星界の風章「陰謀」   作:いち領民

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星界の風章「陰謀」 第二章

フォシュデール・ボルジュ=ファンドゥル・アドゥールは、少し緊張していた。カシュナンシュ大提督に幻炎作戦の情報を漏らした犯人を捕まえるという任務を命令されて、詳しいことはアルネージュ准提督に聞いてくれといわれた。そして、そのアルネージュ准提督の私室に呼ばれていたのであった。

彼にとって、アルネージュの私室に入ることは初めての経験だった。修技館時代と情報局員としての長年のつきあいは、あったが、それは、あくまでも仕事上でのことであって、個人的に私室を呼ばれるとは思わなかったのである。もっとも、今回よばれたのは、あくまでも任務の内容を伝えるだけというのがアルネージュの説明だった。

 

 

共同住宅の一つの部屋の前でフォシュデールは室外通話機を操作して、アルネージュを呼んだ。

 

「アルネージュ准提督、ただ今到着しました。部屋に入ってもいいでしょうか?」一応形式の形をとるフォシュデール

 

 

「うん、いいわ。入って。こっちも準備ができたから。」そういって、端末を操作して扉をアルネージュは開けた。

 

 

アルネージュはフォシュデールを部屋に入れると、早速端末を動かして、立体映像を起動させた。

 

 

「ねぇ、フォシュデール千翔長、任務の内容はわかっている?」

 

「ええ、カシュナンシュ大提督から大まかな概要は伝えられましたから。でも、詳しいことは、アルネージュ准提督に聞いてくれといわれました。秘密保持のために。」

 

 

「そう、まぁ、全ての説明は、この記録映像を見てからにして、たぶん、これが見られるのは、皇帝陛下か、これを渡した本人くらいの重要なものよ。機密保持の性質上、1回しか、再生されないの。そのあと、このデータごと記録映像のハードも壊れるようになっているから、ここでフォシュデール千翔長をよんで一緒に見ることしたの。」

 

 

「そうですか。でも、何のデータなんですか?それだけのものも珍しいですね」

 

 

「紋章院の『青の牙』のリーダーのヘルマスターよ。これだけで、あんたもわかるでしょう。その情報の重要性が。とにかく、任務の詳しい説明はこれを見た後にするわ。」

 

「…『青の牙』のリーダー………」その言葉に絶句するフォシュデール

 

 

 

アルネージュがクリューノの端末を操作して、記録映像を立ち上げた。そうすると、ダリシュがまず映像に表れた。

 

「これがそのヘルマスターよ。」

アルネージュはフォシュデールにつぶやくように伝えた。

 

 

「アルネージュ准提督、そして、そのパートナーのお人、あらためまして、シュリル・ウェフ=キルヒム・ダリシュです。僕は、現在『青の牙』のヘルマスターをしています。これから、僕の履歴を説明しますが、これは、秘密でお願いします。この情報を見られるのは、基本的には皇帝陛下のみだけなので、そのことを考慮してみてください。では、『青の牙』の世界へようこそ。帝国の地獄と闇の世界を案内します。」

そうまえおきをして、ダリシュの説明は始まった。

 

 

その後、彼の戦歴が伝えられた。

彼が初めて、任務ではないが、まきこまれるという形で戦闘を行ったことが最初に説明された。それ以降、紋章院の任務や父親の『青の牙』を協力した話や単独で参加した任務などを映像や状況説明を加えながら伝えた。そして、その中でアルネージュとフォシュデールが注目したのは『サタン事変』の話だった。

皇帝のみが閲覧できるカルース級Y資料に指定されている『サタン事変』…それは、驚くべきものであった。

ことの発端は、シュリル・ウェフ=キルヒム・タトゥースという先代のヘルマスターの兄が後継者争いを起こして、そこで死んだ。だが、彼は死ぬ直前に恐ろしい兵器を生み出していたのであった。それが擬似思考結晶生命体『サタン』といわれるものであった。

それは、情報局や紋章院をタトゥースのクローンを使い、支配しようとしたり、修技館の訓練生達を洗脳したり、身体交換したりして、そこからも帝国を支配しようとしていた。

まさに、一つの機械が帝国をのっとろうとする恐ろしいものであった。

それをいち早く気づき、そのサタンの完全破壊の全ての指揮をとったのは、ダリシュであった。当時のヘルマスターである彼の父親は敵の目(サタンの)を欺くために、彼にすべてを任したのであった。若干、当時、14歳の彼に帝国の危機をまかせたのであった。

 

多大な犠牲を払いつつもダリシュを中心とした『青の牙』は、『サタン事変』を終局させて、帝国の危機は去った。

 

その数年後、ダリシュは父親から正式にヘルマスターの後を継ぎ、その後の任務でもすばらしい戦歴を挙げていた。一番特筆なことは、彼が直接かかわった任務は味方に死者が一人もでなかったことであった。

 

 

最後の映像にはなぜか、ダリシュではなく、彼の父親であるハーデスが現れた。

「こんにちは。情報局のお嬢ちゃん。自己紹介させていただきます。私はシュリル・ウェフ=キルヒム・ハーデス、前ヘルマスターであり、ダリシュの父親です。まぁ、とりあえず、うちの息子を一言で表すならキルヒム家最高の後継者というところですかね。とにかく、ヘルマスターの最年少記録を破ったのもダリシュですよ。いかに私の息子がすぐれているかを説明すると…」

 

ハーデスの記録映像はいきなり、ダリシュに変った。

 

「父さん、もういいよ。父さんの説明は長いんだから。とにかく、僕の履歴はこんな感じなのでアルネージュ准提督よろしくお願いします。」いつもの穏やかな笑みをその記録映像でダリシュはうかべていいた。

 

 

その映像が終わった後にアルネージュとフォシュデールはダリシュの恐ろしいほどの戦歴に驚愕して沈黙していた。

 

 

「ア、アルネージュ、まさか、こんな怪物と一緒に任務をするきなのかい?」

フォシュデールは、沈黙を破り、階級の差を意識せずに思わず聞いた。

 

すると、アルネージュは茶色の目をめいいっぱい広げてフォシュデールを睨んだ。

 

「あ…すいません。アルネージュ准提督。」その様子を見て萎縮するフォシュデール

 

 

「別にいいわ。私は昇格したばかりだから、あなたはなれていないものね。そうよ。しかも、私の指揮下に入ると明言した。彼が自分の家業を休んでまで、この任務に専念したいとも言ったわ。」

アルネージュは唇をかみ締めながらうんざりとしたような表情をした。

 

 

「あのう、この任務を降りていいでしょうか?とても、私には荷が重い気がします。それに…(この任務が終わったら星界軍の情報局を退役してもう一度翔士試験を受けなおそうと思ったのに)」ますます不安になるフォシュデール

 

 

「馬鹿、何を言っているの。そんなことできるわけないでしょう。それとも、私を見捨てるきなの?あのヘルマスターが専念しようとしている任務なのよ。私だって不安なのよ。」そういって、茶色のかわいらしい瞳に涙浮かべるアルネージュ

 

「え…アルネージュ准提督」突然の表情に驚くフォシュデール

 

「この任務がいかに重要かわかっている。だから、フォシュデール・ボルジュ=ファンドゥル・アドゥールを指名したの。私が一番、信頼できるのが情報局員では、あなたなの。」涙目で自分より頭一つ大きいフォシュデールに対して上目遣いでアルネージュは言った。

 

 

「う…それは。(泣いている婦女子を見捨てることなんてできるわけない。これは我がフォシュデール一族の家風だから…)。アルネージュ准提督、わりました。全力で任務遂行します。」

ついに腹を決めるフォシュデール

 

「ありがとう(やはり、家風にはさからえないみたい。よし、これで、彼は全身全霊でサポートしてくれるは、やる気があるとないとでは、ぜんぜん違うしね。)」

心の中では舌を出すアルネージュ

 

 

その後、アルネージュは、本格的にフォシュデールに任務の説明をした。

 

 

「そうですか、わかりました。しかし、なぜ、カシュナンシュ大提督は、たった4人でこんな難しい任務を命令したのでしょうか?しかも、紋章院の力を借りてまでもして。」

 

 

「さあ、わからないわよ。あの人の頭の中身なんて、何がでてくるか、わかったものじゃないわ。そんなおぞましいことを考えるより、この任務に専念してさっさと終わらせた方が賢明だわ。」

 

 

「それもそうですね。それでは、任務の詳しい説明をお願いします。」改めて、敬礼をするフォシュデール

 

 

 

アルネージュはフォシュデールにすでに、ダリシュと会見したときに、幻炎作戦の情報が敵に伝えられた方法を予想したのを説明した。そして、その中になった救命夾を使う方法についてアルネージュはすでに調べていて、幻炎作戦の前に強行偵察を行った一つの艦隊に救命夾を誤射するという事故があったことを伝えた。

 

 

「はっきりいって、これを知ったとき、驚愕と共に腹立たしかったけど、もしこの中に諜報員がいたら、確実に幻炎作戦の情報は漏れると確信すべきものだったわ。情報局の特務艦隊よ。特務艦隊の司令官は私が選抜したのも当然なのに。本当に腹が立つわ。」

 

 

 

「それは…ご愁傷様ですね。それで、誤射した犯人は見つかったのですか?」

 

「ええ、名前が載っていたわ。環境整備士のネイサン・オドネル従士、彼が救命夾を発射したの。でも、残念ながら彼はもうこの世にはいないわ。戦闘中に戦死したという記録されている。とかげの尻尾きりにされたみたいね。でも、ということは、まだ、特務艦隊に工作員がいる可能性がおおいにあるわ」記憶片をフォシュデールに渡すアルネージュ

 

 

「そうですか、わかりました。それで、どうするのですか?特務艦隊の中の調査といってもかなりの膨大の数になると思いますし、我々だけではきついと思います。」

 

 

「それについては、もう手は打ったわ。特務艦隊司令長官のヘルハウンズ提督に内々に調査の依頼をしたわ。自分の縄張りの不始末は自分でやってといっておいた。無論、この情報が向こうに渡れば、牽制くらいにはなるでしょう。今後、あの艦隊から情報提供をさせるのを防げるはずよ。まぁ、ヘルハウンズ提督の器量しだいだけどね。」

 

 

 

「なるほど、わかりました。それと、私の仕事はこれから何を調べればいいのですか?」

 

 

「これよ。ここには、過去数年間ハニア連邦と帝国の交易記録がのっている。それで、私なりに、色々条件を絞って、ここまでの範囲までしたわ。あとは、分析官としてあなたの仕事よ。」

そういって、アルネージュは記憶片を渡した。

 

 

「つまり、この中から工作員が乗りこんでいる可能性のものを探れということですか。あるいは、それに準ずるものを探せということですね。わかりました。」

敬礼して早速部屋からでて、フォシュデールは仕事に取り掛かろうとした。

 

 

「ああ、そうそう、千翔長。明後日までにお願いね。明後日の標準時間12時にヘルマスターとの作戦会議があるから。それまでに、千翔長の優秀さを見てみたいわ。」にっこりと微笑むアルネージュ

 

 

「明後日までですか。(く、相変わらず、人使い粗いな)わかりました。努力します」

そういって、フォシュデールは敬礼してアルネージュの部屋から去っていった。

 

 

 

二日後、フォシュデールはなんとか、アルネージュからもらった情報を分析して、結論を出していた。そして、その結果をもって、ダリシュ達との作戦会議にのぞんだ。

 

 

 

帝国星界軍・情報局本部・第8作戦室

 

 

 

「アルネージュ准提督、フォシュデール千翔長、初めまして。アイリーフ・ウェフ=ケレス・ティアラです。今後、一緒に任務を行うのでよろしくお願いします。」敬礼するティアラ

 

「こちらこそ、よろしく。フォシュデール・ボルジュ=ファンドゥル・アドゥール、情報局の千翔長で分析官をやっている。」敬礼で返すフォシュデール

 

 

「はじめまして、フォシュデール千翔長、シュリル・ウェフ=キルヒム・ダリシュです。よろしくお願いします。」

 

 

「私は、アルネージュ准提督、今回の任務の指揮官よ。アイリーフ軍医百翔長、よろしく。あなたが『青の牙』で『翡翠の策士』といわれているの?そうは見えないけど。」

人のよさそうな穏やかな笑みを浮かべる緑色の髪と瞳をした美女をアルネージュは、そう判断した。

 

 

「アルネージュ准提督、ティアラでいいです。もう軍医百翔長といっても、予備役ですし、軍に復帰する気は当分無いです。こっちの仕事の方が面白いですから。それと、『翡翠の策士』なんて、そんなたいそうな人物ではないです。」ダリシュと同じような穏やか笑みを浮かべるティアラ

 

 

「クス、いや、僕の情報に関する作戦面の師匠であるティアラさんがそんなに謙遜してどうするのですか?まったく、相変わらず、本性を隠したがりますね。」興味深そうにティアラを眺めるダリシュ

 

「ちょっと、待って、ヘルマスターの師匠って、本当なの?」その言葉に動揺するアルネージュ

 

 

「ええ、そうです。それに、彼女は僕の遺伝子提供者でもあります。策を考えるという点に関しては父よりはるかに優れているので、ティアラさんから色々と教えてもらいました。」頬をかきながら言うダリシュ

 

 

「なるほどね。確かに、『翡翠の策士』の異名をもつのは、あながち嘘とはいえないみたいね。」そういって、明らか嫌そうな目線を送るアルネージュ

 

 

「そんなことないですよ。今では、ダリシュの方が私を超えているし、私が教えたのは、単にハーデスが熱血馬鹿の無能だったからよ。」表情は穏やかだが、言葉に刺があるティアラ

 

 

「…あのう、そのハーデスって方は、前のヘルマスターですよね。それを無能と言えるのは…(いたたた。胃がまた、痛んできた)」その発言でプレッシャーを受けるフォシュデール

 

 

「ティアラさんは、相変わらず、父さんに対して厳しいですね。それより、任務の進行状況を確認しましょう。」作戦会議を進めるダリシュ

 

 

「そうね。とりあえず、ヘルマスター言ったとおり、救命夾を誤射した強行偵察をした艦隊を調べたわ。それで、その該当するのが一つだけあったの。情報局の特務艦隊よ。でも、その誤射した本人はすでに、戦死扱いになっている。その人物の資料だけど渡しておくわ。それと、この件に関しては艦隊司令官のヘルハウンズ提督に任せた。工作員の調査をね。」

 

 

「わかりました。受け取ります。それと、ハニア連邦に関連して何かわかったことがありますか?」

 

 

「ええ、それについては、フォシュデール千翔長が分析しているから報告して。」

 

 

「はい、説明します。幻炎作戦が軍令本部で立案されて、それが決定行動にいたる前後のハニア連邦と帝国の交易記録を調べたところ、妙な記録が出ました。これを見てください。交易会社は違いますが、ミジウースという鉱石が大量にハニア連邦に輸出されています。この物質がハニア連邦で足りなくなったという事実は確認されていません。」アルネージュに確認するように伝えるフォシュデール

 

 

「なるほど、わかりました。これで、一つの糸はつながったみたいです。このミジウース鉱石がどこの原産までは調べましたか?」

 

「いえ、詳しくは時間の都合上無理でしたけど、確か、どれも会社によって違うところだったと思います。」

 

 

「ということは、偽装工作ですね。それは、たぶん、どれも同じ所から輸出された可能性が高いです。アーセナル男爵領から輸出されたと思います。たぶん、調べればそう出ますよ。」確信めいた笑みをするダリシュ

 

 

「どういうことなのか?教えてもらいたい。そういえば、ヘルマスターは、宰相府を調べるといったけど、それと関係があるのか?」もったいぶっているのでじれるフォシュデール

 

 

「ええ、宰相府を調べたのは、そこに、この諜報員騒ぎに誰かかかわっているのかと思って、調べたのです。予想通り、出てきました。前外交使節庁事務次官のカイザル・スーニュ=キーム・アーセナル男爵・カイザーです。詳しい資料は渡しておきます。」そういって、記憶片をフォシュデールに渡すダリシュ

 

 

「彼がどんなかかわりがあるのですか?」その人物を聞き、少し考え込むフォシュデール

 

「カイザル閣下は、帝国が人類統合体に攻められた直後退官しています。理由は、戦争を止められなかったというのが表向きでした。その後、アーセナル男爵領をもらって、そこにいるとありました。しかし、この人物の出身を調べたところ、意外な発見しました。」

 

こうして、ダリシュは、カイザーという人物について説明した。

カイザーの出身は、旧カミンテール共和国の首都惑星があったカミンテール伯国の惑星、シャンプールだった。彼が10歳の頃に帝国にカミンテール共和国は、滅ぼされて帝国の領土になった。それから50年のときを得て、帝国に復讐する機会をうかがっている可能性があるとダリシュは伝えた。

そして、カイザーは、退官したにもかかわらず、幻炎作戦が始まる直前、つまり作戦の概要が決定していた頃、よく宰相府にきていた記録が残っていた。特に軍務次官に接触した記録が残っていた。そして、アーセナル男爵領で一番とれる鉱石は、ミジウースということもダリシュは調べていた。さらに、ハニア連邦に輸出されたミジウースは通常価格の何十倍も売られていた。これによって、ミジウースだけではなく、それ以外の付加価値…つまり、情報が売り出されていた可能性があるとも説明した。

最後に、交易をした会社のリストの出資者は、カイザーもしくは、アーセナル男爵家というのもすでに調べていた。

 

 

 

「ふー、さすがね。ヘルマスターね。ところで、情報を売る側がいれば、買うほうもいるはずよ。もしかして、グゥエン・タウロン元大使が情報を買っていたの?彼は、ハニア連邦では親アーヴ派だと聞いたけど、それは、表の顔というわけね。」考え込むアルネージュ

 

 

「残念ながら、それは少し違います。買ったのは、ハニア連邦の外交事務次官のアイロン・クェス氏です。でも、彼もすでにタウロン元大使と一緒にハニア連邦に帰っています。彼とカイザーが接触した記録が残っているので、わかりました。それに関してもその記憶片にのっています。」

 

 

「ということは、現在、帝国にいるのは、カイザーだけということね。とにかく、そいつを捕まえれば、まずは情報提供の一つの線を断つことができるということなのね。わかったわ。」決意するアルネージュ

 

 

「実は言うと、そう上手くはいかないのです。残念ながら、彼の所在は現在不明です。この広大な帝国のどこかにいるのは、間違い無いのですが、まったく消息はつかめていません。本当は捕まえて、アルネージュ准提督に尋問を頼もうと思ったのですけどね。」残念そうな表情をするダリシュ

 

 

「逃げ足だけは速いみたいね。まぁ、いい。情報局で手配しておくわ。あとは、特務艦隊の中の工作員を探し当てれば、なんとかなりそうね。」仕事の半分が片付いたと思うアルネージュ

 

 

「そうだといいのですけどね。もう一つ、悪い情報が、カイザーにはあるのです。彼は10年ほど前に秘密結社を作ったことがわかりましてね。名前は『フリーパーソン』、旧カミンテール語で自由な人間を意味します。それが帝国にある反帝国のテロ組織を影で支援している可能性があります。そして、その『フリーパーソン』の実行部隊が『ジュブナイルの騎士』、旧カミンテール共和国の象徴と言われた部隊です。」少し困った顔をするダリシュ

 

 

「なんですって…。今まで、なんで、わからなかったのよ。だから、紋章院は無能なコウモリなのよ。」厳しい目で睨むアルネージュ

 

 

「すいません。それについては、謝ります。『青の牙』の仕事ではないですが、紋章院の失態であるのは事実です。これをカリュー長官に一応、聞いてみたのですが、カイザーは、現在のシドリア宰相の右腕と当時から言われていたのでノーマークだったと弁明していました。」すまなそうな顔をするダリシュ

 

 

「10年前から…。もしかすると、情報局にもその秘密結社の連中がいる可能性もあるわね。…となると、私がこの任務についたのも向こうに伝わっている可能性があるっていうこと」事態の大きさに実感するアルネージュ

 

 

「正解です。それで、意味がわかったと思います。あなたを指揮下に僕が入るという意図をね」穏やかに微笑むダリシュ

 

 

「……あ。だから、戦訓ということなのね。『サタン事変』のときは、表面上の指揮官を自分の父親に向けさせて、今度は私に向けさせて、楽々、任務をこなそうということなのね。」ダリシュの意図を知り、キツイ目で睨むアルネージュ

 

 

「あら、アルネージュ准提督は意外に優秀ね。これなら、立派な囮の役目もできそうだわ」とさっきから、黙って聞いていたティアラは穏やかに微笑んだ。

 

 

「二人そろって、相当なものね。わかったわ。私は気をつけるわ。いつ、敵が襲ってくるかわからない状況ということは認識しておく。それに、今度からはここもやばそうね。次回からはあなたたちが、作戦会議の場所を指名しなさい」自分の立場を知って、かなり不機嫌になるアルネージュ

 

 

「(ふー、なんてことだ。だから、『棒女(アルネージュ)』とかかわり合うとロクなこと無いんだ)」ますます胃をいためるフォシュデール

 

 

「ところで、どっちみち、カイザーの所在地はわからないのでしょう。だったら、決めた。この4人でしばらく行動する。カシュナンシュ大提督に頼んで、特務艦隊に行きましょう。そこも調べなくてはいけないのなら、その方がいいわ。」今後の方針を決めるアルネージュ

 

 

「なるほど、それは良い案ね。『虎穴に入ずんば虎児得ず。』と昔の人も言っているみたいですし、情報局の艦隊でのんびり、調査するのもいいでしょう。」再び穏やかな笑みをするティアラ

 

 

「わかりました。アルネージュ准提督、その方針で行きましょう。(こうなったら、ヤケだどこもまでもやるしかないな)」フォシュデール

 

 

「わかりました。それでいきましょう。では、そのための手続きをお願いします。」ダリシュ

 

 

アルネージュ、フォシュデール、ダリシュ、ティアラの4人は、こうして、ヘルハウンズ提督が司令長官の特務艦隊に一時的に所属することになった。

 




PS版星界の紋章キャラクター紹介

イーディア・ボルジュ=メジュアス・デュラスゲーム開始時に選択出来るクルー候補の1人。女性。軍籍番号080-04824。ゲーム開始時は十翔長(昇進の辞令が来ている)。髪は緑色のセミロングで、襟足が大きく外側にカールしている。容姿端麗なアーヴの例に漏れずプロポーションは抜群だが、やや童顔である。主人公は気づいていないが実は同時期に修技館(士官学校)に通っており(同期かどうかは不明)、密かに主人公に片想いをしていた。結局、想いを告げるどころか存在を気づかれる事もなく卒業してしまったが、主人公が艦長になりクルーを募集している事を知り、副百翔長(中佐に相当)への昇進を辞退してクルー候補に名乗りを上げた。良家の令嬢で控えめな性格だが、上記のように主人公の事となると普段からは考えられない行動力を発揮する。

グリュカシア・ウェフ=ログダス・ヴェースゲーム開始時に選択出来るクルー候補の1人。女性。軍籍番号284-67194。ゲーム開始時は前衛翔士。水色の短髪を姫カットにしている。ファッションモデルの経験もある美女。家徴(一族に共通する身体的特徴)である髪色「空色のグリュカシア」が広くアーヴ社会に知れ渡っているほどの名家の出身。トライフとカシュナンシュの確執は、2人が彼女を巡って争った事に始まる。

フォシュデール・ボルジュ=ファンドゥル・アドゥールゲーム開始時に選択出来るクルー候補の1人。男性。軍籍番号461-72984。ゲーム開始時は前衛翔士。髪色は紫で、やや長め。目付きが鋭い。以前は情報局に勤務する千翔長(准将に相当)だったが、情報局の体質に嫌気がさして一度退役し、修技館に入り直したという異色の人物。入隊以来ずっと事務畑を歩いてきており情報局時代も本部で分析官をしていたため、軍艦に乗務するのは今回が初めてである。

ルーキス・ボルジュ=ルーキア・パーヴァルゲーム開始時に選択出来るクルー候補の1人。女性。軍籍番号374-68516。ゲーム開始時は列翼翔士。青い髪をかなり短くカットしている。クルー候補8人の中で最年少のスレンダーで小柄な少女。努力家で能力的には優秀だが、極度の負けず嫌いで男性不信、感情の起伏が激しいなどの問題がある。あるエンディングで表示されるイベントグラフィックでは、無いに等しかったバストが著しい成長を遂げている。

ルーフ・スューヌ=ロゴス・アレーシュ子爵・リュスガル新米艦長である主人公のお目付け役として派遣された参謀。男性。ゲーム開始時は百翔長。髪色は紺。やや面長。生真面目で何事も合理性を重視する性格で、感情表現に乏しいため冷淡な人物だと誤解されやすいが、長年交際している想人(恋人)を熱愛しているという一面もある。
フォルシュ・アロン=フリート・ヤルリューム・アルネージュ女性。登場時は百翔長。赤紫色の髪をツインテールにしている。テールの先はドリル状。不老種族であるアーヴの中でもかなり若い容姿で、れっきとした大人の女性なのだが外見は子供にしか見えない。フォルシュ家は反物質燃料と鉱物資源の売買で財を成した帝国貴族である。カシュナンシュ情報局長官直属の部下で、主人公へ長官の命令を伝える連絡将校を務める人物。神出鬼没で、主人公のいる所へどこからともなく現れる。体は小さいが態度は大きく、誰が相手だったとしてもその言動には遠慮というものが微塵も感じられない。あるエンディングでは、主人公の部屋のセキュリティロックを破って室内に侵入してくるという暴挙を働く。アーヴの名前は日本人の氏名と同様、姓が最初で個人名が最後に来る方式で、姓で呼ばれるのが通常だが、なぜか彼女だけはウィンドウの発言者表示でも会話テキスト中でも常に「アルネージュ」と個人名が表示される。


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