今回は3番目のジム戦! あの人の口調がどこぞの高速戦艦っぽくなりました。ご免なさい。
ハナダジムを勝利した者達が次に目指す街……それがクチバシティという名の港町である。クチバシティにはニビシティの近くに繋がる“ディグダのあな”が存在し、他に“ポケモン大好き倶楽部”というポケモン好きが集まる倶楽部の集会所だか会長の自宅だかが存在するが、まあそんなことはどうだっていい。でもディグダのあなでゲット出来るダグトリオにはお世話になりました。
トレーナー達の目的は、当然クチバジム。このジムにいる電気タイプのエキスパートであるジムリーダー……その名を“マチス”という。アメリカンな彼は軍人であり、ポケモンを軍事的に使ったことを仄めかす発言もしている。それはつまり、ニビジムとハナダジムに比べて戦いというモノを熟知しているということだ。
そんな彼がジムリーダーを勤めるクチバジムには、先の2つのジムと違い、ジムリーダーに挑戦する者をふるいにかける為のギミックが存在する。彼の前には視覚出来る程の電気が壁を作っており、それを解除する為にはジム内にある大量のゴミ箱の中にある2つのスイッチを順番に、かつ連続で探し出さなければならない。もし連続で見つけられなければ、またスイッチを探さなければならない……根気とある程度の運がいるのだ。
更に、そのギミックを越えた先には厳つい見た目の軍人が待ち構えている。並のトレーナーなら心を折られ、まともに指示を出すことなど出来はしないだろう。
(トゥデイのチャレンジャーはどんな相手なのか……ん?)
いつものようにジムの最奥に待ち構えるマチス。その目の先にある電気の壁のその向こう側に、マチスのいる場所に向かってくる人影があった。その人影は電気の壁など目に入らないとばかりに向かってくる速度を上げ……。
「電気の壁がなんぼのもんじゃああああい!!」
「ホワッツ!?」
電気の壁をぶち破り、マチスの前に転がってきた。流石にこの状況は予想外だったのか、軍人にあるまじき驚愕の表情をマチスは浮かべる。いや、その行動だけならまだなんとか平静を保てたかも知れない……が、その人物の立ち上がった姿が問題だった。
黒だ。上から下まで黒だ。丸い穴から出ている顔以外は全て真っ黒。ぴっちりとした全身タイツを身に纏い、股間を膨らませている姿はまごうことなき変態。しかもその小脇に抱えられている黒焦げのコイキングが余計に意味不明な空気を作り出していた。
「……ヘイユー。そのコイキング、大丈夫デスカ?」
「コイキング!? 誰がこんな酷いこと!?」
「ユーのアクションを思い返してみてクダサーイ。後、着替えてクダサーイ……」
「しゃーねーな……」
マチスは疲れたように溜め息を吐く。こんなに疲れたチャレンジャーの登場が今までにあっただろうか? いや、ない。そもそも電気の壁を変態チックな格好でぶち破ってくる時点で非常識である。しかもコイキングを小脇に抱えながら。なぜモンスターボールにいれなかったのだろうか。
目の前の人物はふてくされたように呟いてコイキングを投げ捨て、着ていた全身タイツを脱いでいく。その下から現れたのは、シンプルな服装の青年だって……分かりきっていることではあるが、主人公アンバーである。全身タイツは絶縁体で編まれた特注スーツであり、漫画のレッドさんのグローブと同じモノだと考えてほしい。
「これでよし。さて、チャレンジャーアンバー……ジムバッチを貰いに来たぜ」
「オーケイミスターアンバー。マイネームイズマチス……そのチャレンジ、受けマース。ミーが使用するポケモンは1匹のみ……ゴー! ライチュウ!」
「ラーイ!!」
先程までのことをなかったことにしたのか、真面目な態度でマチスはボールを投げる。その中から現れたのは、ポケモンの中でもダントツの知名度を誇るピカチュウ、その進化した姿であるライチュウ。ピカチュウよりも高い攻撃力を誇り、ネズミのような見た目に相応しい素早さもある。更に厄介なのは、その特性と技だ。
ポケモンには“とくせい”と呼ばれる、文字通り特性をポケモンごとに持っている。体力が低くなると特定のタイプの技の威力が上がるもの、決して怯まなくなるもの、たまに怠けるもの、どこからともなく道具を拾ってくるものなど、本当に様々だ。
そんなライチュウのとくせいは“せいでんき”と呼ばれるものだ。このとくせいは“たいあたり”や“とっしん”のような肉体的接触をする技を受けた時、稀にその相手を麻痺状態にする。麻痺になったポケモンは体が痺れ、たまに身動きが出来なくなる。更に電気タイプの技は当たった相手を麻痺にすることがあるモノが多い……厄介なタイプであると言えるだろう。
「さあ、ミスターアンバー。ユーのポケモンはなんでスカ?」
「決まってんだろ……こいつだ!!」
アンバーが地面にあった何かを拾い、上に向かって放り投げる。放り投げられたそれはある程度上がったところで重力に従い、べちゃっと音をたてて地面に落ちた。
「コ……コ……」
「……」
「……」
「……ライ?」
それは、パチパチと音をたてて時折びくんっと跳ねる、焼き魚のような匂いのする黒焦げのコイキングだった。
「こ、コイキング! マチスてめえ! 開始の合図もなしに攻撃するなんて卑怯な真似しやがって!」
「いや、それはユーのせいデス……ってさっきも似たようなことがあったようナ?」
「ラーイライ?」
激怒するアンバーと頭を抑えるマチス、大丈夫かー? とコイキングを尻尾で突っつくライチュウ。それを見たアンバーはニヤリと悪どい笑みを浮かべ、直ぐ様瀕死にしか見えないコイキングに向かって指示を出す。
「“じたばた”しやがれ!!」
「っ!? ライチュウ、ジャンプ!」
「コ……ココココー!!」
「ライ!」
アンバーの奇襲に寸でのところで気付いたマチスは素早く指示を出し、ライチュウも直ぐに従うことでコイキングの“じたばた”を回避する。やはり軍人と言うべきか、奇襲に気付く直感も持ち合わせているようだ。
「そっから“とびはねる”!」
「ココッ!」
「ライチュウ“たたきつける”!」
「ラーイ!!」
「コッ!?」
アンバーは直ぐ様上空にいるライチュウ目掛けて“とびはねる”ように指示するが、それもまたマチスは返す。ライチュウは尻尾を振るうことで遠心力を加えた一撃を放ち、コイキングの攻撃が当たる前に尻尾を“たたきつける”。結果、コイキングは再び地面に向かって落ちる……その先には、アンバーの姿があった。
「コイキングー!」
「コ……」
「誰が落ちてこいっつったんだ!!」
「コッ!?」
「ユーはナニしてるんデスカ!?」
そして、落ちてきたコイキングを蹴り上げた。
「ゴッ!?」
「ライブフッ!?」
「ノー! ライチュウ!?」
今度こそコイキングはライチュウに、それも腹部にめり込むレベルで直撃した。流石のマチスとライチュウも自分のポケモンを蹴り上げるという常識はずれの行動に的確な返しが出来なかったらしい。
当然、空を飛ぶことの出来ない2匹はそのまま落ちる。しかもコイキングが当たったことで体勢が入れ替わり、ライチュウは背中から、コイキングはその上に落ちた。コイキングの体重が決して重い訳ではないが、これは流石に効いたらしくライチュウは腹を抑えて蹲っている。こんなチャンスを、アンバーが見逃すハズがない。
「コイキング! “たいあたり”!」
「シット! ライチュウ!!」
アンバーの声に悪態をつきつつ、マチスはライチュウを見る。例え相手がコイキングだとしてもあの無茶苦茶やる非常識な人間のポケモンだ、何が起きても不思議ではない。そう思ってライチュウに指示しようとするマチスだったが、肝心のライチュウは腹部のダメージが大きかったのか蹲ったまま動けずにいた。
万事休す……思わず冷や汗をかくマチスだったが、いつまでたってもコイキングの“たいあたり”が行われない。不思議に思ったマチスは、先程コイキングがいた場所を見てみる。
その前に、ちょっとした勉強をしておこう。ポケモンはその生態こそ詳しいことは分かっていないが、基本的に行動は動植物と変わらない。鳥ポケモンは虫ポケモンを食べるし、炎タイプは水を飲んでも水辺に入ろうとは殆どしない。食物連鎖があり、タイプの相性もその生態に深く関わっている。つまりだ。
「ココッ! ココココーッ!!」
「……」
「……」
魚型のポケモンであるコイキングは、水のないところでは殆ど動けない。
「水中でも地上でも殆ど動けねえとかやる気あんのかてめえ!!」
「コッ!?」
「オー、バイオレンス&クレイジー……最早ビックリするのにも疲れマシタ」
アンバーは回復を兼ねてきずぐすりを投げ付けた! コイキングは中身を浴びなかったのでダメージだけを受けた! マチスは遠くを見ている!
しかしマチスは軍人。直ぐに意識を切り替えてアンバーと瀕死にしか見えないがまだぴくぴく動くコイキングを見る。滅茶苦茶だし非常識だし外道だし鬼畜ではあるが、アンバーという青年は過去に例を見ない(特殊過ぎるという意味で)強者であるとマチスは認識している。たかがコイキング、初見では変態としか評価できないトレーナーと正直見下していたが、ライチュウは無視できないダメージを負っている。
(これ以上、彼のペースでバトルを進めるのはバッド……最早手加減等無用。相手が手段を選ばないなら……ミーも出し惜しみは無しデース)
コイキングだから直ぐに終わる……そう思っていたがと、マチスは思考をジムリーダーのそれから軍人のモノへと変える。最早容赦はしないと、ライチュウに目を向ける。今だ蹲っているライチュウだったが、雰囲気が変わったマチスに見られた瞬間直ぐに体を真っ直ぐに伸ばした。
「ライチュウ! “10万ボルトォ”!!」
「ラーイ、チュウウウウッ!!」
「ココココココココココココココココココココココココココココッ!?」
「コイキング!!」
ライチュウが頬にある電気袋から放電し、文字通り“10万ボルト”の電気をコイキングに向けて放ち、直撃させた。この技は電気タイプの中でも高威力を誇り、ましてや相手は効果抜群の水タイプであるコイキング……常識的に考えれば、コイキングはもう動けないだろう。
しかしそこは常日頃からアンバーの不条理に耐え抜き、むしろご褒美ですと人の言葉が話せれば声高々に叫ぶであろうコイキング。パチパチと電気が体から出ているが、まだ瀕死になりきれていないらしい。すさまじい耐久力である。レベル5パもかくやというレベルだ。
「そのタフネスはワンダフルデスガ……これでフィニッシュ。ライチュウ!! “10万ボルト”!!」
「ライララーイ!!」
「あぶねえコイキング!!」
「コッ!?」
「……もう言葉も出まセーン」
2度目の10万ボルト。これを受ければ流石のコイキングも動けなくなるという確信がマチスにはあった。しかしそこは我らが主人公アンバー……非常識かついつも通りの方法……いつの間に着たのか先程の絶縁スーツを着てコイキングに近付き、思いっきり蹴り上げる。そこに瀕死に限りなく近いコイキングへの配慮は一切含まれていない。マチスも完全にツッコむ気力を失ったようだ。
だが、そんな回避が出来るのも1回限り。空中という飛べなければ無防備になる場所ならば、今度こそ逃げ場ない。そう思って蹴り上げられたコイキングを目で追いかけ……天井にコイキングが突き刺さったことでマチスとライチュウは顔を真っ青にした。
「さて……コイキング」
アンバーは親指を立てた右腕を突きだし、そのまま親指を下に向ける。それと同時に、蹴り上げられたことによって天井に突き刺さったコイキングの周囲……というか天井全体に広がっていた“ヒビ”が更に広がり、パラパラと破片がこぼれ落ち……。
「瓦礫と共に落ちてこいや」
「ノオオオオ!!」
「ラ、ラアアアアイ!!」
遂には天井が崩れ、数多の瓦礫とコイキングが落ちてきた。即席の“いわなだれ”はライチュウとマチス、更にはアンバー自身をも巻き込み……結果、立っていたのは瓦礫を絶縁スーツを着たまま避けきったアンバーと、地味に回収されていたコイキングだけだった。
こうしてマチスは全治6ヶ月の大怪我を負うこととなり、更にはジムの修繕費すらもアンバーが口の巧さで逃れたために実費で払うこととなり、散々な目に遭って嫌でも生き方が変わりながらもオレンジバッチを渡すのだった。
「卑怯な手段を使うトレーナーなんかにゃ負けはしない」
「……もうなんとでもシテクダサイ……」
こうしてアンバーの第3の戦いは終わった。戦いとは決して正道王道だけではなく、今回のような邪道外道とも呼べる行為に出る輩も現れることだろう。しかしアンバーはそんな輩にも真っ向から対峙し、打ち砕き、勝利していくのだ。
頑張れアンバー! 負けるなコイキング! 500円の魂を引っ提げて、目指すはポケモンマスター! さあ! 右手の人差し指を伸ばし、天高く掲げて叫べ!
キングは1匹! このコイだ!!
「この後ニビシティとは違うジュンサーさんに事情聴取を受けたが巧くやり過ごし、なんやかんやあってオールナイトでフィーバーして黄色い太陽を拝んだ」
「……(ツッコミがない。心が完全に折れたようだ)」
艦これに比べて軽く考えているからかサクサク書けるという。レベル5パはマジ勘弁。連続技とか持たせてないの。尚私だけポケモンはXYで止まってます。お気に入りはグレイシアです←
さて、この作品にはヒロインは居ません。チョロイン(R18)ばかりです……ヒロイン、いります?
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