魔法少女リリカルなのはTwo girls 作:たまらんち会長
最初は二人の少女が戦うのと、二人がどんな攻撃も通用しない防御壁を持っている、その二人の戦いにフェイトとティアナが関係していくの3点だけで漠然と構想してたんですが、それをプロットにしてさらにそれを改造したのが本編です。
第1話【二人の少女】
つばめ第3小学校5年の木崎さくらは両親を事故で亡くし、祖父に引き取られていた。さくらの祖父は剣道の師範で、さくらも幼い頃から剣道を習っていた。そして、この日もさくらは道場に行って稽古に励む筈だった。いつもと何も変わらない1日。さくらは当然のようにそう思っていた。そんなさくらに届いた祖父の急死という報せ。優しい家族に囲まれて幸せに育った少女は一転して天涯孤独の身の上となってしまう。ショックのあまり家を飛び出したさくらは謎の女に呼び止められる。女は言う。「ゼクエスの帝王になれば家族を取り戻すことができる」と。平常な判断力ができなくなっていたさくらは女の勧誘に乗ってしまうのだった。
同じころ、さくらがいる世界とは別の世界では内戦で荒廃していた。反政府武装組織に身を置いていた少女ルーシー・ブランケットは仲間と一緒にいるところを政府軍に襲撃されてしまう。ルーシーは辛うじて逃げることができたが仲間を全員殺されてしまった。独り逃げ延びたルーシーは古ぼけた教会に助けを求めるが、そこで彼女は神官の男からゼクエスの帝王にならないかと誘われる。最初は断ったルーシーだったが、帝王になってすべての世界を支配すれば争いが無くなると説得され逡巡するも最終的に帝王になる決意をする。
帝王候補になった二人の少女に告げられた帝王になる条件。それは、ライバルとなる帝王候補を抹殺することだった。
第2話【悲しさと寂しさと】
さくらとルーシーがゼクエスの帝王候補になってから一週間が過ぎた。だが、二人は躊躇していた。帝王になるにはもう一人の候補者を殺さなくてはならないからだ。さくらはおろかルーシーでさえも人を殺した事がなかった。そんな二人に彼女らを帝王候補に仕立て上げた魔女と神官は「お前が躊躇しても、向こうは躊躇しない」と脅迫するが二人は応じなかった。二人は話は無かったことにしようとするが、すでに運命は少女たちの未来を束縛していた。
自分のために他人を犠牲にすることはできないと言うルーシーを神官はある場所に連れていく。そこは戦争で全滅した街だった。神官は言う。「お前が躊躇している間にも、ああして人が殺され街が壊されて行く。こんな悲劇を無くすにはゼクエスの名の下に世界を統治するしかない。人間は人間同士が殺しあうことを自ら禁じることはできない生き物だ。だから、人はよりよい絶対者に導かれなければならない」
ルーシーは過去を振り返った。彼女が生まれてすぐに両親は戦闘に巻き込まれて死亡し、彼女は武装組織に拾われて育てられることになった。そのため、ルーシーは物心ついた時から戦争の悲惨さを目の当たりにし、彼女自身も幾度となく死にかけたこともあった。やがて、彼女は争いを嫌うようになっていた。そして、争いが無い世界が作れるならとゼクエスの帝王候補になる決意をしたのだが、帝王になるにはもう一人の候補者を殺さなくてはならない。何の恨みもない相手を殺すことなんてルーシーにはできなかった。だが、神官の言うようにルーシーが躊躇している間に戦争で人命が失われていく。長考した末にルーシーが出した結論は自らが帝王になって世界を統治し争いを無くすことだった。
一方、さくらは一人ぼっちの寂しさに打ちひしがれていた。内気で消極的な性格のさくらには友達が無く、唯一積極的になれるのが剣道の稽古に励んでいる時だったが、それも祖父の死で剣道場が閉鎖されたことで終わってしまった。帝王になれば家族を取り戻す事もできる。魔女はさくらにそう言った。だが、そのためにはもう一人の候補と戦わなければならない。ルーシーと違い、戦争を全く知らないさくらに人を殺すことはできない。そんなさくらの前にルーシーが現れる。ルーシーはさくらにこう言い放った。「私はルーシー・ブランケット。貴方と同じゼクエスの帝王候補だ。貴方には何の恨みは無いけど、私は貴方を倒さなくてはならない」その瞳には迷いがなかった。
第3話【初めての感情】
突然現れて攻撃してきたルーシーに狼狽するさくら。あわてて変身して応戦するも戦闘の素人であるさくらは苦戦を強いられる。何とか話し合いをしようとするが、ルーシーは聞き入れようとはしなかった。さくらが戦闘慣れしていないことを見抜いたルーシーは今のうちに決着をつけるつもりなのだ。執拗なルーシーの攻撃からどうにか逃れたさくらは自分が児童養護施設に預けられることを知る。だが、人見知りの激しいさくらに他人との共同生活など苦痛でしかなかった。自分に絡んできた女子児童をゼクエスの魔法で退けるさくら。だが、それは自身の孤立を深めるだけだった。その様子を見ていたルーシーはさくらも自分と同じひとりぼっちであることを知るが、彼女を倒しゼクエスの帝王になるという決意が変わることはなかった。さくらも馴染めない集団生活の中で次第にこの境遇から抜け出すために戦う方へと気持ちが変わっていく。それでも戦うことに抵抗を感じるさくらだったが、ルーシーとの2回目の戦闘で死にかけたことで、戦って勝たなければ殺されるという現実を思い知られる。自分を殺そうとするルーシーにさくらは初めて相手に対する憎しみの感情を抱くのだった。
第4話【決戦、つばめ第3小学校】
殺されかけたことでさくらは迷いを無くした。生き残るためにも再び家族と一緒に暮らすためにも、さくらはゼクエスの帝王になることを決意する。たとえ、自分と同じくらいの歳の少女の命を奪うことになったとしても。3回目の対決で初めてさくらは積極的に攻撃をしかけるが、実力はまだルーシーの方が上だった。だが、戦うたびに強くなるさくらに焦りを感じたルーシーは一気に決着をつけるべく、さくらの学校に狙いを定める。生徒と教師を人質にさくらに降伏を迫ろうというのだ。
次の日、ルーシーはさくらの学校を結界で覆った。さくら以外の時の流れを停めたルーシーはさくらに降伏を迫る。拒否すれば教師と生徒の命は無いという脅迫も含めて。だが、さくらは自分の命を犠牲にする義理は無いとルーシーに攻撃を仕掛ける。激しくぶつかり合う二人。二人が持つ魔剣と魔槍の影響か、二人は互いを憎しみの目でしか見ないようになっていた。天賦の才のさくらと実戦経験豊富なルーシーはほぼ互角で容易には決着はつかなかったが、数多くの敵と渡り合ってきたルーシーが次第にさくらを押し始めた。さくらの懸命の応戦も空しく、ルーシーの槍がさくらの心臓を捉えた。1秒後にはさくらの胸が貫かれていただろうという際どいタイミングに、ルーシーの槍は何者かのデバイスに邪魔された。いきなり現れて二人の戦いを妨害したのは金髪の女魔導師だった。
第5話【敵か味方か】
さくらとルーシーの戦いを止めた魔導師は時空管理局執務官フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと名乗り、二人に戦闘停止と事情聴取に応じるよう求める。だが、ルーシーは何も言わずに姿を消し、時空管理局を知らないさくらはフェイトを敵と認識して攻撃をしかける。やむなく応戦するフェイトだが、彼女の魔法攻撃はことごとくHIディフェンスに弾かれてしまう。そこへ、ティアナ・ランスターが現れてさくらを捕縛魔法で拘束するが、さくらはゼクエスの魔法でティアナの意思を支配して拘束を解かせると、彼女にフェイトを攻撃するように命じる。その隙にさくらも現場を離脱した。フェイトはそれを追いかけようとするが、さくらに意思を支配されたティアナに邪魔されてしまう。ティアナはフェイトを攻撃するが、さくらの姿が見えなくなると正気に戻った。
フェイトとティアナは活動拠点としているコテージに戻ると、二人の魔導師について調べた。ルーシーはミッドチルダの魔導師だったためデータがあるものの、データに記載されている魔導師ランクと実際のルーシーの魔導師ランクがかなり違っていた。また、さくらのデータはなく、さらにミッド式でもベルカ式でもない魔法陣を形成するが魔力が測定できない。さらに、さくらがデバイスに自分の血を吸わせていることも含めてフェイトは上司で兄でもあるクロノ・ハラオウンに報告する。クロノは親友で無限書庫の司書長のユーノ・スクライアに調査を依頼する。
第6話【思い】
ユーノが謎の魔法について調べる一方、フェイトとティアナは二人の魔導師の行方を捜索した。二人は何者でなぜ戦うのか。二人が形成する魔法陣は二人がミッドやベルカ以外の魔導師であることを示しているが、うち一人はミッド式の魔導師だったはずである。現に時空管理局はその少女の大規模な魔力反応を探知して調査することにしたのだ。だが、数日捜索しても二人の居場所は突き止められなかった。二人の戦闘によって周囲に少なからず被害が出ているので何としてでも身柄を確保しなければならない。さらに、フェイトにはもうひとつ思いがあった。
12年前、フェイトは同じ世界で後に一番の親友となる高町なのはと戦ったことがあった。複雑な家庭の事情でロストロギアを収集していたフェイトは、同じくロストロギアを集めていたなのはと何度も矛を交えたのである。しかし、二人は相手を憎んで戦っていたわけではなかった。むしろ、なのははフェイトに痛い目にあわされたにも関わらず彼女を救おうとしたのだ。この時、フェイトは母親を亡くしているが、なのはや周囲の人間の助けで立ち直ることができた。戦いという不幸な出会いではあったが、かけがえのない友を得ることにもなった。フェイトにとって忘れられない思い出である。そんなフェイトにしたらさくらとルーシーが戦っているのは他人事ではなかった。気がかりなのは、フェイトが二人の間に割って入った時、ルーシーは完全にさくらを殺すつもりでいたことと、さくらがルーシーを憎悪していたことだ。フェイトは思う。二人は友達になれるはずだ。事情さえわかれば二人を戦わせずにすむ方法が見つかるはずだと。
その頃、さくらは遠く離れた町にいた。授業の途中で忽然と消えたために、学校に戻りづらくなったさくらは施設にも何も告げずにここまで来たのだ。相手の意思を支配する魔法で食事などには困らない。一方、ルーシーはとある家族の記憶を操作してその家を活動の拠点としていた。二人は次の戦いで決着をつけることを心に誓っていた。
第7話【戦いの理由】
新興宗教団体レッドコメット。時空管理局は以前からこの団体に捜査官を信者として潜入させてきた。だが、いままでに生きて帰ってきた者はいない。そして、この日も礼拝の場で教祖が女性信者を管理局のスパイであることを見破る。翌朝、街灯に吊るされている女性が発見された。
二人の魔導師、さくらとルーシーのの行方を追っていたフェイトたちは、さくらについての情報を入手することができた。二人が戦っていた場所の近くの学校を調べた結果、授業中に突然いなくなった女子児童のことを訊き出したのだ。木崎さくらという名前と10歳という年齢、家族が皆亡くなって施設で暮らしているという事を聞いたフェイトは、さくらがなのはと同じくそれまでは魔法とは無縁の生活をしていて、ある日突然に誰かから魔法の力を授けられたと推測するが、その誰かが何者なのかあの魔法は何なのかまではわからなかった。
その頃、ユーノは無限書庫のスタッフ総出で謎の魔法の系統について調べていたが、一向に何の手がかりもつかめずにいた。過去に途絶えた体系の魔法も調べられたが該当する魔法は発見されなかった。さくらとルーシーの所在も掴めない、さくらが使う魔法の正体もわからない。まさに八方ふさがりの状態である。
だが、事態は思わぬところから進展した。フェイトからさくらたちのことを聞いていた八神はやてが聖王教会のカリム・グラシアと食事をした際にそのことを口にしたところ、カリムがそれはゼクエスの魔法ではないかと返したのだ。ゼクエス式については文献などの文字資料は一切存在せず、口述でのみ伝えられてきたためカリムも詳しいところまでは知らなかったが、ゼクエス式とはミッド式やベルカ式とは全く異なる体系の魔法で、そのために魔力の計測が不可能なこと、他の系統の魔法も使用できること、この体系の魔法が使える魔導師は5000年に二人しか現れず、その二人が戦って生き残った者が帝王と呼ばれる存在になることが判明した。帝王とはいかなる存在かは不明だが、はやてからそのことを知らされたフェイトがさくらとルーシーがなぜ相手に殺意を抱いて戦っていたのか理解した。殺さなければ殺されるという強迫観念が二人に殺し合いを強いているのだ。このままでは、どちらかが一方を殺してしまうことになることを危惧したフェイトは何としてでも二人を見つけることを決意する。だが、すでに二人は最後の戦いに臨もうとしていた。
第8話【大草原、血に染めて】
さくらとルーシーは別の世界で対峙していた。さくらの住む世界では時空管理局の介入を受けるかもしれないからと、ルーシーがさくらの同意を得てこの世界に転送したのだ。もはや、二人に交わす言葉は無かった。生きるか死ぬか、殺すか殺されるかだ。二人ともこの戦いで決着をつもりでいた。激突する二人の魔導師。相手を攻撃することしか頭にない二人は互いを傷つけていく。そして、激しい戦いの末ルーシーの槍がさくらの腹を貫いた。勝利を確信するルーシー。だが、さくらは最後の力を振り絞ってルーシーの左目を斬りつけた。ルーシーが左目を抑えて悲鳴を上げている隙にさくらは自分の腹に刺さっている槍を抜くと、フルパワーでその場から逃亡した。だが、重傷を負っている体で全力で高速移動魔法を使ったため、離脱には成功したものの出血多量で意識を失ってしまった。未開の辺境の世界のために、そのまま誰にも発見されずに死んでしまうところだったが、ちょうど運よく自然保護隊のエリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエがこの世界の希少動物の観察に訪れていて倒れているさくらを発見して保護した。フェイトからさくらのことを聞かされていた二人は、さくらを病院に運ぶとすぐにフェイトに知らせた。
クロノに呼ばれて本局に戻っていたフェイトは、すぐに病院に駆け付けた。医師から一命を取り留めたと聞かされ安堵するフェイトだが、新しい任務の打ち合わせのために離れなければならなかった。その間に、さくらは目を覚ました。
第9話【動き出した策謀】
ロストロギア『ディアス』。人を自由に操ることができるとされる結晶体で、ある集団がそれを収集していた。その集団とは武装宗教団体フォーサイズ。教祖の命令は絶対で、その命令の遂行のためには命も惜しまない狂信者の集団である。その詳しい内部事情はまったくの謎だったが、地道な捜査の末に数年前にできた新興の宗教団体レッドコメットがフォーサイズと関係しているらしいとわかって潜入捜査を行っていたが、潜入した捜査官はすべて死体で発見された。何回か強制捜査も行われたが、捜査員殺害の証拠になる物やフォーサイズとの関係を示す物は発見されなかった。厄介なのはレッドコメットが慈善事業などで市民に好かれていることで、確たる証拠もなしに強制捜査をした管理局には市民からの批難が殺到したのである。以後、管理局はレッドコメットに手が出しにくい状況となってしまった。
だが、管理局が睨んだとおり、レッドコメットとフォーサイズは同じ組織だった。フォーサイズの教祖ダニエル・ジャッカルはレッドコメットの教祖ギルバート・ミハイルであり、ミハイルは信者を洗脳して死をも恐れぬ兵士として訓練していたのだ。そのミハイルの野望は次元世界の支配者として君臨することであり、そのためにディアスを集めさせていたのだが、ディアス1個で操れる人間はせいぜい2、3人ぐらいでしか無く、次元世界全体の人間を操るには42個すべてを集めなければならず、ミハイルの手元にはまだ6個しかなかった。焦るミハイルに側近がゼクエスの帝王候補が現れたと告げた。一瞬、何のことかわからなかったミハイルだったが、が、すぐにそれがかつて聞いたことがある伝説と知ると帝王候補の捕獲を命じた。全世界に君臨するとされるゼクエスの帝王候補をディアスで洗脳して帝王にしてしまえばミハイルは帝王を陰で操る真の支配者となることができる。そっちの方がディアスを時間と苦労をかけて全部集めるよりも手っ取り早くてすむ。
その帝王候補の一人であるさくらは病院のベッドで意識を取り戻したものの、まだ安静が必要な容体だった。目が覚めたら全然知らない部屋だったため、さくらはしばらくボーっと天井を眺めていたが、自分が危うく死にかけたのを思い出すと体を震わせた。さらに起きたら全然知らない部屋だったことも、さらにデバイスが無いこともさくらの恐怖心を煽った。そこへ、彼女の治療を担当した女医と勝手にさくらのデバイスを持ち去って調べていたシャリオ・フィニーノが入ってくると、さくらはシャーリーの意思を支配してデバイスを取り戻して変身した。まだ傷が完治しておらず動いてはいけない体なのだが、さくらは正常な判断が下せる状態ではなかった。病院を文字通り飛び出したさくらだが、周りは見たことのない風景ばかりで帰り道すらわからなかった。ますます、錯乱するさくらを通報を受けて急いで駆けつけたフェイトが落ち着かせようとするが、さくらは彼女の意思を支配しようとする。だが、S+ランクのフェイトにはその魔法は通用しない。フェイトに襲いかかるさくら。フェイトは止む無く応戦するも、すでに幾度かの実戦を経験して戦い方を学んださくらに苦戦を強いられる。だが、無理して体を動かしたためさくらの腹の傷口が開いてしまった。さくらが怯んだ隙にフェイトは彼女を捕まえることに成功する。暴れるさくらをフェイトは優しく抱擁した。さくらはようやく落ち着いたのだった。
第10話【宣戦布告】
さくらはすぐさま病院で手術された。手術は成功したが、しばらくは入院が必要となった。また、知らない場所での安静を余儀なくされるさくらの不安を感じたフェイトはなるべく側にいるようにするが、新しい任務が決まった彼女にはそんな時間の余裕がなかった。せめて寂しくないようにとフェイトはぬいぐるみをプレゼントするが、さくらはそれを受け取ると家族のことを思い出して泣きだしてしまった。不安と寂しさがいまのさくらのすべてだった。そんなさくらをフェイトは優しく慰めるのだった。
フェイトの新しい任務。それは増強された対フォーサイズ捜査班への参加だった。はやてが班長となり、フェイトの他にも助手のティアナやシャーリーに、教導隊からなのはも参加することになった。トップエースのなのはが参加するということは、それだけフォーサイズが危険な集団ということである。
一方、ルーシーは自分が戦う理由に疑問を感じ始めていた。いや、疑問は最初から抱いていた。それを、次元世界を自分が支配して争いを無くすという思いで無理矢理抑えていただけだ。だが、初めて自分が傷を負わされて、他人を犠牲にしてまで達成しなければならない物なんてあるかどうかという疑問が生じたのだ。自分が支配者となって争いを無くすなんて、それはただのエゴにすぎないのではないだろうか。思い悩んだルーシーはさくらに会いたいと思った。会って詫びたいと思った。無論、さくらは許さないだろう。それでも、ルーシーはさくらに会って謝りたいと思ったのだ。だが、すでに彼女はフォーサイズの兵士たちに狙われていた。数十人の兵士に囲まれたルーシーはその異様な感じから、彼らが強力なマインドコントロールにかけられていることを見抜き試しに一人を血祭りにあげた。仲間がやられているのに、彼らは顔色一つ変えなかった。やられている本人でさえ自分がどんな目に遭ったかわかっていないようだった。彼らは痛みも恐怖も持ち合わせていないのだ。そういった連中を退けるには確実に息の根を止める必要がある。それ自体はルーシーには難しいことではない。だが、連中はただの捨石だった。ルーシーが彼らと戦っている時に見せたわずかな隙を突いて隠れていた指揮官の魔導師が、彼女の左側から攻撃を仕掛けてきたのである。以前のルーシーなら隙を突かれて相手に接近されても対処できたが、左目を失っているため左側が死角になっていたので反応が遅れてしまった。HIディフェンスを張る間もなく、ルーシー
は魔導師の魔力斬撃で気絶させられてしまった。ルーシーを気絶させたバレル・マックスウェルは彼女を抱えると部下たちに引き上げを命じた。
ルーシーを手に入れたミハイルは早速ディアスで彼女の洗脳を試みた。さすがに帝王候補というだけあって、1個だけではルーシーには効果が無かった。それならばと、ミハイルはいままで集めた6個を一つにまとめて使うことにした。だが、ディアスは中途半端に融合させると二度と他のディアスとは融合しない性質を持っている。つまり、ここで融合させてしまえば残りの36個のディアスとは融合できなくなり、次元世界のすべての人間を意のままにするというミハイルの野望は達成されなくなるのだ。とはいっても、ミハイルはすでに収集するのに時間と手間のかかるディアスに見切りをつけており、それよりもゼクエスの帝王候補を洗脳して帝王としその黒幕として陰から世界を支配することにしていた。さしもの帝王候補も6個分のディアスには抗しきれず、ルーシーはミハイルの意のままに動く人形となってしまった。
そのころ、フェイトはフォーサイズの捜査を進めていたが、ピタッとフォーサイズの活動がストップしたことに不審を感じていた。あれだけ精力的にディアスを捜していたのに、どういうわけかここ数日まったく姿を確認できないのだ。一体、彼らはどうしたのか。その答えはすぐに出た。フォーサイズのリーダー・ダニエル・ジャッカルが時空管理局に宣戦を布告してきたのだ。
第11話【黒き太陽輝く刻】
宣戦布告と同時にフォーサイズによる時空管理局地上本部への攻撃が開始された。その中には洗脳されたルーシーの姿もあった。フォーサイズがここを最初の襲撃地点に選んだのは、もう一人の帝王候補であるさくらがここの医務室に入院しているとの情報を得たからである。ルーシーの襲撃を恐れるさくらのためにフェイトがここなら安心と転院させていたのだ。襲撃を知ったさくらは見舞いに訪れていたエリオとキャロと担当女医とともに避難することになったが、突然女医がエリオとキャロに不意打ちを食らわせて気絶させてしまった。実は女医はミハイルの側近の一人・シャロン・グラディスで、さくらが地上本部の医務室にいることをミハイルに通報したのも彼女だった。シャロンはさくらを捕まえると、ルーシーの前まで連行した。さくらに最後の決闘を申し込むルーシー。だが、さくらは完全に怖気づいていた。構わずルーシーは槍の斧の部分をさくらの頭上めがけて振り下ろした。間一髪、急行してきたフェイトが攻撃を防いだ。なのはたちも駆けつけて防衛戦に参加した。フェイトはルーシーに戦うのを止めるよう説得するが、それを空間モニターのダニエル・ジャッカルが嘲笑した。ディアスを使ってルーシーを洗脳したというジャッカルにフェイトは怒りを露わにする。しかし、ジャッカルはまったく動じることなく、ルーシーに邪魔者をすべて排除するよう命じた。命令どおり攻撃をしかけてくるルーシーにフェイトはなのはと二人がかりで対抗するが、S+ランクの魔導師二人でもやっと互角に戦えるという状態だった。だが、ルーシーには左に死角がある。歴戦の二人にその死角を突いて攻撃するのは難しいことではない。そこに、バレルが介入してきてなのはとフェイトの連携を崩した。ルーシーと1対1の対決となったなのはは、HIディフェンスにすべての攻撃を防がれて苦戦を強いられる。フェイトもバレルの透明化能力と遠隔操作式攻撃端末による攻撃で翻弄されていて、なのはの援護には回れなかった。ティアナもジャッカルの側近の一人・サラと戦闘中で援護には向かえない。
目の前の戦闘を震えながら眺めていたさくらは、苦戦しつつも戦うなのはたちの姿に幼き頃に母から言われたことを思い出していた。さくらの母も剣道をやっていて、さくらが剣道を始めたのも母の影響からだった。ある日、母は訊いた。どうして、強くなりたいのか、と。さくらは答えた。正義の味方になって悪者をやっつけたい、と。いま思えば赤面したくなる返答だったが、その後に母はこう言った。本当の強さとは、誰かを倒すとかいうためではなく、誰かを守るためにあるべきものだと。その時はいまひとつ理解できなかったが、いまならわかる気がした。なのはたちは、誰かを守るために戦っているのだ。それは、大好きだった母に教えられたことと一致していた。そんな母が、娘が他人を犠牲にして自分を生き返らせたとしても喜ぶわけがない。そして、病院でフェイトから教えられたなぜ言葉があるのかという事。さくらは自分が過ちを犯していたことを悟った。もう少しで、母親を裏切るところだった。それを償うため、さくらは再び武器を取り立ちあがった。
第12話【星の光に祈りを込めて】
地上本部に対するフォーサイズの攻撃は苛烈を極めた。痛みも死への恐怖もない彼らは倒されても倒されても起き上がってきた。時空管理局地上部隊は必死に防戦するが、フォーサイズが自爆攻撃を仕掛けてくると、恐怖のあまり持ち場を逃げ出す者が出始めた。また、管理局は軍隊ではないため相手を生け捕りにすることが求められていたが、動ける限りは戦うを止めようとしない狂信的なフォーサイズの兵に対する恐怖心から攻撃が過剰になってしまうこともあった。はやてが現場の総指揮を執って懸命に統制を保とうとするが、防衛線の崩壊は時間の問題となりつつあった。
一方、誰かを倒すためではなく、誰かを守るために戦うことを決意したさくらはルーシーに戦いを止めるよう説得した。無論、洗脳されているルーシーが応えるわけはないのだが、さくらはルーシーの攻撃を受けながらもなお説得を試みた。それは傍目から見たら無駄な努力かもしれない。しかし、さくらにはわかっていた。ルーシーにも何か守りたいものがあるのだと。自分たちは世界で二人だけのゼクエスの帝王候補だ。他者に操られるままで終わるわけがない。さくらは武器を置いて両腕を左右に広げ、ルーシーに叫んだ。貴方を信じると。その思いも空しく、さくらはルーシーに槍で貫かれるが、その感触がルーシーに戸惑いを感じさせた。それを見たさくらは息が苦しいながらもルーシーを諭した。人を傷つけるってこんなに嫌なものなのだと。そして、自分で槍を抜くとその穂先を自分の喉元に向けた。それまで二人の戦いを黙って見守っていたなのはが、あわてて止めに入ろうとするがさくらはそれを制止した。ルーシーが見せた戸惑いに賭けてみることにしたのだ。そのさくらの思いに応えるかのように、ルーシーは震えるばかりでさくらの喉を突こうとはしない。ジャッカルが執拗に殺せと命令しても、さくらの喉元からわずか数センチまで迫っている槍がそれ以上前に進むことはなかった。なかなかさくらを殺そうとしないルーシーに業を煮やしたジャッカルは、彼女を洗脳していたディアスを直接体に埋め込むことで完全にルーシー
を制御下に置こうと、ディアスをルーシーの体内に転送させるが、それがなのはに彼女を解放する手段を与えることになった。かつて、娘に移植されたロストロギア・レリックを破壊したように、なのははスターライトブレイカーex-fbでルーシーの体内のディアスを破壊しようというのだ。たとえ、スターライトブレイカーであってもHIディフェンスの前には無力なのだが、いまのルーシーはディアスによる侵蝕が進行中で無防備な状態にある。ディアスが完全にルーシーを支配する前に、なのははスターライトブレイカーを放ち、ルーシーを蝕んでいたディアスを破壊することに成功した。それと時を同じくして、フェイトも相手の動きを読むことでバレルを倒し、ティアナもサラとの射撃合戦に勝利を収めていた。
切り札を失ったジャッカルは、管理局の降伏勧告を拒否して最後の手段に出た。レッドコメットの本部の地下に隠してあった巨大空中戦艦を稼働させたのだ。なのはとフェイトは意識を失ったさくらとルーシーをティアナに任せると空中戦艦への突入を試みるのだった。
第13話【You are my friend】
空中戦艦への接触を図るなのはとフェイトを無数の航空兵器シャムが迎撃した。二人はシャムを次々に撃墜するが、シャムは戦艦から大量に射出されてきてキリがない。さらに戦艦から地上にも20機ほどの地上用兵器デストロイヤーが降下して、2丁の熱線銃と全方位型偏向シールドを駆使して管理局側を追い詰めていった。そこへ、シグナム・ヴィータ・シャマル・ザフィーラと十数人の航空魔導師が駆けつけ、シグナム・シャマル・ザフィーラが地上の支援に向かい、ヴィータと航空魔導師隊がなのはとフェイトの突入を援護した。
戦艦の内部に侵入した二人をデストロイヤーが迎撃するが、なのははそれらをエクセリオンバスターで一掃する。だが、デストロイヤーは次々に現れてくる。外でもシャムが墜とされても墜とされても戦艦から新手が飛来してきた。二人は戦艦内部に兵器工場があると判断して、なのはが兵器工場を破壊し、フェイトがジャッカルを捜索してこれを拘束することにした。だが、ジャッカルはすでに敗北を悟っており、戦艦を地上本部に墜落させるつもりでいた。本人はその前に脱出するつもりでいたが、フォーサイズもレッドコメットも今回の件で壊滅状態となっている。それでも、ジャッカルは自分さえ生き残ればいつでも新たなる組織を立ち上げられると楽観していたのだが、脱出艇に向かう途中でフェイトに出くわしてしまい逮捕された。なのはも兵器工場を発見して破壊に成功、ついでに兵器の制御装置も破壊したため稼働中のシャムとデストロイヤーはすべて機能を停止した。これで一件落着かと思われたが、空中戦艦は地上本部に向かって降下中であり、動力部を破壊しても地上本部への墜落は不可避の状況となっていた。ただちに避難が命令されたが、負傷して動けない者もいてとても全員避難できそうになかった。ティアナはスターライトブレイカーで戦艦を破壊することにした。彼女だけの魔力ではなのはのスターライトブレイカーには到底及ばないが、意識を取り戻したルーシーが魔力を提供してくれたので本家を上回る威力が出せるようになった。なのはとフェイトも可能な限り内部から破壊してから脱出し、それを確認したティアナがスターライトブレイカーを放って戦艦を破壊した。
事件解決から数日後、時空管理局病院に入院しているさくらをルーシーが見舞いに訪れた。洗脳されていたので事件の罪を問われずに済んだのだ。謝罪したいというルーシーにさくらも左目を傷つけたことを謝った。お互いがお互いを許すという形で二人は和解し、さくらが友達になりたいと言うとルーシーはそれを快諾するのだった。二人は神官と魔女に帝王にならないことを告げ、神官たちも最終的には当人らの意思次第として認めることにした。二人はゼクエスの力を封印し、新たな道を歩むことになった。ルーシーは執務官を目指し、さくらはフェイトが身元引受人になってくれたのでフェイトに引き取られることになった。
1ヶ月後、魔法学校で机を並べて勉強するさくらとルーシーの姿が見られた。
だいたいの流れは本編とほぼ一緒ですが、ところどころに違いがあります。キャラクターの名前もデュオ・サウザーがバレル・マックスウェルになってますし、スカイファイターもシャムという名前になっています。さくらとルーシーが使う絶対防護壁も本編ではAIシールドですが、当初はHIディフェンスという名前でした。
最初はプロット通りに執筆してたんですが、やっているうちに差異というものはでてくるものでさくらが児童施設に入れられるというくだりは多分途中で面倒になってボツにしたんだと思います。
あと、違いと言えばオリジナルキャラが増えたことですね。なんで登場させたかは何年も前の事なので記憶にありません。最終話あたりの双子魔導士の役割をヴィータにやらせても良かったんじゃないかなとも思います。そうそう、シグナムは本編で何者かに重傷を負わされていますが、プロットにはちゃんと元気に登場しています。これはプロットの時点では謎の男は登場する予定ではなかったからです。
プロットを改善したのが本編なんですが、いまとなってはプロットに懐かしさを感じたりもします。