真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~ 作:クーロン
なんか、対戦カードを決めるのにもスゴイ時間かかったし、文も浮かばないし……。
今回は結構ダイジェスト気味です。次回から戦闘パートになります。
袁紹を官渡の戦いで破った曹操は時流に乗った。
袁紹の領土を完全に手中にし、肥沃な土地と、それにより軍拡に成功。
あくまで数としては天下最強の軍となった。
そして、その力を頼みに、軍を徐州に向けることを決意。
ここに到り、曹操対劉備の戦が起こる運びとなった。
壱
異論は無かった。
軍議の席で、曹魏の諸将は徐州を攻めるという話を聞いた。
それに関しては、何も問題は無い。
「それと同時に、西涼への動きの布石も置いてあるのです。張三姉妹を今現在、向こうに向かわせているのです。真桜さんはその舞台づくりに協力して下さいなのです」
「分かったで」
風は真桜の返事を聞いてから、手に持ってる飴を一舐めした。
「出来れば真桜さん以外にも戦力を送りたいのですが……徐州にも強者は多いみたいですから、あまり多く送れません」
「兵の数は向こうが劣れど、将や軍師の武と智はこちらに劣らないでしょう。……油断は禁物です」
「風と稟の言う通りよ。だけど……将が真桜だけでは、西涼の方から仕掛けられたら苦しいわね……」
「華琳さま。ならば、沙和と凪も出すのはいかがでしょうか」
華琳は桂花の提案を聞き、一瞬だけ席に座る二人に視線を向けた。
「沙和はいいでしょうけど……凪まで出すと、徐州攻めに不安が残るわ。最悪の場合、関羽に張飛、趙雲を同時に相手にした上で、刃牙、烈海王、花山薫と言った面々と戦う必要が出来るかもしれないのよ?」
「独歩とは……闘わないのですか?」
華琳がそう言うと、春蘭は目を見開いて言った。
机の下にあるその拳は、固く握られている。
「ええ。理由がないもの」
「少しは頭を使いなさい、この猪! 独歩は最近まで魏にいた人間で、裏切って出て行ったワケでは無いわ。説得のしようなんて、いくらでもあるわよ」
「……華琳様も、そのようにお考えですか」
春蘭は俯きながら、視線だけを華琳に向けて言った。
眼には鋭い光があった。
今まで、春蘭が華琳に向けたことはない眼だ。
「……そうよ」
華琳の言葉に春蘭は返事をしなかった。
ただ、黙って視線を逸らした。
納得していないのだろう。
華琳もそのことは分かっている。
だが、口にはしなかった。
口にしてしまえば、戦で私闘を行おうとする春蘭は、連れていけなくなる。
独歩と決着をつけようとする気持ちも分かっている。
だから、口にしなかった。
「編成の話に戻るわ。西涼に向けるのは真桜は決定。沙和、あなたもお願い。稟と風も向こうでの工作の指揮に行ってもらうわ。凪は……徐州攻めに加わりなさい。あと……ジャックを差し向けるのも面白いわね」
「ジャックですかァ!? 華琳さま、それってホンマに大丈夫……?」
「強いヤツと戦える、とだけ言えば大丈夫でしょ。彼もまた、強者との戦いに飢えているのだから。克巳は徐州ね。独歩の説得に連れて行って損はない」
華琳がそう言うと、真桜は
はぁ……
と気の無い返事をした。
――麻酔系の道具……はよ作らんといけんなぁ……
心の中で静かに思い、唾を飲みこんだ。
「孫呉に隣接するところは、余り厚くする必要は無いわ。独立からの復興で、今は動けない。そして……残りの戦力で、徐州を討つ!」
華琳はそう言い、右手で机を叩いた。
それと同時に、諸将は立ち上がった。
弐
ここなのだろう、と春蘭は思っていた。
この戦で、愚地独歩と闘うことになるのだ。
そのことを考えながら、春蘭は廊下を歩いていた。
軍議は終わっている。
そして、全員がそれぞれの務めを果たすために動いている。
春蘭にもそれはある。
やらなければならない。
だが、春蘭の足は自分の部屋の方に向けられていた。
剣を眺めたかった。
鞘から抜き、その刃の冷たさを感じたかった。
――私でいいのか……?
やらなければならない事で心の気圧は高まっている。
だが、どこかにある隙間に入り込むように、そんな思いが春蘭の中でプツプツと浮いた。
――武神に挑むのは、この私でいいのか……? 愚地独歩に挑むのは……!
「姉者。兵の所に向かわないでいいのか」
春蘭の後ろから、秋蘭の声がした。
それに反応して、春蘭は振り向いた。
「ん……ああ」
春蘭は生返事をし、さっきまでとは逆の方向に足を向け、歩き出した。
秋蘭の右脇を、春蘭が通る。
二人とも目を合わせなかった。
春蘭は合わせたくなかった。
何か、今、高まっているものが、抜けてしまうような気がしたのだ。
秋蘭は合わせなかった。
合わせるべきではない、と直感的に感じていた。
春蘭はそのまま、先に行って、廊下を曲がった。
「カジキを姉者の部屋に運んでおくか……」
秋蘭は見送ってから、そうつぶやき、歩き出した。
参
城の中庭。
凪はそこで拳脚を振っていた。
正拳。手刀。足刀。回し蹴り。
それらは綺麗に繋がっていた。
どこか、演武のような美しさがある。
だが、型には無い連携――動きだ。
そういう意味では空手ではない。
我流だ。
「シッ!」
凪は鋭く息を吐いた。
それと同時に足を広げた。
マッハ突きの構えだ。
そして、拳。
鞭のように甲高い音はしなかった。
ボッ
という、空気と手甲の摩擦の音がしただけだ。
それでも、その拳速は、かなりのものであった。
並大抵の人間では、影も見えないだろう。
「最近になって教えたばっかだってのに……ものにしてるじゃねェか。自信なくすぜ」
克巳が言った。
当然、凪にこの技術を教えたのは克巳であった。
烈海王は、この技術を最大トーナメントで『我々が2000年前に通過した場所だッッッ』と言った。
その言葉を信じるのなら、他にも存在するのだろう。
「いえ……まだ、コツというか感覚を掴んだだけですから。上手いこと氣を使ってやっているだけです」
「それでも大したもんだ」
凪は自分の拳を見た。
――何度、この突きを練習したのだろうか
自問した。
いや、それはいい。
一番重要なのは、この突きをどうするかだ。
ただ、突くのだけでは、二番煎じに過ぎない。
威力についても不安が残る。
何かが必要であった。
その何かの答えはある。
恐ろしい考えが、凪の中にあった。
――速度に乗せて……
頭に浮かぶ、自身の技。
――できるのか?
できる。できるのだ。
「そういや……何で、そんなにこの技を覚えようとしたんだ?」
克巳は後頭部を掻きながら、凪に問うた。
「私も春蘭様と同じように……因縁がありますから」
「……花山さんのことか?」
「はい」
克巳は思い出したように言った。
凪は静かに返事をした。
肆
今日やらねばならない事を、全てやった。
春蘭はそう思いながら、自分の部屋に戻った。
部屋のドアを開け、まず先に目に入ったのは、大きな木剣であった。
――秋蘭か克巳が置いたのか……
春蘭はそう思い、木剣に触れた。
やることはやった。
そう思っている。
そして、自身を落ち着けるように息を吸った。
伍
曹軍五十万、侵攻を開始す。
この報告は徐州を脅かした。
これに対し、徐州は正規兵が三万。義勇兵を募り、なんとか五万に達する程度。
相手にならない。
だが、軍議は紛糾した。
逃げるか、それとも一太刀浴びせて討ち死にするか。
それでも桃香は逃げることを決意した。
曹操なら、民には手を出さないだろう。
そういう計算も込みでの判断だ。
勝ち目がない以上は逃げるしかない。
そう言っているのが、部屋の扉から聞こえてくる。
「…………」
「月。何、盗み聞きしてるのよ」
「詠ちゃん、しーっ」
「そんな聞き耳立てなくても分かるわよ。曹軍には敵わないから逃げ出すっていう話でしょ?」
「それは分かるよ」
月は扉に耳を当て、軍議の内容を聞いていた。
詠が軍議の中身を言っても、月のその眼は真剣そのものであった。
「じゃあ、何でそんなに真剣に聞いてるのよ」
「だって……花山さんにも、知らせなくちゃいけないでしょ?」
「……情報漏洩じゃない?」
「早いか遅いかの違いだから」
「まぁ、逃げるってだけならそうね」
詠はその言葉を聞き、
やっぱりか
と思った。
軍師の考えとしても、戦力として花山薫の存在は大きい。
簡単には外せない。
詠は一つ溜息を吐いた。
「なら、花山の所に行く?」
「うん……そうしよ」
掃除は既に終わっており、普段なら彼女たちは休憩にする頃合いであった。
だが、今日は花山組の事務所に行くことに決めて行った。
二人はすぐに城の門から出て、街に出た。
「……なんとなく、普段と違うね」
「戦が近いっていうのを、何となく分かっているのよ。……行くわよ」
「うん」
城下町の雰囲気は、普段とはどこか違う。
緊張感があるのだ。
報せの早馬は何度か大通りを通っている。
それが原因なのだろう。
月と詠はその中を駆け抜けた。
どこか緊張感がある街も、普段と同じように賑わっている。
商売の喧騒や人の話す声は普段通りだ。
この喧騒を抜ければ、花山組の事務所は近い。
二人は人の海を掻き分けて、花山組事務所の前に辿り着いた。
入り口の前には、門番ともいうべき人がたむろしているが、二人が入るのを阻む者はいない。
「すいません……花山さん、いますか?」
「……何だ」
月は扉を開けて入り、控えめな声で言った。
花山の低い声が、奥からする。
月と詠は玄関で靴を脱ぎ、花山の声がした部屋に入った。
花山は椅子に座り、机に向かっていた。
だが、退屈を持て余していたのか、一つ二つの曲げられたコインが机の上に無造作に転がっている。
「座んな」
ぶっきらぼうに花山は言い、二人掛けのソファを指差した。
月と詠はそこに座り、まずは月が口を開いた。
「花山さん。戦が近い……というのは知っていますか……?」
「知らねえな。城の雰囲気が妙って話は聞いたけどよ」
「近いんです。相手は……曹操。数は五十万。それに対してこっちは頑張って五万……」
「へぇ……」
「へぇ……じゃないわよ。で、どう思うのよ?」
「勝ち目はねぇだろうな」
「やっぱり、花山もそう思うわよね」
「指揮してるヤツならどうしようも出来るが、近づけねえだろうしな」
「だから、私達は逃げることになります」
花山は月の言葉に答えなかった。
頬杖をつきながら、話しを聞いている。
「そしてお願いなんですが……花山さんも、一緒に来てくれませんか?」
「……いいぜ」
花山はあっさりと言った。
そして立ち上がった。
「花山。あんた、状況分かってる? 逃げるって言っても、行先なんて益州しかないわよ」
「……そうか。だが、手の届く所にいるって言っちまったんだ。ついて行くぜ。組の奴に関しては、オレから話を通しておく」
花山はそうとだけ言い、無言で部屋を出ていった。
陸
独歩は徐州の城の中に居た。
特に何かしているわけではない。
目的もなく、歩いていた。
そして、気分で廊下を曲がった。
その先には一人の少女が立っていた。
白い服を着て、水色の髪をした少女だ。
星であった。
「おお、愚地殿はそこにおりましたか」
「何だ。オイラのこと探していたのかァ?」
「うむ。つい、先ほどの軍議の話ですよ」
「烈と刃牙の野郎は参加してたヤツか」
「それです。で……その内容ですが、曹魏がこちらに五十万で攻めてくるというもの。そして、独歩殿を無理やり帰らせようと……」
「そりゃねェだろうよ。そんなことになっちゃ、オイラは疫病神だ」
「少しは乗ってくれないと面白くないのだが」
「なんでェ。敵が攻めてくるってのに、余裕あるじゃねェか」
独歩はそう言い、ククッと笑った。
だが、スグに笑うのを止めて星に向き合った。
「で、オメェ等はどうすんだ? 戦うのか逃げんのか」
「我々は逃げます。だが……貴方はどうするのか、と桃香様が気にしておられましてな」
「まぁ、帰るってんなら逃げる必要はねェな」
独歩が言った。
そして、イタズラっぽく笑った。
「だが……ただ待ってるんじゃ、アイツとの喧嘩にならねえ。オイラも逃げちまおうか」
独歩はそう言い、笑った。
漆
曹軍襲来の報せを受けた劉備軍の動きは素早かった。
曹軍に気付かれないよう、その日のうちに、劉備を慕う民達と共に城をでた。
曹軍は手薄な拠点に戸惑い、罠を警戒したがそれもなく、本城での決戦を行うのかと睨んだが、そこには既に劉備軍の影も形も無かった。
曹操はそこで、劉備が逃げ出したという事実に気が付いた。
北は曹魏領、南は孫呉領、東は海である以上、逃げる先は西にしかない。
劉備は民を連れて逃げ出した。ならば、そう遠くに行っていないはずだ――
逃がしてはならんと、追手をだした。
追手は西へと駆けた。
そして、曹軍が追い付いた地点は長坂橋と呼ばれる橋が架かっているところであった。
既に民は渡り、橋の此岸には劉備軍が陣取っていた。
掲げられている旗は三種。
張、呂、陳の三つだ。
おそらく、劉備と民を逃がす時間を作るための殿軍なのだろう。
対して曹軍の側の旗は夏侯、典、張、楽の四つ。
この状況で、世にいう長坂橋の戦いが勃発することになる。
歴史にはそう記述されるのだろう。
だが実態は、戦、とは言えない展開であった。
捌
長坂橋の前に居るのは、他にもいた。
決して旗印では出てこない人間だ。
範馬刃牙、烈海王、花山薫、愚地独歩である。
そして、曹魏の側には愚地克巳がいる。
「親父……ホントにこっちまで逃げてきてたのかよ」
克巳は自分の義父の姿を確認し、呆れたような声でいった。
「ヨォ、克巳。久しぶりじゃねェか。傷は治ったか?」
「まぁ、それは治ったけどよ……親父、ココにいていいのかよ? 妹の方はこっちにいるけどよ……春蘭は親父を徐州で探してるぜ」
「カァ~。アイツも間が悪いなァ」
独歩はそう言い、後頭部を掻いた。
この状況で敵味方に分かれていることについて、さほど気に留めていないらしい。
「独歩殿。話をする前に、こちらに戻ってきて下さい。戦になります」
秋蘭は溜息を吐き、言った。
それと同時に、目蓋を右手で揉んでいる。
「秋蘭よォ……そんなこと、一々言う必要無えだろうが。それにやる必要もねェ」
「無い……とは?」
独歩は両軍のちょうど真ん中に躍り出た。
そして、言った。
「こっちの猛者は、オイラを抜いて五人。でもって、オメェ等の方も克巳入れて五人……ちょうどいいじゃねェか。やりてぇヤツを選んで
独歩はそう言い、笑みをみせた。
秋蘭はその言葉を聞き、溜息を吐いた。
「ええんやない。メッチャ好みのやり方や」
「霞。勝手に決めるな」
「だって、こっちの方が都合ええやん。恋とやったってええ。それ以外から選んでもええ」
霞はそう言い、笑みを見せた。
攻撃的な笑みだ。
そして、武器の切っ先を恋に向けた。
「恋……ウチとヤる前に一つ聞いてええ? 勇次郎とは戦ったん?」
「……やってない」
恋は武器を構えず、ダラリと手を下げたまま霞を見た。
「ふぅん。誰かに止められたん?」
「……刃牙に」
「刃牙っていうと……勇次郎の倅やな」
霞は確認するようにつぶやくと、切っ先を引っ込めた。
「恋。あんたとやるのは、次の機会でええ?」
「……ん」
「よし! じゃあ、ウチは範馬刃牙を指名や!」
霞はそう言い、刃牙に切っ先を向けた。
「まぁ……こっちに残る時点で誰かとやることになる、とは思ったけど……予想通りだ」
刃牙はそう言い、構えをとった。
「独歩殿。こういう具合に進めていく……ということですか」
「おう」
「こちらとしては、誰と当たっても異論はありません」
烈海王が言った。
その言葉からは余裕が感じられる。
「なら、私が出てもいいですか?」
そう言い、烈海王の前に一人出て来た。
緑色の髪をした小柄な少女だ。
流琉であった。
「烈海王さん……ですか?」
「ああ」
「独歩さんからも、克巳さんからも優れた拳法家だと聞いています。……一手御指導を」
流琉はそう言って武器を構えた。
「秋蘭様は出ないのですか?」
凪が秋蘭のそばに立ち、聞いた。
「ああ。一騎打ちを邪魔するような奴が、出ないようにするのも仕事だ。それに、独歩殿をここで指名でもしようものなら、姉者から恨まれる」
「分かりました。なら私は……花山薫! 洛陽での続きだ!」
凪はそう言い、花山を指差した。
まず、長坂四戦ってことで、決まったのが
刃牙VS霞 烈海王VS流琉 花山VS凪の三つ。でもって、四戦目に克巳の闘いとなります。
次回は花山VS凪の再戦で行こうと思います。