ハイスクール ファンタジア ~幻想学園高校~   作:萃夢想天

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この作品の投稿はまだ先だと言ったな、あれは嘘だ。
とかいいつつもやっぱり不定期更新自体に偽りは無いわけでして。


ちなみにこの作品は苦手な主人公の一人称が主です。
一人称でストーリーを紡ぐのは本当に苦手なのです。
ですが学園モノを書く上では避けられないので頑張ります。


それでは、どうぞ!


HR2「紅い糸っていうか紫の意図?」

 

 

 

 

 

 

んん~~ぁあ~、ヤッベェ。

これはいけない、やっちまったやもしれん。

 

手汗が、手汗とか脇汗とかが一気にブワッて。

 

 

だってしゃーないじゃん、教室入っていきなり自己紹介とか無理だって。

しかも自分についての事を大抵上白沢先生に持ってかれた上でだぜ?

そんなん無理でしかねぇーって。初めから詰んでるんだってば。

 

なんて泣き言ほざいても今更どうしようもない。

自己紹介しろってんならするしかないし、しなきゃならない。

でもさぁ、状況が状況よ。

四十人近い人間の視線を一手に受けながらほぼ出し尽くされた自分の事を

堂々と胸張ってしゃべれとか、無理難題甚だしいわ。

「…………それだけか仙波、もっと何かないのか?」

 

 

そんな風に思ってたらこの状況を作り出した犯人がさらにハードル上げてきた。

正気を疑うぜ上白沢センセ、アンタ本当に鬼か悪魔の化身なんじゃねぇの?

俺は今までアンタみたいな美人を見たことは無かったが、初対面にも関わらず

美しい女性の裏側ってやつを垣間見てる気がするぜ。

しかし先生に言われて現実を直視する。

確かに俺は先生に絞り尽くされたとはいえ、まだ話せる話題はあるにはあるんだ。

趣味とか、得意科目とか。おお、なんだ俺って案外冴えてるんじゃんか。

さてと、そんじゃ今から俺の御株を取り戻すとしますかね。

 

 

「せんせー! アタシから質問してもいいかー⁉」

 

とか思ったそばからこれかよ‼

誰だ、俺の決意に水どころか凶器で止めを刺したのは⁉

すこぶる腹立たしい横槍をぶっ込んできた相手を目線だけを動かして探すと、

夕日が差し込む南の窓側ど真ん中の席に座ってた女の子が手を挙げているのが見えた。

遠目から見ても分かるサラッサラの金髪に、顔の左側にかかる三つ編みのワンポイント。

活発で好奇心旺盛な子猫のようにクリクリした丸目、星の輝きを宿したようなきれいな瞳。

俺の邪魔をしたのは教室に入ってすぐに目に留まった美少女の中の一人だった。

相手の姿を目視した瞬間に俺の中に渦巻いていた怒りの感情が急速に霧散していった。

ふざけんなよ俺の怒り、もうちょっと粘ってくれよカッコ悪いじゃんか!

 

「ああ、いいぞ魔理沙。質問を許可する」

 

 

そして上白沢先生! アンタもあっさり許可すんな‼

 

 

「サンキューせんせー! んじゃ転校生、お前星に興味無いか?」

 

 

先生から許可を得た女の子が男みたいな口調で質問してきた。

星…………つまり星座とか天体とか、そういう事だよな。

本音を言うとあんまり興味は無いし詳しくも無いけど、第一印象は大事だからな。

ひとまず否定は仕切らずにある程度ぼかした言い方でしのごう。

 

 

「んー、星座くらいなら知ってるけど」

 

「そっか、んじゃ明日からアタシら『天文部』に来い、な!」

 

「天文部? 部活か?」

 

「そーそー! 明日の五限目終わったら部室集合な‼」

 

あらヤダあの子、すっごい強引。

ってかアレは強引って言うか、『強引愚(ゴーイング)我流儀(マイウェイ)』だよな。

なんて感心してる場合か、今はそれよか返事が先だ。

 

「い、いや気持ちはうれしいが、いきなりはちょっと」

 

「んだよノリ悪いなー、いいじゃんか。楽しいぜー天文部」

 

「か、考えとくわ……………」

 

 

おうっ、っと男としか思えん返事で満足げな表情してる美少女。

彼女と俺のやり取りを見聞きしていたクラスの皆は声をあげて笑っている。

笑い者にされるのは御免だが、こういうクラスの雰囲気をよくするものなら文句は無い。

そんな事を思いながらクラス中に視線を泳がせていると、数人は反応が違っていた。

 

まずは一番手前に席に座ったまま退屈そうな表情を絶やさない黒髪の美少女。

彼女は俺が教室に入った時からずっと眉一つ動かさずにいる。

俺に興味が無いのか、あるいは他に大事な考え事でもしてるのか。

次に北の廊下側の最後列に座っている、どう見ても中学生の女の子。

身長、座高共に完璧に高校生じゃありえない小ささだが、視線だけは鋭く冷たい。

黒髪の子とはまた違った意味で一線を画して違うタイプらしい。

 

そしてその隣に座っている銀髪で三つ編みのこれまた美少女。

口を閉ざして正面を見据えている彼女は、瞬きしないと生きた人間か人形かすら

判別出来ないほどに端正な顔立ちで、まなざしは隣の少女並に尖り凍てついている。

「…………………」

 

 

んでもって最後に辿り着いたのが、さっきの男気美少女の後ろの席。

そこにいたのは銀髪の子と同じように端正な顔つき、だっただろう元美少女。

何故過去形なのかといえば、今の彼女は俺の方を向いて般若の形相を呈しているからだ。

始めは何かの間違いだと思ってたが、彼女の視線は完全に俺個人をマークしてる。

美少女に見られるなら大歓迎だが、美少女が変じた鬼に睨まれる覚えも性癖も無い。

 

 

「さて、他の皆も新しいクラスメイトにどんどん質問していいからな‼」

 

 

そんで上白沢先生、アンタに俺への質問権を譲渡した覚えも無いんだよ‼

心中でどれほど怒ろうと相手には伝わらないこの気持ち、あぁもどかしい憤怒。

先生の一言で火が付いたのか緊張がほぐれたのか、質問が一挙して押し寄せる。

怒涛の荒波に対して俺は立場上仕方なく律義に聞き、答え、そして覚えた。

最初に教室に入ってから既に十五分が経とうとした頃にようやく俺は解放された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄の責め苦から解放された俺はその後、学校の事務室に必要な書類を提出。

担当の先生やらと確認事項を色々聞かされて、ようやくの下校となった。

校舎にはまだ部活動で多くの生徒が残っていて騒がしい声が聞こえてくるけど、

正直今の俺はもう完全にKO寸前のボクサー並にボロ雑巾と化していて見学になんて

とてもじゃないが行けはしない。

そんな訳でさっさと校門をくぐって校舎とグッバイした俺はそのまま帰路につく。

 

行きでは散々苦労した道のりも、二度目で帰りとなればさほどの問題は無い。

………………曲がり角を二回ほど間違えたのは内緒だ。

予定していたよりもほんの少し、本当に少しだけ遅れて新たな自宅に帰ってきて

特に何の警戒もしないままに玄関の扉を開いた。

 

 

「たっだいまーっと…………………ん?」

 

 

たった三日だが既に愛着がわき始めた自宅の玄関で真っ先に違和感を感じ、

扉を片手で押さえたまま俺は顔ごと目線を下におろして違和感の正体を見つけた。

 

 

「靴がこんなに…………しかも、男物じゃねぇな⁉」

 

 

それは、玄関にそろえて置かれた四対八足の靴。

そのうち一つは小汚く年季が入っているからすぐに親父のものだと分かった。

けど問題は残った三つの方、こっちはまるで見覚えが無い。

一番最初に頭に浮かんだのは泥棒だったが、こんな綺麗な靴を履く奴が泥棒なんてしない。

だったらまず考えられるのは、多分親父へのお客さんか何かだろう。

 

「あら? 随分早かったじゃない、お帰り」

 

「ッ⁉」

 

 

そんな事を考えていたら、リビングに続く廊下から声が聞こえてきた。

ただ問題なのはその声の主、現れたのが女性であるのが問題だった。

しかもただの女性じゃなく、言葉が出なくなるほどに見目麗しい女性。

目が勝手に見開かれ、口が開き、身体中から水分がみるみるうちに抜け出ていくような

感覚に見舞われるが、そんな状態の俺を謎の女性は微笑んだまま見つめるだけ。

 

「……………………………」

 

「うふふ、そういう反応は珍しくないわ」

 

ゆっくりといつの間にか動くことすらできなくなってる俺に歩み寄ってくる女性は

そのまま動けない俺の頬に右手を伸ばし、壊れ物を扱うように優しく撫で始める。

自宅に帰って五秒で謎の美女にもてあそばれるとか、どんなけしからん小説だよ⁉

「おかえりなさい遼太郎、もう陽介(ようすけ)さんなら帰ってるわよ」

 

「……………なんでアンタが俺や親父の名前を知ってんだ」

 

「知りたいなら早く上がってらっしゃい。あ、手洗いうがいもしっかりね?」

 

「…………………………………」

 

 

陽介、俺の親父どころか俺の名前まで語った謎の美女は衛生面まで忠告してから

リビングの方へと帰っていった。

訳も分からないこの状況で俺が思ったのは、たった一つ。

 

 

「……………母さんみたいなセリフ言ってんじゃねぇよ」

 

 

見知らぬ女性の明らかに異常な馴れ馴れしさに対する、愚痴だった。

その後言われるがままに自宅に上がって手洗いとうがいを済ませた俺は

リビングの扉を開けて、その先で俺を待っていた光景に驚く。

 

 

「お、おかえり遼太郎」

 

「お帰りなさい遼太郎。さぁ、そこに座って」

 

「………………………」

 

「おかえりなさいませ!」

 

 

昨日の夜から今朝にかけてお世話になったリビングのソファに腰掛ける四人。

そのうち二人は見覚えがある、一人は俺の親父で、もう一人はさっきの謎の美人。

さらにその美人の隣には俺を鋭い視線で射抜いている怖そうな美人が座っていて、

彼女のさらに隣には、小学生くらいの見た目の美少女が楽しそうに足をばたつかせていた。

 

まったくもって現状が理解できない。つーか親父は何であんな美人に囲まれてんだ。

 

「どうしたの遼太郎、今からの話は長いから座ったほうがいいわよ?」

 

「………………そもそも、アンタは一体誰なんだよ」

「あらあら、私ったら。遼太郎に会うのが楽しみで自分の事を何一つ言ってなかったわ。

ごめんなさいね、でも今から言えば間に合うかしら?」

 

「………………で、誰なんすか?」

 

「そうね、改めて自己紹介させてもらうわ。

私の名前は『八雲 (ゆかり)』、あなたの通う【幻想学園高校】の理事長であり、

あなたのお父さんの陽介さんの勤め先の大取、ようは一番大きな会社のCEOでもあるの」

 

「理事長……………」

 

「そうよ。それでこっちが私の娘の『八雲 (らん)』、私の助手みたいなものね」

 

「八雲 藍です。お見知りおきを」

 

「ど、どうも」

 

「最後にその子が藍の養子の『(チェン)』よ。橙、ご挨拶なさい」

 

「はじめまして!」

 

「あ、うん。初めまして」

 

 

唐突に始まった自己紹介タイムにも驚いたが、何より驚いたのが彼女たちの事。

俺の頬を撫でた美女は俺の通う高校の理事長で、その上親父の会社を傘下に持つ大企業の長。

いくら何でも出来過ぎじゃないかと疑うほどの経歴に口が開いて戻らねぇが致し方無し。

視線が流れ流れて行きついたのは親父、けど苦笑いしてるってことは嘘じゃなさそうだ。

 

「そんでその、理事長先生が何で俺の家に?」

 

「うふふっ、固くならなくってもいいのに。私はただ挨拶に来ただけよ」

 

「挨拶っすか」

 

「そうよ。まぁそっちはあくまで名目上ね、本命は君と陽介さんに会うことだけれど」

 

「俺と、親父に?」

 

嘘と本音を同居させたような物言いに、ますます不信感を募らせる。

だってよ、考えてみようぜ現状を。

突然現れた美女二人と美少女一人が、俺と親父に会いに来た?

違和感しかない。むしろ怪しい何かに巻き込まれそうな気さえしてくる。

でも親父の事が何より心配だし、もしも本当に親父の会社を傘下に入れてる大企業の長なら

下手に逆らったらまずいことになる。こんな時ってどうすればいいんだよ。

 

 

「ええ、ずっと会いたかったの。ね、陽介さん?」

 

「へっ⁉ え、その、えっと………………そうですね?」

 

「随分と警戒されてるみたいっすけど?」

 

「あら、酷いわ陽介さん。私たち幼馴染なのに(・・・・・・)!」

 

「は⁉」

 

次から次によくもまぁこんな簡単に衝撃の事実が飛び出てくるもんだ。

なんて感心してる場合じゃねぇ、紫さん、だっけか。

あの人の言ってる言葉の真意を親父に聞かないといけない。

 

 

「どういう事だ親父、この人の知り合いなのか?」

 

「いや、あの、だから……………一応」

 

「なんだ一応って」

 

「そうよ陽介さん、一応って酷いわ。

私、あなたのことが子供のころから好きなのよ?」

 

「い、いや、そんなこと言われても………………」

 

「あなたが好きで中学も高校も同じ学校に入学したのに。

なのにあなたは高校を卒業したらここから出ていくんだもの、

やっと再会した私に対して、一応幼馴染って酷いわ」

 

「え、いや、そんな、遼太郎……………」

 

「いや知らねぇよ」

 

親父からのヘルプミーコールを没シュート、当然だろ。

というか本当に親父がこの土地出身だったらしくて驚いた。

だとしたら紫さんの言ってることもあながち間違ってないやもしれん。

にしても、親父が好きだからって、この人はどこまでが本気なのか分からん。

 

 

「紫様、ご冗談もほどほどに」

 

「あら藍、私は冗談を言った覚えは無いわよ。

今話した事はすべて本当、そしてこれから話すこともね」

 

「………………本気なのですか?」

 

「当然よ。何のためにここまで来たと思ってるの」

 

 

俺が親父の言葉に辛辣な返答をしている最中に紫さんと藍さんが会話していた。

先ほどまでの余裕の顔つきはどこにもなく、まさに大人の顔になった紫さんが

藍さんからの問いかけに対して毅然として言い放った。

 

 

「さて、雰囲気を和ませる楽しいお話はここまでよ。

遼太郎、それと陽介さん。ここからが本題なの」

 

改まった口調の紫さんにつられて、俺も親父も固まる。

俺たちの聞く準備が整えさせた紫さんが、一呼吸おいてから口を開く。

 

 

「陽介さん、遼太郎君を私の養子にしたいの」

 

「はぁ⁉」

 

「え、えっと、その、何故遼太郎を?」

 

紫さんの言葉に動揺しちまった俺の横で、俺より小さいながらも動揺している親父が

彼女に先ほどの言葉の意味を問う。

親父からの質問に、まるで待っていたとでも言いたげな表情で彼女が答える。

 

 

「決まってるじゃない、私が今でも好きなあなたの息子だからよ」

 

「……………いくら何でもそんな理由では」

 

「本気よ陽介さん。私はいつだって本気なの、今も昔もね。

だから私は欲しいの、私の好きなあなたの息子の遼太郎が」

 

「ほ、欲しいと言われても…………」

 

「もちろん快諾してくれるとは思ってないわ。

それじゃあ、遼太郎をもらうんじゃなく、私をもらってくれないかしら?」

 

「え⁉」

 

「私をあなたの妻にしてほしい。遼太郎を養子に出来ないなら、

私があなたの横に立って家族になればいい。名案だと思わない?」

 

「え、えっと………………」

 

「あの、いいすか?」

 

「あら、どうしたの遼太郎」

 

 

動揺から立ち直ってからしばらく話を聞いてたが、さすがに口を挟ませてもらう。

親父も親父で紫さんの言葉に惑わされてだいぶ参ってるようだし、

選手交代といきますか。

 

 

「悪いんすけど、どっちも無しってダメすかね」

 

「………………どうしてかしら?」

「俺は、親父と母さんの間に生まれたことを、なんと言うかその、

誇りってほどじゃないにしろ、良かったと思ってます。

だからこの家系から外れるのは何か、いけないような気がして」

 

「……………………」

 

「それに、紫さんが俺の親父の妻になるって、再婚ですよね?

あなたが親父についていろいろ知ってるみたいすけど、それだけはご遠慮願います」

 

「…………どうして?」

 

「俺の個人的な勝手なんですけど、親父の隣は今でも母さんの場所だと思うんです。

だから、この話は一応こっちでも考えるんで今日は勘弁してもらえませんかね?」

 

「遼太郎……………」

 

「…………………………」

 

 

言葉の最後に頭を下げて、こちらの誠意を見せる。

無論、大人相手に俺みたいな高校坊主の誠意なんてたかが知れてるだろうけど、

それでもやらんよかマシなはずだ。

ほんの少しの沈黙の末、紫さんがソファから立ち上がった。

 

「分かったわ、この話はまたお互い時間のある時にしましょう。

藍、橙、行くわよ」

 

「ハイ」

 

「わかりました!」

 

「では陽介さん、遼太郎。お邪魔いたしましたわ」

 

 

紫さんの言葉に連れ立って立ち上がった横の二人を連れて、彼女ら三人は部屋を出る。

見送りにでも行こうかと思ったが、親父が真剣な顔で俺を見つめてきたからやめておいた。

出過ぎた真似だったと謝ろうと思ったが、先に謝ってきたのは親父の方だった。

 

 

「すまん遼太郎!」

 

「は?」

 

「いきなりの事で驚いたろうが、この事はちゃんと話すから!」

「あったりまえだ、あの人らの事キチンと話してもらうからな」

 

 

時刻は午後の17時を大きく回った頃。

夕日が窓から差し込むこのリビングで、親父の重く閉ざされた口が開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





いかがだったでしょうか?
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それではまた不定期に更新される日をお楽しみに‼
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