真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~   作:クーロン

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どうも、この小説が恋姫ジャンルの中で、二番目に感想数が多い小説みたいです。
自分がこの小説を、出来るだけ高いクオリティかつハイペースで更新出来るのは、皆様のご感想あってのことだと思います。
これからも、真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~の応援、宜しくお願いいたします。


動乱

 恋が闘いを吹っかけている間、世の中が止まっていたワケではない。

 世の中は、すでに動き出していた。乱世として、うねりだしていた。

 大きな渦が、北で起こった。

 公孫賛勢力の滅亡である。

 袁紹との戦に公孫賛が敗れ、滅亡したのだ。

 公孫賛は劉備という縁を頼りに、徐州に逃亡した。

 大きい変化だ。

 だが、それは君主にとっての話であり、格闘士にとっては余りにも小さな事だ。

 国による戦など、その辺に転がっている小石のように、どうでもいいことだ。

 何故なら、それより遥かに大きい渦が存在するからだ。

 個人の力が起こす渦だ。

 その渦を起こしている人間は、たった二人の人間だ。

 範馬勇次郎、そして、恋である。

 地上最強の生物と、三国最強の武将。

 その二人の強さが生み出す渦の方が、遥かに大きく強い渦だ。

 

   壱

 

 大陸の西方――益州。

 晴天の霹靂と言っていいだろう。あまりにも突然に、事が起こった。

 突如、怯えはじめる城内の人間。突如、逃げ出すネズミにヤモリ。

 城の外からは、大量の鳥が羽ばたき、逃げ出す音が聞こえた。

 更に、武装した兵士達が各所で正座し、無表情で、虚ろな目をしながら、よだれを垂らしていた。

 座り込んだ場所には、黄色い水たまりが出来ている。

 明らかに失神していた。

 その一事が、何を示すのかは明白であった。

 何が元凶かは明白であった。

 

「ストライダムッッッ」

勇次郎(オーガ)……ッッ 一体何の用が……ッッッ!」

 

 城にはセキュリティが存在する。

 それは、事前に通達されていない、身元不明の人間を容易に出し入れさせないためのモノだ。

 そして勇次郎は決して、忍び込みなどしない。

 ストライダムは納得した。

 既に、この城のセキュリティは壊滅したのだ、と。

 

「キサマッッ 約束を違えたなッッッッ!」

 

 勇次郎が言った。

 同時に、城が揺れたような感覚をストライダムは感じた。

 

「知己を名乗りたくば……オーガの側近と認められたくば、年に一度、俺を狙え。忘れたかストライダムッッッ!」

「オーガよ……ッッ 忘れてはいない……だが、この時代の武器では、満足させることは到底……ッッッ!」

「ああ。そりゃそうだ……だが、その分の償いってヤツをしてもらわねぇとな……」

 

 勇次郎がそう言うのと同時に、ストライダムの背に太い寒気が走った。

 何を言われるのか、まったく想像つかなかった。

 何かを破壊するのか。それとも、軍隊を総動員させ、それと闘うのか。

 まったく想像がつかなかった。

 だが、勇次郎の言う償いとは、想像と比べ、遥かに軽いものだった。

 

「刃牙の居場所……キサマは分かるか」

「バキ……? オーガ……ッッ まさか、ここでバキとやるのか……ッッ!?」

「キサマが知る必要はないッッッ! 答えろッッッッ!」

「ス……スマナイッッ 刃牙は劉備の所にいるハズだ……」

「じゃあ、ソイツはどこにいるってんだ」

「徐州だ。最近、そっちの刺史に就任したとのことだ」

 

 そこまで聞くと、勇次郎は笑みを浮かべた。

 楽しみ、というものを隠そうとする笑みであった。

 

「そこまでの地図はあるな」

「待ってくれ……これだ」

 

 ストライダムは勇次郎に一枚の紙を手渡した。

 勇次郎は一度だけ目を通し、それを引き裂いた。

 

「憶えたぜ……じゃあな」

 

 そう言い、勇次郎はストライダムに背を向けた。

 鬼は感じていた。

 もう一人、鬼と言うに相応しい人間の存在を。

 それが放つ血の臭いを。

 それが、誰を狙っているのかを。

 ――やるのか……面白ぇ……

 勇次郎は無意識に笑みを浮かべていた。

 間違いなく、狙われているということを感じ、楽しんでいた。

 そして、笑みを浮かべたまま走り出した。

 

   弐

 

 範馬勇次郎が益州を発つのと同時刻――

 森の中だ。

 適当に日の光が差し込み、道を照らしている。

 その森の中に、二人の少女がいた。

 恋と音々音だ。

 荷物といえるものは無い。

 精々、水筒代わりに使っている竹の筒が、何本かあるだけだ。

 食料は自生している食用の植物か、野生動物を仕留めるかしかない。川があれば魚という手もある。

 量は少ないが、栄養バランスというのは良かった。

 キノコは良質なタンパク源だ。毒キノコか食用かを見分け、食べた。

 それには、音々音の知識が役に立った。

 毒キノコと食用キノコを見分ける基準は存在しない。

 経験を積み、覚えるしかないのだ。

 だが、避けるべきキノコの原則というのはある。

 ヒダが真っ白なもの、柄の根本を包むツボがあるもの、柄にリングがあるものは避ける。

 そして、当たり前のようで一番重要なのは、食用なのか確信が持てないときには、それを捨てるということだ。それを徹底して食べた。

 山菜は完全に記憶と経験が頼りになる。

 食べるのは、特にシダ類が多かった。

 巻きのある若いシダは食用になる。

 だが、成長しきったものを食べれば、特に食用で有名なワラビでさえ、血液障害を起こし、死ぬことがあるのだ。

 恋は食べたりない、と何度も思った。

 だが、毒にあたって死ぬことを考えると、そっちの方がずっと苦しかった。

 闘いで敗けて死ぬのなら納得がいく。だが、毒に敗けて死ぬのは納得がいかない。

 勝つために空腹を耐えた。

 魚を手に入れた時には、たき火で焼いてから、骨まで貪るように食べた。塩なんてものはない。

 野生動物は野ウサギが多かった。

 だが、捕まえることが出来れば、タヌキやキツネであろうが食べた。

 飢えを満たすため、一かけらの内臓、一滴の血も無駄にしなかった。

 胃や腎臓、肝臓といったウマそうなところだけではない。肺や心臓も食った。

 血は飲んだ。

 血液は、成分的にはビタミン、ミネラル、タンパク質、塩分の宝庫だ。

 言ってしまえば、完全食だ。

 だが、慣れないと嘔吐することもある。

 それでも飲んだ。

 少しでも飢えに耐えるためだ。

 空腹だったから、飢えていたから敗けた。

 そんな言い訳は欲しくなかった。

 偶然、範馬勇次郎と出会うことを考え、常に飢えには気を配った。

 周囲に気を配っていても、食事とその後の時間は落ち着く。

 サバイバルのような旅の中で、唯一落ち着いていられる時間だ。

 その時間、恋は闘いを思いだしていた。

 

「呼ォォォォォ……」

 

 恋は足を大きく広げ、息吹をした。

 そして、眼をつむって曹魏での闘いを思い出した。

 傷は癒えている。それでも、身体に強烈に残っている。

 愚地独歩。愚地克巳。

 どこまでも、真っ向から向かってきた。

 何故か。

 強いからだ。自分が、そして相手が強いから向かってきたのだ。

 たまらない男達だった。

 ――素手では勝てない……

 恋はそう思った。

 あの二人に素手で勝てない以上、範馬勇次郎に素手では勝てない。

 そうとも思った。

 だから、自分は武器を手放せない。

 しかし、持ったままでは勝ってしまう。

 大抵の相手には、労せずに勝ってしまう。

 克巳との闘いがそうだった。

 素手では敗け、武器を使って勝った。

 ――これでいいの……?

 そう思ったが、スグにその考えを捨てた。

 いいのだ。それで、いい。

 全部ひっくるめて闘うのだ。

 肉体も、精神も、武器も全部ひっくるめて比べあうのだ。

 それでいい。

 恋はそう思った。

 

「はぁッ!」

 

 精神をまとめた。

 そして、思い出しながら打った。

 あの一撃を。克巳が放った一撃を。

 足の親指から発生する力。

 それが、関節と噛み合い加速していく。足首、膝、股関節、腰、肩、肘、手首。

 そして放たれる拳。

 

「フゥ~」

 

 そして、恋は拳を下ろした。

 

「ねね……どう?」

「見えなかったのです! 流石は恋殿! 克巳(アイツ)など、到底、追いつけない速さなのです!」

「…………そう」

 

 音々音はそう言ったが、恋は何か足りないような気がした。

 その何か、というのは明白だ。

 速度だ。

 ――これで勝てるの……?

 やはり、勝てるとは思わない。

 だが、武器を合わせたのなら……。

 ――勝てる……! そうしたら、勝てる!

 恋はそう思った。

 だが、そこで欲がでた。

 あとちょっと。あと少しだけ欲しい、と思った。

 技が、強さが欲しいと思った。

 

「……ねね。このままなら、あと、どれぐらいで着く……?」

「徐州には既に入っていますぞ。ですが、本拠地となると……あと三日かかるのです!」

「……強い人、知ってる?」

「そこまでは分からないのです……」

「ん」

 

 恋は答えた。

 そして、まだ見ぬ次の敵を想った。

 

   参

 

 愚地独歩は寝床にうつ伏せになっていた。

 上半身は裸だ。

 そこに赤い髪をした青年が鍼を刺していく。鍼灸をしているのだろう。

 そして、あらかた刺し終って抜いてから口を開いた。

 

「スゴイ肉体だ……。無駄な脂肪が徹底的に削がれている」

「ンなコトはどうだっていいんだよォ。問題はもう、(コイツ)で思いっきり人間をブッ叩けるのかってェことだ」

「鍼でツボを突いて、自然治癒の速度をあげた。骨は大丈夫だが……叩くのは五日後といったところだ」

 

 赤髪の青年――華佗が言った。

 独歩はその言葉を聞くと、

 ニィ……

 と笑みを浮かべた。

 

「……本気なのか?」

「何がだ」

「人間をブッ叩くというのがだ」

「俺はよ、武道家だぜ。人間ぶっ壊すのが仕事だ」

「……医者として複雑だな。そういう人間を治すというのは」

「そこら辺は割り切るしかねェだろうよ」

 

 独歩はそう言って起き上がった。

 そして、服を着て、部屋の片隅に置いてあるリュックのようなカバンを掴んだ。

 旅で必要な道具を厳選し、必要かつ、なるべく軽くなるようにしてある。

 

「で、華佗。オメェも徐州に行くってのか?」

「……ああ」

「腕っこきの医者がいるってェのは、ありがてえ話だ。何を思ってるか知らねえが、頼りにするぜ」

 

 独歩はそう言い、部屋の扉を開けた。

 すぐ外に一人の姿があった。

 黒髪の女性だ。前髪を全部後ろに流している。

 どこか赤みのある瞳をしている。

 右手には木刀が握りしめられている。

 春蘭だ。

 

「よォ」

「……この国を出るらしいな」

 

 春蘭は独歩に、あいさつを返さずに言った。

 どこか棘のある言い方であった。

 

「オウ。アイツをぶちのめしによ」

「…………」

 

 春蘭の右目は独歩を睨みつけていた。空の左目も、独歩を睨みつけている。

 睨みつけたまま、口を開いた。

 小さく、震えた声だった。

 

「なんだってんだ。小さくちゃ聞こえねェよ」

「……許さんと言ったのだ……!」

「へェ……」

 

 独歩が答えると、春蘭は木刀の切っ先を向けた。

 

「勝ち逃げは許さんっ! 出る前に私と戦え!」

「オォ……いいじゃねェか。出る前にちっと身体を動かしておくかァ」

「待て愚地! 拳はまだ治っていない!」

 

 独歩がそう言い、肩を回すと、華佗が慌てて止めに入った。

 

「別にいいだろうが。誰も当てるとは言っちゃいねェ」

「自分がけが人だってこと、分かっていないのか!?」

「るっせェなァ~」

「うるさいって……」

「それに武人同士、意見が対立した時にはよォ……組手でカタつけた方が後腐れなく、手っ取り早えェ」

「流石だな独歩。……中庭が空いている。行くぞ」

 

 春蘭はそう言い、独歩に背を向けた。

 

「オイオイ。オメェ勘違いしてるぜ」

「勘違い……?」

 

 独歩にそう言われ、春蘭は振り向いた。

 独歩は既に拳を固め、身体でリズムをとっていた。

 

「もう始まってんだ」

 

 独歩がそう言うと同時に、何かが吹っ飛んできた。

 拳だ。

 ――バカか!?

 春蘭は思った。

 まだ、完治はしていないハズだ。

 骨のケガは後をひくと大変なことになる。

 折れ癖がつくのだ。

 次に折れる時は、最初に折れた時より、弱い衝撃で同じ個所が折れてしまうのだ。

 春蘭もそのことは知っていた。

 ――それで叩くのか!?

 有り得ない。

 瞬時にそう判断した。

 ――蹴りだ!

 拳をおとりにして蹴りが来る。

 春蘭はそう感じた。

 だが、蹴りは来ない。いつまで経っても、足が動かなかった。

 

「一本ってェとこか」

「何のつもりだ……!」

 

 気が付けば、独歩の拳は春蘭の鼻にあと一寸という所で止められていた。

 

「空手にはよォ、寸止めするのも在るんだ。俺はそれをやっただけだ。華佗よォ……これなら拳でも、文句ねェよなァ?」

「そういうつもりだったのか……。ああ、当ててはいないからな」

「というワケだ。医者からのお墨付きってェことだ……続きと行こうぜ」

「……はァっ!」

 

 春蘭は一息吸う……と見せて、打った。

 横なぎで、左腕を狙っていた。

 だが、独歩の頭がそれより下がっていく。

 ――くそっ!

 春蘭はスグに剣を大上段に構え、振り下ろした。

 だが、それは途中で止められた。

 独歩の頭が浮き上がると同時に、アゴへと掌底が伸びていた。

 そして、それもあと一寸で止められた。

 ――くそっ!

 春蘭の左足が浮いた。

 ローキック。

 独歩への右足へと伸びていく。

 独歩は右足を上げ、それを受けた。

 同時に、春蘭の右目へと指を伸ばした。

 寸止め。

 ――くそっ!

 春蘭は何度もそう思った。

 見えないのだ。

 独歩の拳が見えなくなっていた。

 吐き気がした。逆戻りしたみたいだった。

 たしかに、今まで見えていたのが、今、急に見えなくなっていた。

 ――くそっ!

 

「春蘭よォ……オメェ、頭に血が昇りすぎだぜェ。それじゃあ見えやしねェよ」

「うるさい! いつまでも余裕でいられると思うなっ!」

 

 春蘭は叫んだ。叫びながら打った。

 だが、それは全てかわされ、その隙を突くように独歩の拳足が寸止めされた。

 痛んだ。

 春蘭は確かに、痛みを感じた。

 身体がではない。心が痛んだ。

 寸止めされた場所が痛んだ。

 ――もういい! 殴ってくれ! 思い切り殴ってくれっ!

 春蘭は心の中で哀願した。

 止められる度、痛むのだ。たまらない痛みが走るのだ。

 それでも身体に傷はない。

 そうである以上、戦える。

 自分から敗けを口にしたくなかった。

 どうしても、敗けは認めたくなかった。

 だから続けるのだ。

 そして痛みが走るのだ。

 地獄だった。

 一瞬でも早く終わって欲しくなっていた。

 

「……もういいじゃねェか」

「なにがだ……!」

 

 何度目だろうか。

 顔面に拳を突きつけてから、独歩は春蘭に言った。

 

「今のオメェじゃ勝てねえって話だ」

「……まだ分からん」

「いいや、分かる。周りが見えてねえんだ、今のオメェはよ」

 

 独歩はそう言い、拳を引いた。

 

「確かに今、俺と万全なオメェと殴り合えばキツイ。だが、こういう技術の勝負になれば、俺は敗けねえぜ」

「…………」

 

 春蘭は黙ったまま、木刀を下ろした。

 

「オメェが元気なのは事実だ。まだ敗けちゃいねェ。……この続きはまた後でやろうぜ」

 

 独歩はそう言い、春蘭の肩を叩いて、すぐ横を通り過ぎて行った。

 その後から華佗が追う。

 コツコツ、と歩く音が春蘭の背後から聞こえる。

 春蘭は振り返らず、その音を聞いていた。

 

「うあ……」

 

 行ってしまう。

 春蘭はそう思った。

 行って欲しくなかった。

 ここに残っていて欲しかった。

 側から、独歩が行ってしまう。

 どこかに行ってしまおうとしている。

 

「あああああ」

 

 独歩が好きであった。

 色々、教わるのが楽しかった。

 教えるのが楽しかった。

 言い合うことも楽しかった。

「出来るようになったじゃねえか」

 そう言われるのが嬉しかった。

 最悪、教わる技術が役に立たない技術でもよかった。

 ただ教わるだけでもよかった。

 

「あはあああああ……」

 

 それが、壊れた。壊された。

 たった一度の闘い、敗北で壊された。

 誰のせいだ、と責めることは出来ない。

 敗けた独歩のせいだ、とも、闘いを仕掛けた呂布のせいだ、とも言える。

 

「うわああああああ……」

 

 気付けば、春蘭の眼から涙がこぼれていた。

 止まらなかった。

 もう、去っていく足音は聞こえなかった。

 

   肆

 

 十日経った。

 範馬勇次郎が益州を去ってから。

 愚地独歩と華佗が許昌を去ってから。

 七日経った。

 恋が徐州の本拠地に入ってから。

 

   伍

 

「桃香、すまないな。急に転がり込んだりして」

「もう、白蓮ちゃん。いつまでも、そんなこと言わなくていいって」

 

 桃香と白蓮は城の中庭で話をしていた。

 二人の手元には湯呑茶碗と菓子が置かれている。

 

「そういえば……白蓮ちゃんのところにいた、あの……ぷろれすをやっている人ってどうなったの?」

「猪狩のことか?」

「あ、うん。その人。刃牙君や烈さんにどうしてるのかって聞かれたの」

「猪狩は向こうに残っているぞ。どうも、麗羽の所にいる、じゃっくっていうヤツに伝手があるらしい」

「じゃっくさんって、刃牙君のお兄さんだったよね?」

「私に聞かれてもなぁ……。で、猪狩のことだけどな、私がここまで逃げてこれたのも、アイツのおかげなんだ」

「そうなの?」

「ああ。アイツの人脈が広くてな……。食料や寝床は、猪狩の知り合いや応援しているヤツが用意してくれたんだ。……なんで太守だった私より広いんだよ……」

「あはは……」

 

 白蓮はそう言うと、机に突っ伏した。

 桃香は渇いた笑いしかでなかった。

 気まずい空気を何とかしようと、桃香は周囲を見渡した。

 自分の背中の方へと目を移すと、二人の少女が目に入った。

 

「お~い! 月ちゃ~ん、詠ちゃ~ん! どこ行くの~?」

「ちょっと城の外に出ようかと思いまして」

「あれ? その包みは何?」

「料理を作って、それを花山さんの所に持っていこうかと……」

「ボクはいいって言ったのに、月がどうしてもって」

「だって、お世話になったんだから、少しぐらいお返ししなくちゃ」

「ふぅ~ん。で、そういえばさ、花山さんって今、何をしているの?」

「ヤクザよ」

「詠ちゃん……言い方……」

「どう繕っても、それしか言い方がないじゃない」

 

 月は詠にそう言われ、一度だけ溜息を吐いた。

 事実、そう言われてしまうと何も返せない。

 反論するのは諦め、桃香に言った。

 

「あの……料理が冷めてしまいますので……」

「あ、引き止めちゃってゴメンね」

 

 月はお辞儀をし、城の外へと向かった。

 詠はその後をついて行った。

 

   陸

 

 月と詠は城を出てから、真っ直ぐ花山の家まで向かった。

 城下町は賑わっている。

 いや、賑わっているという風ではない。

 どこか異様な熱気と興奮、そして狂気がある。

 

「なに……この状況」

「お祭り……じゃないよね」

「違うはずよ。やるなんて話、聞いたことないもの」

 

 街の喧騒は次第に大きくなる。

 どうやら、花山の家――花山組の事務所が騒ぎの中心らしいことを、二人は察した。

 

「……まさか、ホントに抗争が起きたのかしら……?」

 

 詠が言った。

 どこか、呆れが混じったような言い方だった。

 だが、それはスグに違うと分かった。

 街の喧騒が、ハッキリとした声で聞こえてきたのだ。

 

「ケンカだッッ」

「あ……赤毛とフンドシのオバケが闘ってるよ」

「スンゲェ~~ッ!」

「花山のケンカだッッッ」

 

 野次馬の声だろう。

 何人もの声がいくつも重なっている。

 

「何やってるのよ……アイツ」

「花山さん……大丈夫かなぁ」

「アイツなら大怪我したって大丈夫よ。……で、その料理どうするのよ」

「今度……にした方が……」

 

 月がそう言ったときだ。

 急に、甲高い悲鳴が轟いた。

 それと同時に、野次馬が散っていく。

 そのどれもが悲鳴をあげていた。

 

「手首がねェッッッ!」

「右の手首ッッ!」

「ヒィッッ 血がァッッ!」

「花山の……ッッ!」

「ヒィィィィッッ!」

「イヤァァァッ!」




徐州がバルカン半島以上の火薬庫になりつつある……! 恋の相手になりうるのが、刃牙、烈海王、花山薫に加え、勇次郎に独歩と来てます。一国を滅ぼしうる力が揃ってるこの状況……ッッ(主に勇次郎のせい)

そして、次回は花山さんの喧嘩で話を進めようと思っていますッッッ
これからも、真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~をよろしくお願いいたしますッッッ!
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