真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~ 作:クーロン
刃牙読者なら大体分かると思います。それではどうぞッッ
二人が日の当たる縁側に座っていた。
褐色の肌をした女性と、小柄な老人だ。
男性は和服に袴の恰好であった。
二人の間には徳利とお猪口があった。
酒を飲んでいた。
「これ……意外にウマいね。ちょいとクセがあるけど」
「じゃろう? 城下で貰った酒じゃ」
渋川剛気と祭であった。
気の合う部分があるのか、楽しそうに酒を酌み交わしていた。
そこに、もう一人が近づいてきた。
褐色の肌で、眼鏡をかけた女性だ。
孫家の頭脳、冥琳だった。
「祭殿、渋川老。雪蓮を知りませんか?」
「策殿かのう? 儂は知らんぞ。また仕事から……」
「いえ、違います。そうかもしれませんが……」
「ま、理由は分からんが、ちょいと探してきますか」
渋川が立ち上がった。
しかし、冥琳はそれを引きとめた。
「渋川老、わざわざ行かずとも……」
「うむ。儂が行ってきますぞ」
「気にしなさんな。敬老精神もよいが、そこまでにしときなさい。たまには散歩でもせんと、体がなまって……」
さて、雪蓮嬢を探しに行きますか。
そう言って渋川は、下駄を履いて外に出た。
カランコロンとリズムよく、小気味いい音がする。
和服に下駄の老人は中国には馴染まないはずだが、渋川は不思議と違和感を感じさせなかった。
カランコロンと街中に響いていた。
色々な所でその音は響いていた。
しかし、ある所でリズムが変わった。
人通りの少ない路地裏だった。
権力者がいるような場所ではない。
渋川の目的は、雪蓮を探すことではなかった。
何が目的なのか。
渋川の目は二人組に向いていた。
ヤクザとも思える出で立ちの男だ。
片方は身長、百八十はあるような筋肉質の男。もう一人も同じような身長で、小太りだった。
それを見つけ、渋川は歩き出した。
一歩、二歩と歩み寄り、軽くぶつかる。
男たちは老人を相手にしない。
「――――」
渋川はボソリと小さく呟いた。
だが、その声は男たちに届いた。
二人が、つっかかってきた。
渋川は、一応は、困ったような顔をして謝った。
だが、逆に火に油を注いだのだろう。
片方の筋肉質の男が怒り、渋川の襟を掴んだ。
「――ッッ!」
「 」
自分の技を、力を使う機会を、だ。
――達人なら、自制心が一流である、そのようなことは無い。
そう主張する人も居るだろうが、それは間違いだ。
むしろ、達人だから抑えきれない。
心の
もちろん、指導者の地位を持つ達人のこと。決して、自分からは喧嘩を売らない。
声も無く、渋川は男を投げた。
ささやかな灯火を―――奴等は――――決して逃さない。
戦力をひた隠し―――――巧妙に――――大火へと…………。
半回転させ、頭から地面に落とす。
そして、喉には、さながらギロチンの如く、鋭い足刀を落とす。
「なんじゃ。急に転びおって……」
「おい……ジジイ……何してやがる」
小太りの男の目には、怒りの灯がともっていた。
そして、片手には光物がある。
短刀だった。
渋川は眼鏡を外した。
とある人がかつて、渋川剛気について、著書にこのように書いた。
『以前、人は笑った顔にその人間の持つ本性が表れると聞いたことがあるんだけど、爆笑したときの渋川先生の顔は、怖かった。ハッハッハッハと笑う顔に凶暴さを感じることが、ままあった。狂気を感じた』
渋川は笑っていた。
そして、眼鏡を軽く投げた。
「~~~~ッッ」
狙いはずれている。
眼鏡は男の上方にいった。
だが、それに意識が向いてしまった。
その隙は逃さない。
喉へ、指突き……そのまま、頭を地面に……。
かつて、オリンピック戦士・ロジャー・ハーロンを沈めた技だ。
そして、喉に刺した指を引き抜き、落ちてきた眼鏡をキャッチし、流れるようにつける。
そして、逃げるでもなく、悠然と表通りに戻っていった。
「ハァ……」
渋川は溜息を吐いた。
哀しさがあるように感じた。
武術家にとって最も哀しいのは、怖いのは何か?
答えは“老い”だ。
技が残っても、鍛えてきた筋肉は消えてしまう。
身体が弱くなってしまえば、使える技も使えなくなる。
技術が錆びてしまうのだ。
つまり、自分の人生全てを懸けて、培ったものが消えてしまう。
そうなったら、武術家に何が残る?
芸術家や音楽家、陶芸家なら形を残せる。
だが、武術家は何も残らない。
精々が伝説と映像くらいだ。
技は残らない。
全てが消えてしまう。
「そのうち捕まっちまうぜ。こんなこと繰り返してちゃよう……」
やってはいけないのは分かる。ここでも、向こうでも。
だが、止められない。
習い覚えた技を存分に使いたい。
使わずに老いるのことを考えるとたまらない。
何一つ残らず、体から消えてしまうのが怖い。
強い若者相手に使おうにも、相手の敬老精神がその邪魔をする。
溜息をもう一度吐いた。
「年ってのはとりたくねえや……」
渋川は、今度こそ雪蓮を探しに歩き始めた。
壱
「痛いッ 痛い痛い! わかったわよ! 逃げない! 逃げないから……ッッ 歩く……おとなしくするから、もっと優しくしてぇっ!」
「し、渋川老……別に、私は怒っていたわけではないので、そのように極めずとも……」
「そうですかそうですか。じゃが、冥琳嬢の名を言ったらスグに逃げ出してのォ……」
「雪蓮……何か、やましいことでもあるのか?」
「無いわよ! 今回は無いわ!」
「今回は? まぁいいわ」
冥琳の眼鏡の奥が一瞬、鋭くなった。
雪蓮はそれを否定した。
冥琳はそれを聞いて、一瞬だけ訝しんだが、今は他にすることがあった。
「……袁術からの呼び出しがあったぞ」
「……分かったわ」
空気を読み、渋川は指捕りを外した。
雪蓮は手の調子を確認するように、そして何かに耐えるように、手を握りしめた。
「冥琳……行くわよ」
「ああ」
弐
「あーもう! なんであんな……!」
「雪蓮、落ち着け。せめてここを出てからだ」
雪蓮と冥琳は袁術の居城、寿春で袁術と面会することになった。
面会では、大抵は命令が下される。
気の進むものではなかった。
面会している間、雪蓮の尻から背中にかけて、太く黒い影と空虚な無力感が這い回っていた。
時間が増すごとに、影は大きくなる。
日が経つにつれ、無力感も大きくなっていた。
孫呉の旧領は、袁術に支配されているから、仕方のない話しかもしれない。
しかし、仕方なくとも影と無力感は付きまとう。
その陰に隠れ、雪蓮の中にも獣がいた。
「相変わらずこの街は酷いわね……」
「袁術の統治は、上手くいってないからな」
獣の意識を反らせるため、雪蓮は周りに眼をむけた。
冥琳もそれに気付いたのか、分かり切っていたことを言った。
その中で、騒がしい一角があった。
ケンカか? 違う。
感謝の声があった。
「これでいいでしょう。傷口はなるべく清潔にしていただければ、化膿もしません」
「先生! ありがとうございます!」
「いえ、私は医者ですから。次の方」
「おう、兄貴。こいつだぜ」
「すいません、足が……」
「見せてください」
雪蓮と冥琳の目に入ったのは、二人組の男性だった。
一人は黒髪で、もう一人はオレンジがかった髪だった。
黒髪の男性は、顔面が傷だらけで、黒い道着の背中には『滅道』の文字が刺繍されていた。
傷だらけの顔も、元は美形だったのかもしれない。
もう片方のオレンジ髪の男性は美形の男性だった。
髪は女性のようだ。だが、白衣の下の肉体は違う。
医者、というだけでは説明がつかない程に、鍛えこまれている。
「ふぅん……こういう人もいるんだ」
「そうだな。見ていくか?」
「別にいいわ。
「分かった」
冥琳は雪蓮についていく前にもう一度、二人組を見た。
「兄貴。どうした?」
「いや、昂昇。なんでもない」
冥琳は偶然、白衣の男性と目があった。
白衣の男は一瞬、何か妙なものを感じたらしいが、再び目の前の患者に意識を向けた。
「冥琳、どうしたの? 行くわよ。早くみんなを呼び寄せなくっちゃ」
「ああ……分かってる雪蓮」
冥琳は再び雪蓮の後について行った。
参
雪蓮が受けた命令は、黄巾賊を潰せ、というものだった。
だが、雪蓮の現在の戦力では、それは厳しかった。
そこで、一つ提案した。
――散り散りになっている孫家の将を集めてはダメか。全員が揃っているなら可能だ
袁術はそれを許諾。
それにより、今まで半分、軟禁状態だった孫権と孫尚香は解放されることになった。
そして、同時に――ッッ
アンチェインを縛っていた鎖も、無くなったのです。
肆
「いかがしましたか、蓮華様」
「ス~ハ~……」
「ええ、懐かしくてね……」
「ハァ~…… なんて、刺激的なんだ……」
蓮華と思春が話している中、オリバは何かを嗅いでいた。
ポケットにしまってあった、水玉ガラの布だ。
「……オリバは何をしているのかしら?」
「ハンカチを嗅いでいるのさ」
「……私達としては、何故嗅いでいるのか、聞きたいのだがな」
オリバは嬉しそうな顔をした。思い入れのある話なのだろう。
そのハンカチは思い出の品なのだろうか?
「彼女が、昔住んでいた街で買ったものさ」
「「え……?」」
蓮華と思春は戸惑った。
正直、予想外だったのだ。
二人はハンカチを、彼女からのもらい物、だと思っていたのだから。
だが、オリバは二人の戸惑いを意に介さず、話し出した。
「彼女が住んでた
「……え~っと、その……オリバは、彼女のことが大好きなのね……」
「ああ。ホンッットにカワイイ彼女なんだ!」
「そうか……」
「彼女はホントに……」
引き続き、マリアについて語るオリバ。
蓮華と思春は、オリバの惚気話に淡々と相槌をうった。
二人の目は、疲れたと物語っていた。
どうやら、軟禁から解放されたら楽、と言えるワケではないらしい。
伍
この日を境に様々な勢力が動きだし、大陸全体に広がっていた黄巾の乱は、収まりをみせてきた。
賊の乱の鎮圧は、主に陳留の刺史である曹操、袁術の食客である孫策、義勇軍の劉備、名族の袁紹、袁術、幽州啄郡太守の公孫賛、巴蜀の劉璋、西涼の董卓、そして馬一族の名が主立っていた。
沈静しつつある今、官軍があと討つべきなのは、黄巾賊の本隊だ。
大賢良師を中心とする本隊の陣には様々な人達が集まっていた。
君主、武将、軍師、兵士。そして……グラップラー。
陸
「おーほっほっほ! 賊なんて、私の敵ではありませんわ!」
異様な戦場だった。
金色の戦場だった。
兵士の装備は、全て金色に統一されているのだ。
鎧も、兜も、旗も、大将の髪、乗ってる輿までもが金色だった。
その兵は圧倒的な数であり、賊はその数に圧されていた。
間違いなくこの戦は、“袁”の旗の方の勝ち戦だった。
「こりゃあ、勝ったな。ひめ~、もう突撃しても……」
「文ちゃん!? 姫様の護衛は……!」
「別に勝ってるからいーじゃん。それに、アニキがいるし」
「でも、輿を……」
「かまいませんわ、猪々子さん斗詩さん。やぁっておしまいなさい!」
「へーい」
命令がおり、二人の少女が前線に出た。
しばらくすると、金色の戦場に赤色が混じり始めた。
「さて、あなたはしっかりと輿を支えてくださいまし」
「…………チッ」
輿には、ふんだんに金細工が施されていた。
金は重めの金属である。
それがふんだんに使われた輿に、人が武装して乗れば、かなりの重量になる。
だが、それを支えているのは、たった一人の男性だった。
巨躯だ。そして、彼もまた金髪だった。
輿を背負っているため、正確な身長は分からないが、2メートルは間違いなくある。
身体は傷だらけで、髪は坊主。
いや、そこはどうでもいいかもしれない。
重要なのは歯だ。
獅子を思わせる鋭い歯の男であった。
漆
「霞……この被害はどういうことかしら?」
キレイな城だった。
その中の部屋も整えられている。
部屋の主は、小柄な緑髪の眼鏡をかけた女性だ。
「兵は、ほぼ全滅。華雄は負傷。……賊相手の戦果とは思えないわ」
「……そうや。賊相手やない。たった一人にやられたんや」
紫の髪をした、袴を履いて胸にさらしを巻いた女性が答えた。
その声色には恐怖、憎しみ、怒りが混じっているようだった。
歯はかみしめて、固く握った両手は震えていた。
それを見て眼鏡の女性は、訝しげに聞いた。
「獣じみた強さの人がいたのかしら? 張文遠が勝てないような人間が。恋のような人間が」
「ちゃう! 獣やない! ……鬼や」
そう言って、ポツポツと紫の髪の女性は語りだした。
捌
賈駆っちの見立ては、間違っておらんかった。
いや、兵は一人として要らんかった。
ウチと華雄が賊の居所に着いたとき、もう賊は全滅しとったんや。
そないなってたら、誰がやったか気になるやろ?
ウチ等もそうや。気になった。
で、賊を見ると、その死体は酷い有様やった。
いくつか、折れた骨が肌を突き破っていた死体があった。顔面潰されとったのもおった。アゴが吹き飛ばされてた死体があった。目ん玉、抉られていた死体もあった。袋が裂け、肉片が零れ落ちとって、股から血を流していた死体もや。
せやけど、矢が刺さった死体や、刃物で切断された死体はなかったんや。
ウチは、素手でやったんやないかと思った。
それは正解やった。
ど真ん中に、両手を血に染めてた鬼がおったんやから。
……鬼や。人やない、人という区分に入れとうない。
ソイツがやったなんて、スグ分かったわ。
で、ウチ等が近づく前に、ソイツが来たんや。
ズチャ……ズチャ……と不気味な足音をたてて。
顔? 妙なこと聞くんやな。
悪魔的風貌やった。
肌は黒いで。で、髪が……こう、逆立っとったわ。
で、ソイツはウチ等を見てニィタァ~~ッと笑ってたんや。
明らかに敵意があったで。
意味わからんわ……。賊の敵やったんなら、ウチ等と闘う必要はない。
でも、ソイツはウチ等に襲いかかってきたんや。
華雄は迎撃しようと、ソイツの前に立った。
勝負? 一瞬やった。
こう……アゴへの蹴り一発や。それで華雄の意識は外に追い出された。
そないなことされたら、ウチ等も黙っとるわけにはいかへん。
華雄は部下にも慕われとるし、そんなことされて見逃したら、面子や評判に関わる思うてな。
で、それで兵を……。
ソイツを怪我させたか? ……いや、できへんかった。
こう、四対一をいくつもやって……。疲れの色? 全然、無かったで。
アカンよ。あれと闘ったら、アカン。
何て言うたらええんやろ。あれを。
巨凶……鬼……。なんかちゃうな……。
……これやな。
――地上最強の生物――
え~、まぁ名前は出ていませんが、丸わかりですよね
では、今回はオリバを
7 ビスケット・オリバ
身長 185cm余り 体重 150kg※体脂肪率5%未満 ファイトスタイル パワー頼み
筋肉が非常に多く、その筋肉が武器であり鎧。その体を維持するため、一日に10万キロカロリーを必要とする。※10万キロカロリーは、サーロインステーキ30kg程
知力についても、他のグラップラーと比べて段違い。自分が住む刑務所内に、図書館並みの蔵書がある。
範馬勇次郎とは旧知の仲。
個人的なベストバウトはオリバvs龍書文