真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~ 作:クーロン
こんな小説なのにアリガトウ。謝りたいと感じてる…………だから感謝というのだろう。これを感謝というのだろう。
応援して下さる皆さんに感謝の気持ちを込め、明日上げる予定だったこの話をupしますッッッ
「さて、軍議を始めるぞ」
「うん。準備は出来てるよ」
桃香達はまずは公孫賛の軍に一時編入し、賊退治の実績をあげることとなった。
その実績を元に人を集め、義勇軍を設立することにした。
幸いにも、軍を指揮できる人材である、愛紗と鈴々がいる。
そして、範馬刃牙もその陣中に混じっていた。
刃牙がここにいるのは、これからを考えた動きだった。他の人のこともだ。
――ここに、オレがいる。猪狩さんもいた。他にもいるんじゃ……
刃牙はそう、考えたのだ。
だから、情報を集めるためにも、どこかの勢力に入ることにした。
今の所は、桃香の勢力の一員ということになっているのだろう。
「さて、賊の居場所だが……」
公孫賛は卓上の地図に指を当て、説明を始めた。
その地図を、その場にいる全員、桃香、愛紗、鈴々、星、刃牙が覗き込んだ。
地図は山の場所や平野、河が分かりやすく書かれていて、伏兵を置ける場所や、騎馬を置くのに適した場所、陣を敷くのに向いた箇所と詳しく書かれていた。
その上を、公孫賛の指がなぞった。
策はあらかじめ決まっていたのだろう、スラスラと説明された。
賊軍の数は自軍の数と五分だった。
数は多い方が良いが、それは策によっては変わる。
しっかりとした策ならだ。
「と、いうわけで、桃香に愛紗、星、刃牙は先行してくれ。私と鈴々は後だ」
「ふむ……悪くはないですな」
「異論はありません」
星と愛紗は、それに賛成の意を示した。
大きな流れは決まった。
「よし、みんな! ガンバロー!」
「桃香、そこでとるなよぉ……」
桃香は右手を、高く突き上げた。
おう、と周りが答える。
だが、刃牙はそこから外れていた。
外れて、一人だけ、まるで別の事を考えていたのだ。
――ヤッパ……ここに居るのかなァ……。親父ィ……
壱
平野に四人組がいた。
老婆に、男性、そして二人の少女の四人組だ。
男性は褐色の肌をし、黒髪をオサゲにした男性だ。
少女は、片方は亜麻色のショートカットをした髪型の少女で、もう一人は水色の髪をしたツインテールの少女だ。
烈海王、朱里、雛里だった。
老婆は道の途中で見つけ、放っておくこともできず、保護したのだ。
朱里と雛里は旅の途中で桃香の噂を聞き、士官しようと、ここまで来たのだ。
「ハァっ……ハァッ……」
「もう少しでしゅ! もう少しで安全な場所へ……!」
「すぐそこに公孫賛様の軍勢がいます!」
「やはり、わたしが背負って……」
何かに追われているのだろうか。少女と老婆は必死な顔で走っていた。
必死で走っているが、老婆の体力のこともあり、あまり速くない。
そして朱里と雛里も必死だが、二人の体力も特に優れているわけではない。
体力の限界が見え始めていた。
何故、ここまで必死なのか? 何かに追われているのだろう。
事実、追われていた。
後ろから、賊が迫っていたのだ。
まだ、賊との間に距離はある。
だが、いずれは追いつかれるだろう。
それは、誰の目にも明らかだった。
――自分が三人を背負えば
烈海王は一瞬、そう考えたが止めた。
三人を背負うことは可能だ。だが、荷物はどうだ?
今、烈海王が背負ってる荷物を、朱里と雛里に持たせたとして、彼女達はそれを抱え続けられるか? 疾走による風圧に勝てるか?
……答えは否だ。
荷物を捨てればいいのかもしれないが、水鏡女学院から、わざわざ持って来たのだ。
烈海王は、捨てる、なんてことはしたくなかった。
だから、これは逃げ切るための、残された最後の手段だった。
「朱里ッ! 雛里ッ! 荷物を任せたッッ! わたしは賊を食い止めるッッッ」
「「烈さんっ!」」
烈海王は荷物を二人に預けた。
身軽になった。
烈海王なら、賊を容易に倒せるだろう。
あくまで少数ならば。
追ってきてるのは多数だった。
本隊ではないのか、かなり多いわけではない。
大体、百五十といった辺りだろうか。
だが、普通なら手に余るのも、また事実だ。
「烈さん! 一人で止めるのは……!」
雛里は必死に、逃げようと説得しようとするが、烈海王は賊に向かい、仁王立ちをした。
「いいから行くんだッッ」
「烈さん!」
「雛里……軍師になるのだろう? ならば、最善の判断をするべきだ」
「でもっ!」
雛里は烈海王の右腕を掴んで、引っ張ってでも行こうとするが、烈海王は動かない。
雛里では余りにも非力すぎた。烈海王を動かせるわけがない。
「雛里ちゃん……行こう。もうすぐだから……」
「でも……でも、朱里ちゃん」
「さっさといかんかァッッ!」
「行こう……!」
「朱里。それでいい」
「朱里ちゃんっ!? 離して!」
朱里は雛里を引っ張り、荷物を抱えて走り出した。
雛里が抵抗してるようだが、雛里も何が最善なのかは、理解できていた。
徐々に烈海王の耳から、二人の声が遠ざかっていった。
烈海王には、遠くまで行ってしまったのか、それとも話すのを止めたのかは分からない。
砂埃がひどかった。
烈海王の目には、砂がもうもうとして、あがっているのが見えた。
「ぶつけるぞ、四千年の武ッッ」
烈海王は腰を落とし、中国拳法の構えをとった。
弐
「すいません! 助けて下しゃい!」
「烈さんが……烈しゃんが!」
「え、どうしたの!?」
「桃香様! どうなさいましたか!」
「なんかァ……誰か来たみたいだけど」
桃香の前に、二人の少女が飛び込んできた。
朱里と雛里の二人だった。
老婆は周りの兵士に預けてきたのだ。
「愛紗ちゃん、刃牙くん。この二人が急に……」
「軍を、向こうに……」
「賊がいて、一人残って……」
朱里と雛里は咳き込みながらも伝えた。
彼女らは、全力疾走で慣れない長距離を走ったせいか、身体は泥のように重くなり、喉には真っ赤な鉄を、突っ込まれたかのような熱さがあった。
上がった体温が、体の中で暴れまわっていた。
それでも走りぬいたのだ。
「で、それってどんな人?」
「褐色の肌に、黒髪のオサゲで……烈っていう……」
「まさか……烈海王……?」
「はいっ!」
刃牙の質問に朱里は説明して、再び咳き込んだ。
そして、それからの刃牙の判断は早かった。
「行ってくるッッ」
「刃牙くんっ!?」
「すいません、桃香様。軍を借ります」
「お願い!」
刃牙は走った。
不器用なタイプでもなかった。しかし、確信とも言える肉体信仰が―――――少年に手段を
走ってる途中、色々な期待や考えが、刃牙の身体の中に渦巻いていた。
――烈さんか? 急げッッ どうしてここに……? いや、本人なのかッ? まさか、他の人も……
様々なものが心の中に渦巻きながらも、走った。
そして、見えてきた。
拳法着を纏い、黒髪を揺らす男性が。
周りには、剣を持った賊が二十人前後、転がっている。
間違いない。
「烈さんッッ」
「なッッ……バキさんッッ」
ここでの再会を喜び合う時間はない。
それは二人とも分かっていた。
刃牙と烈海王は背中合わせになり、賊に備えた。
「味方はすぐに来ます。それまで耐えましょう」
「明白了ッッ」
賊は二人の周りを囲み始めた。
だが、厚い構えではない。上手くやれば破れる程度のものだ。
一呼吸。
烈海王に向かい合ってた賊が斬りかかった。
烈海王は、
その一撃で、意識が頭から弾き出され、賊は沈んだ。
その間、実にコンマ二秒。
刃牙に対しても一人迫った。
だが、刃牙は守ろうとも、攻めようともしなかった。
ただ、立っていた。
そして、剣が振り下ろされた。
呼吸の入った一撃だ。悪くはない。
その一撃を前に、刃牙は一歩も動かなかった。
だが、当たってない。
剣は既に真ん中から折れていたのだ。
「折らせてもらったよ、さっき。コイツでね」
刃牙は、賊に拳を見せた。
いや、拳だけではない。何かを持っている。
手を開くと、金属の欠片がこぼれ落ちてきた。
その正体が、賊にはすぐに分かった。
「アンタらの胸当て、割らせてもらったよ。六人分……。つまり、胴体最弱の急所を突いたってワケだ」
カラン、ゴトッと重いものが落ちた音がした。
割れた胸当てが、たてた音だ。
その音に、切りかかった賊は気を取られた。
その瞬間、賊の身体が浮いた。
賊には電流が走っていた。
形容できない激痛だった。
タンスの角に小指を強打する……。衝撃が教える、後に襲いくる痛度……数瞬……約束通り、訪れる予測を下回ることのない、本痛!!!
これが本来の流れだ。
だが、賊には神から与えられるはずである、覚悟の時間はなかった。
突如、訪れた本痛。
完全な不意打ちだった。
気づく前に、視界から消えるような速さで、刃牙の右足が跳ねていたのだ。
気づいたときには、刃牙の右足は賊の股間を捕えていた。
綺麗な金的だった。
その一撃で、賊は白眼をむき、倒れた。
「~~~~ッッッ!」
この時には、賊軍も気づいていた。
――とんでもない連中を、敵にしているッッ
冷や汗が賊の身体を這い落ちていった。
「刃牙さん! あまり無茶をしないでくださいッ!」
そして、愛紗がつれてきた援軍がきた。
もう、賊には勝機も士気もなくなっていた。
蜘蛛の子を蹴散らしたように、散り散りに逃げて行った。
それを見て、刃牙と烈海王は向かいあった。
「バキさん、どうしてここに……」
「鏡……とでもいえば」
「なるほど。わたしもです」
状況はお互いに把握した。
向かい合って笑みを浮かべ、刃牙と烈海王は本隊の所へと戻った。
参
刃牙と烈海王が本隊と合流するのを、二人の少女が迎えにきた。
朱里と雛里の二人だ。
二人の目には、涙がたまっていた。
無事を喜んでいるのか、形はどうであれ、見捨てるような形で、置いてきたことへの後悔からの涙なのかは、分からない。
ただ、泣いていた。
「烈さんっ! 怪我とかは……!」
「ごめんなさいっ! 本当に……!」
「わたしがやれと言ったのだ。気に病むな。私には怪我もない」
烈海王は二人の頭に手を置いた。
朱里と雛里の顔が下を向き、段々と嗚咽混じりになってきた。
烈海王は無言で二人の頭を撫でた。
よくやった、と言ってるような穏やかな表情だった。
「刃牙くん、助けることは出来たの?」
「ああ、桃香。無事にね」
そこに、桃香、星が来て、更に愛紗も帰ってきた。
賊についても、一段落ついたのだろう。
落ち着いた雰囲気があった。
「それじゃ、これからのこと、話し合おうか?」
桃香はその雰囲気を感じ、提案した。
肆
先鋒の人達で、賊の先遣隊から本隊の数を予測したところ、先鋒だけで当たるのは不利と判断し、後続部隊との合流をすることにした。
それまでの待ち時間で、陣を張って話し合いをすることにした。
一先ず、朱里と雛里は桃香の陣営の軍師として仕えることになった。
二人の目標はそこにあったこともあり、軍師が必要とされていたのも相まって、士官の話しは簡単に決まった。
「これから、お願いしましゅ!」
「朱里ちゃん、噛んでりゅよ」
「噛んでるのは両方共だな。……桃香様、本当に連れて行くのですか?」
「うん。そうだよ、愛紗ちゃん」
桃香は笑って答えた。
「烈さんは、どうしてここに?」
「朱里と雛里、二人の護衛です」
そういうことは、烈海王の仕事は終わったということだ。
それを聞いて、刃牙は提案した。
「烈さん。実は猪狩さんもこっちに来てます。合流して、これからを考えましょう」
「それでしたら、愚地氏と克巳さんも来ているはずです」
――もう、偶然じゃない
刃牙はそう把握した。
七十億の中から、闘士だけがきた。
異常な話しだ。
烈海王もそれを把握しているのだろう。
表情は固い。
他の人達は何も言わず、二人の話しを邪魔しないようにしていた。
「なら、烈さんは……」
「ええ。これから愚地氏と克巳さんの居場所を探そうと……」
「……え? 烈さん行くのですか……?」
そこに、雛里が割り込んだ。
朱里は邪魔しちゃダメ、というかのように、雛里の袖を引っ張っていた。
だが、雛里は下がらなかった。
「賊の集団に襲われることも……」
「わたしはかまわん」
「でも、大勢なら……!」
「わたしは一向にかまわんッッ」
烈海王には頑固な面もあった。
雛里の言葉に、首を縦に振ろうとはしなかったのだ。
刃牙はそれを見て、自分も烈海王を説得することにした。
「烈さん、そんなに断る必要もないんじゃないですか?」
「だが……」
「愚地さんと克巳さんなら、大丈夫だと思いますよ」
一方、雛里は朱里と相談していた。
刃牙が作った時間を利用し、策を練っていた。
そして、策は決まった。
「「烈さん……」」
「烈さん、二人をまた泣かせる気ですか?」
二人のとった策は単純かつ、基礎に忠実だった。
押してダメなら引いてみろ、と言わんばかりだった。
理屈で説得できないなら、情で落とす。
――泣き落とし――
烈海王は唸った。
流石に、放っておくのは気の毒と思ったのかもしれない。
その揺らぎをみて、朱里と雛里は更に一芝居うった。
「烈さん、本当に……」
「雛里ちゃん、止めちゃダメだって……止めちゃ……」
「……分かりました。わたしも残りましょう」
「アンタさ、ほんっ……と優しいのな」
烈海王はカァ……と赤面した。
伍
朱里、雛里、烈海王と新たに加えて桃香達は進むことになった。
いや、細かく言えば、すぐには進むことにはならなかった。
各自、自己紹介をした。
そして、ことは起こった。
「劉備です。真名を桃香といいます」
「公孫賛の客将、趙子龍」
「関羽だ。真名は愛紗」
「関羽……?」
烈海王は、関羽の名に反応した。
当然のことだろう。
中国の英雄を話すとすれば、十中八九はその名は挙がるであろう名だ。
烈海王が反応しないわけがなかった。
お互いの目が、鋭くなった。
「私になにか?」
「まさか、軍神と会えるとは……」
「私が軍神? 買いかぶり過ぎでは?」
「それはないでしょう」
烈海王は朱里、雛里が臥竜と鳳雛と知り、一つ予期していた。
――探せば、関羽と張飛といった面々とも会えるのではないかッッ
女性かもしれない、とも思っていた。
だが、男性だろうが女性だろうがやること、したいことは一つ。
「烈海王、何を考えている」
「あなたも分かるでしょう」
「……ああ、その通りだな」
「「手合せを」」
桃香と朱里、雛里は止めようとしたが二人には止める気配はない。
既に、試合の決まり手、禁じ手の話しになっていた。
「降参、気絶で終わりでどうか?」
「ええ、妥当かと。禁じ手は顔面への攻撃」
「それは、私を女と思っての言葉か?」
「いや。手合せだからです」
「そうか。ならば、顔もありだ」
「それでよろしいですか?」
話は決まった。
二人は陣の外に出た。
刃牙も二人を追って出た。
「愛紗。止めておいた方が良い」
「刃牙さん、どういう意味でしょうか」
刃牙に対し、愛紗の目が鋭くなった。
「強いよ、烈海王は。地球上を探し巡ったとしても、烈海王に勝てる相手が見付かるかどうか……」
「ほう……」
「気を付けて。中国拳法はハンパじゃない」
「中国拳法とは?」
「この国の拳法。四千年積み上げてきた技だ」
「刃牙さんは確か、未来から……。では、その拳法は、この国の過去と未来が積み重なった拳法……ということですか?」
「うん。気を付けて。烈海王は、間違いなく二千年先に居るから」
刃牙は愛紗の問いを肯定し、今度は烈海王の所にいった。
烈海王の準備も既にできている。
「烈さん、相手は女性で――」
「知っている。関羽を名乗っていても、ここでは女性。そんなことは百も承知ですッッ しかし……だから、どうしたというのですッッッ」
お互いに武人。
お互いに覚悟があるなら、情け無用。
刃牙は二人の気持ちを汲み、その場から離れた。
「烈海王、準備はいいのか?」
「ええ」
中国史に残る軍神対中国四千年の拳法の達人。
互いに中国の武を代表するものだ。
両者がぶつかるのは必然といえただろう。
誰が言うでもなく、仕合が始まった。
陸
大きな寺だ。
外見は中国の歴史的建造物といえばいいだろう。
この寺は、中国の黒竜江省にあった。
名を
外では多数の人間が拳法の修行をしていた。
吩ッッ 叭ッッ とリズムよく、一糸乱れずに拳法修行をしていた。
寺の中は、細工が施された柱に梁と、いやでも伝統を感じさせる。
そこに、一人の老人がいた。
サングラスをかけ、車イスに座った老人だ。
顔、腕はシワだらけで、その老人の長い人生を物語っている。
その老人はこちらを認識し、話しかけてきた。
「ほう、わざわざ日本から来たか……
郭海皇は地下への階段にさしかかると、車イスから降り下った。
ついていくと大きな部屋があった。
そこにも人はいた。
やはり、武術の稽古をしているようだ。
「一口に中国武術というても、それは四千年して積み上げた学問のようなものじゃ。そう簡単には功は成らん。薄皮を積み重ねるようにして、何年も鍛錬を得て形がなる」
郭海皇は、ワシのようにな、と付け加えてケクケク笑った。
そして、一つの大きな岩が置かれた部屋に案内された。
角は削れ、丸くなっている。
その岩の隣には岩を丸くした人だろうか? 手が傷だらけで、血を流している人がいた。
「打岩。鍛錬の一種じゃ。功を積み重ね、人ならざる速度を手にすることで、岩を容易に切り裂けるようになる」
郭海皇はそう言い、岩に寄った。
そして、コンッと叩いた。
緩やかで、優しい一打だ。
しかし、その一打で、岩はひび割れていった。
大きな岩に、大きな亀裂が入った。
「もっとも、必要なとき、必要な術を、必要な速度で発揮する。己の感情を制御し、そのタイミングを知る。これが出来れば、完全なタイミングを手中にしているなら……もはや、そこには速度さえもいらんがのォ…………」
郭海皇は再びケクケク笑った。
そして、付いてこい、とだけ言って別の部屋に行った。
そこには、二つの岩が鎮座していた。
「この打岩は、劉海王が打ったものじゃ」
大きな白い岩だ。
若干の荒さはあるが、それでも、人の手だけで作ったとは思えぬ丸さだ。
見るだけで、これをやった人間の腕前が分かる。
「しかし、四千年の歴史は、凄まじいものを完成させた」
郭海皇はそう言って、もう一個の岩を指差した。
真っ黒い岩だ。
黒曜石と言われる鉱物で出来た岩だった。
今ではヒビが入って、割れてしまっているが、これがもし傷のない完品であったら、どれほどの威圧感と芸術性を持つかなど、見当もつかない。
「魔拳、烈海王がやった打岩じゃ。残念ながら、最近になって割れたがのォ」
そして、郭海皇と再び向き合った。
一つだけ質問をしたのだ。
「世界最強の格闘技……とな。客人は随分と面白いことを聞く」
そして、懐かしそうな顔をし、郭海皇は語りだした。
「格闘技というても、数多いからの。最近の大擂台賽でも中国武術以外に色々おった。
そう言い、郭海皇は少し眉を伏せた。
漆
見事な武だ。
キレイな技だった。
感動的な技だった。
――四千年の拳法、侮れぬ
――軍神、侮れぬ
最初に打ったのは愛紗だった。
青龍偃月刀による、右からの横なぎだった。
烈海王は、左ひじで横なぎ受け、右足で蹴った。
狙いは愛紗の左腹。
当然、愛紗は武器の柄で受けた。
お互いにダメージを狙った攻めではない。
お互いに、あいさつ代わりの技だった。
仕合はそこから急展開だった。
烈海王は、刃が届かない懐に踏み込んだ。
愛紗は武器を横に構え、柄で烈海王の腹に一撃を加えた。
それは入った。だが、同時に力が抜けた。
――何があったっ!
愛紗の後頭部に衝撃が走ったのだ。
――誰かが後ろから!? 違う! 烈海王か!
烈海王が右足の上段蹴りを打ったのだ。
足首は、あえて曲げた一撃だった。
そうすることで、足の甲で後頭部を打てる。
愛紗は、意識が押し出されそうだった。
身体が右によろける。右足をだし、倒れないように耐えた。
さらに、愛紗はそのよろけの勢いを利用し、左腕を武器を掴んだまま伸ばした。
烈海王の脇腹を狙った一撃ではない。
狙いは、蹴りの軸足になっていた左足だ。
烈海王を倒し、首に刃をあてるつもりだった。
――当たったっ! 後は刈り倒せば……!
勝てる、そう確信していた。
そう、温くは無い。
烈海王は跳ねた。当たりはしたが、ケガはない。
「見事な腕だな、烈海王」
「これだけで、そう評価されては困る」
「そうか」
愛紗は頭に一つもらったが、脳へのダメージはない。
もう、揺れてもいない。さっきは驚いただけだ。
戦意は十分ある。
軽く跳ね、武器を握りしめた。
そして、刃を下げた。
――さあ、烈。お前の間合いだ
明らかな挑発と言っていいだろう。
愛紗は攻撃を誘っていた。
烈海王もそれは理解している。
だが、打ち込んだ。
左足での蹴りだった。
その瞬間、愛紗は左に軽く傾きながら、刃先を上げ、烈海王の顔を突いた。
その突きは頬を掠ったのだろう。
烈海王の頬から一筋の血がタラリと流れた。
武器の刃は潰してあるハズだ。愛紗は、自分の技だけで烈海王の頬に、切り傷を作ったのだ。
勝負の結末は揺れていた――
烈海王の崩拳を、愛紗は屈んでかわした。
艶やかな黒髪が、一、二本だけ宙を舞った。
愛紗は、烈海王の蹴り技を封じるため、足を狙い、薙ぎ払った。
烈海王は跳ねた。足の爪と、潰れた刃がかすり、火花が散る。
烈海王は着地して、即座に一歩踏み込み、拳を愛紗の頬にあてた。
寸勁。
愛紗は避けるギリギリの位置まで首を反らし、すぐに反撃した。
今度はアゴだ。
烈海王も避ける。
お互いに、決め手が欠けていた。
一瞬の隙、無駄な呼吸、無駄な一撃を許さない激闘だった。
その闘いを幾つもの目が見ていた。
その中に龍の目があった。
「……ましい」
「? 趙雲さん、どうしたの?」
「いや、なんでもないですぞ、劉備殿」
星は自分でも何と言ったか分からなかった。
これ程の闘いをしてる愛紗が羨ましいのか、それとも妬ましいのか。
もしかしたら両方なのか。
しかし、一つだけ理解していた。
自分の中で龍が、のたうちまわっていることを。
猛々しい力だ。それが、暴れている。
槍を持つ手に力がこもった。
――私もこの槍を、武を存分に……ッ!
それは吐き出せず、星の身体の中で叫び続けていた。
捌
烈海王……教えて欲しい。
私達は、これから何を手に入れた? 何を捨てた?
私は武を高めてきた。
その武は、お前の武にも伝わっているのか? それとも全く残ってはいないのか?
教えてくれ。
言葉はいらない。
ああ、そうだ。
足でいい。拳でいい。
それが教えてくれる。
そうか、これが四千年か。
重い。そして速い。更に強い。
私はどうだ?
関雲長は、愛紗は四千年と闘えてるのか?
そうだ。言葉はいらない。
足で、拳で答えてくれ。
中国拳法をみせてもらいたい。
私達の武の将来が、無性に見たい。
玖
どれほど時間がたったのか、もう分からない。
呼吸が追いつかないのだ。
体力の限界は何度も見えた。
だが、その限界を超えると、また新たな体力が湧き出る。
泉のように、こんこんと湧き出る。
倒れるなど、有り得ない。
烈海王はどうだ?
疲れているか? 疲れているだろう。
もう、私の体は泥のようになっている。
烈もそうか?
ダメだ、分からない。
なら、続くか。
また足か。よく、私の頭まで上がる。
だが、私の頭はその下だぞ。
外したなら次は私だ。
そう、私の後頭部に蹴りが当てられる。
これで私の番か。
さっきは勘違いしていたか。
突いた。刃での突きだ。
烈海王はこれも避けるのか。
当たれば即死になるから当然だな。
また蹴りか? 当たりだ。ピクリと動いたぞ。
柄は、蹴りを防げる位置にある。
しかし、浮いてこないな。
ああ、そうか。
狙いは寸勁だったのか。何時の間にか拳が優しく、アゴに添えられている。
これは損だ。 しまった。
さあ、次 だな。
避けるの 。 また、
「生まれた日は違えども、我等三姉妹 」
ええ、大丈夫です。桃香様。覚えてます。しっかりと に。
勝 ますから。だか 安 して下さい。
叫んだ気がする。
私は全力で武器を振ったようだ。
当たればただではすまないだろう。ケガをさせた 大丈夫みた 。
どうしたことだ?
さっきから随分と寸勁ばかりを。
蹴っても も私は文句 ん。顔 文句 ぞ
打。
泣くな、烈。私はま ぞ。
しかし、急にふ りと体が 夢
打 斬
終わり? まだ !
武
誇
理想 。
勝 ? ああ 。
どうしたことだ? 風が……吹いて……
拾
愛紗は武器を片手に握りしめ、突きに入ろうとしたところで、倒れた。
ゆっくりと、うつ伏せになって倒れた。
烈海王は震えていた。呼吸も荒々しい。
愛紗の傍に立ち、ゆっくりと深呼吸をして、その震えが止まった。
「これが……軍神か」
烈海王の声は畏怖に震えていた。
三国志を代表する武将といったら? そりゃあ関羽でしょう
刃牙世界を代表する中国人といったら? そりゃあ烈海王でしょう
なら、闘わせずにはいられないッッ! そんな考えからの回でしたが、如何だったでしょうか!