初めましての方は初めまして。
既に知っているという方はお久しぶりです。
性懲りも無くまた新しいシリーズを書き始めてしまいました。
ですがこれから数話書いたらしばらくここは投稿しない予定です。
理由は、現在三つもローテーションで書いてるのにこれ以上増やしたら
回らなくなるからです。
今現在書いている作品で一番早く終わりそうなのが東方なので
それが終わり次第、第二幕という形で投稿したいと思っています。
なので、今回はまあお試し、といった感じが強めになってます。
それでもかまわないという方は是非ご覧になってください。
それでは、どうぞ!
人は人生の中で一度や二度は必ず、『どうにもならない事』ってのにブチ当たる。
人によっては長くも短くも感じられるそれぞれの人生で共通する事の一つでもある。
そしてその『どうにもならない事』は、大体が人生の前半でやってきたりする。
そう、今まさに俺はそんな状況に陥っているわけで。
「……………………ああ、メンドイなクソッタレ」
三年前に俺が中学に上がってから与えられた自分の部屋で独り愚痴を垂れ流す。
もちろん部屋には俺しかいないから、その言葉への返答なんて帰っては来ない。
期待していなかったこととはいえ、何故だか無性に悲しくなってきたりする。
そんな無意味な感傷に浸りつつ、もはや慣れた手つきで荷造りの作業を再開した。
折り畳まれた段ボールを広げ、部屋にあった様々な道具や小物を詰めてガムテープを貼る。
油性のペンで箱の無地の部分に何を入れてあるのかを大まかに書き記して部屋の片隅に運ぶ。
さっきからずっと、ロボットのようにこの手順を繰り返している。
理由は単純、今から俺はこの住み慣れた部屋から引っ越さなきゃならんからだ。
切っ掛けもまたあっさりしたもんで、簡単にまとめれば親父の転勤の都合ってわけ。
その事を先週クラスの友達に話したら、当たり前のように『母親と残れば?』とか言いやがった。
まぁ俺が黙ってたのもあるが、その言葉にムカついた俺はそのまま学校をサボって帰った来た。
今になって思えば、最近の小学生でもしないような子供じみた癇癪だったと反省している。
「…………うっし、片付け完了。後は特にすることは無いか」
先日の午前中にあった出来事を思い返しながらも荷造りをしっかりと終えた。
息を吐いて部屋を見渡すと、積まれた数個の段ボールとガムテープ以外は何もない空間があった。
良く言えばまとまって清潔感がある。悪く言えば面白味も何もない空虚な空き部屋、だろうか。
ぶっちゃけ個人的に言えば後者の方が俺のイメージに当てはまってるような気もする。
ワイワイ騒ぐよりかは静かに過ごしていたいと思うくらいには草食系だと自負している。
でもまぁ、流石に平穏を求めて喧騒を爆殺するどこかの殺人鬼とは違って俺はノーマルだ。
そんな訳の分からないセルフ突っ込みをしていると、部屋の扉が静かに開いた。
その奥からは、というか廊下側から顔を出してきたのは俺の親父だった。
「どうだ
部屋の扉に隠れるようにしつつ。こちらに気でも遣っているのか小声で話しかけてきた親父。
一般的な成人男性よりかは少々やつれた頬に手入れがあまりされていない短めのあごヒゲ。
髪の毛も同じように整えられてはいないがそれなりにまとまった髪型に自然となっていて、
開いているのか閉じているのかよく見なきゃ分からんほどに細い目に太めの眉毛。
身長的な面でみれば決して低いわけでは無く、むしろ平均からすれば高い方に位置していて、
腹部も街中で見かける肥えた同年代のオッサンよりかは引き締まった体型を持っている。
男にしては少々頼りなさげな細く高めの声色で問いかけてきた親父に俺は軽口をたたく。
「まぁな。いきなりの事で驚いたけど、予想はしてたから大きなモンは持ち込まなかったし」
「よ、予想してたって……………まるでお父さんが飛ばされるの分かってたみたいじゃないか」
「やっぱな。親父に限って栄転は無いとは思ってたけど、予想通りに左遷か」
「オウッ‼ りょ、遼太郎…………お前、今のは中々グサッときたぞ」
「なんだ、致命傷にはならなかったのか」
「倍ショック‼」
心臓の辺りに右手を、首の方に左手を回して押さえながらうめく親父。正直キショい。
実の父親を生ゴミを見るような目線で冷ややかに弔ってやろうとしていると、
不意にポケットに入れていたスマホが振動してLINEの連絡がきたことを告げる。
それに気づいた俺は親父から目を放してスマホを手に取り、LINEを確認してみた。
するとそこには、自分の予想していた人物からの別れの連絡が送信されていた。
『よぉ
「ああ、らしいな。なのに何で誰も見送りに来てくれないんだろな?」
『それはアレだ、準備に時間がかかってんだよw』
「バカ言え、転校の事言ったの二週間前だぞ?」
『あー、それはまぁ…………ドンマイ?w』
「ドブで溺れて死にさらせドアホ」
人が友人達との別れを惜しんで荷造りをしていたというのにこの始末。
全く俺という人間はどうしてこうも他人に愛されない人生を歩んでいるのか。
などと自分勝手に嘆きながらおそらく最後になるであろうこっちの友人との連絡の
取り合いを、懐かしみながら楽しんでいた。
『ヒデェ奴ww そんで、お前転校先でも野球やるの?』
「あー、どうだろ。そん時の状況にもよる」
『せっかくの高校二年生だ、部活で燃えなきゃ損するぜ‼』
「それは彼女のいない非リアの口にする慰め合いの虚言だろ?」
『お前ホントにヒデェ奴だな。だからみんな見送り行かねえんだぜ?』
「だろうな、今自覚したわ」
『……………てかアレだ。向こうに行っても元気でやれよな』
「オイ待て、それテンプレのスタートのテンプレだろ」
『俺も時間取れたら連絡するよ、必ず‼』
「だからそれテンプレだっての! 絶対連絡してこない奴の‼」
『俺達ずっと、離れてても友達だからな‼』
「しかもここに来てまだ上塗りすんのかよ!」
『ま、とにかくだ。これからも元気でやってくれよ!
コッチからの連絡は減るかもしれんが、お前からの連絡は必ず返信すっから』
「急に素に戻るの止めろや、びっくりしたわ」
『悪い、今からミーティング始まるから。
そんじゃ暇になったら連絡しろよ。あ、あと彼女出来たら教えろよ‼』
「お前への次の連絡は来年の【あけおめ】までお預けだ」
『腐れ外道め、元気でやれよバーカ‼』
「お前こそ、怪我すんなよなバーカ!」
十数分の画面越しでのやり取り。でも今の俺にはそれで充分だった。
クラスの大半が興味の無かった俺の転校でも、コイツだけは心配してくれた。
冗談を言い合う仲だっただけに、やっぱり離れてしまうのはどうしても寂しい。
それでも親の都合だから仕方ないし、文句を言う権利は学生の俺には皆無だ。
だからこそ俺は住み慣れた今の暮らしを捨てて、新しい一歩を踏み出すべきだと思う。
高校生活一年目は部活やテスト、その他の行事や授業の単位の取得で大忙しだった。
でも今度から行く学校では、その辺のノウハウを活かしてもっと上手く立ち回りたい。
少なくとも今のように、誰からも相手にされない寂しい俺とは決別したいからな。
一抹の寂寥を胸にそっとしまいこみ、スマホをポケットに押し戻す。
そこでようやく画面以外に目を向けた俺は眼前で未だに苦しむ実父を見て嘆きたくなった。
「準備はいいか、遼太郎」
「ダイジョブだってば。荷物は郵送したし、後はリュックに入ってるから」
「そうか。でも、もしかしたら何か見落としが…………」
「ええい、やかましいぞ親父‼ 大人しく黙って座ってろ‼」
「ハイ……………」
俺の一喝を受けて亀のように首をすくめて縮こまっていく親父を見てため息をつく。
そんな俺を見て、前や後ろの席に座る赤の他人達が時折クスクスと笑っている。
その行動に腹が立って俺をイラつかせるが、やがて諦めて再びため息をつく。
今俺と親父がいるのは、新幹線の中だ。
一応指定席の切符を取ったというのにコレだ。そりゃ腹も立ってくる。
コレ、というのはもう言うまでもない。親父の落ち着きの無さ加減だ。
新幹線どころか駅に入る前から様々なちょっとした点に目がいって慌て始める。
俺はもう慣れたが親父のこの癖は(というかもはや病気の域だが)どうにもならない。
一度気になり始めるとソワソワして落ち着きが無くなって、最後には泣き出すこともある。
情けないことこの上ないが、これでも血は繋がっているんだから手に負えない。
だからこうして怒鳴りでもしないと親父は大人しくシートに座ってくれない。
「あー、なんかもう疲れた……………」
「大丈夫か遼太郎。 まだ新幹線は動いてもいないんだぞ?」
「だからこそだよ…………俺が心配なら黙って何もせずにじっとしててくれ」
「な、なんか釈然としない物言いだな。一応俺はお前の父さんなんだぞ?」
「認めたくない事実だな。一応俺は父さんと"母さん"の子供なんだぜ?」
「………………………………そうだな」
「…………悪い、口が滑った。もう寝るわ」
「あ、ああ。着いたら起こしてやるから、ゆっくり寝なさい」
「ん、そうさせてもらう…………」
親父の面倒を見ている、という上から目線の物言いからつい口が滑ってしまった。
俺の実の母親の事、つまり"母さん"の話題はなるべく互いに避けてきたはずなのに。
やっぱりストレスってのは怖いな。ふっと心にもない暴言を吐きだしちまう。
別に親父も迷惑をかけたくてかけてんじゃない、そんな事は考えなくても分かる。
だけどやっぱり、表面上の態度だけを見て思わずカッとなる事も無いわけじゃない。
今回の事はそれが肥大化しただけ、お互いもそれで決着を付けた。そこで切るべきだろう。
そのように自己完結させた俺はゆっくりと目をつぶって意識を薄れさせていく。
すると体はやはり正直で、一切の抵抗なく意識をまどろみの底へと引き込んでいった。
段々と周囲の物音が聞こえなくなってくる中で、最後に聞こえたのは駅のアナウンス。
もうすぐここからこの新幹線は出発し、俺の新しい土地での人生が産声を上げる。
そう思った俺が眠る直前に考えたのは、数時間前に連絡を取り合った親友の事だった。
(………じゃあな、
『__________ゴメンね…………ゴメンね遼太郎…………』
『__________何でもないのよ遼太郎、あっちに行ってなさい』
『__________遼太郎、この事はお父さんには内緒にしてちょうだい』
『__________何よその目は。遼太郎まで私を見下すの⁉』
『__________イヤ、嫌! 来ないで、来ないで来ないで来ないで‼』
『__________来るな‼ うるさい‼ 来るな来るな‼ 消えろぉ‼』
『__________ああぁぁぁあぁぁぁぁあぁ‼‼』
「______________ッ…………あー、クソ」
目が覚めた。というかコレは覚めちまったの方が正しいと思う。
無理やり強制的に覚醒させられた脳みそが少しずつ動き始める。
そのまま目を開いて周囲を確認し、未だ新幹線の中であることを認識させた。
「つーか、何で今更こんな夢見るんだよ…………あー、寝覚め悪過ぎだろ」
などと小さく投げやりな言葉を毒づいてみるも、誰からの反応も無い。
ん? 待て、誰からの反応も無いのはおかしくないか?
いくら新幹線で周囲の風圧から生まれる騒音が大きくても、ここはあくまで車内だ。
しかも俺の真横には親父がいるし、肩が当たる距離で呟きが聞こえないわけが無い。
努めて無視しているならともかく、親父の性格上それはほとんどありえない。
つまり、いや多分間違いなく、そういうことだろう。
「…………………ほらな、やっぱり」
寝起きの頭で考察して、それを証明するためにわずかに首を横に動かす。
そのまま四十五度ほど平行に移動した視界が捉えたのは、まさしく予想通りの光景。
「…………寝てやがる、このポンコツ。起こすっつったの誰だよ」
悪態をつくが仕方ない、だって今回ばかりは俺は悪くないんだし。
とは言ってみたものの、やっぱり親父も疲れてたんだろうしチャラにしてやろうかな。
そうして割り切った俺は出入り口の上にある小さな電光掲示板の時刻を眺める。
確か予定では俺らの到着時刻は16時47分だったはずだ。
そんで今は16時45分………………まさかのジャスト二分前行動、俺偉い。
「じゃねえよ馬鹿! オイ起きろ親父、もう着くから準備しろ‼」
「あ痛ぃ! 遼太郎、何も叩かなくっても………」
「贅沢な寝言ほざくな、殴らなかっただけ感謝してほしいぜ」
右手を固く握りしめて顔の前に突き出してやると、親父はすぐに目を覚ました。
慌てて上に乗せていた荷物を降ろして抱きかかえ、座席から立ち上がって進む。
やがて新幹線の速度が落ちて少ししてから停まり、排気音と共に扉が自動で開いた。
そのまま一歩踏み出してホームに降り立ち、車内で感じなかった風を肌で感じる。
わずかな解放感を感じたのもつかの間、俺達は荷物を持ってすぐに改札口を通過した。
そしてその足でタクシーを駅前で捕まえて、場所を指定して走らせたのだった。
「しかし、遼太郎が起きてくれて助かったよ」
「本当に俺も俺に助けられたぜ。親父が爆睡してたからな」
「あ、いや……………その、眠くなってつい」
「まぁ、人間だしな。それくらいは仕方ないさ」
「え? 遼太郎、怒ってないのか?」
「もう車内で怒ったろ。それとも、もしかして足りなかったか?」
「いやいや、もう充分だから」
タクシーの運転手に行き先を指定してから数分、俺と親父は特に取り留めの無い
普通の会話で時間を潰していた。正直、こっちの方が新幹線の時よりよっぽど良い。
そうして話し込んでいるうちに、窓から映り込む外の風景が少しずつ変わってきた。
駅を囲むようにして立ち並んでいたビル群がいつの間にか消え、今あるのは軒並み住宅。
奥の方を見やれば深緑に濃い緑を足したような色合いの森を内包した山々がそびえている。
ほんの少し窓を開けて外の空気を感じてみると、やはり息苦しさは感じられなかった。
それどころか逆に、野山の自然から湧き出た爽快感と人々の活気が生み出す熱が混ざり合って
心地良さすら感じる快適なそよ風として窓に顔を近づけていた俺の顔を撫でていった。
「どうだ遼太郎、気に入ってくれたか?」
夢中で窓の外を眺めていたら、話を中断されていた親父が嬉しそうに尋ねてきた。
どうも俺の反応からして、悪くはなさそうだと思っているのだろう。
俺も親父の方を向いて期待に応えるようにハッキリと答えた。
「ああ、中々にいい場所っぽい」
「そうだろう!」
「でもまだ表面上だけで判断すると、だからさ。内面をよく知らないと」
「…………そうだな。でも大丈夫、何せここはお父さんの生まれ故郷だからね」
「へー、そうなんだ_____________は? マジで?」
「大マジよ。ついでに言えば、この辺の女の子はみんな可愛い子だぞ?」
「………………やめろよ、変に期待すると後で悲しくなるんだから」
「いやいや!こればっかりはお父さん自信を持って言えるから!」
ふーん、と適当に相槌を打って流しておくことにしよう。
別に俺は女子に興味が無いんじゃない。むしろ好きだ、美少女なら特にな。
だけど、他人が『可愛い』ともてはやす相手に限って自分のタイプじゃなかったりする。
しかも今回は親父のイチオシときた。まず間違いなく外れるだろう。
そう思っていた自分を全身全霊を込めて殴りたい、そう思うのは三日後の事だった。
この新天地に俺と親父が辿り着いてからの二日間はお互い大忙しだった。
新居の構造の確認や電気代等の支払や契約、果ては周辺地理を覚える地味作業まで。
初日はクタクタに、二日目はボロボロになって帰って来た俺と親父はそのまま二人して
リビングの新調したソファの上で轟沈し、翌日の朝日を拝むこととなった。
「そう言えば、遼太郎は今日から学校だったよな?」
「ん? んー、まあそうだけど。今日は顔合わせ程度だけだよ」
「本格的な授業は明日からか、がんばれよ!」
「親父こそ、一週間後にまた転校は御免だぜ?」
「ぜ、善処します…………」
「……………そこはせめて否定してくれよ」
呆れてものが言えなくなるまでハートフルな朝の会話を交えた朝食を取り終えて、
食器洗いや洗濯物を乾燥機に放り込んで身支度を即座に整え、持ち物を確認する。
ちなみに親父は朝食後すぐに家を出て、今頃は会社で汗水流してるはずだ。
「えーと、指定カバンに入校志願書類に諸々の費用。
それと制服と筆記用具………………だいたいそんな感じでいいか」
何度も点検をして準備を終えた俺は、陽が傾き始めた頃に家を出た。
今日は放課後前の
そんな風に気楽に考えながら通学路を早歩きで歩き、二、三度道を間違えて辿り着いた。
田舎の方の土地かと思ったら案外都会チックな面もあって何度か驚いて声を出しかけた。
新しい土地での新たな発見にカルチャーショックを受けつつ、俺はついに校門をくぐった。
「これで俺も、ここの生徒ってわけか」
一週間くらい前まで通っていた高校とは比べ物にならない程に巨大で荘厳な校舎。
白塗りの壁がまるで心悪しきものを寄せ付けないスクリーンのように思えてくる。
それほどの威圧感を体全体で感じながら、校舎の中へと足を踏み入れていく。
いきなり俺が生徒用の昇降口に入っても意味は無い。だから来賓用の方へと進むと、
今までいた場所では見かけないような服装の美女が直立不動の構えで待っていた。
「あの、すみません。俺、今度ここに転入する事になった者なんですが」
「ああ、待っていたよ。仙羽 遼太郎君、だったか。ようこそ【幻想学園高校】へ!」
「よ、よろしくお願いします!」
「はは、そう硬くならなくていい。君は今日からこの学校の生徒なんだから」
「えっと、ハイ」
「さて、それじゃあ早速君が明日から通うクラスを案内しよう。
私の後について来てくれ。心配するな、皆君を歓迎してくれる」
「……………だといいすけど」
「不安か? まあ初めて会う人間ばかりだ、それも当然か。
ああ、そう言えばまだ名乗ってなかったな。私は【
「上白沢先生、ですか」
「そうだ、私は君の入る21HRのクラス担任だ。何かあったら気軽に話してくれ」
「あざっす」
「まだ君は硬いな、特に表情が。第一印象は人との信頼関係での基盤となってくる。
あんまり硬過ぎる表情でいても、相手から話しかけてきてはくれなくなるぞ?」
「そんな事言われても、しゃーないですよ」
「…………まあまだ初日だ。挨拶程度の認識でも構わないだろう。
お、見えてきた。ほら、あそこが君のクラスだ」
美人の女先生の後ろ姿をじっくり眺めていたらもう目的地に着いてしまった。
早い、早過ぎる。それほどまで距離が短いのか、それとも俺が集中し過ぎていたのか。
どちらにせよ、上白沢先生はかなり危険だ。色々とソッチの方向でマズい。
何より体型。女性からすれば嫌な話題だろうが、彼女は凄まじいグラマラスな体型で
凛として粛然とした歩調と姿勢で歩かれると、お尻の部分が強調されてかなり、エロイ。
おまけにもう一つの女性特有のふくらみを持つ部分もまぁそれなりの大きさがあるから、
一歩ごとに弾みまくって正直目の保養どころか、アレじゃあ完全に目の毒になる。
多分この学校の男子生徒は皆、彼女に惚れ込んでいるだろう。まず間違いない。
大人の女性でありながら自身の肉体を無防備にしている時点で危うさが半端じゃない。
先生、悪いが俺も男だ。こんな美女のセクシーウォークなんてもう拝めないかもしれん。
だからこそ今! この瞬間を目に焼き付けたい! アンタほどの美人はそうはいない‼
心の中での男としての自分を律する事が出来ないまま不埒に校舎を歩いていた俺は
目的地に到着した事を激しく後悔しながら、扉を開けて入った彼女の後に続いた。
「さて、君らには今朝話していたが、彼が明日から共に励みあうクラスメイトだ!
名前は【仙羽 遼太郎】だ、みんな仲良くしてやってくれ。
それと、彼はこの辺に移って来たばかりで周辺の地理も分からないだろう。
もし彼が困っていたら、クラスの仲間として助け合ってくれ‼ 私からは以上だ‼」
先生、それダメだって。先生が俺の言うこと全部代弁しちゃってますって。
などと内心で冷や汗をかいてももう遅い。既に先生はドヤ顔で悦に浸ってる。
多分『私今良いこと言ったな~。3年B組のあの先生のようだ!』とか思ってるだろう。
だが先生、違うんだよ。アンタが今俺に与えたのはヒモ無しバンジーの処刑場‼
一度でも口を開けばもう閉ざすことは許されない、永遠に落ちていくだけの落下地獄。
もはや地獄の悪鬼羅刹ですら崇拝するほどの鬼畜の所業、あんたは鬼か化け物か⁉
というか今更だが、何故か先生は二本角が似合う気がする。分からんけども。
残念ながら逃げ場は無い。あるのは先に待ち構えている無限の落下地獄のみ。
こうなったら覚悟を決めよう。なぁ遼太郎、お前さっきええもん見れたやん?
これがその対価なのだとすれば、支払わなければならない。否、支払おう‼
もうどうにでもなれ、落ちるとこまで落ちてやる。
半ば自暴自棄になった俺は息を吸い込んで下を向いていた顔を勢い良く上げた。
そして_________________息を飲んだ。
最前列の席に座っている黒髪ストレートの退屈そうな表情の美少女。
南の窓側の真ん中の席で俺を興味津々で見つめてくる金髪の美少女。
わんぱくそうな彼女の後ろの席で頬杖をつく金髪ショートの美少女。
北の廊下側の最後列の席で鋭く俺を睨んでる紫ウェーブ髪の美幼女。
中学生のような身長の彼女の真横の席に座る銀髪三つ編みの美少女。
ハッキリ言おう、天国だと。
言葉が出ない。出せない。出そうと思っても声帯が縮んで上手く発声出来ない。
教室内の約40人近い生徒たちの目線が俺めがけて突き刺さるが、どうしようも出来ない。
震えそうになる体を何とか押さえながら、俺はかすれかけた声で眼前の生徒達に告げた。
「仙羽 遼太郎です。こ、これからよろしく」
今ここに来て今更ながらに思ったことがある。
親父、アンタの言ってたことは間違ってなかったよ。
いかがだったでしょうか?
この作品の更新はまだ先になると思います。
ですが今日のように気分が乗ったり時間が取れた時には
投稿すると思うので、まあ長い目で見守ってください。
それではいつになるのか分かりませんが次回をお楽しみに!
それと、ご意見ご感想お待ちしてます。