真・恋姫†無双~怒気ッッ グラップラーのいる三国志ッッッ~   作:クーロン

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今回はのメインは渋川さんとなってます。


集結

 黄巾討伐本隊駐屯地には、各勢力の旗が集まっていた。

 その中で、一際目立つのが曹旗であった。

 威風堂々、という言葉が非常にしっくりしている陣構えだ。

 そして、討伐軍では、兵の統率が一番とれていた軍である。

 その中心に華琳とその将がいた。

 春蘭、秋蘭といった古参の将。愚地独歩、愚地克巳の空手家二人。季衣、流琉の親衛隊。軍師の桂花。

 そして、最近になって加入した凪、沙和、真桜の三人組であった。

 華琳は、黄巾の乱での討伐、沈静の手柄や名声により、着実にその勢力を大きくしていた。

 

「どうだ、独歩! 馬の扱いなら敗けんぞ!」

「カ~ッ! 馬ってのは、オイラみてェな老人にはツレェもんだ。克巳は元気みてえだしなァ……」

「まぁ……慣れれば楽だよ、親父」

「なんなら、私が教えるぞ!」

 

 独歩は右手の太い人差し指で、コリコリと頭をかいた。

 独歩は額に汗を浮かばせていた。

 馬という乗り物には、中々慣れなかったらしい。

 その独歩を見て、春蘭は得意げになっていた。

 春蘭は最初、独歩に敗けているので、何か勝てるのが嬉しいのだろう。

 いや、嬉々として教えようとしているので、自分も教えることが出来るのが、嬉しいのかもしれない。

 

「気持ちはありがたく受け取っとくぜ。ありがてえが、ソイツは後だな」

「じゃ、独歩は休むの? 天幕に寝床作っておこうか?」

「季衣の提案もありがてえが、ソイツも後だ。……こんだけのメンツが揃ってやがんだ」

 

 そう言って独歩は他の陣を見た。

 そこには孫と書かれた旗、劉と書かれた旗、漢と書かれた旗と、多くの群雄が揃っていた。

 独歩はそれを前に、落ち着いていることは出来なかった。

 

「こんだけ有名な奴がいやがんだ。寝てるなんざ、勿体ねえや。それに……烈の野郎もいるかもしれねえぜ?」

「ありえない……ことはないな。味方の兵に、ちょっと烈さんの事を知ってるか、聞いてみっか」

 

 克巳はそう言って歩き出した。

 それを華琳が止めた。

 

「行く必要はないわ。これから軍議があるはずよ」

 

 そこで聞いてみるわ、華琳はそう言った。

 克巳はそれを聞いて立ち止まった。

 ――仕方ねえや、ここは華琳の嬢ちゃんに任せるかァ

 独歩は自分を抑えるように、腕組みをした。

 

「何してるのよ、独歩。貴方も一緒よ」

「へェ。何だって急に」

「ただの護衛よ。あと、秋蘭も一緒にお願い」

「御意」

 

 華琳は官軍の天幕に向かって歩き出した。

 

「華琳様! 独歩の代わりに私が……!」

「まあ、堪えてくれねえか。春蘭よォ」

 

 俺にも用事があんだよ、独歩はそう言って春蘭を説得しようとしたが、春蘭は、大人しく聞きそうにもなかった。

 春蘭は、華琳様について行く、と言って聞かなかった。

 独歩は困ったような顔で頭を掻いた。

 

「参ったな、コイツは……季衣と流琉が止めてくれっかァ?」

「あ、そんなことしなくても……」

 

 そう言って季衣は指差した。

 

「この脳筋! アンタは華琳様の命令を聞けないの!? 大人しく従いなさい!」

「なんだと! この……!」

 

 その先では、春蘭と桂花が言い合っていた。

 独歩はそれを一瞥して、苦笑いをした。

 そして、ぼやくようにして呟いた。

 

「アイツ等、仲悪いんだなァ……」

「確かに、お二人は、よくケンカしてますね……」

 

 流琉は、目で独歩に“止めないのですか?”と訴えていた。

 独歩の答えは、クツクツと笑うだけであった。

 そして、華琳は再び独歩を呼び、官軍の陣に向かって歩き出した。

 

「さて、克巳。お前もこいや」

 

 春蘭は桂花に任せてよォ。

 独歩はイタズラっぽくそう言い、華琳の後について行った。

 克巳は、二人を一瞥してから、義父の背を追った。

 

   壱

 

 官軍の天幕には、大将軍の何進がいたばかりで、他の諸侯は集まっていなかった。

 まだ到着したばかりで、陣を建てている真っ最中であるようだ。

 だが、他の諸侯の仕事が遅いのか、と言われると否だ。

 正直、曹軍の行動は華琳の能力が異常であった、としか言えない速さであった。

 独歩と克巳も、それを分かっているのか、黙って胡坐をかいた。

 その近くの椅子に、華琳は座った。

 独歩は華琳を見上げ、話しかけた。

 

「華琳よォ……誰が、きやがると思うか」

「孫堅の娘、孫……」

「そういうことじゃねえ。そういうことじゃねえよ」

 

 独歩は立ち上がり、腕組みをした。

 それを見計らっていたかのように、天幕の入り口がはためいた。

 入ってきたのは、褐色の肌をした女性が二人であった。

 孫策――雪蓮と周瑜――冥琳であった。

 だが、独歩と克巳の目は、その二人を見ていなかった。

 その後ろの、二人の男性を見ていた。

 一人は小柄な老人であった。

 和服に袴を履いていた。

 顔にはシワがいくつも寄っていて、その老人の人生を語っていた。

 歩く姿に隙はなく、まるで歩く姿が武であった。

 もう一人の男性は、筋骨隆々の男性であった。

 腕は女性のウエストどころか、丸太のようであった。

 ウエストの部分はくびれ、綺麗な逆三角形の体型である。

 そして、その体を包む筋肉は、丸くした鉄板の上に、ドロドロの鉄をかけ、かけた上で鉄板に包み、そしてドロドロの鉄をかけ……という作業を、延々と積み重ねてきたようであった。

 達人、渋川剛気とミスター・アンチェイン、ビスケット・オリバであった。

 

「ンな……ッッ」

「へぇ……ジイさんと会って驚いたが、他にもいるなんてよ……」

「オリバかァ。それに、渋川さんまで」

 

 あなたまでいるとは

 独歩は、少し笑っていた。

 独歩は克巳とは反対に、驚きの様子はなく、まるでこのことは予期していた、とでも言うようであった。

 渋川もまた、カッカッカと笑っていた。

 そして、もう一組が来た。

 桃色の髪をした女性が先頭であった。

 その後ろに、小柄な亜麻色の髪をした少女がいた。

 そして、その少女の両隣には、男性が二人いた。

 一人は少年であった。

 癖のある髪で、筋肉は不自然に発達している。

 そして、その肉は傷だらけであった。

 まだ年若いが、強者の風格を身に纏っていた。

 もう一人は、褐色の男性であった。

 黒い髪を辮髪にし、後ろに回していた。

 拳法着の下の筋肉は、古代ギリシャの彫刻を彷彿とさせる。

 だが、彫刻とは違い、確かなしなやかさもその筋肉にはあった。

 最年少チャンプ、範馬刃牙と魔拳、烈海王であった。

 

「烈さんからは聞いていたけど……」

「お二人までとは」

 

 刃牙と烈海王も笑みを浮かべた。

 それは、再会を祝う笑みであった。

 その裏で、少女達は言葉を無くしていた。

 その場にあったのは、リアルな肉であった。

 それに圧倒されていた。

 全てが、人を殺しうる肉。

 全てが、闘い抜いてきた肉。

 全てが、威圧感を持つ肉。

 むき出しの刃物が、武器が、目の前に晒されている状況であった。

 

「とんだ同窓会だぜ……」

 

 独歩は凶器の指でコリコリと頭を掻き、そう呟いた。

 

   弐

 

 格闘士にとって、軍議は専門外であった。

 飽くまで、お付きの人としてついてきただけで、軍議とは全く関係がなかった。

 だから、外で軍議を待っていてもよかったが、これ程の人数で集まれる機会は、そうそうない。

 そのことは全員が把握しており、また、この場の全員で話し合いたいのも、本音であった。

 だから、官軍の天幕を使わず、華琳の陣で話し合うことにした。

 ここが一番早く、陣立てを済ませていたからである。

 天幕の中に人数分、円状に椅子を用意してある。

 そこに、各自座り、話し合いになった。

 会議は独歩が切り出した。

 

「さて……こっからどうするか」

「これで全員、という気がしないんだよね。猪狩さんもいたし、ひょっとしたら親父も……」

「範馬勇次郎ですか……ワシは、それらしい話は聞いてませんね。ここにはいないのでは?」

「ですが、渋川老。それが、オーガのいない理由にはなりません」

「むしろオーガの事だ。大暴れして、敵を全滅させて、報告するヤツも消しちまってるだろうよ」

「それにオーガだけじゃなく、他にも……」

「有り得ると思いますよ、克巳さん。オレも、他に居るのは親父だけ、では済まないと思う」

「帰り方を探す前に、誰が居るのか、も把握しなくちゃならねえか……」

「それが先決でしょう」

 

 そう言って烈海王がまとめた途端、大声を出して一人の少女が天幕に入ってきた。

 春蘭であった。

 

「ドッポォ! さっきから話を聞いていたら……! 勝手に帰るなど許さんぞ!」

「随分と元気なお嬢ちゃんですな」

 

 大剣片手に、天幕に怒鳴り込んできたのだ。

 六人は驚きはしたものの、慌てた顔はなかった。

 渋川剛気に至っては、ゆっくりと茶を飲んでいた。

 独歩は冷静に説得しようとしたが、言葉が詰まった。

 説得は無理だろう、と確信していたのだ。

 独歩はハァ……と溜息を吐いて、のそりと立ち上がった。

 

「まだ帰るわけじゃねえ。ここにいる全員を探してからだ」

「見つけたら帰る、ということだろう! その前に勝負だ!」

 

 そう言って、春蘭は独歩に切っ先を向けた。

 独歩は、再び溜息を吐いた。

 克巳が春蘭を止めるため、立ち上がろうとしたが、既に独歩は春蘭に迫っていた。

 手の形は拳ではなかった。

 親指に中指を引っ掛けていただけであった。

 

「落ち着け」

「あたっ!」

 

 一撃で春蘭は額を抑え、地面に片膝をついた。

 独歩が放ったのはデコピンであった。

 春蘭の額の一部は赤くなり、指の軌道を描いている。

 そして、春蘭が膝をついた途端に、三人の少女が天幕に入ってきた。

 凪、沙和、真桜の三人であった。

 

「すいませんでした!」

 

 三人で春蘭を抑え、凪は出るときにお辞儀をして天幕を出た。

 四人が出た後は、静寂が強まっていた。

 

「なかなか大変みたいだな、ドッポ・オロチ」

「オリバの言う通りさ。アイツは話を聞かねえんだ」

「ですが、羨ましいものですな。ワシの所は、どうも敬老精神が先で……」

 

 若いもんに揉まれるのも、羨ましいことです

 そう言う渋川剛気は、更に老いたように見えた。

 

「ならば、渋川さん。若いもんと、やってみますか?」

 

 独歩は笑みを浮かべて提案した。

 

   参

 

 愚地独歩の提案に、渋川剛気も乗った。

 独歩は、渋川の相手に、新しく入ってきた凪を当てることに決めた。

 唐突な話であったが、凪はそれを快諾。

 よって、渋川剛気対凪の対決が、実現することになった。

 飽くまで鍛錬次元の話であり、目つき、噛みつきなしとルールも決められている闘いである。

 凪は愛用の手甲と脚甲を外し、身軽な状態で黙々と準備運動をしていた。

 今は、沙和に背中を押してもらい、柔軟体操をしている。

 対して、渋川剛気は何もしていなかった。

 袴に手をやり、体操が終わるのを待っていた。

 

「独歩。あの老人は、何もしとらんぞ」

 

 いいのか? と春蘭が聞いてきた。

 独歩はニッと、笑みを返した。

 春蘭は腕組みして、ムゥ……と不服そうにした。

 

「なぁ……克巳はん、独歩はん。ホンマにええの? 凪は強いで」

「だろうな。氣弾なんて使うからな……。流石の渋川さんでも……」

「氣弾? なんでェ真桜、克巳、ソイツは?」

「中国拳法には、気という概念があります。そのことでは……」

「いや。違うんだ、烈さん。本当に、SFであるような技だ」

 

 周りにとっては、信じきれない事であった。

 気の概念を持つ中国拳法の達人、烈海王ですら信じきれない話であった。

 規格外の知識を持つ、ビスケット・オリバも同様だ。

 

「意外と五分ってのも有り得るってか……」

 

 オリバは葉巻を咥え、そう呟いた。

 それに、刃牙が反応した。

 

「これってひょっとしたら、ただの鍛錬や試合とかじゃあないのかも――」

 

 ――オレ達が何を手にして、何を失ったのか……

 近代武道の最高峰・合気を使いこなす達人、渋川剛気。

 対するは、古代中国の神秘を使いこなす凪。

 これはただの鍛錬、で収めていい闘いではなかった。

 

「烈さん。どっちが勝つと思います?」

「私の立場としましては、あの少女に勝って欲しい、という思いがあります」

 

 烈は、ですが……と付け加えた。

 

「相手は、達人・渋川剛気ですから……」

「だろうよ、烈。俺の筋肉も、ジイさんには通用しねえからな」

 

 オリバがそう言い、見計らったかのように試合が始まった。

 

   肆

 

「凪ィ! 敗けんなや!」

「相手はお爺ちゃんなの! 少しは手加減した方がいいの~」

 

 目の前の老人は、手をだらんと下げていた。

 無防備、といってよかった。

 手加減? 氣弾は使わないが、するわけがないだろう。

 

「あのように言われると、寂しいもんですな」

 

 したら敗ける! 私はそう、直感した。

 老人には、渋川剛気には隙がなかった。

 正面突破は、諦めた方がいいだろう。

 そう思ったらすぐ、脚は渋川老の周囲を周るように地面を蹴っていた。

 

「いいフットワークじゃねえか。だがよ……」

「格闘技で相手の周囲を回るのは、格下……でしょ、オリバさん」

「チッ、刃牙に言われちまったか」

 

 渋川老は、こちらを見ようともしなかった。

 だが、何故か横も背後も、隙はなかった。

 だが。

 ――攻めれば見つかる。

 そう思い、横から蹴りにいった。

 右の下段蹴りだ。

 空を切った。

 渋川老は半歩下がり、私の蹴りを避けていた。

 予想はしていたことだ。

 よそ見をして下を向いた瞬間、左拳でこめかみを打ち抜けば……

 それで、終わるハズだった。

 左手を出した瞬間、視界が変わった。

 地面は青と白が混ざった色に、空は緑とこげ茶が混ざった色になった。

 どうなってる――? どうして回る――? いや――私がか!?

 地面が迫る。違う、落ちてるっ! 回ってるのも落ちてるのも私――ッッ

 そして、背中が強かに打ち付けられた。

 

「なんやねんアレ!?」

「流琉、分かる?」

「知らないよ! あんなの、初めて見た!」

「ありゃ合気ってヤツだ」

「あいき~? 独歩、何それ」

「簡単に言うとよォ。合気ってのは、相手の攻撃力を利用し、その攻撃力に自分の攻撃力を上乗せして返す技術のことだ」

「ふ~ん……。そんなのできるの?」

「出来る人間は……渋川剛気だけだ」

 

 渋川剛気と私を比べると、私の方が背が高い。

 更に、私の方が若いのだ。衰えていない筋力は、私の方が上だ。

 体格は私の方が恵まれている。

 だが、地面に叩きつけられていた。

 立ち上がる。

 攻めかかる。

 地面が迫る。

 立ち上がる。

 攻めかかる。

 地面が迫る。

 立ち上がる。

 攻めかかる。

 地面が迫る。

 攻めてはダメだ。ならどうすれば! どうしたら勝てる!!

 

「凪が攻めるたびに……」

「合気……まさか、ここまで完成されているなんてね」

 

 春蘭様の呟きが、聞こえたような気がした。

 傷だらけの少年の声もだ。

 

「さて、続けますか?」

 

 呼吸を荒くして仰向けになっていると、渋川老が私を見下ろしてきた。

 袴に両手を突っ込んでいる。

 汗ひとつ、かいていなかった。

 せめて、一発だけでも当てたい。

 そう、心から思った。

 続けるに決まっている。

 

「ハぁっ!」

「ほいなッ」

 

 両足を狙い、立ち上がりながら右足で刈った。

 だが、簡単によけられた。

 それでも、諦めない。

 一発だけでも……!

 

「凪ちゃん……」

「強烈すぎるで、あの爺ちゃん……」

 

 沙和、真桜。

 そんな顔をするな。

 当てる。勝つ。

 私は渋川老と向き合い、構えた。

 渋川老は笑っていた。

 寒気が止まらない。

 心拍数はとっくに上がり切っている。

 息切れもしている。

 熱いはずだ。

 自分の中に籠る熱のせいで、熱いはずだ。

 それでも寒気がした。

 いや、寒さではないのか……?

 ――怖い

 怖いのか? 私は怖がっているのか!?

 気づけば、渋川老は私の目の前にいた。

 左掌が、ゆっくりと顔に近づいてくる。

 反射的に、右手で鷲掴みにした。してしまった。

 ぞくり、と太い震えが背中を駆け上がった。

 混ざる天地。

 そして、衝撃。

 今度は、尻から落とされた。

 痛いが、立てない程ではない。

 すぐに立ち上がれた。

 しかし、足が震えて動かない。

 違う。恐怖の震えじゃない。

 武者震いだ。

 息を深く、深く吸った。

 

「おきゃああああああっ!」

 

 誰だ? 誰が叫んだ?

 獣じみた声だった。必死で何かを追い出そう、としていた声だった。

 私の声か。これは私の声か。

 吐き出しながら、一気に渋川老に突進した。

 浮く。落ちる。立つ。走る。突く。浮く。落ちる。立つ。寄る。蹴る。浮く。落ちる。立つ。浮く。落ちる。 つ。浮 。  。

 叩きつけられた。

 何度も。

 強かに。

 だが、頭には衝撃がこなかった。

 そうか、手加減しているのか。

 私は、されているのか。

 たまらない。それがたまらない。

 また、獣が吼えた。

 

   伍

 

 った。      った。      られた。   渋川      

     った。       投げ          当た          蹴    った。

 気づけば、立っているか、攻めているか、寝ているか、宙にいるかだった。

 

    た。

    た。

    た。

         ?

         。

        た。

       った。

      だった。

     いだった。

    扱いだった。

   も扱いだった。

  ども扱いだった。

 子ども扱いだった。

 私は、子ども扱いにされていた。

 記憶が、抜けている時間がある。

 それでも、まだ続いているのだから、闘っていたのだろう。

 もう、いい。

 そんな考えが頭を過った。

 何がいい? まだ続いている。

 休めばいい。

 休む? まだ続いている。

 終わらせればいい。

 終わり? まだ続いている。

 敗けを認めればいい。

 認める? まだ……

 できるのか。

 …………

 

「」

 

 口が、少し動いた。

 だが、なにも言ってない。

 まだ……

 

「何をしてるの!」

 

 再び構えようとしたら、ピシャリと声が響いた。

 華琳様の声だった。

 

「独歩殿、私達に説明頂けますか?」

「おうよ。聞けや、華琳、秋蘭。凪に、渋川さんの相手をさせてたんだよ」

 

 その通りです。さあ……続行(つづき)を。

 

「相手ね……。足も震えて、怖がっているのに? 心も、折れてるのじゃないかしら?」

 

 見くびらないでください、華琳様。まだ……。

 さあ、渋川老。お相手を……。

 私は右足を、半歩だけ前に出した。

 

「凪! しまいや!」

「もういいの!」

「うるさい! まだ……!」

 

 この声は真桜と沙和か?

 二人が、私を羽交い絞めにし、とめようとした。

 放してくれ! 私はまだ闘える! まだ出来る!

 だから……ッッ

 私は力を振り絞り、二人を振りほどいた。

 

「渋川老。まだです」

 

 構える。そして、闘う。

 足が震えているが、拳は問題ない。

 一発……!

 そう思い、渋川老を睨みつけた。

 それで、渋川老の表情が変わった。

 笑みが消えた。

 

「そうですかそうですか。嬢ちゃん、えれェ闘いになるぜ」

 

 痛ェぞ……。

 その一言で、私の中の何かが崩れてしまった。

 さっきまであった何かが。

 

「っ……私の……敗け……です……」

 

 さっきまで、何を守ろうとした?

 言わないことで、何を守ろうとした?

 

「ふぅ……いいもんですな。若いもんの、ぱわぁというのは」

 

 渋川老はそう言って、悠々と背を向けた。

 今更になって、拳に力が入る。

 歯に力が入る。

 何故、今更……!

 

   陸

 

「おじいちゃん……」

「おお。雪蓮嬢ですか」

 

 お迎えですかな? 渋川はそう、雪蓮に聞いた。

 雪蓮の顔は迎え、というような表情ではなかった。

 

「ねぇ。さっきの、本気だったのかしら?」

「カッカッカ」

 

 渋川は笑った。

 笑って、雪蓮の陣に向かって行った。

 それを止めず、雪蓮は見ていた。

 ――次は、私が相手になる。

 その一言が言え出せずに、渋川の背を見ていた。




集結、というタイトルですが、まだ全員というワケじゃありません。
大体、反董卓連合終了辺りで全員集合になると思います
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