真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~ 作:クーロン
華琳は郭嘉と程昱――稟と風を自分の陣営に加えた。
その上で、大戦を起こすこととなる。
決戦地は官渡。
俗に言う官渡の戦いである。
数としては、麗羽の軍がまさる。
だが、それだけだ。
結果は蓋を開けてみないと分からない。
官渡の戦いでは、袁紹軍は移動式の櫓を用い、曹操軍の上に矢の雨を降らせた。
対して、曹操軍は投石器で対抗。
矢の届かぬ位置から狙い撃ち、櫓と士気を大幅に削ることに成功した。
そして戦は大詰めとなる。
曹操軍突撃――
袁紹軍の士気は既になく、兵が逃げ出して散り散りになっていく。
本陣は夏侯淵が落とし、戦の決着が着く。
これにて官渡の戦いの終結となる。
戦は終わった。
だが、闘争は終わっていない。
壱
四人組が走っていた。
内、三人は女で男は一人だ。
麗羽、斗詩、猪々子、そして、ジャック・ハンマーである。
「なんであんなクルクル小娘に本陣を……!」
「それどころか、張遼の旗が南皮に向かっていくのを見ました!」
「南皮も落ちたな、こりゃ」
「なんですってぇ! わたくしはこれからどうしたら……!」
「まず、逃げるのが先じゃないですかね?」
猪々子はそう言い、後ろを指差した。
後から曹軍の兵が追ってきている。
「待て貴様等! 追え! 逃がすな!」
「みなさん! もっとお急ぎなさい!」
「なんで麗羽さまは、こんな時だけ速いんですかぁっ!」
「待てって言われて待つバカなんているか!」
走る先にあるのは、鬱蒼とした森だ。
追手から姿をくらますには、うってつけな場所だ。
四人は迷わずに入った。
ざくり、と草を掻き分けていく。
「なんでわたくしがこんな場所に……!」
「ここで逃げ切らないと捕まっちゃいますよ!」
「出るのが遅くても捕まるけどな」
草を分けて進んでいると、どこからか水の音がした。
近くに川があるのだ。
それも、流れが速い川だ。
音が大きい。
「お! 向こうに川がある!」
猪々子はそう言い、川の音が聞こえる方向に向けて走り出した。
「川を渡って、橋を落とせば簡単に追って来れなくなりますわね!」
麗羽は名案であるかのように手をうち、猪々子を追った。
斗詩は顔を青くし、それを追う。
「橋が無かったらどうするんですかぁっ!」
「そん時は泳げばい~じゃん」
「文ちゃん!」
二人は止まらずに走っていく。
斗詩とジャックはそれを追った。
幸運か、僥倖か、その先には吊り橋があった。
麗羽と猪々子は既に半分ほど渡っており、二人を手招きしている。
「ホントにあった……」
「…………」
斗詩はそうつぶやき、呆然としていた。
だが、スグに気を取り戻し、渡りはじめた。
ジャックは、それを黙って見ていた。
「ジャックさん! 何をしてますの!? 早く……!」
「モウ、ココラデ良イダロウガ。サッサト行キヤガレ」
ジャックはそう言い、橋に背を向けた。
「げぇ! ジャックの兄貴、
「ジャックさん! 止めた方がいいですよ!」
「ウルセエ。サッサト渡リヤガレ。橋ヲ壊スゼ」
ジャックはそっけなく答えた。
「ジャックさん! 必ず追ってきますわよね!?」
「知ラネエヨ」
ジャックはそう答える時だけ振り向いた。
そして、三人が対岸にまで到達したのを見てから、吊り橋を支えている柱を、蹴りでへし折った。
一撃だった。
柱の木材はメリメリと音をたてて割れ、川に落ちていく。
そうしてから、ジャックは後ろを振り向き、ズボンから一本の注射器を出し、それを腕に刺した。
中身はドーピングの薬だ。
この時代では、どうやったって手に入りはしない。
偶然持っていた最後の一本。
それを打った。
ドクン、ドクンと心臓の音が大きくなっていく。
心拍数が変わっていく。
スグに効果は表れない。
表れるのは、もう少し経ってからだ。
弐
その光景を見ている人間がいた。
背は低い。髪は桃色で、後の方に二つにまとめている。
季衣であった。
追撃のため、軍を率いて追いかけて来たのだ。
そして、たまたま、ジャック・ハンマーが橋を蹴り落とす所を見たのだ。
「お兄さん……袁紹を逃がしちゃった……?」
「ダカラ何ダッテンダヨ」
「ボク、袁紹を追っかけなきゃいけなかったんだけどな」
「Peッ」
ジャックは足元に唾を吐いた。
「お兄さんが、じゃっく・はんまーだよね?」
「ソレガ何ダッテンダ」
季衣は無言で、持っていた鉄球を構えた。
そして、それをジャックに向かって投げつけた。
「何人か、本陣に戻って、じゃっくのことを伝えて! それと、袁紹が向こうに逃げたことも! ボクはじゃっくの相手をするから!」
重厚な音をあげ、鉄球が振り回される。
ジャックはそれを避け、少しずつ季衣に近づいていった。
参
最初に行ったのはジャックであった。
右の拳が、地の底から跳ね上がる。
季衣はそれを、後ろに跳んで避けた。
拳がアゴの薄皮を削ぐように吹っ飛んでいく。
「うわ……」
拳が巻き上げる風圧を直に感じ、季衣は笑んだ。
相手が強い、と思っている。
それを、いいことだ、と思っている。
季衣は笑みを浮かべたまま、鉄球を振った。
ぶうん。
ごうん。
地面に叩きつけると、土煙が巻き上がる。
――当たってない!
そのことは分かっている。
ジャックの速度は疾い。
簡単には当たってくれないだろう。
それでいい。
――近づいて来たら、拳か蹴りで……!
季衣はそう思い、足で軽くリズムを刻んだ。
踵は地面に着けないまま、軽く浮き沈みするだけ。
――来る!
季衣は直感的にそう思った。
ジャックの姿は砂煙に隠れて見えない。
それでも、来る、と感じた。
勘だとか、シックスセンスとか、言い方は色々あるだろう。
季衣にとってその感覚は、直接にその光景を見た時と同じように、確信を持てる感覚であった。
砂利を蹴る音が前からする。
季衣は何も考えず、音に向かって拳を突き出した。
砂煙を破き、ジャックの姿が見える。
大きく口を開け、拳の先に肉薄してきている。
ぞくり。
ぞくり。
身体に流れる汗が、上に向かって流れていく。
季衣は全身の力で一気に拳を引いた。
上下の歯がぶつかる音が、季衣の耳に届く。
止まらない。
カキン。ガチン。ガツン。
噛みつきの連撃。
季衣はそれを跳ね、回り、下がって避けた。
避けなかったら、どうなっていたか。
全ての攻撃は、急所を狙っていた。
打撃で悶絶するような急所じゃない。
傷つけば出血で死に至るような急所だ。
一撃必殺の獅子舞である。
季衣は間合いをとってから、鉄球を渾身の力で引いた。
スピード敗けをするわけにはいかなかった。
相手のスピードがある以上、追い付けなくなれば、簡単に追い詰められてしまう。
目で追いつけるうちは良いが、砂煙が巻き上がって、視界が狭まってしまえば、簡単に見失ってしまう。
だが、自分の武器が鉄球である以上、砂煙が巻き上がることは避けられない。
地面を叩けば、それで巻き上がる。
木に当たってしまえば、砂煙に木屑が混ざる。
だが、それの影響を受けるのは、相手も同じこと。
――距離をとったまま……叩く!
季衣は拳と蹴りの選択を捨て、鉄球を振り回した。
豪快な風切音が、砂埃を切り裂いていく。
薄まった砂煙の中に、黒い影が見えた。
「逃がさないよっ!」
影を打つ、なんて愚かなことはしない。
影が行く先を、季衣の鉄球が襲った。
「チィッ」
ジャックは地面を強く蹴り、後ろに跳ねた。
逃がさない。
季衣は鉄球をジャックが逃げる方へと振った。
――よし!
殺すつもりは無い。
そんな生易しいことは言わない。
仕留める気で打った。
鎖を伝い、何かを打った手応えがある。
それと同時に、メリメリと木が割れる音がする。
ジャックは、そこにいない。
ジャックは折れていく木の、枝に掴まっていた。
「アンマリ当タッチャ、イケネェミテェダナ」
――上か!
季衣は枝に向けて、鉄球を振った。
だが、ジャックは既に手を離していた。
折れていく木の枝に掴まっていたのは、ほんの一瞬のことだ。
季衣はそこに打ち込んだのだ。
当然、次の一手は後手になる。
ジャックが口を開け、迫る。
大きく開かれた口の中。
歯には涎が絡んでおり、獣の牙のように見える。
金色の毛をした、傷だらけの獅子だ。
季衣の背に、再び、ぞくりぞくりと寒気がはしる。
その寒気から、逃げちゃいけない。
「やぁっ!」
季衣は右足で地面を蹴り、左足でジャックのアゴを蹴った。
開いたアゴでは衝撃を吸収できず、脳震盪を起こしやすくなる。
季衣の足の甲は、的確にジャックのアゴを捕まえていた。
「綺麗ニヤルジャネェカ…………」
ぞくり、ぞくり。
また、季衣の背に訳のわからない寒気が走る。
ジャックの拳が、宙に浮いている季衣に、グンと迫る。
季衣は両腕で拳が当たる場所を守った。
重い拳だった。
いや、軽いのは季衣の体重か。
季衣はその拳を防ぎはしたが、いとも簡単に吹き飛ばされた。
だが、クルリと宙で回り、足から木につく。
そして、ジャックに視線を向けてから、木を蹴った。
地に足をつき、鉄球を振る。
なるべく近づかずに打つには、これしかない。
さっきのような蹴りが、何度も入るとは思わなかった。
「けやぁっ!」
鉄球を振り落とす。
ジャックはそれを潜るようにして、迫ってくる。
――噛みつき!? 拳!? 蹴り!?
来うる攻めは三択。
どの攻めの起こりを見逃すまいと、季衣はジャックを睨んだ。
蹴りの間合い。
来ない!
拳の間合い。
来ない!
バイティングの間合い。
来ない!
その間合いで動いたのは腕だ。
季衣の小さな身体をホールドする動きだ。
タックル――
季衣は身体を沈め、腕から逃れた。
――違う!
身体を沈めた高さに、ジャックの膝が来ている。
上に跳ねようにも、ジャックの上体が邪魔で逃げれない。
逃げられない。
腕を交差し、受ける。
両手の上を衝撃が駆け抜けた。
骨の芯がビリビリとしている。
だが、一度受けてしまえば、こっちの番だ。
季衣は叫び、蹴った。
跳ね上がるような蹴りであった。
金的――
――これで止まる!
そう思った。
ぬるい。
さっきの蹴りで体勢を崩した季衣に、ジャックの左足が襲い掛かった。
その一撃には、技術、なんてものは微塵も存在しない。
ただ、己の力のみを信じて放った一撃。
どんな時代でも――たとえ、恐竜が生きていた時代からでも、不変な一撃。
それが季衣を打ち抜いた。
季衣は蹴飛ばされ、木の幹に叩きつけられた。
ジャックはそれを見て、季衣に背を向けた。
「なんで帰ろうとするのさ」
季衣は木に背中を預けたまま、言った。
ジャックの動きがピタリと止まり、振り向く。
「餓鬼ミテェナ
「ボクは将軍やってるんだよ。そんなに弱くないよ。あと……ガキって言い方は許せない!」
季衣が手にしたのは鉄球じゃない。
たまたま、自分の近くにあった石ころだ。
それを、投げつけた。
ジャックはそれを避けた。
反射的な動きだった。
「てぇあっ!」
その動きに合わせるように、季衣は鉄球を振り落とした。
全力で。
逃がさない。
逃げれるスピードじゃない。
ごうん。
確かな、手応え。
肆
ドクン。
ドクン。
血が身体を回っていく。
ピキッ。ピシッ。
身体に変化が生じ始める。
「
鉄球が頭上から落ちてくる寸前に、ジャックはそうつぶやいた。
筋肉が隆起する。その上には、血管が浮き上がっている。
明らかに、ドーピングによる変化だ。
そして、ジャックに鉄球が落ちていった。
伍
手応えはあった。
確かにあった。
それでも、だ。
「…………」
季衣は目の前の光景に吃驚していた。
ジャックの上に落としたハズだ。鉄球を力一杯、落としたハズだ。
それが宙にあるのだ。
いや、ジャックに掴まれているのだ。
その下にいるジャックの様子は、さっきと明らかに違う。
季衣は克巳の言葉を思い出した。
ドーピング……薬を使って身体を増強していた――
その言葉が、季衣の頭を過った。
「クスリ……!」
「ヘェ……知ッテンノカ。ダガ、今ハ……関係ネェナ」
轟音。
ジャックが間合いを詰め、拳を振る音だ。
季衣は避けることも、受けることも出来なかった。
吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。
精々できたことは、叩きつけられたときに、後頭部を
「くぅっ!」
肺から空気と一緒に、苦悶の声が出る。
それがどうした。
気にしてはいられない。
季衣は空気を吸い、地面に尻をつけたまま、鉄球を振った。
それしかない。
下手に当たるのは危ない、と思った。
――多分、力比べなら敗けない! でも……!
噛みつき――
それが、季衣の記憶に残っている。
魔獣の牙のようであった。
――あんな歯で噛まれたら、肉を持ってかれる……!
いや、肉どころか骨が剥き出しになっても、おかしくない。
季衣の身体は肉厚ではない。
噛みつかれでもしたら、そのまま骨まで砕かれてしまうだろう。
そのことを思うと、容易に近づけない。
拳での一撃も、ためらわれる。
――だから……これしか……!
季衣はそう思い、鉄球とを繋ぐ鎖を握った。
ジャックは口を開け、牙のような歯を剥き出しにして迫ってくる。
季衣はその口に、鎖を噛ませた。
両手の間にある鎖を、ジャックは噛んでいる。
「やぁぁぁぁぁぁっ!」
季衣は気合を吐き、木を背にしたまま、ジャックの腹を何度も蹴った。
水月。ヘソ。股間。
場所は選ばない。
選ぶ余裕もない。
それを受けても、ジャックは仰け反らない。
蹴っても、ポンポンと返される。
「いいいいいいっ!」
季衣はジャックの頭に手を回し、おさえた。
そして、少ない動きでジャックの鼻に頭突きを喰らわせた。
そこでジャックは仰け反った。
季衣は、また、ジャックの腹を蹴って、突き放した。
ジャックの鼻からは血が流れている。
季衣は血の一滴も流していない。
攻撃も多く当てている。
だが、ジャックより疲れている。
「力ノ方ハ五分ッテトコカ。小セエ身体デ見事ナモンダ」
「まだ本気じゃないよ。さっきので半分ぐらい……!」
季衣はそう言い、立ち上がって、鉄球を引き寄せた。
ジャックは腕を広げ、一歩ずつ歩み寄ってくる。
「半分……?」
ジャックは確認するかのようにつぶやき、クスクスと笑った。
「アンナ必死コイテヨォ……」
「…………てぃっ!」
季衣は隙を突くように、鉄球を振った。
鉄球は真っ直ぐ、ジャックに向かって行く。
だが、ジャックはそれを受け止めた。
受け止めた手の皮膚が切れ、血が滴っている。
「ガァッッ」
ジャックは全身の力で、鉄球を引いた。
鎖がピンと張り、その先の季衣は、釣られるように飛んだ。
その力で、季衣は別な木に叩きつけられた。
一つ叩きつけたら、また別の木に。
苦痛に呻く間もない。
この苦痛から逃れたければ、鉄球を手放せばいい。
だが、それでは、あの凶悪な歯の元に、自分の肉体をさらすことになる。
――どうしたら……! 鉄球を離さないで……!
季衣は叩きつけられながらも考えた。
首を曲げて、後頭部を守っている。
叩きつけられる先に、尖っているのがあれば、それを壊す。
そうしながら、考えた。
答えは出ない。
正確に言えば、それは誤りだ。
答えはある。
だが、それは求めていた答えじゃない。
その答えは、今のような状態になっている理由だ。
陸
そうか……。
何となく分かったよ。
この人、今しか見ていないんだ。
ボクと違って、今しか。
ボクが華琳さまに仕える理由って……苦しんでいる人達の力になりたいから……。
だから無理をして、死んじゃいけない。
今日だけじゃなくて、明日も見ないとダメなんだ。
多分、それじゃ勝てない。
今しか見ていない人には勝てない。
死んでもいいって思っている人には勝てない……。
そして、この人……華琳さまに会ったり、独歩に何か言われる前のボクとそっくりなんだ……。
死んでも、目の前の敵を倒す……って。
絶対に勝つって。
この人、それしか考えていないんだ。
勝てない……っ!
でも……っ!
漆
季衣は鉄球から手を離した。
そして、振り回されていた勢いのまま、飛ばされた。
「ぐぅぅ……」
地面に着いたとき、上手く着地できずに、腕を切った。
つつつ、と赤い血が流れる。
季衣は地面に腕を突いたまま、うずくまっていた。
そこにジャックは、無言のまま近寄っていく。
ジャリジャリと、地面を踏む音が聞こえてくる。
これで終わりか。
違う。
ジャックの足が季衣まであと半歩という所で、季衣が動いた。
両腕と両脚の力で、一気に跳ねた。
「うりゃぁっ!」
季衣はジャックの顔に、再び頭突きを喰らわせた。
それで出た血が、頭上に降りかかってくる。
「敗けられない! ボクは……敗けられない!」
季衣はそう言い、ジャックの背後に回った。
そして、首に飛び付いた。
――これなら噛みつきも無いっ!
もし、地面に叩きつけられても、耐えられる。
季衣はそう思っていた。
だが、ジャックはそんなことをしなかった。
思い切り、身体の力だけで、背中にいる季衣を振り回したのだ。
遠心力で身体が滑り、季衣の目の前にジャックの顔が来る。
「りゃあっ!」
季衣の判断は速かった。
スグに腕を離し、ジャックの身体を蹴って、間合いをとった。
「軽イゼ」
「もう少し食べておけば、何とかなったかも」
「ナラネエヨ」
ジャックが地面を蹴る。
選択肢は四つ。
どれが来るかは分からない。
――もう、武器は無い! それでも……勝つんだ!
季衣がそう思った時、ジャックに向かって小石が投げつけられた。
ジャックはそれを手で叩き落とし、小石が飛んできた方を見た。
「ドウヤラ……オメェノ味方ガ来タラシイ」
「そうですよ。私以外にも、何人もこっちに向かってきてます」
季衣にとっては、とても聞き覚えのある声であった。
声の主は流琉だ。
「流琉……コイツ、強いよ」
「分かってる」
季衣はジャックの方を向いたまま、言った。
流琉もジャックの方を向いたまま、答えた。