔明と言います」

「鳳統です。字は士元と言います」

「……わたしは烈。烈海王という」

 

 ――この二人がッッ

 烈海王は驚愕(おどろ)いたが、それを隠して答えた。

 

   伍

 

「野宿かぁ……。もう、暗くなってきたし」

「うん。雛里ちゃんも火を起こすの手伝って」

 

 諸葛亮と鳳統は、あらかじめ荷物をまとめていたため、旅立ち自体はすぐだった。

 最初は上手く、集落同士を結ぶように旅をしてたが、限界が来た。

 集落同士がかなり離れていて、馬を使わない限り、一日で辿り着くのが無理だったのだ。

 厳密にはもう一つ理由があるのだが。

 どちらにしろ、結果は野宿になった。

 

「やはりわたしが背負って走った方が、よかったのではないか」

「「それは勘弁して下さい」」

 

 二人の声がキレイに揃った。

 もう一つの理由が、烈海王にあった。

 それは河を渡るときの出来事だった。

 

   陸

 

「橋が……」

 

 朱里は、茶色く濁った河を前にして呟いた。

 

「昨日、ヒドイ雨だったからそれで橋が……」

「はわわ……ここから一番近くにある橋は……山の向こう……」

 

 朱里と雛里は溜息を吐いた。

 本来、わたる予定であった橋は濁流に流されたのか、河の両岸にその影を残すのみであった。

 烈海王は、濁った河を一瞥した。

 河は濁っているものの、流れはそんなに速くない。

 

「む。なら、私の背に乗れ」

「え? ですが……」

「烈さんは大丈夫ですか?」

「わたしは一向にかまわん」

 

 烈海王の提案に諸葛亮と鳳統は難色を示したが、烈海王は背中に乗ることをかなり薦めてきた。

 他に河を渡る具体的は何か、となると何もなかった。

 

「すいません、ではお願いします」

 

 荷物を背負った二人を、烈海王が背負う形となった。

 河の流れは、ある程度は落ち着いている。

 対岸までの距離は十三メートルという辺りだろうか。

 ――歩数にして、九百から千踏み。この二人と荷物の重量。問題ない!! 十五メートルまでなら!!!

 

「れ、烈さん!?」

「あわわわわわ!?」

 

 烈海王は水面にむけての一歩を、まるで自宅の階段を降りるかのように踏み出した。

 もっとも、諸葛亮と鳳統は自宅の階段を降りるような気分どころか、生きた心地がしてなかった。

 

「やはり、沈まずにいけるか…………ッッッ」

「はわわわわ!」

「あわわわわ!」

 

   漆

 

「「河を走って渡るだなんて……」」

 

 二人は、水鏡先生が様々なことを経験して、と言ってたがこれだけはもう二度と経験したくない、と思った。

 何しろかなり揺れるのだ。

 失血で気絶している人でも、一発で起きるだろう。

 二人は歩きで体が疲れただけでなく、精神的にも疲れていた。

 火をつけたところで、急にうとうとしだしたのも仕方ないだろう。

 だが、そのまま二人が眠りに落ちることは許されなかった。

 

「……何か来てるぞ」

 

 烈海王は何者かの殺気を感じ取っていた。

 静かにし、耳を澄ますとカロロロロ……と喉を鳴らす様な声が聞こえてきた。

 

   捌

 

 ああ……腹が減ってきやがった……

 あぁ? 向こうから光が……何かいやがるのか?

 餌か!?

 餌があるのか向こうにッッ

 何だって喰ってやる。

 俺にとっちゃ何だって餌……餌!!!

 あそこに三つも……お!?

 なんだよ。そこの二つがうるせえよ。

 あ? この黒いの、やんのかよッッ 餌のくせにッッ

 どうしようってんだ…? 立ち上がって…?

 ジャレようってのか!? この俺とッッ 人間(えさ)の分際でッッ

 おいおいそんなに近付くんじゃねェよ、人間(えさ)がッッ

 近付くなって言ってんだろ!!

 喰うぞてめえッッッッ

 

   玖

 

 暗がりの向こうから出て来たのは、一頭の虎。

 彼女達の本来の脳であれば、すぐに逃げるべきだ、と判断できたハズだ。

 しかし、一歩も動くことは出来なかった。

 この現象はよくある話だ。

 絶対に逃れられぬ、という絶望からパニックに陥るためといわれる…………

 我が身に起きた悲運…………あまりにも絶望的状況に全身がすくみ、一歩も動けないのだ。

 

「あわわわわ! と、とと……」

「は、早く……」

「無理……足に力が……」

 

 逃げないと、という一言が、喉で詰まって出てこない。

 諸葛亮も鳳統も、足がガクガク震えて、立ち上がれない。

 泣こうにも、恐怖感が強すぎて何もできなかった。

 

「二人とも、わたしの後ろに」

 

 烈海王は二人の前に立ち、虎の前に立ちふさがった。

 虎は苛立っているのか、唸り声が荒くなってきた。

 否応にも恐怖を与えるような、低い唸り声だった。

 

「ひぃっ……」

「うぅ……ぐすっ……」

「安心しろ、二人とも。……愚地独歩、またの名を虎殺し。愚地氏という前例がある以上、虎に人は勝てる。恐怖に値しない」

 

 烈海王に恐怖の色はない。

 緊急事態には、落ち着いた人間が、精神的な拠り所になる。

 諸葛亮と鳳統が欲しかったのは、まさに拠り所だった。

 恐慌ともいえる状態からある程度、落ち着きを取り戻していた。

 

「叭ッッ」

 

 烈海王が掛け声をあげた。

 それが合図だったかのように、虎が飛び掛かってきた。

 虎は立ち上がり、烈海王をその鋭利な爪で切り裂こうと、飛び掛かってきた。

 虎が立ち上がったことにより、二人は全長の把握ができた。

 体長は二.五メートルといったあたりか。体重は二百五十キロを上回っているだろう。

 対して烈海王は、身長が百七十六センチの、体重は百六キロ。

 体格で見たら絶望的な差だ。

 烈海王は腕で、虎の攻撃を防いだが、虎の体重をもろに支えることになった。

 虎の脚は強靭だ。

 虎は自らの体重に加え、飛び掛かる力までも、烈海王ただ一人に負わせた。

 

「烈さん!」

「そんな……!」

 

 その圧力に耐え切れず、烈海王の体が徐々に傾いていく。

 力の均衡は、どちらかがちょっと緩むだけで一気に崩れる。

 地面は間近に迫っていた。

 だが、烈海王には余裕があったッッ

 烈海王は虎の背に腕をのばし、スルリと虎の上に回り込んだ。

 虎の背は、牙も爪も届かない。

 絶対有利のポジションを烈海王は奪い、両手を虎の首に回した。

 足も虎の首を抱え込むように動いていく。

 虎は烈海王を振り落とそうと立ち上がるが、しっかりホールドしているため、落ちる雰囲気はない。

 そして、まるで胡坐をかいているような姿勢になった。

 

「転蓮華」

 

 そこからの勝負は一瞬。

 烈海王が虎の首の周りを回ると同時に、骨が破壊される音が暗闇に響いた。

 虎は断末魔をあげる間もなく、地に落ちる。

 そして、ドロッと口から血を吐いた。

 

「……もう大丈夫だ」

「う……ぐすっ……助かった……怖かった……」

「雛里ちゃん……助かった……ぐすっ……よ」

 

 張り詰めていたものが一気に緩んだからだろう。

 諸葛亮と鳳統はあふれた涙を抑えきれなかった。

 そして泣きつかれたのか、そのまま眠ってしまった。

 烈海王はただ、周りを見渡していた。

 妙な気配はもうない。

 

「……さっきのことは忘れるといいのだがな」

 

 忘れてゆっくり眠るといい。

 そう言って二人に毛布代わりにと、自分の拳法着をかけた。

 

「今夜は、俺が守ってやるさ」




第3話を最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
では、需要があるのか分かりませんが刃牙キャラの紹介を

3 烈海王  れつかいおう  ※海王は中国武術の号で、本名は烈永周(れつえいしゅう)
体重 176cm  身長 106kg  ファイトスタイル 中国武術

中国武術の達人であり、その技量は黒曜石を叩き真球を作ったり、1.8tの釣鐘を叩き壊すほど。
名言、名シーンも多く「わたしは一向に構わん」「キサマは中国武術を嘗めたッッッ」という言葉はあまりにも有名ッッ
なお、ネット界隈ではベジータ、海原雄山にならぶツンデレとしても有名。
ファイトスタイルの“中国武術”は文字通りの武術であり、素手での闘いのみならず、死刑囚編では棒や青龍刀、ヒョウ(三國無双で、王元姫が使う武器)の扱いも一流であることを見せつけた。
個人的なベストバウトは烈海王VSピクル
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