真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~ 作:クーロン
感想でも、意外とこのキャラは来ないの? とあり、どうやって出そうかと考えていたのですが、とある映画を見て思いついたッッッ! この手があった!
というワケで、刃牙キャラから彼が御登場ですッッッ
城内にある冥琳の部屋。
そこには二人の人間がいた。
この部屋の主である冥琳と、孫呉きっての名医である鎬紅葉であった。
紅葉は手元の紙に一度だけ目を落としてから、冥琳に視線を向けて、言った。
「診断の結果……お聞きになりますか?」
「いい。私の身体だ。私が一番よく分かる」
冥琳は椅子に腰かけ、目の前の机の上にある書類と竹簡に目を通しながら答えた。
彼女の元に来る書類は減ることが無い。
いくらやっても次から次に届くのだ。
しかも、今が建国したて、ということもあり、重要な書類や竹簡ばかりだ。
それらへの対処を、遅らせるわけにはいかなかった。
出来るだけの時間を書類のために割き、こなしていく。
冥琳はそのために、睡眠時間や休憩時間、食事の時間も少しずつ削っていた。
それが原因なのか。もしくは、紅葉が言った病が原因なのか。冥琳の褐色の肌は、少しだけ青白くなったようにも感じる。
「……そうですか」
「そうだ」
紅葉は手元にある書類を、持っていたカバンの中にしまった。
パチン、とカバンを閉める音が、やけに大きく部屋に響いた。
「一応、言っておきます」
紅葉はそう言い、咳払いをした。
冥琳は落としていた目を上げ、紅葉に目を向けた。
「今は時期が時期ですから、仕事をせずに休むこともしづらいでしょう。ですが……今後もこのようにするのであれば、御自身の後釜についてもお考え下さい」
「後釜……か……」
「何にせよ、分かれ目への猶予はまだ、少しだけあります。その間にお考えください。治癒の道を歩むか……それとも、今、出来ることをやった上で病のなすがままになるのか……次にわたしが聞くときが、おそらく最後の選択の機会です」
「そうか……」
「お大事に」
冥琳は再び書類を手に取り、目を落とした。
パラリ、ハラリという音が部屋に響く。
紅葉は冥琳に背を向け、扉の前で冥琳の方を向いてお辞儀をし、部屋から出て行った。
部屋の中でたった一人になり、冥琳は書類から目を外した。
「……後釜……か」
冥琳は天井を見ながら、つぶやくように言った。
そして、机の上にある飲み水に口をつけ、今度は竹簡を手に取った。
壱
雪蓮の部屋。
そこには雪蓮と渋川剛気がいた。
雪蓮は黙々と書類をこなし、渋川剛気はそれを見ていた。
「そう言えばさぁ……お爺ちゃんは何でここにいるの?」
雪蓮は手に持っていた書類を読み終えると、目をあげて言った。
「蓮華嬢に頼まれたんじゃよ。どうにも、逃げ出すようなら指捕りでもやってくれ……と」
「……あの痛さ、蓮華は分かっているのかしら。ホントに痛いのよね」
雪蓮はそう言い、再び視線を書類に落とした。
パラ……パラ……という紙の音や、竹簡が擦れる音がする。
そして、ある程度読んだところで、雪蓮は露骨に嫌そうな顔をした。
「げ」
「どうかしなさったか」
「これよこれ。穏のところに行くはずの竹簡が、ここにあるのよ」
雪蓮は右手で竹簡の端を摘み、ブラブラと揺らしながら言った。
「ほう……だが、仕方ないじゃろ」
「仕方ないって~?」
「どうも今日は、祭さんと出かけているようなのでな」
「ああ……それでここに来ちゃったのね。なら仕方ないか」
何かを思い出したのか、雪蓮は手をポンと叩き、眉間のシワをほぐしてから、その竹簡と向き合った。
「事情を知っておるのか」
「ええ。今日、穏と祭は精鋭を率いての、対工作兵訓練なのよ。明命相手にね」
「今の時期にかのう?」
「今の時期だからこそ……とも言えるわ。独立したことだし、色々な勢力がウチに間者を送り込むでしょうしね」
「そういうことでしたか」
「そういうこと。あと……二人が帰ってきたら、面白いものが見れるかもしれないわよ?」
クスリ、と雪蓮は笑って言った。
渋川剛気は不思議そうな顔をしていたが、雪蓮が楽しそうに笑っているのを見て、小さく笑みをこぼした。
「祭と穏は、どんな顔になって帰ってくるのかしらね」
雪蓮は誰にも聞こえないような小さな声でそう言うと、手にしていた竹簡に目を通し始めた。
弐
樹海といっても、差支えのないような森林の中。
そこで、祭と穏が率いる精鋭達の、対工作兵訓練が行われていた。
だが、既にその精鋭達は明命に狩られ、気絶し、顔に落書きをされたまま放置されていた。
「穏。お主も兵をやられたか」
「はい……。どうしますか~。このままじゃ、私達も……」
「うむ……見通しのよい、広いトコに行くぞ。……それしかない」
祭はそう言い、弓を引いた。
そして、穏と背中を合わせたまま、ズリズリと移動しだした。
だが、その途中でガサリと音がした。
「おったぞぉ! おったぞおおおおぉぉぉぉぉぉ!」
祭は叫び、矢を放った。
それは真っ直ぐ音源に向かうが、仕留めるには至らない。
また違うところで、草が揺れる音がしたのだ。
「出て来い明命ぇ!」
祭が叫ぶ。
しかし、その叫びに答える人はいなかった。
誰も、いなかった。
気が付けば、祭の背中にかかっているハズの体重はなかった。
「穏!」
祭は背中にいるハズの人の名を呼び、振り向いた。
だが、そこに穏はいなかった。
穏は後ろ手に縛られ、胸には墨で大きく『存在価値は巨乳のみ』と書かれていた。
「ヒドイことをする……」
祭は穏を縛っている紐を、切りながら言った。
そして、背中をポンポンと叩くと、穏の口から
うう……
と呻き声がもれた。
「穏……」
「みました……」
「明命をか!?」
「見たんです……っ……!」
穏がそこまで言ったところで、身体からガクリと力が抜け、また、気を失った。
祭は何度か穏の頬を叩いてから、頭をゆっくりと地面に着けた。
そして、周囲を警戒してから、ゆっくりと立ち上がった。
「これで……わし一人か……」
祭はそう言い、弓ではなく剣を構えた。
一人になってしまえば、弓は意味をなさない。
もし、懐に入り込まれたらそこまでだ。
祭は
明命が、どこかで近づいてくる――
ということを、確信していた。
剣を構えたのは、それへの対処であった。
無論、飛び道具を使ってくる可能性もある。
弓などではない。
石も立派な飛び道具だ。
――石を……
そう思った矢先であった。
頭上の木から、風を切るような音が聞こえてきた。
――やはりか!
祭は剣で飛んでくる石を払い落とし、石が飛んできた方向を睨んだ。
「こっちですよ」
祭の耳元から明命の声が聞こえた。
そして、意識が途切れ、目の前が暗くなっていった。
参
明命は持っていた刀の鞘で、祭の後頭部を殴った。
その一撃で意識は刈り取られ、うつ伏せに倒れていく。
「これで全員……ですね」
明命はそう言い、祭の肩に手をかけてひっくり返した。
そして、持っていた筆で『乳に栄養行きすぎ』と書いた。
明命は書き終えると笑みを浮かべた。
「…………」
これで終わったのか。
否。
まだ、終わってはいない。
終わったものがあるのだとしたら、それは訓練だけだ。
樹海には嫌な空気が張り詰めている。
ここにいる人の他に、誰もいないハズだ。
いるとしても、それは木こりのような人間だけだろう。
このような気配、雰囲気をかもしだせるような者ではない。
ならば、獣か。
それも違うだろう。
獣ならどこにでもいる。
虎や熊といった獣は、だ。
なら、何がいるのか。
それはやはり人だろう。
人がこのような尋常ならざる気配を醸し出しているのだ。
明命は息をひそめて訓練と同じように、いや、訓練以上に気配を消して動き始めた。
行くところは、兵を倒した地点だ。
この見えぬ相手から保護するという目的と、見えぬ相手に対抗するための戦力の確保、という二つの目的があった。
明命はその場所を、しっかりと覚えている。
だが、その地点には誰もいない。
――もう、起きて……
明命は一瞬、そう考えたが、スグにその考えを消した。
そんな力で叩いていない。
しっかりと気絶させたはずだ。
――なら……どこへ……
そう思い、五感を研ぎ澄ました。
兵の居場所は容易に見つけ出せた。
近くの木の下から、人の汗の臭いがしたのだ。
その木の根元には草が茂っているので、兵はそれに隠れ、目視できない。
明命は気配を殺したまま、そこに近づいた。
そして、息を飲んだ。
「っ!」
兵は木に縛り付けられ、口を塞がれていた。
口を塞いでいるのは、明命にとって見慣れないものであった。
張り付くことが出来る粘着質な布、としか認識できないのだ。
明命は力ずくでその布を剥ぎ取った。
布の口に着けられていた側には、糊のようにベタベタしているものが、ムラなく、くっついている。
明らかに、この時代に存在するものではない。
――何が居るんですか……!
明命はそう思いながら、持っていた刀で紐を切った。
刀は明命の体格に対して非常に長いため、ナイフのようにして、紐を切ることは出来ない。
そのため、木の上にまわっている部分を切った。
結び方は単純であったのだろう。
一か所を切るだけで、スルスルと紐は解けた。
兵は気絶したままであった。
紐が解け、ずるりと横に倒れる。
「…………」
明命は兵から一歩だけ離れ、空気の臭いを嗅いだ。
血の臭いはない。
呼吸の音も自然だ。
毒を飲まされた、という雰囲気ではない。
――なんで、木に……?
明命は兵の無事を確認すると、そのことを考えた。
だが、答えは見つからない。
明命は兵達を一カ所に固めることを最優先にし、気絶した兵を担ぎ、祭と穏が寝ているところまで運んだ。
兵と明命の間には、大きな体格の差があるが、明命はそれをモノともしなかった。
ひょい、と担いで運ぶ。
「!?」
気配を殺したまま運び、着いて、そして、再び戦慄した。
祭も穏も気絶したままで、木に縛り付けられていたのだ。
明命は縛り付けられている紐を切り、二人を解放した。
――また!?
明命は心の中で叫んだ。
相手が一体、何を考えているのか――
ここに到って、明命は必死でそのことを考え出した。
敵の無力化?
それなら、とっくにされている。
逃げられないため?
それはそうだろう。御叮嚀に、紐で木に縛り付けられているのだ。
何故、逃げられないように……?
明命はその事を考え、再び戦慄した。
とある生き物が明命の頭を過る。
モズは捕らえた獲物を木の枝等に突き刺したり、木の枝股に挟んだりする。
その行動理由はよく分かっていないが、往年の説として最も有名なのは、食料確保が目的である、という説である。
――もし、それが事実なのであれば……!
明命の背に、ぞくり、と寒気が背骨を通って駆け上がっていく。
――他の人達も放っておけませんっ!
だが同時に、ここに三人を置いておくのも危険だと、明命は分かっている。
それでも放っておけない。
危険が近づいているというのに、放っておくことは出来ない。
明命はこの三人の無事を祈り、気配を殺し、同時に迅速に動き出した。
肆
明命はテキパキと兵達を集めた。
何もされていない無事な人間もいたが、大部分は木に縛り付けられていた。
だが、その周囲に犯人の手掛かりは無かった。
縛るのに手こずった跡どころか、足跡一つないのだ。
まるで、その道のプロを相手にしているようであった。
気味が悪い。
それでも、一人を残して全員を無事に回収し、一か所に集めることが出来た。
今、明命は最後の一人がいるであろう場所に向かっていた。
最後の一人は、仲間を固めている所から、多少離れている場所にいた。
明命はうつ伏せに倒れている姿を見つけてから、空気の臭いを嗅いだ。
血の臭いはない。
それを確認してから、明命は近寄った。
一歩、二歩。
そして、あと一歩の間合いになり、その兵は動き出した。
「君が……わたしの獲物を逃がしていたのか……」
「っ!? 誰ですか……!」
目の前の男は、孫呉の兵が着る軍服を着ていた。
残る一人と髪型も同じだ。
だが、明命にとっては知らない人間であった。
目の前の男は被っていた髪を右手で掴み、明命に投げつけた。
「カツラ……っ!?」
明命はそれを刀で切り裂いた。
斬れたカツラの間から、迷彩服を着て、頭にバンダナを巻いた男の姿が見えた。
顔に眉は生えていない。それにアゴヒゲも無く、かなり若く見える。
男はまだ、動かずにそこにいる。
だが、異変は起こっていた。
男は大きく口を開けている。
アドレナリンの流れを操作しているのだ。
「刃物を持ち、わたしと対峙する……。どうやら君は、わたしの敵らしい。さあ……来るといい」
男はそう言い、棒立ちに構えた。
明命は刀を向け、男を睨んだ。
男は動かない。
ただ、明命を見ていた。
「しゅっ!」
明命は鋭く息を吐き、刀を振り上げた。
「右……」
男はそうつぶやき、左へ動いた。
刀がさっきまで男がいたところを通過し、地面をえぐる。
明命は地面から引き抜き、その引きで作った溜めで、突いた。
「心臓……」
男はそうつぶやき、動いた。
明命の刀は、やはり、男の心臓があった所を通過した。
「しぃっ!」
「蹴り。そして左」
男はそう言って、手で明命の金的を抑えた。
それと同時に、刀が左から飛んでくる。
だが、その刃は男をすり抜けるようにして、右へと流れた。
気味が悪かった。
何故、こんなことが出来るのか見当もつかない。
確かに斬れる軌道に、男は居た。
しかし斬れない。
明命は心と気配を殺し、無念無想のまま、刀を振った。
だが、振る前に男は間合いを詰めた。
一瞬のことだった。
明命はそれに、反射的に反応した。
刀を振った。
その一撃が空を切る。
「当たらないさ……どれだけ刀を振ろうと、わたしには当たらない。君の肉体は、わたしの味方をしてくれているのだ」
「どういう意味ですか」
明命の声に抑揚はなかった。
だが、明命の右足は勢いよく、男に向かって跳ね上がった。
ハイキック――
アゴを打ち抜くつもりで放った蹴りだ。
男には当たらない。
そして、男はその隙をつくように、左手を明命の首に回し、右手は股の下から服を掴み、持ち上げた。
ボディスラム――
男は勢いはそのままに、明命を地面に叩きつけた。
伍
「がいあ?」
不思議そうに蓮華が言った。
「ああ。ウチの世界で最強の軍人といったら、ソイツが一番だろうな」
葉巻を咥えたまま、オリバが言った。
話をしている場所は蓮華の部屋であった。
蓮華は椅子に、オリバはソファのような椅子に腰かけ、話していた。
蓮華の前には机があり、その上には、やはり竹簡や書簡が置かれている。
オリバの前には、低いテーブルがあり、その上には灰皿と飲み物が入ったコップが置かれている。
そこで、祭と穏の対工作兵訓練の話から、オリバの国での軍事の話に広がったのだ。
「ミスター
「オリバと比べたら、どっちが強いのだ?」
「そりゃあオレさ」
「ふぅん……。なら別にそこまで脅威に思う必要はないな」
「分かってねえなァ」
「分かっていない……とはどういう意味かしら」
蓮華は、むっとした表情になった。
オリバはそのことに気を留めず、手元の灰皿に葉巻の灰を落とした。
「戦争ってのは一人でやるものじゃねェだろ?」
「そんなこと分かっているわ」
「なら、分かるだろうが。軍人の怖さってのは、個人の力じゃ測れねえんだよ」
「あ……」
「なんだ……忘れてたってか? お前は忘れちゃいけない側の人間だろうが」
オリバは笑いながら言った。
だが、蓮華がジっと睨んでいるのに気が付いて、ばつが悪そうに一度、咳払いをした。
「まあ、言ってしまえば……俺やオーガが戦場で暴れていても、相手する必要はねえ。相手せずに相手の本陣をブン獲っちまえば勝ちなんだからよ」
「補給路を断つ、というのもありだな」
「俺ならな。オーガなら、適当な野生動物を狩って食うだろうが」
「オリバならありって……。やっぱり食べないとキツイ?」
「この身体を維持するのは容易じゃねえんだ。戦場で飲まず食わず、なんてやったら筋肉が怒って、破裂しちまうぜ」
「は……破裂……」
「見せてやろうか? この城ぐらい、容易に破壊して、筋肉が天まで届くぜ」
「ウソでしょ。そのくらい分かるわよ」
「オイオイ。本気で言ってるのか?」
そう言ってオリバは立ち上がった。
そして、蓮華の顔に近づき、ギョロギョロとした目で見た。
「果たして……冗談か、冗談じゃねえか……分かるよな?」
オリバはそう言い、ニヤリと笑った。
蓮華の首筋に
つつつ
と冷や汗が流れる。
蓮華はそのことに気付いていたが、拭こうと思わなかった。
「…………ウソでしょ」
蓮華が言った。
さっきより、声のトーンは低い。
「ああ、ウソだ」
「なら何で、あんな脅すようにしたのよ……」
「からかってやろうと思っただけだぜ?」
オリバはあっさりと言った。
――この……!
蓮華はグッと拳を握り、身体を震わせた。
「なんだ。寒いってか」
「違うわよ……! で、がいあって人の話はもう終わりか?」
「おう、スマネェな。話が逸れちまったか。ガイアには個人の力だけじゃなく、集団の指揮能力もある。それが強みだ」
「確かに……オリバは指揮とか出来なそうだからな……」
「ヤル気もねえよ。俺は自由にやるのが一番だ」
「そう言うと思った」
蓮華が笑う。
だが、スグに姿勢を正した。
「で、ガイアの怖さってのはそれだけなの?」
「無論、それだけじゃねえ。密林戦じゃ、どんなに頭数を揃えても、皆殺しにされたって話だ」
「ウチの明命もそれぐらいできるわ」
「だろうな……。ガイア対明命は見物だろうよ。どっちも密林での戦いはプロフェッショナルだ」
「そう。どっちが勝つか見てみたい……とは思うけど、現実になりそうにはないわね」
「そりゃあな。じゃ、俺はもう行くぜ」
「どこに行くの?」
「飯だ」
「軍馬は食べないでね」
「分かってるぜ。馬には飽きたからよ」
オリバはそう言って、テーブルの上にある灰皿を取ってから部屋を出た。
そして、部屋から出て、葉巻を吸った。
「やり合ったらか……。戦場格闘技ってヤツは
陸
「今のは約八十キロメートルの速度で叩きつけた。これは、だいたい七階から落ちるのに相当する……」
男はそう言い、明命を見下ろした。
地面は人の形に抉れている。
明命はその近くで、苦しみに悶えていた。
「容赦はしない……このまま、片をつけさせてもらおう……」
男はそう言って、左の踵を明命の顔面目がけて落としてきた。
明命は血を吐きだしそうな苦しみをこらえ、刀でその一撃を抑えた。
そして、息を吸い、残った右の足を刈った。
男はバランスを崩し、仰向けに倒れていく。
明命はそれに追撃をしようとは考えなかった。
呼吸を整えるためにも、バックステップで間合いを広げた。
「ホントにタフな子だ……。このまま長引いて、仲間が来られたら面倒だ。環境利用闘法で……君を始末しよう」
男はそう言い、地面に右の爪先を潜り込ませた。