ハイスクール ファンタジア ~幻想学園高校~   作:萃夢想天

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どうも皆様、前回の投稿から約一年ぶりの萃夢想天です。

いくら不定期投稿つっても限度があるやろ限度が…………と憤慨なさる
読者様方のお気持ちは重々承知しております!
昨年の十月以降から私事ではありますが、色々と面倒な問題や仕事が
増え始めてそちらに時間を取られていたのです。そのため、メインSSも
書く暇が無いほどに多忙を極めておりました。申し訳ございません。

まぁ年明け前にリハビリと称してオリジナルのSSを書いたんですが。

ソレは置いておき、前回までのあらすじぃ!
主人公が人生初の入院にドキワクしていると、新聞部の射命丸文が登場。
御見舞にやってきた十六夜咲夜と睨み合ってさぁ大変!(半分合ってる)
ということで今回は前回から数日経過したあたりから始まります。


それでは、どうぞ!





HR14「ゴールデンウィークの過ごし方」

 

 

 

 

 

振り返ってみれば、近頃の俺は実に波乱万丈かつ激動の人生を歩んでいたと思う。

暮らし慣れていた土地から父親の仕事やその他諸々の事情によって引っ越し、新天地に到着。

新たな高校生活に胸を高鳴らせていたら、大手企業のCEOである謎の美女と美女と美少女が

ニュー我が家にこぞって現れ、俺の父親と再婚して家族になりたいとか言い始めた。

いきなり家族関係が複雑化したと思ったら、転入した高校に通う女子生徒の美しい事美しい事。

半強制的に興味の欠片も無い天文学部に入部することになり、周囲には見目麗しい美少女だらけ。

これは俺の人生ハッピーウレピー大勝利ですわと浮かれていたら、高校最初のイベントである

校外活動(遠足)の班分けで貧乏くじが殴り込みをかけてきて、嫌な奴らと同じ班にさせられた。

さらにそれだけでは飽き足らず、独断で班から離れて何処かへ向かうチビ貴族とその従者を

班長だから仕方なく追いかけていったら、彼女たちが誘拐される現場を目撃してしまう。

転校初日で面識を持った友人の力を借り、彼女らが捕まっているであろう場所を特定し潜入。

従者の銀髪美女を解放して共同戦線を張り、見事に囚われ(自演)の貴族様の救出に成功する。

だがしかぁーし! ここでまさかのトラブルが発生し、俺は誘拐犯の一人から傷を負わされた。

運び込まれた病院で目を覚まし、傷が完治するまでの約一週間弱を白いベッドで過ごす羽目に。

 

 

「うん。やっぱわけが分からんわ」

 

事のあらましを最初の方から振り返ってみても、明らかに一般の男子高校生が歩んでいい道を

二車線以上跨いで間違えてる気がする。てか絶対間違えてる。ここはバトル漫画世界ちゃうぞ。

はぁ、と小さく溜息を吐きながら自分の腹部に視線を向ける。そこには取り換えられたばかりの

真っ白い包帯が、俺の体を守るようにキッチリと巻かれていた。案外几帳面に巻かれてるなぁ。

 

この包帯の下にはナイフによる刺し傷があったんだけど、ソレも今ではずいぶん小さくなった。

元々大した深さの傷でもなかったと聞いたし、仲良くなった男子生徒や数人の女子(魔理沙や

我が大天使メルラン)たちの見舞いによって、入院生活のストレスが減ったのも理由の一つだ。

 

そうそう、入院生活のストレスで思い出したんだけど。

 

今までインフルエンザやおたふくかぜなんかで診療されに来た程度で、入院するって事が人生で

一度もなかった俺は、自分の意志で体を動かせる事がどれだけ楽だったかを痛感させられたわ。

入院後の数日は、世間話で語る冗談やギャグに反応するだけで腹部に痛みが奔り、まともな会話が

出来なかったんだよね。食事だってすっげぇ食べ辛かったし、入院なんてするもんじゃねぇよ。

 

___________なんて思っていた時期が俺にもありました。

 

 

傷の痛み? 食事が困難? ああ、確かにそれは一大事ですわ。ストレス溜まりっぱなしですわ。

でもね、それだけじゃないんですよ入院生活は。動き辛いということは動かしてもらうってこと。

自力で出来る範囲が限られるなら他人の助力を乞えるということ。何が言いたいか分かったな?

 

そう! 正解は! 合法的にボディータッチを相手側からしてもらえるって事じゃあ‼

 

いや気付いた時は頭ン中に電流迸りましたわ、ズビビッ、って。そこに気付くとは天才やったわ。

清潔感溢れるナースさんが俺の腹やら腕やらを、痛みを感じさせないよう慎重かつ繊細な手つきで

撫でまわしてくれるという圧倒的幸福感ときたら。怪我人に対する配慮が実に心へ染み入ります。

「(包帯の)加減は大丈夫ですか?」だって? 大丈夫です最高です。あ、でももっと触って下さい。

 

という具合に、俺は俺なりに入院生活中の楽しみってもんを見つけたってわけです。

けどね? いや、ナースさんの清楚みったらスゴかったよ? 痛みぐらい余裕で我慢できたもの。

でもそれだけじゃなかったよ。俺が冒頭で振り返った意味がここにきて活きてくるわけなのよ。

 

俺がこの入院生活の中で見つけた、最良の癒しってのがまだ他にあったって事で。

 

 

「………………………あのぉ」

 

「どうかしたの?」

 

「い、いや、別にどうかしたってわけじゃなくてですね?」

 

「あら、そう。なら話しかけないで頂戴、今集中してるから」

 

「アッハイ」

 

 

今の今まで考えていた〝最良の癒し〟を受けていた俺は、耐え切れずに声をかけてしまった。

しかしその相手はこちらの声掛けをあまり意に介さず、むしろ集中の邪魔だと一蹴してしまう。

相手に〝最良の癒し〟を与えられている身であるため、それ以上は何も言えずに無言に立ち返る。

 

そうして互いに無言のまま、しばし時が流れ。

 

パチン、と小気味良い音を最後に俺の体から温もりが離れていき、向き直った少女が口を開いた。

 

 

「いいわ。爪切り終了よ」

 

「その、何と言うか、ホントすみません………」

 

「貴方から頼んでおいて何を誤っているのかしら」

 

 

至福のひと時が終わり、たった今俺の指の爪を切ってくれていた銀髪の美少女、十六夜 咲夜が

白いベッドから離れていくのを名残惜し気に見つめるも、気恥ずかしさから俺が目を伏せる。

散々連呼しておいて爪切りが〝最良の癒し〟かよ、とか思った諸君。君らは何も分かっていない!

 

自分で自分の爪を切るというのは簡単だ。自分の肉体を扱うのは感覚で行えるから問題は少ない。

ところが切る対象が自分以外となるとそうはいかない。他人の爪を切るのは意外と神経を使う。

神経を使うということは集中せざるを得ないということ。そして他者の指を傷つけてしまったり、

深爪で痛みを伴わせてしまわないように、手元と視点を爪に近づけねばならない。後は分かるね?

 

まぁ要するに、他人の爪を切る場合は、ある程度『体を密着』させねばならないということさ。

 

ハッキリ言わせてもらおう! 最高でした‼ めっちゃ柔らかくてイイ匂いした‼ 興奮した‼

手元が狂わないように俺の手をしっかりと押さえる指が、すべすべでたまらんかったっすわ‼

しかも「反対からだと見えにくい」って言うから、咲夜が体を乗り出していくのよ。そしたらさ、

自然と伸ばしてる俺の腕に彼女の体の、有るか無いか微妙だけど確かに有る盛り上がりが触れて

しまうわけじゃん!? しかもその感触が、彼女の手の動きと連動して微かに揺れるわけじゃん!?

 

はぁ~たまらんわ~こんなん無理やわ~股関の特等席の僕ちゃんスタンディングオベーションして

しまいますわ~、とか考えた矢先、身を乗り出し過ぎてスカート下の絶対領域が視界を直撃。

アッカンコレ鼻血不可避案件ですわと喜びに浸ったら浸ったで、爪の削りカスを咲夜が吐息で

飛ばしよるん。流石にイカンと思った俺。あの整った顔を近付けて『フゥ』は反則も反則やん。

 

視覚と触覚に壊滅寸前の大打撃を与えた当人は、俺の謝罪に心当たりが無いようで首を傾げる。

そりゃそうだよな。心当たりが有るわきゃねぇよ。やや小ぶりなお胸様と太もも様と吐息様の

感触を楽しんでしまってすみませんでした、なんて言えるわけがねぇわ。白状=死刑確実だしな。

 

「でも、貴方って本当におかしな人ね。自分の爪を切るのが苦手って」

 

「しょうがないだろ、事実なんだし。俺太腿の筋肉が固いから曲げ辛いんだよ」

 

「だったらストレッチや体をほぐす運動をしたらいいじゃない。少なくとも損はしないはずよ」

 

「いや、体は別に硬くないんだ。ただこの部分の筋収縮がどうにも、ってだけで」

 

「性格だけじゃなくて体も面倒な構造なのね」

 

「ほっとけ」

 

 

爪切りをティッシュで拭き、カスや切った爪をまとめてゴミ箱へ捨てた咲夜と和やかに談笑する

俺ではあるが、心の内ではさっきまでの温もりや柔らかさを思い出して世間話どころじゃない。

静まれ、静まるんだ特等席のマイトミー。偶発的な事故を己の欲望に還元するな!

思い出すんだ咲夜の笑顔を。こんな怪我をしてまで守りたかったあの微笑みを! あの輝きを!

優しさと凛々しさが奇跡的な同居を果たしたあの一瞬を! あ、駄目だ。それはそれでイイわ。

男としての悲しい性を結論として実感させられた俺は、この日も見舞いに来た咲夜に礼を言った。

彼女は件の事件以降、俺なんかの見舞いに来るようになってから色々と変わっていってるなと

体感している。最初にクラス内で見かけた時は、いけ好かない富裕層側の人間なんだと認識して

いたし、事実そう受け取られてもおかしくない言動ばかりを見せていた。まぁこれに関してはあの

チビ貴族様に仕える従者として、従うよう言われていたのかもしれないと今になって考えついた。

そして夢のような時間はあっという間に過ぎていき、魔理沙や卓村にメルラン、男子生徒や数人の

クラスの女子たちの見舞いなんかの対応をしていたら、気付けば退院予定日当日になっていた。

 

「退院おめでとうございます。気を付けてお帰りください」

 

「あ、どーも。ありがとうございました」

 

「本当にお世話になりました」

 

 

最後の検査でも特に問題が無いと判断され、付帯を取っても傷口に異常が見られないために

予定通りの退院となった。親父が看護婦に何度も頭を下げてはお礼の言葉を口早に並べ立てる。

オーバーだなとは思いつつも、何だかんだで親父には一番迷惑と心配をかけたと俺は反省してた。

 

俺の親父、陽介はすさまじい心配性だ。校外授業とは名ばかりの遠足であっても、その心配性が

緩和されることなどなく、やれ「ハンカチ持った?」「絆創膏は?」と過保護に尋ねてきたせいで

出発前の荷物整理を八回やらされた。まぁ、そのうえで怪我して病院送りなんて事になったんだ。

何言われても仕方ないと目覚めた当初にベッドの上で腹括ってたら、息切らして部屋に飛び込んで

きた親父に力いっぱい抱きしめられ、そして恥ずかしげもなく大声で泣かれてしまった。

あの時はこっちの方が恥ずかしかったけど、それだけ心配してもらえるのも、ある意味幸せかな。

 

さて、そんな短い入院生活も晴れて終了し、現在は久方ぶりの我が家へ向けて親父の車で移動中。

そうそう、俺が入院してる間に親父が車を買ったってのが本当に驚いた。ただでさえ我が家計は

なるべく浪費を抑えてやりくりする事で回っていたため、一度に一気に金を使う車の購入とかは

最初から考えてなかったわけだ。そのことについては、見舞いに来た親父から例の美女、紫さんの

助力が有ったと聞いたけれど、実際問題あの人がどこまで本気なのか未だに分からないんだよな。

大企業のトップが一介のサラリーマンに車を買う資金を出すって、まず有り得ないことだしさ。

 

まだ俺の中であの人の立ち位置を確立させられてないのも影響しているんだろうな、と言葉も無い

まま車の振動に揺られていると、同じく今まで黙っていた親父が急に声をかけてきた。

 

 

「……………………なぁ、遼太郎。少しいいかな」

 

「ん? 何だよいきなり」

 

「いや、えっと、何て言えばいいのか自分でも上手くまとまってないんだけど」

 

「は?」

 

 

声をかけてきた親父だが、どうにも様子がおかしい。様子というか、言動が妙に落ち着かない。

すると目の前の交差点の信号が赤に変わり、停車したことで今から口にしようとしている話題に

思考を割くことが出来るようになったからか、一度息を吐いて落ち着き、再び口を開いた。

 

 

「五月の初め、ゴールデンウィークは学校も休みになるだろ? その何日かの連休の時にな、

もし遼太郎に何の予定も無かったら一緒に来てほしい場所が有るんだけど、どうだ?」

 

「ゴールデンウィーク………? ああ、そっか。もう五月の頭になるのか」

 

 

入院生活ですっかり時期感が抜け落ちていた俺は、既に四月の入学シーズンが終わっていた事に

遅ればせながら気付く。そういや遠足は四月の終わりだったから、入院生活を足してちょうど

五月初旬になるわけだ。そう考えるとクラスに馴染む為の期間が大きく損なわれたように感じて

心細くなったけど、男子や数人の女子が見舞いに来てくれたわけだし、大損ではないのかも。

って、いかんいかん。今は俺のことじゃなくて親父の話だ。でも、どういう事なんだろうか。

 

「来てほしい場所って、何処なんだ? まさかあの紫さんって人の家じゃないよな?」

 

「え? あ、あぁ。紫さんは違うよ。あの人もこの時期は忙しくて自由に動けないようだし」

 

「まぁ現実的に考えればいつでも忙しいと思うけどね。なら、どこなんだよ」

 

「………………それは、いや、うん。まだ言えない」

 

「言えない?」

 

「とにかく、行くか行かないかで答えてくれ。遼太郎が行かなくても、父さんは独りで行く」

 

 

気になったことを一つずつ尋ねてはみたものの、俺が求めた答えは半分しか返ってこなかった。

紫さんのところではない、のか。現状を鑑みて最優良候補だと思ったのに当てが外れたぜ。

となるといよいよ分からない。親父は割とストレートなタイプだから、例えば連休を使っての

遊びを企画していたとしても、「どこか遊びに行こうか?」とか「釣りにでも行くか?」と

予め目的地やら目的を含めて提案してくる。けど今回はそうじゃない。何かがおかしい。

 

思案する俺はふと、車のバックミラーに視線が向いた。ただ少し視線を動かしただけで他意など

なかったのだが、そこに映り込んでいた親父の表情が偶然見えた。見えてしまった。

強張った様でありながらぶれない瞳。間違いなく、アレは真剣な表情であると知覚する。

この時点で娯楽目的や趣味勧誘などでないことがハッキリした。けれど何故か浮かない顔だ。

 

 

「一つ、聞いてもいいか?」

 

「ん? 何だい?」

 

 

何も分からない以上、本人に聞くしかない。そう考えた俺は、迷わず聞くことにした。

 

 

「その来てほしい場所とやらに俺を連れて行って、何かさせたいのか?」

 

「…………いや」

 

俺の問いかけに何か考え込むような間を置いてから、衰えを感じさせぬ力強い眼で俺を見る。

 

 

「遼太郎に何かしてほしいわけじゃないよ。ただ、独りで行くのが心細いだけさ」

 

「……………ふぅん」

 

 

聞きたかった答えではなかったが、それでも親父が何かを企んでいるわけじゃないことが

よく分かった。いやまぁ、そもそもこの御人好しが企てなんてできないのは知ってたけど。

しっかし、親父が独りで行くのを心細く感じる場所ってのは、逆に興味が湧いてきたな。

紫さん相手じゃないってことは別の上司? いや、だったら俺を連れていく意味無いよな?

俺を連れて行くと心細くなくなる場所って、何だ? アレ、割と本気で気になってきたぞ。

 

ここまで好奇心をくすぐられることもそうはあるまい。何よりリハビリに丁度良さそうだ。

 

 

「いいぜ。連休に親父と二人で旅行ってのも、久々だしな」

 

「ほ、本当か! あ~、良かった………」

 

俺からの返答に親父は、青信号で車を発進させながら安堵の溜息を漏らす。大袈裟だな。

でも実際、何処に行く気なんだろうか。娯楽目的でなく、上の立場の人に会いに行くでも

ないなら、他に親父が行きそうな場所となると、うーん分からん。俄然気になってきたわ。

ゴールデンウィークという連休そのものが学生をワクワクさせるものだが、俺個人としては

親父が俺をどこに連れて行くのかって部分に、かなり心くすぐられる。楽しみだな!

 

 

 

ただ、俺は知らなかった。

 

いや、知ってはいた。だが、深く考えていなかった。

 

 

この土地は親父が子供の頃に暮らしていた場所で。

 

 

親父は何故、この素晴らしい土地から引っ越したのかを。

 

 

 

俺はこの後に知る事の一切を、まだ知る由も無かった。

 

 





いかがだったでしょうか!


丸ごと一年経ってるじゃねぇか馬鹿野郎‼
と思っている読者の皆様、私自身私の投稿の鈍さにキレそうです。
一年丸々何をしてたんだお前は! 仕事とダイエットとゲームです!


さて、今後は更新に一年かけるようなふざけた事はしたくありませんんが、
私も今年どうなるか分かりませんので、どうかご了承下さいませ。
次回の更新も不定期になるとは思いますが、それでも早めに書くことを
約束させていただきます。

それでは不定期更新される次回を、お楽しみに!


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