真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~   作:クーロン

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WARNING&CAUTION!!
今回は犬好きの方、動物愛護の博愛精神をお持ちの方には、激しくおススメ出来ませんッッッ! 読まずとも、次回から範馬刃牙vs恋が始まる、とだけ把握して頂ければ結構ですッッッッ!
多分、こんなことをやらかす恋姫二次(?)はウチだけですッッッ!


獅子の門

 範馬勇次郎は道の真ん中を歩いていた。

 変わらず、地味な黒い拳法着を着ていた。

 だが、勇次郎の姿は不思議と道行く人の中でも、奇妙に人目をひいた。

 横を通り過ぎる人は、一瞬、細胞の動きが止まったかのように立ち止まる。

 そして、勇次郎が通り過ぎてから歩き出した。

 これも範馬勇次郎という男がもつ雰囲気ゆえだろうか。

 その雰囲気は服の下、肉の中から出てきている。

 勇次郎は何も言わずに歩き続けていた。

 まだ、昼まで時間はある。

 太陽は昇りきっておらず、風は涼しい。

 勇次郎の顔は無表情だった。

 何を考えているのか、まるで分からない。

 そして、とある路地裏への道を見つけ、そこに入っていった。

 そこは貧民街(スラム)のようになっていた。

 身体を洗っていないがゆえ、人からでてくる獣臭が、勇次郎の鼻を突く。

 それ以外にも、様々な臭いが混ざっていた。

 道行く勇次郎の先に、男が何人かでたむろしていた。

 男たちは勇次郎の姿を見るや否や、名も知らぬ男に、スグに道をあけた。

 勇次郎はそのことについてどうとも言わず、そのまま通った。

 

「ここじゃねえ……。向こうか」

 

 ある程度歩くと、勇次郎はそうつぶやいた。

 スラムは意外と小さく、勇次郎は既にそこを抜けていた。

 ズチャリ、

 ズチャリ、

 と足音をたて歩いていると、ふいに空き地にでた。

 勇次郎が通ってきた道とは別に、もう一本、道がある。

 勇次郎は笑みを浮かべ、その道に入った。

 その道の周囲はキレイな所だった。

 キレイというのはスラムに比べてのことであって、現代の道と比べたら、材木や石材といったものや、それを入れる小屋があり、散らかっている。

 逆に言えば、人が隠れることが容易な場所である、とも言える。

 勇次郎はその道を、真っ直ぐ、三分ほど歩いた。

 そして着いたところに、一人の少女が、背を向けて屈んでいた。

 肌は浅黒い。地なのか、日に焼けたのかは分からない。

 髪は赤い。

 長さとしては短く、肩に触れそうで触れない程度だ。

 右手は犬を構っていて、左手は鞘に入った青龍刀を持っていた。

 

「生温い生き方してるじゃねえか」

 

 勇次郎はその少女の背に、つぶやくように話しかけた。

 少女は素早く青龍刀を抜き、勇次郎の方を向いた。

 

「勇次郎ォォォォっ!」

 

   壱

 

 その犬は恋に、いつでもついてきた。

 他に可愛がってくれる人もいるのだろうし、いたのだろうから、恋は何度かその犬を置いていこうとした。

 それでも、犬はついてきた。

 何故か、というのは分からなかった。

 ただ気に入られた、というだけなのかもしれない。

 それが恋にとっては嬉しかった。

 まだ、自分の中に何かが残っていたような気がした。

 恋は犬を連れて、烈海王と愚地独歩と闘った場所から動いた。

 そして、たどり着いたのが、職人たちが住む区域の一角であった。

 隠れられそうな建物が多い、というのが理由だった。

 恋はそこで、犬と戯れながら傷を癒していた。

 そして、今日も昨日や一昨日と同じように。

 烈海王が持っていた青龍刀は、念のため、常に持ち歩いていた。

 その逆の手で、犬と遊んだ。

 犬の腹を撫でると、肋骨の感触がする。

 恋は何度か、エサを多くあげたい、と思った。

 だが、恋自身もその日を食いつなぐのが精一杯だった。

 金はある程度持っていたが、犬に余分な餌を与える余裕はない。

 せめて、恋は金を自分の薬や包帯に使わずに、自分と犬のエサに使った。

 気が付けば、恋は犬に情が移っていた。

 一緒に過ごしている時間は短いが、それでも移っていた。

 

「……どうしたの?」

 

 恋が犬を撫でていると、突然、犬が小刻みに震えはじめたのだ。

 犬の視線は恋ではなく、その後ろを向いている。

 ――まさか……

 背中に電流が走るのと同時であった。

 

「生温い生き方してるじゃねえか」

 

 聞こえたのは男の声であった。

 その声は、恋が何度も聞いた声だった。

 初めて敗けた日から今日まで、夢の中で何度も聞いた。

 恋は居合い抜きのように青龍刀を引き抜き、背後にいる男に向き直った。

 

「勇次郎ォォォォっ!」

 

 恋は吼えるように叫んだ。

 青龍刀の切っ先は、真っ直ぐと勇次郎に向けられている。

 勇次郎はクスクスと笑っていた。

 

「随分とまあ、必死なことだ……」

 

 恋の息は荒い。

 フーッ、

 フーッ、

 と、興奮して怒る猫のような音がする呼吸だ。

 

「また、この俺とヤりたいらしいな」

「かっ!」

 

 恋は有無を言わず、青龍刀で斬りかかった。

 青龍刀が勇次郎の右手に捕まった。

 右手は峰から覆いかぶさるようにして掴んでいる。

 青龍刀は勇次郎の手の中で、乾いた小枝が折れるような音をたてた。そして、折れた刃が、地面に落ちていった。

 勇次郎の手が、青龍刀の根本へと滑る。

 また、折れる音がした。刃が、また地面に落ちていく。

 ものの数秒で、恋が振った青龍刀は、元の長さの半分以下になっていた。

 恋の手から、青龍刀が落ちた。

 

「ボーリョクは、いけねえよなァ」

「……っ!」

 

 勇次郎は笑っていた。

 恋はその顔に、左のハイキックを叩きこんだ。

 当たった。

 だが、恋は効いているとは思えなかった。

 勇次郎の笑みは消えない。血の一滴も流していない。

 

「手心を加えぬ一撃がこの程度……。失せろッッ!」

 

 同時だった。

 どういう予備動作もなく、勇次郎の右足が恋に向かって跳ね上がってきた。

 恋は身体をひねり、避けた。

 虎牢関の時と同じように、何かが焦げる幻臭がした。

 恋は距離をとるため、跳んで下がった。

 

「ほう」

 

 勇次郎は感心したかのようにつぶやいた。

 

「俺にとっちゃエサにもなりやしねえ。だが……」

 

 勇次郎はそう言い、恋の足元にいる犬に視線を移した。

 その犬は不安そうな顔で、恋を見上げていた。

 

「恋。殺せ」

 

 勇次郎が言った。

 恋にとって、突然のことだった。

 

「……え……?」

「その犬を殺せ」

 

 殺せるわけがない。

 恋は元々、動物好きの性格であり、そして、その犬には情が移っていた。

 犬は時折り、不安げに細くて高い声をあげた。

 あげながら恋を見上げていた。

 

「殺せねえか」

「……殺さない」

「クス……クスクスクス……」

 

 勇次郎は再び笑い始めた。

 バカにするような嗤い方だった。

 

「情けねえ。まだ帰り道を残してやがる。甘っちょろいまま、成長など一切せず……。キサマ程度では、俺どころか(バキ)にも敵わねえ。勝てねえ。どんだけ闘おうが、一寸たりとも強くなりやしねえぜ」

 

 勇次郎はそう言い、一息だけ吸った。

 

「その程度でありながら、最強などと平然と口にする……。キサマなど、ただの小娘に過ぎんッッッ! 大人しく引きこもって闘いごっこでもやっていろッッッッ!」

「……っ!」

 

 恋は手を強く握った。

 爪が手のひらに食い込み、血が流れ出した。

 

「キサマなど一生、井の中の蛙ッッッ! 二度と目の前に立つなッッッッ!」

 

 恋は歯を食いしばった。

 奥歯の歯茎から、血が出る程に強く食いしばった。

 どうして、自分はこんな目に合うのか。合わなくてはいけないのか。

 それに対する怒りが、恋の中に湧き上がってきた。

 だが、同時に別の感情も湧き上がってきた。

 勇次郎に斬りかかり、その力の差を感じた。

 まだ、恋の方が下だと感じた。

 その差を埋めれるのなら何だって、と思った。

 だが、この犬を殺すことが、強さにつながるのか。

 勇次郎に勝つことにつながるのか。

 行き止まりを感じていた。闘っても、勇次郎には追いつけない気がしていた。

 そこに垂らされた蜘蛛の糸。

 強くなれるのなら。強くなるのなら。

 狂ってしまいそうだった。

 強くなりたい、という想いが恋を焼く。

 殺したくない、という想いが恋を冷やす。

 犬は怯えたような目で、恋を見上げていた。助けを求めるような目で、恋を見ていた。

 恋の中で、恐ろしい何かが唸る。

 恋はそれを必死で抑えた。

 猛る。

 獣が、猛る。

 恐ろしく凶暴な獣が――

 

   参

 

「勇次郎!」

 

 恋は叫んだ。

 叫ぶのと同時に、犬の頭に踵を落としていた。

 

 めかっ

 

 骨が潰れる音がした。

 犬の鼻が、潰れる音だ。

 犬が悲鳴をあげた。

 逃げようとする。

 恋は尻尾を鷲掴みにして、捕まえた。

 何故、自分がこんなことをしているのか、分からなかった。

 殺したくなった? 強くなるため?

 分からない。

 何も、分からない。

 恋は犬の胴体に手刀を落とした。

 ついさっきまで、撫でていた肋骨の感触があった。

 同時に、骨を折る感触もあった。

 犬は唸り声をあげていた。

 そして、恋の右腕に噛みついた。

 血が流れた。

 恋は犬の顔面に拳を放った。

 

 ぐちっ

 

「勇次郎ォ!」

 

 叫んだ。

 必死で、何度も犬の顔面に拳を放った。

 それでも、犬の牙は恋の腕から放れない。

 恋は左の中指を立て、犬の眼に突っ込んだ。

 最初の一撃では、入らなかった。眼のレンズを傷つけるだけだ。

 思い切り突いた。

 柔らかさと硬い何かの感触を感じた。

 

 ぞぶり

 

 恋の指が、犬の目に深々と刺さった。

 ぐちぐちと、ものスゴイ感触がした。

 眼球と骨と犬の毛と肉とが、混ざり合っているような感触がした。

 肌が粟立って、全身の毛が立ちあがった。

 恋は指を鉤状に曲げ、犬の眼球をほじくり出した。

 犬が悲鳴をあげた。

 恋は左腕をまわして、犬を絞めた。

 腕に当たっている犬のノドが、ゴリゴリと動く。

 犬の後足が恋を引っ掻く。恋の腿に爪で傷が出来た。

 プクリ、と赤い血がそこから出てくる。

 前足は地面を求めて、必死で足掻いていた。

 恋は犬の残ったもう片方の眼もえぐった。

 

「ああああああっ!」

 

 泣き声が聞こえた。

 人の声だ。

 恋にとっては聞き覚えのある声、だった気がした。

 よく分からない。

 ゴメン。

 吼えた。

 ゴメンっ。

 恋の手の中から、嫌な感触がした。

 その感触に驚いて、恋は手を離した。

 犬は、まだ生きていた。

 口から大量の血をこぼし、その端には血の泡が出来ている。

 犬は逃げようとしていた。

 だが、走れない。

 そんな体力がないのか。それとも、足が折れたのか。

 犬は恋の方を向いて唸り、牙を剥いた。

 獣であった。

 元々は雑種の、ただの犬。一つ加えるのなら、成犬手前である、ということぐらいか。

 右の前足が、異様な方向に曲がっている。

 そして両目はまだ、とれていなかった。

 太い視神経が目の穴から伸びている。

 眼球はその先にくっついていた。

 くっついたまま、垂れている。

 

「殺せ」

 

 そんな声が聞こえた。

 恋はうめいて、また犬の首に組みついた。

 そして、絞め上げた。

 犬の首を絞めたまま、仰向けに転がった。

 血と土で汚れていく。

 顔も、髪も、服も、血の臭いがする泥で汚れた。

 

「ゆうじろォォォォ!」

 

 恋は叫んだ。

 泣きながら叫んだ。

 涙に犬の血が混ざり、血の涙を流しているかのようになった。

 必死で犬を絞めた。

 同時に、この三日間が頭を過る。

 ゴメン。

 ゴメンっ。

 頭の中に響く謝罪の言葉。

 恋はその声が誰の声なのか、ということすら分からなくなっていた。

 狂っていた。

 狂気に支配されていた。

 犬から、自分の腕の中から乾いた音がした。

 犬は死なない。

 まだ震えている。

 何故死なないのか。

 恋は気付いていなかった。

 犬の震えは、もがいているのではない、という事実を。

 痙攣していた。

 この世で出来る最後の行動。

 断末魔の震え。

 これ以上はどう足掻いたって出来ない。

 生き物の生温かさが、恋の中に染みついて行く。

 恋は腕を放し、起き上がった。

 そして、転がっている犬を蹴った。

 何度も。

 靴が血の色で染まっていく。

 狂ったように、恋は犬の死骸を蹴り続けた。

 

「死んでるぜ」

 

 勇次郎はそう言い、恋の肩を軽く叩いた。

 そこで、恋はやっと犬が死んでいることに気が付いた。

 同時に犬の死骸がどうなっているかも。

 首の骨が折れ、顔が背中の方を向いていた。

 アゴも折れている。

 恋の足元には、白い破片が散らばっていた。犬の歯であった。

 頭蓋骨は割れており、そこから脳が出ている。

 

「うあ……あ…………あ……」

 

 恋は犬の死骸を見下ろしながら、声にならない声をあげた。

 最近、食事は量多く食べていないが、それでも吐きそうになった。

 喉のすぐそこまで、酸っぱい胃液が昇ってくる。

 

「これでキサマの逃げ道が無くなったぜ」

 

 恋の耳に、その声が届いた。

 同時に、恋は動いた。

 

「勇次郎ォォォォッッッ!」

 

 叫びながら、恋は拳を振った。

 振り向きざまに、裏拳。

 勇次郎の顔面に当たった。

 そこまでは、さっきのハイキックと同じだ。

 一つ違うのは、今度の攻撃では、勇次郎が鼻血を出していた、ということだ。

 勇次郎は右の親指で、流れ落ちる鼻血を拭った。

 

「多少はマトモな面構えになったな」

「勇次郎……許さない……っ!」

「やったのは、お前さんだろうが」

「うるさいっ!」

 

 恋の顔には犬の血がこびり付いていた。

 血の涙の跡もクッキリと残っている。

 恋は怒りの形相のまま、勇次郎に襲い掛かった。

 構えもへったくれもない。

 野生の肉食獣が、獲物に襲い掛かるように飛び掛かった。

 それを、勇次郎は柔らかく、後ろにバックステップしてかわした。

 十分な距離をとってから、勇次郎は恋に背を向けた。

 ――逃がさない……っ!

 恋は走りだし、一気に距離を詰めようとした。

 その時だった。

 勇次郎はノーモーションで、脚だけの力で垂直に跳ねた。

 そして、右足を縦に廻した。

 

「キサマの相手は俺ではないッッッ!」

 

 勇次郎はそう言いながら、地面に着地した。

 同時に、左右の建物がピシピシと軋みだした。

 恋はそれに気付き、勇次郎に飛び掛からずに急ブレーキした。

 恋の爪先の位置。それが、境目となった。

 スグ左右にある建物が崩落しだしたのだ。

 壁と屋根に、鋭い刃物によって生じた傷が出来たかと思うと、音をたてて崩れ出した。

 激しい砂埃が巻き上がる。

 周囲がどうなっているかなど、まるで見えない。

 その中で勇次郎の声だけは、よく聞こえた。

 

「恋よ――俺とやりてえのなら、相手してやってもいいぜ。キサマが俺の倅――刃牙を倒せたならば、だ」

 

 そこまで勇次郎が言った時には、砂埃が収まりはじめていた。

 恋の爪先の辺りにまで、倒壊した家の残骸が山のようになって、散らばっている。

 その山の向こう側に勇次郎はいた。

 

「もし、刃牙を倒すようなことがあれば――俺がキサマを喰らってやろう」

 

 勇次郎はそう言い、歩き出した。

 恋は反対側に残されたまま、震えていた。

 恐怖、なんていう理由じゃない。

 恋の中で獣が猛っていた。

 その獣を持て余していた。

 抑える、なんてことは出来ない。

 どう抑え付ければいいのかも分からない。

 手の付けようがない、高温高圧のエネルギーが恋の中に存在()った。

 ジッとしていても、動かしても、そのエネルギーは大きくなっていくような気がした。

 

「かあああああっ!」

 

 恋はたまらなくなり、叫んだ。

 エネルギーは消えない。大きくなっていく。

 喉が渇いたときに海水を飲むと、余計に喉が渇くようなものだ。

 いくら叫んだところで、このエネルギーは消えないのだろう。

 恋はそれでイイ、と思った。

 それを、そのままぶつければいい。

 誰に?

 無論――範馬刃牙に。

 

   肆

 

 血を流している犬の光景が恋の中に浮かんだ。

 口から血を流している。

 眼からも血を流している。

 地面に横たわり、動かない。

 恋は叫んでいた。

 叫びながら走った。

 城へ。

 そこに、刃牙がいると思ったのだ。

 左右の門番が恋を止めようと、槍の切っ先を向けた。

 威嚇のつもりなのだろう。

 恋はその程度では止まらなかった。

 飛び掛かった。

 左の兵には、飛び掛かりながら、顔面を蹴った。

 足の甲から、鼻の骨を蹴り潰す感触がした。

 鈍い、肉を打つ音と、軟骨が潰れる音がした。

 その兵を打ち倒しておけば、恋の実力なら、力ずくで城に入れただろう。

 止まらなかった。

 恋は左の兵の胸に掌底をした。

 胸骨と肋骨を破壊していく手応えがあった。

 左の兵士は、口から血を吐き、倒れた。

 恋は止まってなど、いられなかった。

 止まったらその場でスグに、自分の中にある高温のエネルギーが、身を焦がしてしまう。

 狂った。

 狂っていた。

 肉の中にある狂気が止まらない。

 兵士二人を瞬く間に叩きのめし、恋は城に入った。

 

「刃牙ィっ!」

 

 恋は叫んだ。

 その先に、黒髪の人がいた。

 片手で青龍堰月刀を持った、艶やかな長い黒髪の女性が。

 愛紗であった。

 

「呂布っ!?」

 

 愛紗は恋を見て、驚いたような声をあげた。

 尋常な眼ではなかった。

 一体、どんなモノを見れば――一体、どんな目にあえば、このような眼ができるのか、想像できなかった。

 哀しみ、怒り、憎悪。

 ――それだけで、このような表情(かお)が作れるものなのか!?

 愛紗は想った。

 だが、恋に想いを馳せたのは一瞬だった。

 ――ここで倒す!

 愛紗はスグに切り替え、武器を振った。

 峰打ち――

 殺すつもりはなかった。

 意識を刈り取る一撃だった。

 それが放たれるのと同時に、恋は跳んだ。

 風を切る音をあげ、恋の身体の下から、刃の峰が昇ってくる。

 跳んでいる以上、避ける術はない。

 そんなこと、恋は考えなかった。

 ただ、昇ってくる刃を蹴った。

 その勢いで、恋の身体がグッと上がった。

 そして、そのまま愛紗の頭上を越えていった。

 

「待て!」

「止めなくていいよ」

 

 外からの声が、愛紗を止めた。

 

「俺の名前、呼んでたよね?」

 

 廊下の窓の外から声がした。

 そこにいたのは、範馬刃牙であった。

 

「売ってンだよね、喧嘩」

「かっ!」

 

 恋は答えずに、窓の下の壁を蹴った。

 壁から、

 ミシリ

 と聞こえるのと同時に、恋の足は壁を蹴り抜いていた。

 刃牙はバックステップで、それを避けた。

 そして、

「ついて来い」

 と言わんばかりに、恋の方を一度だけ振り向いてから、歩き出した。

 向かった先は中庭であった。

 闘争(たたか)いの邪魔になるような物は、何一つない。

 そのはずだ。

 だが、たった一人、中庭の中央で突っ立っている男がいた。

 範馬勇次郎であった。

 

「やっと二人揃いやがったか」

「親父……。コイツが喧嘩売ってるのは俺だぜ」

「ああ。その通りだ」

 

 勇次郎はそう言い、刃牙と恋の間に入った。

 

「範馬刃牙VS呂布――特別試合(スペシャルマッチ)だ。開始(はじ)めいッッッ!」




恋に、スーパーストリートファイターシリーズでいうところの、殺意の波動を。北斗の拳でいうところの魔闘気(少なくとも無想転生の方向ではない)を纏って、決戦へ……。
今回で評価やお気に入りとかスッゴイ減りそうですが、さらに上の強さをってなるとネジ一本とるとか、どっか破っちゃいけないトコロを破るぐらいしか自分には浮かびませんでした。
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