ハイスクール ファンタジア ~幻想学園高校~   作:萃夢想天

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どうも、自分の不甲斐無さを再確認させられたばかりで少々
やるせなさと夏特有のけだるさが体内で共存している萃夢想天です。

最近久々に見た「ケロロ軍曹」というアニメに再ハマりしまして。
私が子供の頃にアナログ放映していたはずのあの作品、大人になった今
見返してもなお色あせるどころかより鮮明になったギャグの数々…………。
知っている人はぜひ再び見返し、知らぬ人はぜひ一度見るべきであります!
(ガルル小隊が見たくて一話から見直してただなんて死んでも言えない)


それでは、どうぞ!





HR4 「転校初日でリミットブレイク?」

 

 

 

 

 

元の家から親父の故郷であるこの土地に引っ越して早くも四日目、

そして新しく入校した幻想学園高校21HR、つまり2年1組での最初の一日となったこの日。

俺の人生は今日この日から、大きく変わり始めたと言っても過言じゃないと思える。

 

朝に家を出て覚えたて通いたての通学路を時間に間に合うように歩いていたところ、

同じクラスにいた金髪の片三つ編み美少女の【霧雨 魔理沙】と偶然にも鉢合わせて学校まで

一緒に登校した。前の学校に通ってた頃の俺ならまずありえないシチュエーションだが、

ここまではいい。ここまではまだ転入生だからありえなくもない。問題は次だった。

まだ完璧に把握したわけじゃない校内を魔理沙と共に歩いて自分のクラスに辿り着き、

そこでようやく気付いた最初の難関にぶち当たって絶望しかけていたその時だった。

「あ、おーい! 転校生くーん、ここよー!」

 

 

教室の入り口で一人、自分の座る席が分からずにあたふたしていた俺に教室内の机の

真ん中の列の後ろから三番目、つまりは中央列の中央に位置する座席にいた女子生徒が

俺を見つけて手を振りながら自分の座る席の横にある机を指さして教えてくれたのだ。

おそらくあの子がいなけりゃ俺は自分から教室に入ることも出来ずにただ廊下で無意味に

時を過ごし、朝のSHRにやって来る上白沢先生が来てようやく教室内に入っていただろう。

それほどまでに俺は他人とのコミュニケーションを取るのが下手だし、何よりテンパリストだ。

不甲斐無い自分を再認識しながらも教室内に入って、その女の子の案内に従って席に座る。

持っていた学校指定カバンを机の上に無造作に置いてから後ろを向いて、女の子の方を向く。

 

そして、目を見開いた。

 

透明の水にたった一滴だけ青の絵の具を混ぜたかに見えるクセの強いウェーブ状の短髪(セミロング)に、

まるで柔らかな個体に姿を変えた粉雪のように白い肌、その中に映える紫水晶(アメジスト)色に輝く瞳。

のどかな春の日和の中でも冬の残滓に思える印象を抱かせる彼女もまた、相当の美少女だった。

先程のお礼を述べようと口を動かそうとするも上手くいかず目だけが釘づけになり、

元々小数点以下に等しいコミュニケーション力が完全に発揮されることなく言葉を紡いだ。

 

 

「えっと、ありがとな?」

 

 

もっと何か気の利いたセリフはねぇのかよ俺は‼

 

 

「いえいえ、どういたしまして。私は虹川 メルラン、よろしくね」

 

 

何この子、天使なの? 女神の遣いなの?

と、とにかくこれは間違いなくチャンスだ。この機会を活かさない手は無い。

先程の案内のお礼という名目と転入生という立場を最大限に利用したうえで発言すれば、

ここからまた踏み込んだ会話に発展させることが出来るはずだ、出来るはずだよ!

 

 

「おお、よろしくな」

 

俺ってヤツぁよぉ‼

 

前に暮らしてた地域じゃ滅多に拝めなかった美少女だからって、それは無いだろ‼

よろしくねって言われて、よろしくな、で済ませるか普通‼ 済まされるか普通⁉

駄目だ、明らかに美少女を前に気が動転している。まずは冷静にならねば。

田舎に住んでる爺ちゃんにしごかれた少年時代を思い出せ、苦い思い出を掘り起こせ。

 

「……………よし、よし」

 

 

辛い幼き日々の記憶を無理やり思い起こしたおかげで大分冷静になれたぜ。

しかし懐かしいなぁホント。素手で巻き割りやれとか無茶だぜ爺さんやい。

 

「何がよしなの?」

 

「ぁんッ⁉」

 

 

聞かれてた‼ てか声に出てたの⁉

「あ、ご、ゴメンね? 何か聞こえた気がしたから」

 

「い、いや。何でもないんだ、気にしないでくれると助かる」

 

「そう? それならいいんだけど」

 

「おう、助かる」

 

 

自分の中で呟いてたはずがガチで声に出てたとは思ってもみなかったぜ。

しかし向こうから謝ってくれて助かった。いや言葉にするとクズ野郎みたいだが。

それにしても、どこからどう見てもこの虹川って女子は美少女極まりないな。

昨日の自己紹介しに来た時にもチラッと見かけたが、魔理沙といいこの子といい

一クラス内の美少女比率が異様に高くないか? しかも担任の上白沢先生は美人だし。

 

ん? そういえばさっき、この子自分の名前……………。

 

 

「な、なぁ虹川、さん?」

 

「えっ? どうしたの、名字で呼んだりして。名前でいいよ」

 

「そう? ならその名前だけどさ、メルランって日本人っぽくないけど」

 

「あ、ああ。そうだよ、私は元々日本じゃなくってイギリス生まれなの」

 

「はー、やっぱしそうだったのか。とすると、ハーフなのか?」

 

 

俺はさっきの虹川、もといメルランの自己紹介で名乗った名前の違和感が

気になってつい口走ってしまった。転校初日でここは踏み入りすぎじゃないか?

と思ったものの向こうはそこまで深く考えていなかったらしくすいすいと俺からの

質問や問いかけに答えてくれた。ほら、男子高校生って妙に女子への態度が堅苦しくなる時

あったりするじゃない? アレだよアレ、あんな感じなんだよ今の俺は。

 

そんで俺の次の疑問に対して、メルランは困った顔をしながら答えてくれた。

 

 

「うーん、やっぱり初めて知り合う人はみんなそう思っちゃうんだよね~」

 

「思っちゃうってことは、違うのか?」

 

「うん、私は生粋のイギリス人だよ。名字だけが日本風になってるのは私の姉さんが

日本で暮らすならその土地チックな感じの名前の方が親しまれやすいとかって言って」

 

「お姉さんがねぇ。そのお姉さんは、今もイギリスなのか?」

 

「ううん、一緒に暮らしてるし、一緒に学校も通ってるよ!

私たちは学年が違うけど一緒の学校に通ってるの! 三姉妹そろってね!」

 

「へ~そうなの…………三姉妹?」

 

 

流れに乗ってメルランの言葉を聞いていたら、何やら素敵ワードが飛び出してきたな。

三姉妹だと? それはつまり、シスターがスリーピープルもいるってことですかい?

 

いやどう考えてもそういう事だろうな。それ以外に三姉妹の意味なんざあるわけないし。

 

 

「そうだよ! 私メルランと3年のルナサ姉さん、それに妹で1年のリリカの三人」

 

「ほ~、ルナサにリリカねぇ。随分と可愛らしいお名前だこと」

 

「でしょでしょ! ん? でも待って、私は?」

 

「そりゃもちろん言うまでもなく、メルランも可愛い名前だよ」

 

「か、可愛い? そうかな……………ホントにそうかな⁉」

 

「おう、少なくとも俺みたいな名前とは大違いだ」

「男の子の名前と比べないでよ~!」

 

 

真横に並べられてる席の都合上二人の距離は元々そこまで離れていたわけじゃなかったが、

今の会話で少しずつ距離が縮まっていった上に最後の部分でメルランが外見に見合った

可愛らしさで腕を軽くポカポカと振り当ててきた。なんつーかこう、今俺って幸せだよ。

でも案外俺も捨てたもんじゃないな、女子と初日からこうも上手くしゃべれるとは。

しかも魔理沙もメルランも凄くフレンドリーな感じで接してきてくれるから俺としても

凄く接しやすくて助かる。本当に俺はこの学校に来て良かったとつくづく思うぜ親父。

 

そんな感じで軽く五分ほどメルランと会話をしていると、不意に廊下が騒がしくなってきた。

ガヤガヤと沸き立つ廊下の生徒達の様子が気になって見に行ってみようかと席を立った瞬間、

メルランが俺の腕を掴んで椅子に無理やり座らせようと勢い良く引っ張ってきた。

俺は彼女の目論見通りに椅子に強制着席させられて尻を若干痛めたのだが、女子に腕を掴まれ

引っ張ってもらうなんて至福を味わった今の俺にとっては痛みなど割とどうでもよくなっていた。

むしろ俺が気になったのは、何故メルランがそんなことをしたのかだ。

訳を聞こうとメルランの方を向いた途端、彼女の方から俺に訳を話してくれた。

 

「今はソッチに行っちゃダメ。あとちょっとだから大人しく座ってて、ね?」

 

「あ、ああ」

 

 

訳を話してくれたというか、腕を引っ張った理由もロクに聞けぬまま座らされて数秒経ち、

もう一度理由を尋ねようとしたその時、教室の後ろの方のドアが開かれ、誰かが入ってきた。

 

教室に入って来たのは、自己紹介の時にも一際眼を惹かれた美幼女だった。

外見的にはそれこそ女子高生の制服を着ているものの身長面で見てしまえば中学生レベル、

最悪の場合は少し背の高めの小学生に思えてしまうほどの幼女が教室内に入って来たのだ。

でも彼女が教室に入って来るのに、なんでそっちに行くなってメルランが言ったんだ?

 

 

「ま、待ってくださいぃ!」

 

 

とか一人で思っていたところに、何やら必死そうな声が届いてきた。

声のする方向を教室内の誰もが見つめてみると、そこにはその声の主がいた。

いたんだが、その、なんというか、かなり割と凄く残念(客観的分析)な見た目だった。

 

でっぷりと丸まった頬肉に膨らんだ顔の輪郭、そして脂ぎった顔の中央に陣取るメガネ。

首から下は手足の生えたボールに見紛うほどに盛り上がった腹部にパツパツの男子制服。

あえて言おう、単なるデブであると‼

 

 

「お願いですから待ってくださいぃ!」

 

 

廊下にブヨブヨした頬を擦り付けるようにしながら言葉を話すその男子生徒らしき人物は

しきりに今しがた教室内に入ってきた美幼女の方を向いて待ってくれと頼み込んでいる。

その言葉に対して美幼女の方は特に意識を向けるでもなく淡々と自分の席へと歩いていき、

目的の場所に着いたと思ったらその場で立ち止まってようやく振り向いて口を開いた。

 

 

「早くその目障りなゴミをどかして従事なさい、咲夜」

 

「ハイ、お嬢様」

 

「ブヒィ!」

 

 

美幼女が振り向いた先にいたのは先程のデブ男(仮名)だけではなく、

昨日も見た銀髪三つ編みの美少女がいつの間にかその後ろにやって来ていた。

デブ男が文字通りの豚のような悲鳴を上げたと思ったら、咲夜と呼ばれた美少女は足元に

這いつくばっているデブ男を踏み抜いて教室に入り、美幼女の元へと歩いていった。

そしてさながら主君に使える執事の如く美幼女の座る椅子を音を立てずに後ろへと引いて

座れるスペースを開け、そこの美幼女が座った後で自身も自分の席へと座った。

 

……………なるほどね、行っちゃダメってのはこういう意味かい。

 

しかし、お嬢様とかいう呼び方に加えて今の大層な入室、間違いない。

 

「アレがブルジョワか…………⁉」

 

「合ってるけど盛大に誤解してると思うよ?」

 

転校初日に隣の席の女の子にツッコミをいただけるとは、俺ってツイてるぅ!

 

じゃなくてさ、冷静に今起こった出来事を考えてみようぜ。

まず初めに、あのデブ男がそこで座ってるお嬢様とかいうのに声をかけてた。

その次に、咲夜って呼ばれてたあのクールビューティー美少女に踏み抜かれてデブ男は

廊下に沈んだまま一歩も動けずにダウンし、当のご本人たちはどこ吹く風。

 

「うん、スッゴイ嫌な奴だってことは分かった」

 

 

朝から美少女といい感じになれていたというのに、一歩先ではこの有り様だ。

魔理沙やメルランのような素敵美少女がいる傍ら、あんなおっかないのがクラス内で

幅を利かせてやがるのか。なんかスゲー両極端な場所なんだな、ここって。

 

とにかくまずは、あのデブ男をどうにかしてやるか。

さっきから誰もあのデブ男を助けようともしないし、近付こうともしない。

 

 

「オイ、大丈夫か? つーか立てるか?」

 

 

多分こんないい雰囲気の学校でも、いじめってヤツは裏で横行してるんだろう。

それもあんな場違い感丸出しのブルジョワがいればなおさらな事なのかもしれん。

教室の後ろへと歩いて倒れたままのデブ男に近付いて助け起こそうと手を回した、が。

 

 

「クッソ、重ッ…………‼」

 

 

やはり見た目通りだったぜこのデブ男め、期待を裏切らなかったのは褒めてやる。

でも現状では良い意味で裏切ってほしかった。外見とは裏腹に超身軽だったりとか。

しかし現実とはげに悲しきものなり、俺以外は誰も助けようとする動きすら見せず

ただ傍観しているのみ。そんな彼らの視線にも特別な感情は見られなかった。

つまりこういったことが日常的に起きてるってことに他ならないし、違いない。

 

 

「……………クッソが‼」

 

 

いくら外見が清潔でお淑やかそうだからって、中身までそうとは限らないもんだな。

魔理沙やメルランみたいないい子もいれば、あの憎たらしい美幼女みたいな腹の立つ

ブルジョワジーもいたりする。だから学校ってところはいけ好かないんだ、ったく。

せっかく好きになりかけたってのに、この学校も他の場所と変わらねぇじゃねぇか!

心にも表情にも苛立ちをたっぷりと浮かべたままどうにかしてデブ男を助け起こそうと

腰に力を入れてタイミングを計るために自分の呼吸のリズムを整え始める。

 

 

「フゥ~~、気持ち良かったぁ~」

 

 

とかしようとしてたらいきなり自分で立ち上がりやがった。

 

引っ張り起こそうと踏ん張りきかせてた俺をよそに平然と立ち上がったデブ男は

助けようとした俺よりもまず教室内で平然と読書に耽っていた美幼女に向かって告げた。

 

 

「レミリア様、並びに咲夜嬢! 朝からありがとうございましたぁ!」

 

「……………咲夜」

 

「ハイ。お嬢様の読書の邪魔になるので、お静かに」

 

「ブヒィ! かしこまりました!」

 

額からにじみ出る脂汗をまき散らしながら爽やかに礼を述べるデブ男はそのまま一礼し、

廊下の隅っこの方へ邪魔にならないように置いてあった自分のカバンを取りに戻ってから

教室内に入って自分の席に座った。つーかこのクラスの男子だったのかよ‼

 

 

「………どーなってんだこりゃ」

 

「だからダメって言ったでしょ」

 

「え? そういう?」

 

「まあこの学校の事も詳しくないはずだし、仕方ないのかもね」

 

「はぁ、さようですか」

 

 

完全に置いてけぼりを食らった俺は何が何やら分からぬまま自分の席に戻る。

そこで大人しく傍観していたメルランが意味深な事を言っていたが今の俺の頭脳では

正しく処理できずに右から左へと通り過ぎて行った。

 

 

この二分後にチャイムが鳴り、ようやく朝のSHRが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、先程はお見苦しいものをお見せいたしましたなぁ」

 

「あ、ああ。そうだな、現在進行形でも見てるんだが」

 

「ブヒ? 何か?」

 

「…………いや、別に」

 

 

朝のSHRが終了後すぐに教室の南側の窓から数えて2列目の四番目の席に座っていたデブ男が

俺の元へとやって来て脂ギッシュな身体を揺さぶって俺に恭しく頭を下げてきた。

礼節を弁えられることは良いことなんだが、どうしても外見が伴わなきゃならんようだ。

不快な熱気を前方から感じつつも何とか表に出すことなくデブ男との会話を再開する。

それに何より、俺はさっきからずっと気になってたんだ。

 

 

「なぁ、アンタ名前は?」

 

「ブヒ? 拙者でありますか?」

 

「せっしゃ………ああ、うん。そう」

 

「拙者は卓村(たくむら) 厚貴(こうき)であります、サー!」

 

「卓村、ね。なぁ卓村よぉ、なんでお前は」

 

「むむ? 卓村とは他人行儀な! 拙者の事は是非、厚貴と!」

 

「ええい暑苦しい身体を近付けるな! 他人行儀も何も他人だろうが!

それに今はそれが聞きたいんじゃない。俺が聞きたいのはさっきの事だ」

 

「さっきの事、と言いますと?」

 

「とぼけんなよ。さっきあの、アイツらに酷い仕打ちを受けたの何でお前が

ありがとうございましたとか言ってたんだ? いじめられてたんじゃねぇのかよ」

 

それとなくデブ男、もとい卓村という名前を聞きだした俺はさっきから気になってた事を

直接当事者ご本人の口から聞こうと質問を重ねたが、意外にもそれに答えてくれたのは、

前方のメガネではなく隣に座っていたメルランだった。

 

 

「アレは違うんだよ。アレは"派閥"内のことだから問題無しなの」

 

「派閥?」

 

「それについては拙者がご説明致しましょう!」

「お、おう」

 

 

メルランの可愛らしく小さな口から語られようとした言葉が飲み込まれ、

代わりに卓村の脂ギッシュで巨大な口から俺の知りたかったことが語られた。

 

 

「この教室、ひいてはこの幻想学園高校において『派閥』というのがありましてな?

しかもごくごく少数などではなく学年をまたいで存在するほどの数を誇るのです!

そして今回起きたのもまた、その派閥内でのことなので特に問題は無いと」

 

「だから、その派閥ってのは何なんだよ! それに、どうして派閥内の出来事だと

お咎め無しになるんだ? そんなのどう考えてもおかしいだろうが!」

 

「落ち着いてくだされ、遼太郎殿。ここではそれが許されるのです。

まあそれは追々話すとして、まずは単純に派閥についてをお話しておきましょう」

 

「ん~、分かった」

 

 

何か釈然としないが、まぁ取りあえずは今分かる事実を知るべきだろう。

意識を切り替えた俺は話を聞く準備を整え、無言で頷いてその旨を伝えた。

それで上手く伝わったらしく卓村は同じように頷いてゆっくりと語りだした。

 

 

「それでは。この学園高校には、幾つもの派閥が存在しているのであります。

そしてその派閥というのはその大半が社会的な影響力を持つ人物が中心となって構成

されているのであります。故にこの学校も多少の事は容認せざるを得ないのです」

 

「………………そんで?」

 

「そして先程の拙者の件も同様、この学校内に数多く存在する有力な派閥の一つである

【スカーレットデビル】によるものなので、特に大きな問題には成り得ないのですよ」

 

「なんだその、スカーレットデビルってのは」

 

「むむ? まさか遼太郎殿は、あのお二人の事をご存知ないのであります⁉」

 

 

派閥について卓村がいい感じに語ってきたところでいきなりド迫力で迫られた。

急に肉厚な顔を近付けてくるから悲鳴を上げかけたが、どうにか寸前で耐えられたらしい。

自分の忍耐力に拍手を送りつつ知らないと首を横に振ってやると、卓村が絶叫した。

 

 

「なななんと‼ 遼太郎殿はかの【レミリア・スカーレット】様をご存じ無いと⁉」

 

「お、おう。全然知らない。でもブルジョワなんだろ?」

 

「当然であります‼」

 

 

俺の目の前でだらしのない肉体が揺れながら、汗をたぎらせつつ演説をし始める。

 

 

「かの御方はドイツの名門であるスカーレット家の第17代目当主でありまして、

加えてこの学園高校の一部設備の費用を負担した超VIPなのでありますよ!」

 

「ほーん」

 

「さらにレミリア様はその抜群の容姿と卓越した頭脳、併せ持ったカリスマ性で当主の座に

就くや否や世界経済にパイプを幾本も作り上げて資本流通を瞬く間にまとめ上げるほどの

並桁外れた非凡さをその幼いお身体に内蔵した、完璧超人であらせられるのです!」

 

「へー。つまり?」

 

「えっと、とにかくすごいお金持ちのお嬢様だってこと、かな?」

 

 

何を言ってるのかさっぱり不明だったために隣のメルランに助けを求めて正解だった。

要するにとんでもねぇ規模のブルジョワジーってことみたいだな。クソ、庶民の敵め。

 

「ありがとうメルラン。そんで? あとのあの銀髪の人は?」

 

「あの御方はレミリア様の身の回りの一切を任されているミス・パーフェクトこと

【十六夜 咲夜】嬢であります。有り体に言ってしまえば、メイドさんでありますな」

「め、メイドだと⁉」

 

 

卓村の口から飛び出た一言にまたしても驚きが隠せずに言葉に出てしまった。

自分のメイドを同級生として自分と同じ学校に通わせるか? 普通しないよな⁉

ま、まあブルジョワジーの考えなんて一庶民の俺からしたら想像もつかないしな。

 

 

「おや? 遼太郎殿はメイドさんに興味がお有りで?」

 

「ば、バカ言うな! 単純にブルジョワスゲーって思っただけだよ!」

 

「そうでありますか。いやはや、同好の士として語れぬのは残念であります」

「あーそうかい。で、その二人の派閥とお前に何の関係があるんだよ」

 

 

そう、今までの話の流れを聞いて一番疑問に思ったのはそこなんだ。

ドイツの名門の出でありながら完璧超人のお嬢様とそれに使えるメイドさん、

そんな人たちと目の前のデブメガネに接点があるとはどうも考えられなかった。

俺の質問に対して卓村はわずかな時間も空けることなく簡単に応えた。

 

 

「何の関係も何も、拙者もレミリア様方の派閥に入っているのであります」

 

「は⁉」

 

何? どゆこと?

 

 

「分かりやすく言ってしまえば、アイドルの会員クラブみたいなものですかな?

拙者ら男子生徒は基本的にどこかの派閥内に入っているのでありますよ。

そして、それぞれの派閥内で起こったことは他の派閥の者が干渉するのはナンセンス!

つまり今朝の出来事はそういうことでありまして、ハイ」

 

「……………ってことは何か? 朝のアレはお前が望んでしたことだと?」

 

「イグザクトリーですぞ‼」

 

 

何のことは無い、ただの日常だったんだ。良い意味でも悪い意味でも。

変に勘ぐった俺が勝手に思い込んでただけってわけか、何だよそれ。

 

俺一人が恥ずかしい思いしただけじゃねぇか‼

 

 

「おや、もう一分前でありますか。それでは次の休み時間にまた話しましょう!」

 

 

暑苦しい身体を揺すりながら、卓村は俺たちの前から歩き去っていった。

いくら事情を知らなかったといってもさ、こんなことって普通あるかよ。

ただ俺だけが恥かいただけで、他の誰も悪くないんだもんさ。

こういう場合、このやり場の無い怒りは一体どこに向けたらいいんだよ⁉

 

 

「クソ、なんかやりきれねぇ………」

 

 

内部に沸き立った複雑な感情を処理しきれずにイライラし始めたその時、

話の途中から隣で何も言わずに黙っていたメルランが俺の方を向いて言った。

 

 

「でも、卓村君を誰よりも心配して助けようとした遼太郎は、カッコ良かったよ」

 

「えっ?」

 

「すごくカッコ良かった。誰よりも真剣で、誰よりも真っ直ぐで」

 

「い、いや、そんなことないよ。ただ知らなかっただけでさ」

 

「でも知らなかったからって、誰でも助けようとするわけじゃないよ?」

 

メルランのアメジストのような輝を宿す二つの瞳が俺だけを射貫くように見つめる。

あの瞳の中に今は俺だけしかいないのだと考えると、輝きに吸い込まれるような感覚に

陥りかけた。油断したら今でもスッと身体ごと持っていかれそうになるほどに。

単純に美少女であるメルランに褒められたから嬉しくなったという訳じゃない。

いや、それも勿論あるにはあるんだが、もっとこう、別の何かを感じた。

それこそ彼女の瞳に見つめられるだけで、テンションが沸き上がってくるような。

 

 

「そう、かな」

 

「そうだよ。遼太郎だからだよ、きっと」

 

 

彼女の確信に満ちた言葉に、俺はかえって誇らしさを感じた。

出会ってまだ一日も経っていない他人が偉そうにとかの感情は一切感じることなく、

ただメルランの言葉に嘘や偽りが無いことを感じたが故の誇らしさに思えた。

 

 

「そう言ってもらえるとうれしいよ、ありがとうメルラン」

 

「どういたしまして♪」

 

 

そのまま俺とメルランの二人は授業開始のチャイムが鳴るまでずっと、

笑顔のままで全く視線を逸らすことなく互いを見つめ合った。

 

 

 








いかがだったでしょうか?

すっげぇや、戦闘描写が書けなくなったというのにこんな一人称が
まともな感じで書けるようにはなってらぁ。へへ、これがニュータイプか。


ご意見やご感想、並びに書いてほしいエピソードなども随時募集中です。


それではまたいつか、不定期更新される次回をお楽しみに‼
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